作ってくれたのは神友モコ太さんです!! イィィィイヤッフゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウ!!
ありがトゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!! モコさぁあああああぁぁぁぁぁあんんん!!

私一人では何も出来なかった成し遂げられなかったウガァーーーー!!(号泣)
……と最高にハイテンションでお送りしておりますが、本ッ当に嬉しいです!!
もともと昔から運営しているサイトはあったのですが、作品数が多すぎ&当時の
感覚なので今読み返すと、どうしても諸々と気になる……という事で、
新サイトを持ちたい気持ちはあったのです。
でも去年の夏にパソコンが突然のBANをしてからというもの、

サイト更新に使っていたソフトやアップローダーが
ワケワカランなってそのままに
していた所を俺達の神・モコ太さんが一日で
サイトを完成させてくれまして……!(涙)
知識が無い私が理解できるように、凄く丁寧に説明してくれたり、
夜中まで付き合ってくれたり(モコさんは徹夜してました)
本当に、どれだけお礼と感謝を伝えても足りないくらいです!

トップページにも書いておりますが、改めてこちらでも
お礼を言わせてください!
モコさん、本当にありがとう~~~~!!!!(涙)
そしてサイトに来てくださった方、ありがイラッシャイマセーーーーッ!!
(スライディング大歓迎)

【2・闇オークション】
そうして、伏竜と別れてから、オレは海の王国に居た時とは比べ物にならないくらい、盛大なパーティーの会場に水槽ごと移動させられた。
そこは白化した珊瑚みたいな色の壁で四方を囲んだ大きな部屋で、何だか薄暗い。
でも天井の灯りは眼窩に突き刺さるようににギラギラと強くて、会場の中央には舞台が迫り出していた。
やかましい歓声が水槽の中に居るオレの耳にまで聞こえてくる。
『これより、ここ四神王島限定、闇オークションを開催いたします!』
それをオークションの商品である人魚のオレは聞いているだけしか出来なかった。
そして目の前では、血と欲望の狂宴が始まる。
(何だ……? 何してるんだ? あれって……)
ステージの上に連れてこられた全裸の女の人達は抵抗を忘れたように成す術もなく、紺のスーツの男達に従って居並ぶ。
そうして競り落とされた女性達は客達によって【調理】されるのだと知った。
客達は女の人を跨らせたり、よくわからない色々な事をさせていたけど、多分あれは姉ちゃんから教えてもらった『好きな人としかしてはダメな事』なのだと思う。
見ていられなくて目を逸らすと、そんなオレが入った水槽をスーツの男達がステージへと運ぼうとする。
「ちょ、や、止めろよ!」
抗議したが、周囲の男達はオレと目も合わせない。
(ど、どうしよう! オレまで、あの女の人達みたいになっちゃうのかな? いや、オレ、人魚だから、焼いて食べられるんじゃ……!)
恐怖で項の毛が逆立つ。
「イヤだ! イヤだって!」
騒ぎ立てていると、唯一、オレと視線が絡み合ったのは、ステージの上の伏竜だった。
伏竜は目を合わせない。
ここに連れてこられるまで伏竜と会わなかったけど、どうやら伏竜はこのオークションの主催者の重要ポジションらしいのは部下達の会話から理解した。
オレが暴れるので首輪も手枷もつけられ、水槽の底に繋がれている。
助けてと何度も訴えても、部下の奴らもオークションを楽しんでる客も、まるで物でも扱うみたいにオレを無情に見ている。
伏竜だけが、何だか複雑な視線を向けているのは、そっと絡んだ視線でわかった。
(伏竜……何なんだよ、アイツ……)
ステージから漏れる光は、伏竜の首に掘られた瑠璃色の鱗のタトゥーを宝石みたいに煌めかせていた。
伏竜も部下のヤツらも何故か首に鱗模様が掘られていたんだけど、それは伏竜が息を飲む度に喉仏が動き、更に艶めかしく蠢く。
ぼうっと見ていたオレは、ハッと我に返る。
こんな絶体絶命な状況なのに、見惚れるくらいに色気を駄々洩れにさせる男は、オレが泣いても喚いても特に何の行動もとろうとしない。
それが何だか腹立たしかった。
こういう時、少しくらい『みんな酷いな』とか思わないもんなのかな?
それとも人間の世界って、こういうのが普通なのか?
でもオレが此処に連れてこられて、初めて会話した人間が伏竜だったから、往生際が悪いけど、助かりたくて必死に呼びかけ続けた。
「おい! 伏竜! 何とかしろよ! こいつら、オマエの手下だろ? オマエと同じ刺青が首にあるし、同じ色の服を着てるし! オレ、陸に来たのは、白月を探しに来ただけで、ニンゲンに食べられる為じゃないんだって!」
文句を言ったけど、伏竜は紫の瞳を細めて、長い黒髪を揺らすようにして顎をしゃくる。
そして低く掠れた声で応えた。
「……だから呼び捨てにすんじゃねぇ。そもそも何で俺が手前の命令をきかなけりゃならねぇんだ」
「は?」
問い返すも、アイツは火がついていない煙草を咥えて、吐き捨てるように告げる。
「せいぜい汚ぇ親父に媚びを売って可愛がってもらえ。運が良けりゃあ、海で野垂れ死ぬより、長生き出来るだろうよ。良かったな、魚仔!(魚の坊や)」
ケンカを売られているのだと理解し、オレは水槽の中で暴れまくる。周囲の男達が慌てて水槽を押さえたが、知るもんか! 思いっきり叫ぶ。
激怒するオレを尻目に、伏竜は配下に命じて水槽を熱気の中心へと運ばせる。
ライトが照らすステージの上は、人間の汚い欲望の詰め合わせの晩餐だった。
オレの姿を見たニンゲン達は熱狂が最高潮に達したように頬を好調させ、それをオレは絶望的な目で見ていた。
(こ、これからオレ、ニンゲンに食べられちゃうんだ……)
ニンゲンは魚も動物も何でもを食べるって聞いたから、きっと直ぐにバラバラにされて、刺身にされたり、焼肉にされちゃったりして……。
そう思うと恐怖で泣きそうになってしまったが、伏竜を見て涙が止まった。
「……」
面白くなさそうな仏頂面で此方を見つめてる冷血漢の姿に、むかっ腹が立ってきた。
(アイツの前でだけは、泣いてたまるか!)
それから会場の照明は明度を増し、昼間みたいに周囲を照らし出した。
『オークションの目玉の観賞タイム』らしい。ふざけんなよ!
