2025/08/03 Sun 母乳ルート 承太郎が凝視するその先には、不思議な光景が広がっていた。 「こりゃあ……絆創膏、か……?」 花京院は、泣きだしそうになるのをぐっと堪えた表情で、羞恥に身を震わせている。 思った通り、そこには張りのある美しい筋肉からなる、胸が存在していた。しかし、その両方の乳首にあたる場所には、ちょうどバッテンを形作るように、クロスさせた絆創膏が貼り付けられている。よく見れば中央に、折りたたまれた厚いガーゼのようなものを当てているのが分かった。これでは肝心な部分が全く見えない。 そのなんとも奇妙な光景に、承太郎は花京院の顔と胸とを交互に見上げた。 「この中央のガーゼを、絆創膏で取れないように貼り付けているんだ……だって、こうでもしないと……」 花京院はいっそ可哀想なくらい震えた両方の指先で、貼り付けられた絆創膏をゆっくりと剥がしていった。 やがて露わになった花京院の乳首へ、承太郎はぐっと顔を近づけると、瞬きもせずに凝視する。 それぞれの中心には、薄紅色の乳輪と、つんと尖った可愛らしい乳首が鎮座していた。しかし、その様子がどこかおかしい。 ぷっくりとした、小さな粒のような乳首。 その先端から、白い液体がじんわりと滲んでは、肌を滑り落ちていくのだ。 「……花京院、こいつはもしや」 母乳、というやつでは……? いやまさか、そんな。 母乳というのは、出産した女から出るものではないのか。少なくとも、承太郎はそう認識している。 花京院は全身を茹蛸のように真っ赤に染めて、こくんと頷いた。 「体質なんだ……こういう……」 痛々しく震えた声が、ひとりで抱え込んでいたのであろう秘密を漏らしていく。 「最初に異変に気がついたのは、中学生の頃だった。二年生になってすぐだったと思う。その夜、たまたま両親が揃って不在だったんだ」 承太郎はただ静かに、その告白に耳を傾けた。 「テレビでは深夜番組が放送されていた。普段はなかなか遅くまでテレビなんか見れないから、ぼくはそれを見るともなしに眺めていたんだけど……それがその、なかなか際どい内容で」 「女の裸かなにかか?」 いや、と花京院が緩く首をふる。 「そこまでではない、けど……水着だった。なんというか、それでも中学生には刺激が強すぎたみたいで、なんというか」 「もよおした、と」 まあ、誰でも遅かれ早かれ通る道だとは思う。別におかしな話ではないし、承太郎にだって人並みに経験があることだった。 しかしそれと母乳に、なんの関係があるのだろうか。ごく普通の男子中学生であれば、変化が起こるのは胸ではなく、股間の方ではないのか。 先を促すまでもなく、花京院は言いにくそうに喉を詰まらせながら、話の続きをしはじめた。 「違和感を覚えたのは、性器だけじゃなかったんだ……着ていたシャツの胸のあたりが、じんわり濡れて色が変わっていて……どうやらぼくは、性的に興奮すると、母乳がでてしまう体質らしい」 なんという人体の不思議。それを目の当たりにした承太郎は、不思議と感慨深い気持ちになって、腕を組むと長い息をついた。 しかし本人にしてみれば、なんともショッキングな出来事だったろう。 自慰すらまともに知らない、少年だった頃の彼の心境を思うと、なんだかいたたまれない気持ちになる。 以来、花京院はいつなんとき、自分が性的な興奮をおぼえて母乳を出してしまうかと、それに怯えて人前で上半身をさらすことが、できなくなってしまったらしい。 医者にかかることも考えたが、こんな恥ずかしいことを誰にも知られたくはなかったと。 旅の間も、さぞ苦労したことだろう……。 「そういうことだったのか」 「ずっと言えなくてすまない。だけど、自分でも気持ちが悪くて仕方ないんだ。君だってそう思うだろう?」 おずおずと視線を上げて寄越す花京院に、承太郎はぴくりと眉を動かした。それから、わざとらしい溜息を吐いて見せる。 「……やれやれ、見くびってもらっちゃあ困るぜ」 「承太郎……?」 「おれはな花京院。おまえの乳首からもじゃもじゃ毛が生えてようが、乳首の代わりに人面瘡があろうが、そいつが生意気に喋りだそうが、なんだって受け入れるぜ」 至極真面目に言い放った承太郎の顔を、花京院はポカンとした表情で見つめた。 するとその表情がどんどん緩んできて、やがて彼は声をだして笑いだす。 「なんだよ人面瘡って! 嫌すぎるだろそんなの!」 真剣に言ったつもりが、逆に笑いだしてしまった花京院の肩から、さっきよりも力が抜けているのがわかる。抱え込んでいた秘密を吐きだしたことや、それを承太郎が否定しなかったことに、深く安堵しているようだった。 確かに少し驚いたが、このくらいで揺らぐ程度の安い愛情なんか、抱いていない。 むしろくすぐられるものがあって、承太郎のなかで新しい扉が開かれようとしている。 「これ」 承太郎は片手を伸ばすと、緩く曲げた人差し指の背で、濡れた乳首の片方を撫でた。 「んッ……!」 「濡らしてるってことは、期待してるってことでいいのか」 花京院は否定することなく、ただ下唇を噛み締めて睫毛を伏せる。 承太郎は人差し指と親指の腹で濡れた乳首を摘まみ、きゅうっと緩く絞ってみた。ぷつぷつと小さな白い粒が浮きでては、泣いているように零れ落ちる。 