オレの水槽の周囲には、色んな人間がグラス片手に群がってきて、値踏みするみたいに無遠慮に見つめて、ぺちゃくちゃ喋りだす。
「ほぅ……! 四神王島には古来より人魚が棲むとされてきたが、これは美しい!」
「人魚って不老なんでしょう? その肉を食べると老いなくなるとか……」
「人工的なキメラかと思ったが、胴体に繋ぎ目も何も無い! これは間違いなく人間の体に魚の尾を持つ、異種族だ! 素晴らしいよ! 是非、解体して調べてみたいものだ!」
「流石は島でも最高の流通経路をもつ玄武門派と、勢力最強と言われる青龍門派の合同オークションだ! 人魚以外もハイクオリティな『商品』が揃っているぞ!」
何を言ってるのかわからないけど、オレにとってロクでもない内容なのは理解した。
客達はオレが助けてほしいと喚く度、愉快そうに笑うのだ。
オレが惨めで無様であればある程、満足だとでも言わんばかりに。
「うぅぅう~!」
呻いて睨むしか出来ないオレの水槽を客の一人、頭部が禿げ上がって腹が出た酔っ払いのオッサンが揺らしだした。
「おいおい? その愛らしい顔が涙で歪むのを見たいのに、泣かないじゃないか~? ほれほれ! 泣け泣け! 今の内に泣け! お前を競り落としたら、もう快楽堕ちした顔しか出来んようになるんだからなぁ~?」
オッサンが乱暴に水槽を揺らし続ける。
「わ、わわ!」
傾く水槽にオレは慌てずにはいられなかった。
人魚は陸に上がってしまうと、足が無いから動けない。
(そもそも陸地の重力は人魚の体にとってシンドイってのに! このオッサン、ぶっとばすぞ!)
しかし、ぶっとばせるだけの力が水中ならともかく、地上では出ない。
されるがままにビビらされるオレの姿に、警備をしていた青龍門派の奴らは顔を見合わせるだけで動こうとしない。
そして警備のヤツらのヒソヒソ声が聞こえてきた。
「……おい、止めろよ。商品に何かあったら老大(ボス)にドヤされるぞ」
「っつっても、このオッサン、島でも随一の富豪だろ? ウチの門派の上客でもあるじゃねぇか」
「別にあの程度なら許容範囲だろ。無駄に広い水槽に入れてやってんだから、カオに傷もつかねぇよ」
こ、こいつらぁあぁあああああ! オレの見張り役なら仕事しろよ! と、歯噛みしていると、オッサンの野太い腕が水槽の中に入ってきた。
「ひっ!」
ナマコみたいに蠢く指に怯えると、オッサンは脂でテカった額を水面に近づけて舌なめずりしながら、吐息を荒くして話しかけてくる。
「フヒヒ! 見れば見るほど、色気のある可愛さじゃないか~! ちょっと触るぐらい、良いだろ? な? ワシの愛人になったら、好きなだけ欲しいものを買ってやるから、ワシのものになれ? な?」
「フガフガフガー!(なるわけないだろ! ぶん殴るぞ! 変態! スケベ親父!)」
怒りすぎて口から泡が噴き出して言葉にならなかったが、あまりにも生理的に無理すぎて暴れようとするも、拘束の所為で動けない。
オッサンの蠢く手がオレの肩に触れようと伸びる……その刹那、オッサンの動きが止まった。
「「え」」
オッサンと声がカブってしまったけど、見上げると伏竜がオッサンの腕を掴んで締め上げていたのだ。
(伏竜……? 何で、今更……)
しかし伏竜の目は、今にも獲物を噛み殺さんとする人食い鮫みたいに攻撃的な熱が浮かんでおり、その殺気にオッサンは飛び上がって後退した。けど、オッサンは周囲の視線を気にしたのか、直ぐに伏竜に向けて怒鳴り散らす。
「き、貴様! ワシが誰だかわかっているのか! ワシは青龍門派の……うぼぉ!」
オッサンが喋ってる最中に、まるで雷で打たれたみたいに跳ねると、意識を失った。
そんなオッサンの腕を伏竜が無造作に放すと、相手はカーペットの上にどしゃりと倒れる。部下達が気絶したオッサンに駆け寄って介抱しつつも騒ぎ出した。
「伏哥! 落ち着いてください! 素人相手に霊力を使うなんて!」
「そうですよ! 伏哥の今の行動、老大にドヤされるだけじゃすみませんよ!」
しかし伏竜は部下を無視し、ドスの利いた声で告げた。
「……こいつを落札したなら客だが、そうじゃねぇなら排除対象だ」
しん、と静まり返る場で伏竜は続ける。
「そもそも、俺達は玄武門派みてぇな生粋の商売人じゃねぇ。魔道に堕ちた修仙者の中でも血の気の多い連中揃いの門派だ。その青龍相手に舐めた真似する成金風情が寝言垂れ流したなら、命があるだけ御の字だろうが」
オッサンは直ぐに意識を取り戻したけど、伏竜の殺気に短い悲鳴を上げると、こそこそと会場の隅へと逃げてゆく。
ふふん! ざまぁみろ! オレは何もしてないけど! と思ったけど、どうやってオッサンを気絶させたんだろ?
(伏竜が光速でオッサンの頸動脈をトンッて、したとか? それとも……)
考えてもわからないので、考えるのを止めた。
その後、伏竜にオレは溜まりに溜まった文句を投げつける方に意識をもってかれたからだ。
「遅い! 何してたんだよバカ! オレをこんな目に遭わせておいて、オマエはパーティーで御馳走三昧してたのか! ずるいぞ! この食いしん坊!」
「うるせぇガキだな……。食い意地が張ってんのは手前の方だろうが……」
伏竜は面倒くさそうに溜息をつくと、わあわあ騒ぐオレの口に何かを放り込んだ。
喋っていたオレは口内に入れられた『それ』を思わず咀嚼してしまった。
けど、その瞬間、脳髄が蕩けるような快感に見舞われる。
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そうして、伏竜と別れてから、オレは海の王国に居た時とは比べ物にならないくらい、盛大なパーティーの会場に水槽ごと移動させられた。
そこは白化した珊瑚みたいな色の壁で四方を囲んだ大きな部屋で、何だか薄暗い。
でも天井の灯りは眼窩に突き刺さるようににギラギラと強くて、会場の中央には舞台が迫り出していた。
やかましい歓声が水槽の中に居るオレの耳にまで聞こえてくる。
『これより、ここ四神王島限定、闇オークションを開催いたします!』
それをオークションの商品である人魚のオレは聞いているだけしか出来なかった。
そして目の前では、血と欲望の狂宴が始まる。
(何だ……? 何してるんだ? あれって……)
ステージの上に連れてこられた全裸の女の人達は抵抗を忘れたように成す術もなく、紺のスーツの男達に従って居並ぶ。
そうして競り落とされた女性達は客達によって【調理】されるのだと知った。
客達は女の人を跨らせたり、よくわからない色々な事をさせていたけど、多分あれは姉ちゃんから教えてもらった『好きな人としかしてはダメな事』なのだと思う。
見ていられなくて目を逸らすと、そんなオレが入った水槽をスーツの男達がステージへと運ぼうとする。
「ちょ、や、止めろよ!」
抗議したが、周囲の男達はオレと目も合わせない。
(ど、どうしよう! オレまで、あの女の人達みたいになっちゃうのかな? いや、オレ、人魚だから、焼いて食べられるんじゃ……!)
恐怖で項の毛が逆立つ。
「イヤだ! イヤだって!」
騒ぎ立てていると、唯一、オレと視線が絡み合ったのは、ステージの上の伏竜だった。
伏竜は目を合わせない。
ここに連れてこられるまで伏竜と会わなかったけど、どうやら伏竜はこのオークションの主催者の重要ポジションらしいのは部下達の会話から理解した。
オレが暴れるので首輪も手枷もつけられ、水槽の底に繋がれている。
助けてと何度も訴えても、部下の奴らもオークションを楽しんでる客も、まるで物でも扱うみたいにオレを無情に見ている。
伏竜だけが、何だか複雑な視線を向けているのは、そっと絡んだ視線でわかった。
(伏竜……何なんだよ、アイツ……)
ステージから漏れる光は、伏竜の首に掘られた瑠璃色の鱗のタトゥーを宝石みたいに煌めかせていた。
伏竜も部下のヤツらも何故か首に鱗模様が掘られていたんだけど、それは伏竜が息を飲む度に喉仏が動き、更に艶めかしく蠢く。
ぼうっと見ていたオレは、ハッと我に返る。
こんな絶体絶命な状況なのに、見惚れるくらいに色気を駄々洩れにさせる男は、オレが泣いても喚いても特に何の行動もとろうとしない。
それが何だか腹立たしかった。
こういう時、少しくらい『みんな酷いな』とか思わないもんなのかな?
それとも人間の世界って、こういうのが普通なのか?
でもオレが此処に連れてこられて、初めて会話した人間が伏竜だったから、往生際が悪いけど、助かりたくて必死に呼びかけ続けた。
「おい! 伏竜! 何とかしろよ! こいつら、オマエの手下だろ? オマエと同じ刺青が首にあるし、同じ色の服を着てるし! オレ、陸に来たのは、白月を探しに来ただけで、ニンゲンに食べられる為じゃないんだって!」
文句を言ったけど、伏竜は紫の瞳を細めて、長い黒髪を揺らすようにして顎をしゃくる。
そして低く掠れた声で応えた。
「……だから呼び捨てにすんじゃねぇ。そもそも何で俺が手前の命令をきかなけりゃならねぇんだ」
「は?」
問い返すも、アイツは火がついていない煙草を咥えて、吐き捨てるように告げる。
「せいぜい汚ぇ親父に媚びを売って可愛がってもらえ。運が良けりゃあ、海で野垂れ死ぬより、長生き出来るだろうよ。良かったな、魚仔!(魚の坊や)」
ケンカを売られているのだと理解し、オレは水槽の中で暴れまくる。周囲の男達が慌てて水槽を押さえたが、知るもんか! 思いっきり叫ぶ。
激怒するオレを尻目に、伏竜は配下に命じて水槽を熱気の中心へと運ばせる。
ライトが照らすステージの上は、人間の汚い欲望の詰め合わせの晩餐だった。
オレの姿を見たニンゲン達は熱狂が最高潮に達したように頬を好調させ、それをオレは絶望的な目で見ていた。
(こ、これからオレ、ニンゲンに食べられちゃうんだ……)
ニンゲンは魚も動物も何でもを食べるって聞いたから、きっと直ぐにバラバラにされて、刺身にされたり、焼肉にされちゃったりして……。
そう思うと恐怖で泣きそうになってしまったが、伏竜を見て涙が止まった。
「……」
面白くなさそうな仏頂面で此方を見つめてる冷血漢の姿に、むかっ腹が立ってきた。
(アイツの前でだけは、泣いてたまるか!)
それから会場の照明は明度を増し、昼間みたいに周囲を照らし出した。
『オークションの目玉の観賞タイム』らしい。ふざけんなよ!
オレの水槽の周囲には、色んな人間がグラス片手に群がってきて、値踏みするみたいに無遠慮に見つめて、ぺちゃくちゃ喋りだす。
「ほぅ……! 四神王島には古来より人魚が棲むとされてきたが、これは美しい!」
「人魚って不老なんでしょう? その肉を食べると老いなくなるとか……」
「人工的なキメラかと思ったが、胴体に繋ぎ目も何も無い! これは間違いなく人間の体に魚の尾を持つ、異種族だ! 素晴らしいよ! 是非、解体して調べてみたいものだ!」
「流石は島でも最高の流通経路をもつ玄武門派と、勢力最強と言われる青龍門派の合同オークションだ! 人魚以外もハイクオリティな『商品』が揃っているぞ!」
何を言ってるのかわからないけど、オレにとってロクでもない内容なのは理解した。
客達はオレが助けてほしいと喚く度、愉快そうに笑うのだ。
オレが惨めで無様であればある程、満足だとでも言わんばかりに。
「うぅぅう~!」
呻いて睨むしか出来ないオレの水槽を客の一人、頭部が禿げ上がって腹が出た酔っ払いのオッサンが揺らしだした。
「おいおい? その愛らしい顔が涙で歪むのを見たいのに、泣かないじゃないか~? ほれほれ! 泣け泣け! 今の内に泣け! お前を競り落としたら、もう快楽堕ちした顔しか出来んようになるんだからなぁ~?」
オッサンが乱暴に水槽を揺らし続ける。
「わ、わわ!」
傾く水槽にオレは慌てずにはいられなかった。
人魚は陸に上がってしまうと、足が無いから動けない。
(そもそも陸地の重力は人魚の体にとってシンドイってのに! このオッサン、ぶっとばすぞ!)