「どんな感じだ?」 小刻みに身を震わせる花京院は、泣きそうな目を細めながら、どこか幼い仕草で首を振った。 「わ、から、ない……けど、きゅうって、なる……」 「……堪んねえな」 承太郎は熱い息を漏らしながら、手を伸ばして羽毛枕を掴んだ。それをふたつ重ねてベッドの背もたれに置き、そこに花京院の身体を押し倒していく。そして羽毛枕にゆったりと背を預ける形になった花京院の胸に、両手を這わせてみた。 大きな手によく馴染む、ふっくらとしたふたつの山を掴む。ほぐすように押し上げては緩め、強弱をつけながら揉みしだいていく。中心で尖る乳首からは忙しなく粒が溢れ、花京院の脇腹を伝い落ちていった。 「じょ、たろ……そんな、に、ッ、したら……あッ、ベッド、汚れ、る」 「構わねえよ」 「んっ、んっ、ぁ……なん、か……その手つき、やらし……」 「やらしいことをしてるんだぜ」 花京院は背中を預けている羽毛枕に爪を立てながら、顔を背けて身悶えていた。彼の胸筋を嬲る承太郎も息が上がり、弾力のある肉の感触を存分に楽しむ。 ひっきりなしに母乳を零しながら、胸を揉みしだかれるという感覚は、一体どんなものなのだろうか。花京院は羽毛枕を掻き毟っていた手を承太郎の肩へとやって、今度はそこに爪を立てている。ひく、ひく、と断続的に身を跳ねさせて、伏せた睫毛を震わせる表情からは、これを快楽と認識してもいいのかどうか、戸惑っていることがうかがえた。 その境目に揺れる様子が堪らなく愛しくて、白い涙を流し続ける薄紅の粒が可愛くて、承太郎は辛抱堪らず、そこに顔を埋める。欲望の赴くまま、片方に思い切り吸い付いた。 「アッ、あッ! だッ、やめ……ッ!」 花京院の腰が、かつてないほど大きく跳ねる。それを体重で押さえつけながら、容赦なく揉む動きはそのままに、片方を舌と唇で嬲る。音を立てて吸いつきながら舌で転がしてやると、口のなかいっぱいに甘みが広がっていく。 「やだ、ぁッ、そ、それ、ダメッ、だめだ、承太郎ッ!」 肩から移動した両手が、承太郎の頭部を掻き毟る。その声は悩ましく掠れ、この身体が完全に快感を得ていることを知らせていた。それでも花京院の感情は、まだ置いてきぼりを食らっているのか、彼は泣きながら嫌々と首を振っている。 「じょう、たろ、じょ、ッ、やめ、て、変だ、ぼく、変、だから……ッ」 (マジで、堪らねえ) この、反応。 誰かが触れることはおろか、自分でも目を背けていたであろう場所が、承太郎の手と、唇と、舌でもって苛まれ、泣きながら身をくねらせているのだ。胸の奥底から、いっそ残酷なほどの衝動が突き上げてくるのを感じる。優しくしたいと思う感情の裏側に、ひどく苛めてやりたいという欲求が、ムクムクと頭をもたげた。 承太郎は、放っておかれていたもうひとつにもむしゃぶりついた。溢れ出る母乳ごと大きな舌で舐め上げ、じゅう、といやらしい音を立てて吸いつく。残された方には指で触れてクリクリと転がすようにしながら、時おり強く引っ張ってやる。 花京院は身をしならせ、何度も首を振っては嫌だのダメだのと、悲鳴をあげている。高く上擦ったそれは湿っぽく掠れ、まるで子犬が鳴いているかのようだった。 自分でもどうかと思うほど、そうやって粘着質に責め続けていると、やがてふたつの粒が真っ赤に色づいてきた。それでも夢中で胸にしゃぶりつく承太郎に、花京院は切羽詰まったような声を張り上げる。 「待って、まっ、ぁッ、じょうたろ、ッ! だ、ダメだッ、そこ、あぁッ、へん、にっ、なる……ッ!」 (もしかしたら、このまま) イクのではないか。 このまま続けていたら、乳首だけの刺激で、彼は達してしまうかもしれない。 そういえばまだ下は脱がせていないのだった。ちらりと視線だけを走らせて見れば、花京院の身体の中心は窮屈そうに膨れ上がって、布を押し上げている。この分だと、先走りですっかり下着も濡れているに違いなかった。 「なにか、なにかがッ、きッ、あ、うそ、あ、ぁッ!」 いよいよ予感めいたものを覚えて、承太郎は熟れたように腫れた粒を、摘まんだ指の腹で強く押し潰す。そして、口に含んだものには緩く歯を立ててみた。 すると次の瞬間、花京院の背が羽毛枕から浮き上がるほど反り返り、ビクン、と大きく全身がしなった。 「ヒッ、ぃ……――ッ!!」 口のなかに、勢いよく母乳が注ぎ込まれるのを感じた。もう片方からも、まるで射精しているかのようにびゅうびゅうと液体が噴き出し、承太郎の肩を濡らす。 「!」 もしかしたらと、そう予感してはいたが、承太郎は咄嗟に顔をあげて花京院を見やる。彼は身を強張らせ、喉を反らせならが断続的に跳ね上がっていた。これは、明らかに達しているときの反応だ。 花京院は、未だに緩く母乳を噴き続ける胸を上下させながら荒く息をつき、やがてぐったりと羽毛枕に身を沈めると、自身も信じられない様子で放心状態に陥った。 承太郎はごくりと喉を鳴らしながら口の中のものを飲み込むと、濡れた唇を手の甲で拭う。それから身を乗り出して、熱をもった頬に手を這わせた。焦点を失った瞳が承太郎の視線を捉えると、その表情がくしゃりと歪んだ。 「いいイキっぷりだったぜ」 「うそだ……こんな、の……ッ」 承太郎はあまりのショックに涙が伝う頬に、優しくキスを落とした。 