しかし、ぶっとばせるだけの力が水中ならともかく、地上では出ない。
されるがままにビビらされるオレの姿に、警備をしていた青龍門派の奴らは顔を見合わせるだけで動こうとしない。
そして警備のヤツらのヒソヒソ声が聞こえてきた。
「……おい、止めろよ。商品に何かあったら老大(ボス)にドヤされるぞ」
「っつっても、このオッサン、島でも随一の富豪だろ? ウチの門派の上客でもあるじゃねぇか」
「別にあの程度なら許容範囲だろ。無駄に広い水槽に入れてやってんだから、カオに傷もつかねぇよ」
こ、こいつらぁあぁあああああ! オレの見張り役なら仕事しろよ! と、歯噛みしていると、オッサンの野太い腕が水槽の中に入ってきた。
「ひっ!」
ナマコみたいに蠢く指に怯えると、オッサンは脂でテカった額を水面に近づけて舌なめずりしながら、吐息を荒くして話しかけてくる。
「フヒヒ! 見れば見るほど、色気のある可愛さじゃないか~! ちょっと触るぐらい、良いだろ? な? ワシの愛人になったら、好きなだけ欲しいものを買ってやるから、ワシのものになれ? な?」
「フガフガフガー!(なるわけないだろ! ぶん殴るぞ! 変態! スケベ親父!)」
怒りすぎて口から泡が噴き出して言葉にならなかったが、あまりにも生理的に無理すぎて暴れようとするも、拘束の所為で動けない。
オッサンの蠢く手がオレの肩に触れようと伸びる……その刹那、オッサンの動きが止まった。
「「え」」
オッサンと声がカブってしまったけど、見上げると伏竜がオッサンの腕を掴んで締め上げていたのだ。
(伏竜……? 何で、今更……)
しかし伏竜の目は、今にも獲物を噛み殺さんとする人食い鮫みたいに攻撃的な熱が浮かんでおり、その殺気にオッサンは飛び上がって後退した。けど、オッサンは周囲の視線を気にしたのか、直ぐに伏竜に向けて怒鳴り散らす。
「き、貴様! ワシが誰だかわかっているのか! ワシは青龍門派の……うぼぉ!」
オッサンが喋ってる最中に、まるで雷で打たれたみたいに跳ねると、意識を失った。
そんなオッサンの腕を伏竜が無造作に放すと、相手はカーペットの上にどしゃりと倒れる。部下達が気絶したオッサンに駆け寄って介抱しつつも騒ぎ出した。
「伏哥! 落ち着いてください! 素人相手に霊力を使うなんて!」
「そうですよ! 伏哥の今の行動、老大にドヤされるだけじゃすみませんよ!」
しかし伏竜は部下を無視し、ドスの利いた声で告げた。
「……こいつを落札したなら客だが、そうじゃねぇなら排除対象だ」
しん、と静まり返る場で伏竜は続ける。
「そもそも、俺達は玄武門派みてぇな生粋の商売人じゃねぇ。魔道に堕ちた修仙者の中でも血の気の多い連中揃いの門派だ。その青龍相手に舐めた真似する成金風情が寝言垂れ流したなら、命があるだけ御の字だろうが」
オッサンは直ぐに意識を取り戻したけど、伏竜の殺気に短い悲鳴を上げると、こそこそと会場の隅へと逃げてゆく。
ふふん! ざまぁみろ! オレは何もしてないけど! と思ったけど、どうやってオッサンを気絶させたんだろ?
(伏竜が光速でオッサンの頸動脈をトンッて、したとか? それとも……)
考えてもわからないので、考えるのを止めた。
その後、伏竜にオレは溜まりに溜まった文句を投げつける方に意識をもってかれたからだ。
「遅い! 何してたんだよバカ! オレをこんな目に遭わせておいて、オマエはパーティーで御馳走三昧してたのか! ずるいぞ! この食いしん坊!」
「うるせぇガキだな……。食い意地が張ってんのは手前の方だろうが……」
伏竜は面倒くさそうに溜息をつくと、わあわあ騒ぐオレの口に何かを放り込んだ。
喋っていたオレは口内に入れられた『それ』を思わず咀嚼してしまった。
けど、その瞬間、脳髄が蕩けるような快感に見舞われる。
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【1・墨星と伏竜】

人魚の歌声を聴くと、恍惚の内に溺れ死ねるという。
ここ四神王島には人魚が棲むという伝説があった。
毎年、何人もの人間が海辺で何者かの歌を聴き、行方不明になる事から生まれた話かもしれない。
実際は人買いの所業や、島の周辺に大量発生している狂暴な鮫やウミヘビの類の所為なのだと思う。
しかし今の自分にとって、そんな事はどうでも良かった。
愛する存在を喪ったまま生きるなら、死んだ方がラクだと、その時は思ったのだ。
この苦しみからの解放は死しか考えられなかった。
愛する彼女の傍に今なら迷わず逝ける。
冷気が腰、胸、そして首筋と這い上がる中、海水を吸った衣服は、この身を海中へと沈めていった。

塩辛い液体が口や鼻から入り込む中、ずっと嗤っていた。
口からは、ごぼごぼと白い泡が海面へと昇る。その泡の中を大きな魚影が横切る。
怪我をしていたから、血の臭いを嗅ぎつけた鮫が来たのだと思い、その貪欲さを少しだけ羨ましいと思う。
今の自分には、他の生物を蹴落としてでも生きたいと思わなかったから。
だが、その影は海の狩人のものではなく、この世のものとは思えない程に美しい生き物だった。
半身が人で、魚の尾をもつ生物が物珍しそうに周囲を旋回しながら、此方を見ている。
(なんだ……?)
興味津々に見つめる瞳は、どんなに清らかな海よりも煌めいている。
透き通るように白く、なめらかな肌。白銀の髪は墨色の海の中で月のようだった。
こんなにも美しい存在がこの世に居たのかと見惚れずにはいられなかった。
ぼんやり思いながら片手を伸ばす。
すると人魚は微笑み、両手を差し伸べ、頭を抱きしめてきた。
胸から伝わる鼓動は確かに生物のもので、傷ついた心身を柔らかな音と体温が包み込む。
いつしか、その体温は瞳から雫となって海中に溶けていた。
涙なんて、とっくに枯れ果てたと思っていたのに、まだ泣けたのかと驚く。
そうして、泣いて泣いて、泣き疲れて眠ってから意識を取り戻した時、夜明けの海の浜辺に居た。
体を起こすと、水平線を薄紫色に染める空の色が広がってゆくのと同時に、暗闇しかなかった胸の内に変化が訪れているのに気づいた。
「……きれいだ……」
彼女を喪ってから、月も太陽すらも鈍く見えた目に、その夜明けの色は心が震える程に美しく見えたのだ。
◆◆◆
「……これがガキを助けて、捕まったバカな人魚……、だと?」
そんな暴言をオレに吐いてきたのは、濃紺色のスーツを着た、長い黒髪の人間だった。
水槽の中からソイツを睨みつけると、相手は片目を細めた。
その片目や表情から感情は伺い知れない。
不思議な事に、その男は片目に黒い皮のベルトみたいなものを巻きつけており、自ら片方の視界を封じていたのだ。
(なんで片目を隠してるんだろ?)
そんな事をする存在は人魚の世界では見た事がなかったので、ついジロジロ見てしまう。男もオレの事を凝視していて、視線が交じり合うのは、何だか気まずい。
すると男の周囲に居た部下らしき男達が片目男に話しかけた。
「伏哥(伏兄さん)、人魚って実在するんですね! しかも男の人魚って、こんなに見目が良いとは……。こりゃあ、オークションで、かつてない値がつきますよ! 俺ら青龍門派チンロンメンパイの財源が、また潤いますね!」
何か難しい会話をしてるけど、片目男はフーゴーっていうのかと思って、水槽から顔を出して呼びかけた。
「おい、フーゴー、オマエ、なんで片目を隠してるんだ? それじゃあ前がよく見えないだろ? ニンゲンって、船とかヒコーキとか作れる癖に、結構バカなんだな~」
あはは、と笑うと、フーゴーの周囲の男達が瞬時に引き攣った顔をした。
何でそんなにビビってるのかと思ったけど、フーゴーは眉間を寄せている。
もしかして傷ついたのかな。見た目の割に繊細なんだなと思いつつ、オレは正直な気持ちを伝えた。
「でも、オマエのその顔のやつ、カッコ良いよな!」
フーゴーが片目を見開いた。
おっ? 褒められて嬉しかったのかと思い、オレは大きな声で続ける。
「オレは良いと思うよ! そういうのスキだな!」
水槽の縁に両手を乗せて、しっぽで水面を叩きながら伝える。
心からそう思ったのだ。
そいつは本当に、綺麗な顔の男だったから。
艶のある黒髪に、翡翠色の瞳は意思が強そうで、それでいて冷水のような清廉さを感じる。唇を開く度に漏れる吐息混じりのかすれた声は色っぽく、きっとこいつと出逢った女の子は皆、恋に落ちちゃうんじゃないかなと思うくらい、雄としての魅力と自信に溢れていた。
そんな奴が片目を隠しているのはミステリアスで、その秘密を知りたくなってしまう事だろう。
まぁ、オレは女の子じゃないし、陸地に来たのは、居なくなった姉ちゃんを捜す為だから、ニンゲンに現うつつを抜かすとか有り得ないんだけど。
けどオレの言葉にフーゴーは沈黙したまま動かない。
「……」
無言で見つめられるので困ってしまった。
(いや、もしかして人魚のオレの魅力に見惚れちゃったかな~? 人魚はニンゲンと違って不老だし、美形揃いだからさ!)
調子にのったが、直ぐに我に返る。
ま、まぁ、オレは一族の中で一番、見た目も歌もポンコツって言われてるけど……。
そんな風に考えていると、ぽつりと聞こえた。
「……伏竜だ」
ん?
片目男を見つめると、そいつは再び繰り返した。
「伏竜だ。伏哥ってのは部下からの呼びかけだ。手前に呼ばれる謂れは無ぇ」
そう教えられたので、オレも答えた。
「ふぅん? ニンゲンって、いっぱい名前があるんだな~? あ、オレは墨星! 星が無い、真っ暗な夜に生まれた希望の子だから墨星って名前なんだって、白月が教えてくれたんだ~! それで、伏竜! 聞きたい事があるんだけどさ!」
白月……つまり、オレの姉ちゃんの名前を口にすると、伏竜が片眉を上げた。
しかし、伏竜の周囲の奴らは先程みたいに凍りついてるし、伏竜は露骨に機嫌が悪そうに、舌打ちしながら告げた。
「他人の名前を呼び捨てにしてんじゃねぇ!」
「別に良いだろ、それくらい! オレの名前も呼び捨てでいいからさ! それよりさ、白月を知らない? 数年前に陸に行くって書き残したきり、音沙汰なくてさ……。オレが世界一、大好きなひとなんだ!」
何よりも姉ちゃんの事が心配で大事だから、そう伝えたのに、伏竜は苛々が増していっているように見えた。
それでも、低い声で問うてくる。
「……その女、手前の何だってんだ」
「何って……。この世で一番大事で、大好きなひとって言っただろ?」
言わせんなよ~こんな事~! シスコンみたいじゃーん! と内心でテレテレしながら、尾びれをバタつかせて伏竜を見たオレは、息が止まりかけた。
「……」
伏竜は、まるで死刑宣告をされた人みたいに、形の良い唇をわななかせ、瞳から光を失って見えたのだ。
「フ、伏竜……?」
名前を呼んだけど、伏竜は疲弊した死にかけの獣にでもなってしまったかのように、ゆるゆるとした動作でオレを見つめた。
そしてその顔には、何だか見覚えがあった。
暗く冷たい冬の海で、無抵抗に沈む少年の面影が脳裏をよぎる。
小さな手を引いて砂浜まで連れて行く最中、冷え切った瞳に熱が灯るのを見た気がする。
あの子は無事に生き延びられただろうか……?
人間は海の中で生きられないから砂浜に置いてきたけど、海に還ろうとするオレをあの子は泣きながら追いかけていた。
溺れるから来ちゃいけないと叫んでも、行かないで、傍に居てって、ずっと……。
(あの子、どうしてるかな……)
だが、オレは首を振った。
(いやいやいや! あの子はまだ子供だろうし! 伏竜、オレより老けてて、でっかいし! それより今は姉ちゃんを捜すのが最優先事項だし! 伏竜なんかに構ってるヒマないし!)
気を取り直すも、オレが姉ちゃんの名前を呼ぶ度に伏竜の機嫌は傾いてゆく。
周囲の部下達が伏竜を止めようとするも、伏竜は長い髪を揺らして背を向けて退室しようとする。
そんな相手にオレは慌てて呼びかけた。
「お、おい! 伏竜!」
しかしアイツは肩越しに振り返ると、病んだ笑みを浮かべた。
「……上等じゃねぇか。クソ餓鬼。金を持て余した汚ぇ親父どもに買い回されてこい」
「は?」
問い返すも、伏竜はオレの方を見ずに告げる。
「汚れきった手前でも、手前の女は引かずに受け入れてくれりゃあいいがな」
何言ってんだオマエ! 性格悪いぞ! と水槽の中で叫ぶも、ドアは無情に閉じられたのだった。
←感想等ございましたら……!