「おれは嬉しい」 「でも、でも……」 「可愛かったぜ」 「ばッ!」 か、と続くはずだった声は、音になることなく花京院の喉の奥に引っ込んだ。彼は何か行動を起こさなければ気が納まらないのか、バツが悪そうに目を泳がせ、羽毛枕から背を離すと承太郎のシャツに手をかける。 「すまない……服もシーツも、こんなに濡らしてしまって」 「気にすんな。そのまま脱がせてくれ」 「ん」 小さく頷いた花京院が、承太郎のウエストのベルトを緩めると、シャツの裾を引きずり出した。そのまま小さな子供を着替えさせるように引き上げる動作に合わせて、承太郎も身を屈めると両腕を伸ばす。ずるりと抜けたシャツは母乳を吸い込んで、僅かに重たくなっていた。 承太郎は花京院の手からシャツを受け取ると、それを適当に床に放り投げる。そうしてる間にも、花京院は居心地悪そうに腰から尻にかけてをもぞりと動かしていた。 「脱ぐか?」 短く問うと、彼はこくりと頷いた。だがすぐに物言いたげに承太郎を見上げる。 「待ってくれ。このままだとベッドが……」 ところどころ湿ってしまった上掛けに触れながら、花京院はしおしおと項垂れてしまった。 相当気にしている様子に小さく笑って、承太郎は花京院の腕を取るとベッドから下りる。フローリングの床に腰をおろし、その身体を引き寄せて自分がかいている胡坐の空間に座らせる。ちょうど横抱きするような体勢で、片膝を立てて背凭れにしてやった。 「これならいいか」 腕のなかで赤くなって俯く花京院は、肩をすくめて縮こまっているせいか、いつもより小さく見える。両胸は揉み過ぎたせいで手形がついて赤くなっているし、頂きにあるふたつの粒も、相変わらず雫を滲ませながら、熟れたチェリーのようにふっくらと腫れていた。 承太郎は花京院の肩を抱いたまま、もう片方の手を膨らんでいる股間に被せた。まだ幾らか硬さの残るその場所を掴んで、ゆるゆると揉み込む。花京院が息を飲み、身を震わせるのと一緒に、乳頭の先端から再び白い粒がじわりと浮き上がった。 「んッ、ぁ……きもち、わるい」 「すげえことになってそうだな、中身」 「……もう、脱ぎたい」 「アイアイサー」 股間に這わせていた手を移動させて、皮のベルトに触れる。器用に外してしまうと、ズボンの前も寛げて下着ごと引き下げる。花京院は承太郎の首に片腕をかけて、腰を浮かせながらそれを助けた。 長い両足からそれらを全て取り払うと、彼はついに生まれたままの姿になった。 その白くしなやかな肉体が腕の中に納まる光景に、承太郎はようやく報われたような気持ちになって、深く感慨の息を漏らす。 そうとは知らず、花京院は下腹や足の付け根にまでぬるりと付着する精液に、むうっと顔を顰めていた。胸から零れだす母乳は彼の割れた腹筋を伝い、やがて髪の毛と同じ色をした薄い下生えに合流する。花京院は人差し指の腹で、母乳と精液で濡れたそこをゆるりと撫でていた。 「……てめー、それ煽ってんのか」 「なッ、ち、違う! べとべとして、気持ちが悪いなと思っていただけで……ッ!」 「このやろう」 肩を抱いていた手を顎にまわし、上向かせると少し乱暴に口づける。花京院は素直に目を閉じ、その熱烈なキスに応えた。差し出し合った舌の先でくるくると互いをくすぐり、角度を変えながら痺れるほどに貪り合う。 承太郎の舌が逃げれば、花京院は夢中になってそれを追ってきた。懸命な様子に愛おしさを膨らませながら、承太郎は濡れそぼって半起ちになっている性器に触れる。 「はぁ、んッ」 吐きだされた甘い吐息を堪能しながら、ゆるゆると扱いた。すると、達して間もないはずの性器が、健気にも力を取り戻していく。 胸からも、乳首からも、淫らに蜜を零しながら震える様に、眩暈がする。花京院は身悶えながらも承太郎の首にまわした腕から力を抜かず、口付けをやめなかった。どこか甘えたように下唇を緩く食まれ、ふと、鼻から笑みがこぼれる。 一体どこまで人を堪らない気持ちにさせれば、気が済むのだろう。 承太郎は性器を扱いていた指をするりと下の方へ滑らせた。精液と、伝い落ちた母乳とで濡れた袋を辿り、さらに奥へと忍ばせる。 ほどなくして辿り着いた窄まりもまた、しとどに濡れそぼっていた。 「んぁッ、あ……ッ!」 つぷ、と音を立てて人差し指を潜り込ませる。ひくつく穴は僅かな抵抗を見せるだけで、待ちわびたように承太郎の指を第二関節まで飲み込んだ。 花京院の肩が跳ね、その拍子に唇が糸を引きながら離れていく。 「なんにもしねえうちから、一本丸のみしちまったぜ」 「う、ぁッ、はずか、し」 「二本目もあっさり入るんじゃあねえか?」 ゆっくりと、傷つけないように慎重に。承太郎は一度引き抜いた人差し指に中指を添え、濡れた穴に押し込んでいった。花京院は喉を反らし、僅かに苦しげな呻きをあげたが、はかはかと上下する胸からは、止め処なく興奮の証が滲みだしている。 「入ったぜ」 「う、ん」 馴染ませるように幾度も抜き差しをして、時おり指を開きながら中を押し広げる。熱く蕩けたようになっている媚肉がその度に絡みつき、淫らな水音を奏でた。 花京院はか細く啼きながら承太郎にぐったりと身を預け、首筋に額を押し付ける。立てられた膝小僧と内腿が、カクカクと痙攣を繰り返していた。 