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人魚の歌声を聴くと、恍惚の内に溺れ死ねるという。
ここ四神王島には人魚が棲むという伝説があった。
毎年、何人もの人間が海辺で何者かの歌を聴き、行方不明になる事から生まれた話かもしれない。
実際は人買いの所業や、島の周辺に大量発生している狂暴な鮫やウミヘビの類の所為なのだと思う。
しかし今の自分にとって、そんな事はどうでも良かった。
愛する存在を喪ったまま生きるなら、死んだ方がラクだと、その時は思ったのだ。
この苦しみからの解放は死しか考えられなかった。
愛する彼女の傍に今なら迷わず逝ける。
冷気が腰、胸、そして首筋と這い上がる中、海水を吸った衣服は、この身を海中へと沈めていった。

塩辛い液体が口や鼻から入り込む中、ずっと嗤っていた。
口からは、ごぼごぼと白い泡が海面へと昇る。その泡の中を大きな魚影が横切る。
怪我をしていたから、血の臭いを嗅ぎつけた鮫が来たのだと思い、その貪欲さを少しだけ羨ましいと思う。
今の自分には、他の生物を蹴落としてでも生きたいと思わなかったから。
だが、その影は海の狩人のものではなく、この世のものとは思えない程に美しい生き物だった。
半身が人で、魚の尾をもつ生物が物珍しそうに周囲を旋回しながら、此方を見ている。
(なんだ……?)
興味津々に見つめる瞳は、どんなに清らかな海よりも煌めいている。
透き通るように白く、なめらかな肌。白銀の髪は墨色の海の中で月のようだった。
こんなにも美しい存在がこの世に居たのかと見惚れずにはいられなかった。
ぼんやり思いながら片手を伸ばす。
すると人魚は微笑み、両手を差し伸べ、頭を抱きしめてきた。
胸から伝わる鼓動は確かに生物のもので、傷ついた心身を柔らかな音と体温が包み込む。
いつしか、その体温は瞳から雫となって海中に溶けていた。
涙なんて、とっくに枯れ果てたと思っていたのに、まだ泣けたのかと驚く。
そうして、泣いて泣いて、泣き疲れて眠ってから意識を取り戻した時、夜明けの海の浜辺に居た。
体を起こすと、水平線を薄紫色に染める空の色が広がってゆくのと同時に、暗闇しかなかった胸の内に変化が訪れているのに気づいた。
「……きれいだ……」
彼女を喪ってから、月も太陽すらも鈍く見えた目に、その夜明けの色は心が震える程に美しく見えたのだ。
◆◆◆
「……これがガキを助けて、捕まったバカな人魚……、だと?」
そんな暴言をオレに吐いてきたのは、濃紺色のスーツを着た、長い黒髪の人間だった。
水槽の中からソイツを睨みつけると、相手は片目を細めた。
その片目や表情から感情は伺い知れない。
不思議な事に、その男は片目に黒い皮のベルトみたいなものを巻きつけており、自ら片方の視界を封じていたのだ。
(なんで片目を隠してるんだろ?)
そんな事をする存在は人魚の世界では見た事がなかったので、ついジロジロ見てしまう。男もオレの事を凝視していて、視線が交じり合うのは、何だか気まずい。
すると男の周囲に居た部下らしき男達が片目男に話しかけた。
「伏哥(伏兄さん)、人魚って実在するんですね! しかも男の人魚って、こんなに見目が良いとは……。こりゃあ、オークションで、かつてない値がつきますよ! 俺ら青龍門派チンロンメンパイの財源が、また潤いますね!」
何か難しい会話をしてるけど、片目男はフーゴーっていうのかと思って、水槽から顔を出して呼びかけた。
「おい、フーゴー、オマエ、なんで片目を隠してるんだ? それじゃあ前がよく見えないだろ? ニンゲンって、船とかヒコーキとか作れる癖に、結構バカなんだな~」
あはは、と笑うと、フーゴーの周囲の男達が瞬時に引き攣った顔をした。
何でそんなにビビってるのかと思ったけど、フーゴーは眉間を寄せている。
もしかして傷ついたのかな。見た目の割に繊細なんだなと思いつつ、オレは正直な気持ちを伝えた。
「でも、オマエのその顔のやつ、カッコ良いよな!」
フーゴーが片目を見開いた。
おっ? 褒められて嬉しかったのかと思い、オレは大きな声で続ける。
「オレは良いと思うよ! そういうのスキだな!」
水槽の縁に両手を乗せて、しっぽで水面を叩きながら伝える。
心からそう思ったのだ。
そいつは本当に、綺麗な顔の男だったから。
艶のある黒髪に、翡翠色の瞳は意思が強そうで、それでいて冷水のような清廉さを感じる。唇を開く度に漏れる吐息混じりのかすれた声は色っぽく、きっとこいつと出逢った女の子は皆、恋に落ちちゃうんじゃないかなと思うくらい、雄としての魅力と自信に溢れていた。
そんな奴が片目を隠しているのはミステリアスで、その秘密を知りたくなってしまう事だろう。
まぁ、オレは女の子じゃないし、陸地に来たのは、居なくなった姉ちゃんを捜す為だから、ニンゲンに現うつつを抜かすとか有り得ないんだけど。
けどオレの言葉にフーゴーは沈黙したまま動かない。
「……」
無言で見つめられるので困ってしまった。
(いや、もしかして人魚のオレの魅力に見惚れちゃったかな~? 人魚はニンゲンと違って不老だし、美形揃いだからさ!)
調子にのったが、直ぐに我に返る。
ま、まぁ、オレは一族の中で一番、見た目も歌もポンコツって言われてるけど……。
そんな風に考えていると、ぽつりと聞こえた。
「……伏竜だ」
ん?