承太郎は彼の肩に添えたままになっていた手を滑らせ、片方の胸に触れる。ぐっと掴んでやると、乳首からはぴゅう、と小さく母乳が噴き出した。感じ入った花京院が、甲高い悲鳴を上げながら背を反らす。 なんていやらしい。思わず喉を鳴らしながら、承太郎は身を屈めると、突き出している胸の片方に食らいつく。僅かな汗の塩気と共に、ほんのりと甘い味が口のなかに広がって、頭がクラクラした。 「はぁ、アッ、そ、こ……ッ、それ……感じる……きもちが、いい……っ」 さっきまで嫌々と首を振りながら戸惑うばかりだったくせに。今やすっかり、ぐずぐずに蕩けきった表情で素直に声をあげている。奥まった場所を解す指の動きはそのままに、夢中で乳首を吸う承太郎の頭を両手で抱きこむと、花京院が小さく笑った。 「じょうたろ、赤ちゃん、みたいだね」 うっとりと呟かれた言葉に、思わず笑ってしまった。そのクツクツという感触がくすぐったかったのか、花京院も笑って腹筋を小刻みに震わせる。 「色気のねえことを言うんじゃねえ」 「だって、ふふっ……可愛いよ、承太郎」 「そっくりそのままお返しするぜ」 「あっ、うわッ!?」 潜り込ませていた指を引き抜き、花京院の腰と腕を掴むと一気に態勢を変えた。冷えた床に寝転び、花京院を上に乗せて見上げる形になる。 「じょ、承太郎、この態勢は……」 「いい眺めだ」 「あッ、ちょ……ひ、広げるな!」 両手を伸ばし、それぞれの尻たぶを掴んで割り開く。そのまま中心付近の筋肉をほぐすようにグニグニと揉んでやった。胸よりも肉付きに乏しい尻だが、そのぶん引き締まっているのがよくわかる。 花京院は態勢を崩しそうになりながらも承太郎の腹に両手をつき、薄い肉を解される感覚に打ち震えた。その瞳はどこかもの欲しそうに揺れながら、承太郎を見つめてくる。 熱に浮かされた視線は、徐々に下降していくと承太郎の膨らみ切った股間に固定されたまま、動かなくなった。 承太郎は花京院の尻から足の付け根のラインをなぞり、太腿に手を這わせる。それぞれをゆるりと撫で上げながら、彼がどうするのかを見守ることにした。 沈黙が合図とばかりに、花京院の両手が承太郎のウエストにかかる。もどかしい手つきで緩められていたベルトを全て外し、徐々に前を寛げていく。震える指先が下着にかかり、引っ掻けるようにしてほんの僅かにずらしただけで、それは勢いよく飛び出した。 「ッ!」 怒張しきった巨茎を見て、花京院が息をのむ。じわりと、胸の飾りから白濁が滴った。 「何度も見ているのに……いつも驚かされるよ。この大きさには」 「おれも驚かされるぜ。てめーのちっこいケツ穴に、こいつが挿っちまうんだからよ」 「そ、そういうこと、言わないで……」 恥じらいを見せながらも、彼はぼうっとした表情で、大きくエラの張った鬼頭に触れる。先走りの滲むそれを緩く掴んで、愛しげに息をつく光景は、普段の優等生然とした姿からは、とても想像できないものだった。 だからこそ、燃える。花京院の秘密を知っているのも、あの涼しげで優雅な立ち振る舞いから余裕を奪い、淫らに堕としてしまえるのも、この自分だけの特権なのだと。 「このままだと出ちまうぜ。おれも、とっくに余裕がねえんだ」 「あ……そうか、ごめん」 夢中になって承太郎の逸物を可愛がっていた手がとまる。 花京院は膝立ちになると、片手は承太郎の太腿につき、もう片方は肉筒を支えるようにして自らの濡れた秘肛にあてがった。承太郎はそんな彼の腰を掴んで支える。 ふたり同時に焦れながら、熱い息を震わせた。 「いいぜ、そのまま腰を落とせ」 「んっく、ぁッ、あ、ぅ……!」 花京院がじわじわと腰を落とすと、先端が熱い壁のなかに飲み込まれる。最も敏感な場所だけに、それだけで達してしまいそうになるのを、どうにかやり過ごした。 そのまま半分ほど腰を沈めたところで、花京院は両手を承太郎の腹について、背中を丸めながら動きを止めてしまう。全身に汗を浮かべ、ひたすら荒い息づかいを繰返すだけで、再び動き出す様子は見られなかった。ただ辛そうに、内腿を痙攣させながら歯を食いしばっているだけだ。 「花京院、まだだぜ」 「わ、かって、る……でも、ッ、ぅ……ッ」 「しょうがねえな」 承太郎は花京院の腰を掴む手に力を込めて、下から幾度か突き上げた。奥まで挿れることはせず、浅い部分だけを何度も何度も抉ってやる。 「アッ、じょう、たろ……ッ、あッ、くぅ、んッ」 潤んだ瞳で嬌声をあげる花京院が、緩く膝を立てる承太郎の腿に両手をついた。背筋が美しく反り返り、ぐんと突き出す形になった胸から、ぽたぽたと音を立てて母乳が零れ落ちてくる。 これ以上ないほどに、最高の眺めだ。今にも奥まで突き入れたい欲求に抗いながら、思わず舌舐めずりをする。 そうやって幾度となく浅い場所だけを苛めぬいているうちに、花京院の嬌声はすすり泣きに変わっていった。最後まで与えられないことに焦れはじめた彼は、前髪とピアスを揺らしながら駄々っ子のように首を振って、大粒の涙を散らす。 「も、いやだッ、これ、足りない……ッ」 「足りねえ? なにが?」 「もっと……奥まで……ッ、くださ、ぃッ……!」 承太郎はその必死の訴えを聞いた瞬間、目の奥をじわりと欲望に光らせて、薄く笑みを浮かべる。