片目男を見つめると、そいつは再び繰り返した。
「伏竜だ。伏哥ってのは部下からの呼びかけだ。手前に呼ばれる謂れは無ぇ」
そう教えられたので、オレも答えた。
「ふぅん? ニンゲンって、いっぱい名前があるんだな~? あ、オレは墨星! 星が無い、真っ暗な夜に生まれた希望の子だから墨星って名前なんだって、白月が教えてくれたんだ~! それで、伏竜! 聞きたい事があるんだけどさ!」
白月……つまり、オレの姉ちゃんの名前を口にすると、伏竜が片眉を上げた。
しかし、伏竜の周囲の奴らは先程みたいに凍りついてるし、伏竜は露骨に機嫌が悪そうに、舌打ちしながら告げた。
「他人の名前を呼び捨てにしてんじゃねぇ!」
「別に良いだろ、それくらい! オレの名前も呼び捨てでいいからさ! それよりさ、白月を知らない? 数年前に陸に行くって書き残したきり、音沙汰なくてさ……。オレが世界一、大好きなひとなんだ!」
何よりも姉ちゃんの事が心配で大事だから、そう伝えたのに、伏竜は苛々が増していっているように見えた。
それでも、低い声で問うてくる。
「……その女、手前の何だってんだ」
「何って……。この世で一番大事で、大好きなひとって言っただろ?」
言わせんなよ~こんな事~! シスコンみたいじゃーん! と内心でテレテレしながら、尾びれをバタつかせて伏竜を見たオレは、息が止まりかけた。
「……」
伏竜は、まるで死刑宣告をされた人みたいに、形の良い唇をわななかせ、瞳から光を失って見えたのだ。
「フ、伏竜……?」
名前を呼んだけど、伏竜は疲弊した死にかけの獣にでもなってしまったかのように、ゆるゆるとした動作でオレを見つめた。
そしてその顔には、何だか見覚えがあった。
暗く冷たい冬の海で、無抵抗に沈む少年の面影が脳裏をよぎる。
小さな手を引いて砂浜まで連れて行く最中、冷え切った瞳に熱が灯るのを見た気がする。
あの子は無事に生き延びられただろうか……?
人間は海の中で生きられないから砂浜に置いてきたけど、海に還ろうとするオレをあの子は泣きながら追いかけていた。
溺れるから来ちゃいけないと叫んでも、行かないで、傍に居てって、ずっと……。
(あの子、どうしてるかな……)
だが、オレは首を振った。
(いやいやいや! あの子はまだ子供だろうし! 伏竜、オレより老けてて、でっかいし! それより今は姉ちゃんを捜すのが最優先事項だし! 伏竜なんかに構ってるヒマないし!)
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書籍情報
アルファポリス様で連載していた作品を書籍化していただきました!(涙)
【「お前が死ねば良かったのに」と言われた囮役、
同僚の最強軍人に溺愛されて困ってます。】

↑3月中旬発売予定です!
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薔薇と雄鹿と宝石と (アンダルシュノベルズb) 】

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お仕事は随時募集中です!
(BLや男女の恋愛物、ファンタジー、和風、ディストピアSF等を
別サイトで書いておりました)
robounoisini★gmail.com ←★を@に変えてドウゾ!
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モリモリしてる
噛めば噛む程に、じんわりと滲み出る強烈な甘みと、舌に纏わりつくような濃厚で甘美な風味……!
思わず天国が見えた気がした。蕩けた声で叫ばずにはいられない!
「う、うんまぁ~い! 何これ? 何これ?」
オレが伏竜を見つめると、アイツの手には精巧な硝子細工の皿いっぱいに茶色い塊が山盛り積まれていた。
アレを口に放り込まれたのだと察した。
「それくれ! もっとくれ!」
オレが大喜びしているのを見た伏竜は茶色いのを一つ手に取って告げた。
「月餅だ。これが欲しいか」
「欲しい! もっとくれ! もっとくれ!」
口を開けると、伏竜が放り投げてきた。
月餅は的確にオレの唇に、すっぽりと挟まった。嬉しくて思いっきり噛みしめる。
二個目も美味い!脳みそが蕩けそうなくらいに美味いぃい~!
「モグモグ、ニンゲンの国って、こんなに美味いモノがあるのかぁモグモグ!
いいなあ~! 海の国はモグ、甘い物が無いからなぁ~! モググ!」
「食うか喋るかどっちかにしやがれ。しかも食べかすを水槽に落としやがって……」
伏竜は呆れていたけど、あの鉄面皮な口角が少しだけ上がっている気がした。
まぁ、それはどうでもいいとして、オレを解放してほしいんだけど、今は月餅が美味しいから
仕方ない……仕方ないんだ……と貪っている姿に観客達はドン引きしていた。
「人魚って神秘的な生き物だと思ったのに、そこらへんの池の鯉と同じだな……」
「あんなに美しいのに、意地汚いわ……」
「甘い物を体内で消化しているメカニズムを解剖で調べてみたいな!」
「浅ましいけど、でも顔はやはり可愛い……」
そうして観客が別の『商品』を見に行って、少し人気が無くなった時に伏竜が見張りの男達を裏拳で殴りつけた。
うわっ、痛そう! と月餅を食べながら見ていたオレの目の前で、伏竜は部下達を罵る。
「你真是太无能了! 突っ立ってるだけなら木偶でも出来るが、無駄話しないだけ、木偶の方が有能だろうが!」
伏竜の怒りっぷりに部下は平謝りだった。
「伏哥! 申し訳ありません!」
部下の人は口の端が切れて血が出てるのに謝罪を優先している。
確かに仕事をサボってたのはオレもムカついたけど、別に血が出るまで殴らなくてもいいんじゃないか?
それを見て、オレは理不尽に思えて口を挟んでいた。
「何キレてんだよ、伏竜。オマエだって仕事中にウロチョロどっかに行ってただろ?」
「呼び捨てにすんなっつっただろうが!」
威嚇してきたが、オレは月餅をムシャムシャ食べながら伏竜に恨み言をついでにぶつける。
「仕事中にサボって、部下の教育もほったらかして、月餅とかいう美味しいモノを一人で食べてるなんて、なんて悪いヤツなんだ! 罰として、もっとオレに月餅を持ってこい!」
食い意地が先走って暴れると、水槽が揺れて伏竜に水がかかった。それはもう見事に。
「あっ……、し、しまっ……」
思わず心配してしまう程、伏竜の体を濡らした水はアイツの体にスーツやシャツを張りつけさせ、浮き上がる腹筋や胸筋に会場の女の子達から黄色い悲鳴が上がる。
ぽた……と、伏竜の髪から水滴が落ち、オレは謝ろうとした。
「ご、ごごご、ごめ……」
しかし、言い切る前に伏竜は口から水をベッと吐き捨てると、水槽を蹴ってくる。
「わあ!」
衝撃に悲鳴を上げると、伏竜が髪をかき上げつつ怒鳴った。
「クソガキが! 何しやがる!」
「ガキじゃない! 墨星だって言ってんだろ! あと、水かけてゴメンな!」
「ついでみてぇに謝るんじゃねぇ! そもそも、俺が席を外してたのは菓子を食ってたからじゃない! そもそも俺達、修仙者は五穀断ち中だ!」
シュウセンシャ? ゴコクダチ? さっきも霊力とかワケわかんないこと言ってたし……と考えていると、周囲の空気がヒリついた気がした。
「老大!」
「老大だ! 並べ! 整列しろ!」
騒ぐ声が聞こえる。
オレが顔を上げるのと、伏竜達が敬礼するのは同時だった。
伏竜らが礼を尽くす構えの先に居たのは、上品そうな初老の紳士で、顔に刻まれたシワの一つ一つにすら威厳の深みを感じるような男だ。
(誰だこいつ……?)