正直、辛いのはこちらも同じだった。翻弄しているようでいて、実のところ『待て』をされていたのは、承太郎の方だったのかもしれない。 一定のリズムで浅く穿っていた屹立を、掴んでいた細腰を強く引き寄せるのと同時に、思い切り奥まで叩きつける。 「ッ――!!」 熱く蕩けた中の締め付けに、根元まで包み込まれると、腰から這い上がって来る電流が脳天まで駆け巡ったような気がした。一気に最奥まで突き上げられた花京院は、性器と乳首から白濁を噴きだしながら果てている。フローリングの床にも、承太郎の身体にも、それらが大量に降り注いだ。 ここまでどうにか耐えていた承太郎も、その大きな衝撃には抗えず、最奥で弾けてしまう。奥歯を食いしばりながら低く呻いて、ぶるりと腰を震わせた。 「ッ、ぐ……ぅ」 だけど、これで終われるはずがなかった。絶頂に痙攣する肉壺のなかで、達したばかりの承太郎は力を失わずにいる。だからまだ終わらない。未だ高波にさらわれたままでいる花京院の腰を離さず、そのままの勢いで容赦なく突き上げ、その身を揺さぶる。なかに出したものが、奥の奥までどろどろに溶けだして、乱暴ともいえる抽挿を助けた。 花京院は涙をいっぱいに浮かべた瞳を見開き、引き攣ったような悲鳴をあげる。 「ひぃっんッ! あ、ぁ――ッ、あッ、や、だっ、やめ……まだっ、イッて、るッ、ぁひ、ぃ……ッ!!」 「すげえ……突き上げるたんび、こっから白いのが噴きだしてるぜ」 「あぁッ、そんな、の、言わな、で……ッ!」 承太郎が奥を突く度に、花京院の赤く腫れた乳首からはピュ、ピュ、と白い粒が弾け飛んでいた。まるで押せば出るポンプのようだ。 嫌だ嫌だと言って泣いているくせに、花京院の腰は承太郎の動きに合わせて淫らに跳ねる。快楽を追うことに必死になっている姿は、まさに淫乱の一言に尽きた。瞳はどこか濁り、そこには一欠けらの理性も見当たらない。 こんなにも激しく乱れる男だったろうか。今まで繰り返して来た行為が、本当にただ下半身をぶつけ合うだけの、性欲処理だったのだと思い知らされた。 「もっ、だめ、止まらな、アッ! ぼくの、おっぱい、壊れ、る……ッ」 「とっくに壊れてると思うぜ。これだけの量が、今までよく絆創膏なんぞで抑えられたな」 「だっ、て! だって……ッ、今日は、すごく……感じる……ッ、興奮、してる、から、ぁッ、いつもより、いっぱ、い……っ」 抱え込んでいた秘密と一緒に、理性や本能といったものも解放された、といったところだろうか。こんなことならもっと早く、いっそ強引にでも暴いてしまえばよかった。これまで過ごしてきた時間を口惜しく感じる。 「おれも、感じるぜ……花京院。最高に、興奮する」 承太郎は半身を起すと、断続的に潮を噴くように白濁を放つ乳首にむしゃぶりついた。口の端から次々と零れだすのも構わず、ぐりぐりと角度を変えながら強く吸っては、歯を立てる。どこまで加減できているか分からず、いっそ噛み潰してしまいそうだ。けれどそうすればするほど、中の締め付けは増していく。花京院の淫らな腰つきも、甘やかな嬌声も増すばかりだった。 「あぁッ、や! 承太郎、でるッ! またでる、乳首、かまれ、て……、んんぁ、も、ッ、イッ、く……ッ――!!」 承太郎の頭を搔き抱きながら、花京院は三度目の絶頂を迎える。口のなかいっぱいに濃厚な蜜が溢れ、承太郎は一滴も零すまいとそれを強く吸い上げた。 花京院がビクン、ビクン、と大きく跳ね上がるたび、当然もう片方からも凄まじい勢いで母乳が噴きだしている。ふたりの身体の中心で、花京院の性器からも熱いものが迸っては、肌を滑り床を汚していく。承太郎もまた、二度目の熱い奔流を花京院の最奥に叩きつける。 「は、ッ、ぁ……でて、る……おなか、あつ、ぃ……ッ」 強張りがとけ、ガクンと力を失くした身体が背後に倒れていくのに合わせて、承太郎は抜かないままに彼の身体に覆いかぶさった。 花京院はしばらくの間、死にそうな息を忙しなく吐きだして、ひくひくと痙攣を繰り返していた。二人分の荒い呼吸が、少しずつ夜の青に満たされつつある薄明かりに、深く溶け込む。 やがて薄く開かれた唇から、ごめん、という音の息が漏らされた。 「こんな、に……汚、し……」 「構わねえよ。それより」 「ッ、ふ、ぁ……っ!?」 承太郎はなかに納めたままの肉棒で、花京院の奥深い場所をこつんと突いた。 「まだ、足りねえ」 大きな獣が甘えるように、汗ばんだ額に自分の額を擦りつけた。 承太郎の屹立は花京院のなかで、未だにもの欲しそうに脈打っている。我ながら貪欲で、堪え性のない息子だ。 だけど、足りないものは足りない。ようやく愛しい男の全てを、剥き出しにさせたばかりだ。奪っても奪っても、満ちることはなかった。 未だ母乳を垂れ流す乳首を、指できゅうっと摘み上げる。ぴゅ、と可愛らしい飛沫をあげるそこは、真っ赤に腫れながらも、貪欲に誘い込んでいるように見えた。 「ぁ、じょ、たろ、ぼくもう……ッ」 「好きだ。花京院……愛してる」 「ッ!」 また狡いだなんて言われてしまうだろうか。けれどその愛の告白に身を震わせた花京院は、じわりと瞳に熱を浮かべる。きゅう、と承太郎を受け入れたままの、蕩けた肉路が収縮した。 あまりにも素直すぎる反応を示す身体に笑みを漏らしつつ、承太郎はそんな彼がちょっぴり心配にもなってしまう。 「おまえ……おれ以外の相手にこんなふうになるんじゃねーぞ」 「なッ!? なるわけないだろ! ぼくは……君じゃなきゃ嫌だ」 心外だと眉を吊り上げて見せる花京院に、承太郎はこの上ない満足感を得る。元から他の誰にも渡すつもりはないし、一瞬でも余所見をさせるつもりもないけれど。 「好きなだけくれてやるから」 愛情も、告白も、快楽でさえ。この身の全てを。 「枯れるまで、おれにもくれよ」 そう、枯れるまで。甘い蜜を溢れさせる身体を、もっともっと、暴きたい。 夜はまだ、始まったばかりだから。 * 「まるで介護されている気分だ……」 翌日。 昼時を迎えた陽光が射すリビングで、白いTシャツと黒いジャージの下を着込んだ花京院が、沈んだ声をあげた。 額に冷却シートを張り付けた彼は、ソファにぐったりとした様子で横になっている。 クッションを枕にして、逆サイドの肘掛に乗せられた両足は、爪先しか出ていない。Tシャツでさえ肩の位置がズレ、身体が泳いでいるように見えているのは、それらが承太郎のものだからだ。 「今は同じようなもんだぜ」 言いながら、弁当や飲み物が入った袋を持ってきた承太郎に、花京院の申し訳なさそうな視線が向けられる。思わず鼻から息を洩らし、ひょいと肩を竦めた。 「気にすることはねえ。無茶させたのはおれなんだからよ」 あれから。 深夜遅くまで続いた行為が影響して、花京院は見事に足腰が立たない状態に陥った。ようやくまともに意識を取り戻したのはつい先刻のことで、しかも彼は軽く熱までだしてしまった。 「どうだ、調子は」 袋をテーブルに置くと、承太郎は花京院の顔がよく見えるよう、ソファの傍にどっかりと胡坐をかいた。 「微熱だし、大丈夫だよ。腰も力が入らないだけで、痛みはない」 花京院はごく自然に笑ったつもりなのかもしれないが、承太郎にはその笑みが随分と弱々しいものに見える。だいたい、普段から平熱が低い彼にとって、微熱といえる体温は十分に高いと言えるのだ。 声だって、饒舌に喋ってはいるが、ときどき痛々しく掠れている。 これは完全に承太郎の責任だ。なにせひとりでまともに歩けなくなるほどに、ほぼ一晩じゅう抱き潰してしまったのだから。 すまん、と言って項垂れると、花京院はすぐさま「よしてくれ」と言う。 「すっかり世話をかけてしまって、ぼくの方がよほど面目ない気分だよ」 そう言われても、承太郎にとっては全てが当然の行いだった。 目を覚ましたとき、腕のなかの花京院は熱い身体をぐったりとさせ、呼吸を荒げていた。ほとんど意識がない状態で、呼びかけても反応がない。 珍しく慌てた承太郎は、スタープラチナまで駆使して彼の身体を清め、適当に自分の鞄から取り出したシャツとジャージを着せた。そして、完備してあった救急箱から取り出した体温計で熱を測ると……花京院は案の定、発熱していた。 それから承太郎は、庭の倉庫にしまわれていた自転車を引っ張り出すと、全速力で飛ばして山を下りた。駅近くのコンビニで、弁当とサラダ、スポーツドリンク、さらに冷却シートを買って、戻ってきた。 その頃には花京院はどうにか意識を取り戻していて、昨夜の名残が残るベッドからこのリビングに移動させ、今に至るというわけである。 正直、いま思いだしても最高の夜ではあったが、流石にこれほどまでに負担をかけてしまうとは、思っていなかった。 いっそ彼の口から『二度としない』なんて宣言されても、なんらおかしくはない状態だ。 けれど花京院は怒った様子もなく、しょげている承太郎に笑いかける。 「一晩中するなんて……初めてのことだったろう?」 「……だな」 「その……だから、ちょっぴり身体が驚いてしまっただけなのさ。ぼくは……いい夜だったと、思う」 もとはと言えば無理強いから始まった行為だっただけに、彼がそんなふうに言うとは思ってもみなかった。その意外さに目を瞬かせる承太郎に、花京院はもとから赤い頬をより色づかせながら、恥ずかしそうに目を泳がせる。 「ぼくだって本当は……ちゃんと裸で君と抱き合いたかったんだ。だけどどうしても……言いだせなくて」 「花京院……」 「だからよかったんだ。嬉しかった。このくだらないコンプレックスごと、ぼくを愛してくれて……ありがとう」 そう言って、花京院は困り眉で微笑んだ。胸の奥底から、じんとした熱が染み渡る。どうしようもない愛しさが、そのまま溢れて止まらなくなりそうだった。 「花京院」 承太郎はその名を呼ぶと、彼の腹に置かれていた左手をとった。睫毛を伏せて、その薬指に優しく口付けると、赤い顔を見やる。 「おれも。ありがとうよ、花京院」 全てを見せてくれて。こんな、どうしようもなく我儘な男に、委ねてくれて。 丸く見開かれていたアメジストを、すうっと細めて微笑んだ花京院が、うん、と小さく頷いた。 しばらくのあいだ、ふたりはそうやって見つめ合う。けれどそのうち気恥ずかしくなってきて、どちらからともなく噴き出してしまった。 「なんだか照れ臭いな、こういうの」 「まったくだ」 「食べよう、ご飯。お腹が空いた」 照れ隠しにそう言って、花京院は横たえていた身を起こそうとした。