オレがボーッと見ていると、紳士は片手を差し出すように伸ばし、伏竜らにラクにするように無言で伝える。
紳士の動作一つで伏竜らは一糸乱れぬ統率を見せていた。どんな魚の群れでもここまでの纏まりは見せない。だから、純粋に凄いと思った。
もしかして、こいつが伏竜らの上司かな?
そのオレの想像は当たっていたらしく、紳士が伏竜に声をかけた。
「竜仔(竜の坊や)、ヤンチャしたようだな」
「……!」
伏竜が体を強張らせた。
けど、老紳士は茶目っ気のある笑みを浮かべ、伏竜の肩を優しく叩く。
「良い良い。お前は普段から私と組織に忠実すぎるあまり、真面目が過ぎる所がある。たまに悪さくらいしてくれんと、
組織を収める身としては心配でならん。あまり老骨に心労をかけんでくれよ」
こいつが『老大』ってヤツか~と見ていると、伏竜は顔を上げ、老大に進言した。
「……老大、私は貴方に返しきれない恩義があります……。だからこそ、貴方には……」
伏竜の瞳には、親を案じる子供みたいな色があった。
しかし老大は伏竜の台詞を手で制す。
「また私に楽隠居をすすめる話か? お前の心配性は私譲りのようだなァ! それよりも、
今宵は宴だ。警備が終わるまで飲み食いは許可出来んが、これが終わった暁には肉でも五穀でも好きに食って……」
言いかけた老大が、伏竜の傍らに置いてあった月餅に表情を変えた。
そしてドスの利いた声へと変わる。
「……伏竜、警備中に五穀断ちを破る等という真似はしておらぬだろうな……?」
その問いかけに伏竜は即座に床に片膝をつき、手を合わせた。
「是的(はい)! 王老大! 勿論です! 我ら魔道に堕ち、
裏社会を生きる身となった修仙者といえど、敬愛申し上げる師の掟を破るなど、以って有り得ぬ事……」
最敬礼でもって応えているらしい伏竜の傍でオレが月餅をモグモグしていると、王老大は何かを察したように首を振った。
「……人魚の餌やりか……。可愛がるのは構わんが、値が下がる真似はするなよ……」
「……是……」
何故か疲れ切ってるように見える老大と伏竜。
そして当のオレ本人の意思に構わず、裏オークションとやらが始まってしまった。
成す術もないオレの目の前で、ライトが明度を落としてゆく。
歓談していた客達は、それで進行を察したのか、押し黙る。
静寂の薄闇の中で明瞭に見えるのは、それぞれの客のテーブルの上に置かれたランプの灯のみだ。
それは闇の海で見上げた灯台の明かりみたいなのに、似て非なるものだった。
この会場に居る人間達が誰かの海旅の安全を願う存在とは真逆で、自己の欲望の為に他の命を踏みにじる事に
罪悪感を抱かないヤツらばかりだからかもしれない。
司会の男がオーバーリアクションで宴を盛り上げようとしているのを聞きながら、オレは、
いよいよ自分が海に還るどころか、姉ちゃんの行方すらわからないまま、人生をぐちゃぐちゃにされようとしている事に気づく。
客の群れからは幾つもの白い札が掲げられ、そこには数字が書かれていた。
「正に人外の美だ! こんなに美しい青年なら是非、欲しい! 人間と具合がどう違うのか試してみたいしな!」
「フン! 人魚はワシのモノだ! 人間の女と魚と、両方と交配させてみて、成功すれば増やして、新たなビジネスになるかもしれんからな!」
「違うわ! 私のよ! そいつの生き胆を食べて不老になるの!」
どいつもこいつも、オレを同じ『傷つく心をもってる命』ではなく、珍しい生物としか見ていなかった。
「……」
押し黙るオレに、水槽の傍に居た警備役の伏竜が視線を客に向けたまま、
誰にも聞こえないくらいの声量で唇の動きを最小限にしながら問いかけてきた。
「人間の醜さ、思い知っただろ」
「……」
伏竜の問いかけに『そんなしょうもない質問するヒマあるなら助けろ』と噛みつく元気もなく、項垂れるオレにアイツは続けた。
「……人魚は本来、人間嫌いなハズだ。なのに、どうして手前は何度も溺れた人間を助けた?
今の事態も、手前が乞食のガキを助けなけりゃ陥らなかった危機のはずだ」
「……」
「おい」
うるさいなと思って顔を上げる。
すると、客席を見ていたはずの伏竜の片目が、いつの間にかオレだけを見ていた。
「……」
無言で見つめる紫の瞳には切実な色が浮かんでいて、伏竜が何をそんなに感情を揺さぶられているのかわからない。
だからオレは、ただ有りのままに答えるだけだった。
「そんなの……人魚とかニンゲンとか関係なく、誰かが苦しんで泣いて助けを求めてたら、
声かけて手を差し伸べるのは当たり前の事だろ?」
「……は?」
意外そうに片眉を上げる伏竜に、オレの方が不思議でならなかった。
誰だって、自分一人じゃどうにもならない状態に陥った時、助けてもらえたなら嬉しいはずだ。
でも、逆に自分がどれだけ一人で悩み苦しんでいる時に、差し伸べられる手が
存在しなかったなら……きっとそれは凄く痛くて、今を生きてる時間すら不安で怖くて辛いんじゃないかと思う。
「オレ、孤児なんだ。両親は、人食い鮫からオレを守って、その時のケガが原因で命を……。でも兄ちゃんや姉ちゃんに助けてもらえて、
それが嬉しかった。だから、オレが大人になった時、どうしようもない状況で泣いてる人がいたら、助けようって、そう思ったんだよ」
兄ちゃんにはニンゲンと関わるのは危ないから止めろって再三、止められていたけど、海に落ちて静かに沈んでく子供と、
その子供を陸で捜し回ってる親の悲痛な姿を見て、オレの両親の姿とカブって、助けずにはいられなかった。
それを伏竜に話すと、アイツは唇を震わせた。
「……なら、誰が溺れていようが、手前は助けるっていうのか」
頷いて見せると、伏竜は片目を伏せた。
それは何かを深く悔いている姿のように見えた。
でも、その感情の色を問う前に、会場から一際大きな歓声が上がる。
そちらを見てみると、さっきオレを触ろうとしたオッサンが札を高らかと掲げていた。
「ワシは人魚に三億ロン出すぞ!」