腰に負担をかけさせまいと、咄嗟に膝立ちになった承太郎がそれを支える。向き合って、目と目が合ったふたりは、また口を閉ざしてしまった。 だけど、すぐに引き寄せられるように顔を近づけ、唇を重ねる。 いつもとは逆で、下からキスを受け止める形は、少し不思議な感覚だった。 唇はすぐに離れた。至近距離で見つめ合ったまま、照れ臭いのに笑いだすこともできないでいると、承太郎は自然と花京院の名を呼んでいた。 「花京院……す」 好きだ、と言うつもりだったのに。 花京院の人差し指が、それを遮るように肉厚な唇に押し当てられたせいで、何も言えなくなってしまう。 「嬉しいけど……あまりぼくを、贅沢に慣れさせないでくれ」 承太郎の愛の言葉は、すぐに花京院の心と身体をどろどろに蕩かしてしまうから。 それほどまでに、承太郎は花京院を惚れさせている、ということだ。 「マジで、チョロすぎだぜ」 これには流石の承太郎も、顔を赤らめてしまう。 「なんとでも言ってくれ。ぼくはもう、諦めてしまったよ」 まるで憎まれ口を叩いているような言い方に、承太郎は笑いながらもう一度、その唇を塞いでやった。 陥没編も読んでみる→ ←戻る ・ Wavebox👏
承太郎が凝視するその先には、不思議な光景が広がっていた。
「こりゃあ……絆創膏、か……?」
花京院は、泣きだしそうになるのをぐっと堪えた表情で、羞恥に身を震わせている。
思った通り、そこには張りのある美しい筋肉からなる、胸が存在していた。しかし、その両方の乳首にあたる場所には、ちょうどバッテンを形作るように、クロスさせた絆創膏が貼り付けられている。よく見れば中央に、折りたたまれた厚いガーゼのようなものを当てているのが分かった。これでは肝心な部分が全く見えない。
そのなんとも奇妙な光景に、承太郎は花京院の顔と胸とを交互に見上げた。
「この中央のガーゼを、絆創膏で取れないように貼り付けているんだ……だって、こうでもしないと……」
花京院はいっそ可哀想なくらい震えた両方の指先で、貼り付けられた絆創膏をゆっくりと剥がしていった。
やがて露わになった花京院の乳首へ、承太郎はぐっと顔を近づけると、瞬きもせずに凝視する。
それぞれの中心には、薄紅色の乳輪と、つんと尖った可愛らしい乳首が鎮座していた。しかし、その様子がどこかおかしい。
ぷっくりとした、小さな粒のような乳首。
その先端から、白い液体がじんわりと滲んでは、肌を滑り落ちていくのだ。
「……花京院、こいつはもしや」
母乳、というやつでは……?
いやまさか、そんな。
母乳というのは、出産した女から出るものではないのか。少なくとも、承太郎はそう認識している。
花京院は全身を茹蛸のように真っ赤に染めて、こくんと頷いた。
「体質なんだ……こういう……」
痛々しく震えた声が、ひとりで抱え込んでいたのであろう秘密を漏らしていく。
「最初に異変に気がついたのは、中学生の頃だった。二年生になってすぐだったと思う。その夜、たまたま両親が揃って不在だったんだ」
承太郎はただ静かに、その告白に耳を傾けた。
「テレビでは深夜番組が放送されていた。普段はなかなか遅くまでテレビなんか見れないから、ぼくはそれを見るともなしに眺めていたんだけど……それがその、なかなか際どい内容で」
「女の裸かなにかか?」
いや、と花京院が緩く首をふる。
「そこまでではない、けど……水着だった。なんというか、それでも中学生には刺激が強すぎたみたいで、なんというか」
「もよおした、と」
まあ、誰でも遅かれ早かれ通る道だとは思う。別におかしな話ではないし、承太郎にだって人並みに経験があることだった。
しかしそれと母乳に、なんの関係があるのだろうか。ごく普通の男子中学生であれば、変化が起こるのは胸ではなく、股間の方ではないのか。
先を促すまでもなく、花京院は言いにくそうに喉を詰まらせながら、話の続きをしはじめた。
「違和感を覚えたのは、性器だけじゃなかったんだ……着ていたシャツの胸のあたりが、じんわり濡れて色が変わっていて……どうやらぼくは、性的に興奮すると、母乳がでてしまう体質らしい」
なんという人体の不思議。それを目の当たりにした承太郎は、不思議と感慨深い気持ちになって、腕を組むと長い息をついた。
しかし本人にしてみれば、なんともショッキングな出来事だったろう。
自慰すらまともに知らない、少年だった頃の彼の心境を思うと、なんだかいたたまれない気持ちになる。
以来、花京院はいつなんとき、自分が性的な興奮をおぼえて母乳を出してしまうかと、それに怯えて人前で上半身をさらすことが、できなくなってしまったらしい。
医者にかかることも考えたが、こんな恥ずかしいことを誰にも知られたくはなかったと。
旅の間も、さぞ苦労したことだろう……。
「そういうことだったのか」
「ずっと言えなくてすまない。だけど、自分でも気持ちが悪くて仕方ないんだ。君だってそう思うだろう?」
おずおずと視線を上げて寄越す花京院に、承太郎はぴくりと眉を動かした。それから、わざとらしい溜息を吐いて見せる。
「……やれやれ、見くびってもらっちゃあ困るぜ」
「承太郎……?」
「おれはな花京院。おまえの乳首からもじゃもじゃ毛が生えてようが、乳首の代わりに人面瘡があろうが、そいつが生意気に喋りだそうが、なんだって受け入れるぜ」
至極真面目に言い放った承太郎の顔を、花京院はポカンとした表情で見つめた。
するとその表情がどんどん緩んできて、やがて彼は声をだして笑いだす。
「なんだよ人面瘡って! 嫌すぎるだろそんなの!」
真剣に言ったつもりが、逆に笑いだしてしまった花京院の肩から、さっきよりも力が抜けているのがわかる。抱え込んでいた秘密を吐きだしたことや、それを承太郎が否定しなかったことに、深く安堵しているようだった。
確かに少し驚いたが、このくらいで揺らぐ程度の安い愛情なんか、抱いていない。
むしろくすぐられるものがあって、承太郎のなかで新しい扉が開かれようとしている。
「これ」
承太郎は片手を伸ばすと、緩く曲げた人差し指の背で、濡れた乳首の片方を撫でた。
「んッ……!」
「濡らしてるってことは、期待してるってことでいいのか」
花京院は否定することなく、ただ下唇を噛み締めて睫毛を伏せる。
承太郎は人差し指と親指の腹で濡れた乳首を摘まみ、きゅうっと緩く絞ってみた。ぷつぷつと小さな白い粒が浮きでては、泣いているように零れ落ちる。
「どんな感じだ?」
小刻みに身を震わせる花京院は、泣きそうな目を細めながら、どこか幼い仕草で首を振った。
「わ、から、ない……けど、きゅうって、なる……」
「……堪んねえな」
承太郎は熱い息を漏らしながら、手を伸ばして羽毛枕を掴んだ。それをふたつ重ねてベッドの背もたれに置き、そこに花京院の身体を押し倒していく。そして羽毛枕にゆったりと背を預ける形になった花京院の胸に、両手を這わせてみた。
大きな手によく馴染む、ふっくらとしたふたつの山を掴む。ほぐすように押し上げては緩め、強弱をつけながら揉みしだいていく。中心で尖る乳首からは忙しなく粒が溢れ、花京院の脇腹を伝い落ちていった。
「じょ、たろ……そんな、に、ッ、したら……あッ、ベッド、汚れ、る」
「構わねえよ」
「んっ、んっ、ぁ……なん、か……その手つき、やらし……」
「やらしいことをしてるんだぜ」
花京院は背中を預けている羽毛枕に爪を立てながら、顔を背けて身悶えていた。彼の胸筋を嬲る承太郎も息が上がり、弾力のある肉の感触を存分に楽しむ。
ひっきりなしに母乳を零しながら、胸を揉みしだかれるという感覚は、一体どんなものなのだろうか。花京院は羽毛枕を掻き毟っていた手を承太郎の肩へとやって、今度はそこに爪を立てている。ひく、ひく、と断続的に身を跳ねさせて、伏せた睫毛を震わせる表情からは、これを快楽と認識してもいいのかどうか、戸惑っていることがうかがえた。
その境目に揺れる様子が堪らなく愛しくて、白い涙を流し続ける薄紅の粒が可愛くて、承太郎は辛抱堪らず、そこに顔を埋める。欲望の赴くまま、片方に思い切り吸い付いた。
「アッ、あッ! だッ、やめ……ッ!」
花京院の腰が、かつてないほど大きく跳ねる。それを体重で押さえつけながら、容赦なく揉む動きはそのままに、片方を舌と唇で嬲る。音を立てて吸いつきながら舌で転がしてやると、口のなかいっぱいに甘みが広がっていく。
「やだ、ぁッ、そ、それ、ダメッ、だめだ、承太郎ッ!」
肩から移動した両手が、承太郎の頭部を掻き毟る。その声は悩ましく掠れ、この身体が完全に快感を得ていることを知らせていた。それでも花京院の感情は、まだ置いてきぼりを食らっているのか、彼は泣きながら嫌々と首を振っている。
「じょう、たろ、じょ、ッ、やめ、て、変だ、ぼく、変、だから……ッ」
(マジで、堪らねえ)
この、反応。
誰かが触れることはおろか、自分でも目を背けていたであろう場所が、承太郎の手と、唇と、舌でもって苛まれ、泣きながら身をくねらせているのだ。胸の奥底から、いっそ残酷なほどの衝動が突き上げてくるのを感じる。優しくしたいと思う感情の裏側に、ひどく苛めてやりたいという欲求が、ムクムクと頭をもたげた。
承太郎は、放っておかれていたもうひとつにもむしゃぶりついた。溢れ出る母乳ごと大きな舌で舐め上げ、じゅう、といやらしい音を立てて吸いつく。残された方には指で触れてクリクリと転がすようにしながら、時おり強く引っ張ってやる。
花京院は身をしならせ、何度も首を振っては嫌だのダメだのと、悲鳴をあげている。高く上擦ったそれは湿っぽく掠れ、まるで子犬が鳴いているかのようだった。
自分でもどうかと思うほど、そうやって粘着質に責め続けていると、やがてふたつの粒が真っ赤に色づいてきた。それでも夢中で胸にしゃぶりつく承太郎に、花京院は切羽詰まったような声を張り上げる。
「待って、まっ、ぁッ、じょうたろ、ッ! だ、ダメだッ、そこ、あぁッ、へん、にっ、なる……ッ!」
(もしかしたら、このまま)
イクのではないか。
このまま続けていたら、乳首だけの刺激で、彼は達してしまうかもしれない。
そういえばまだ下は脱がせていないのだった。ちらりと視線だけを走らせて見れば、花京院の身体の中心は窮屈そうに膨れ上がって、布を押し上げている。この分だと、先走りですっかり下着も濡れているに違いなかった。
「なにか、なにかがッ、きッ、あ、うそ、あ、ぁッ!」
いよいよ予感めいたものを覚えて、承太郎は熟れたように腫れた粒を、摘まんだ指の腹で強く押し潰す。そして、口に含んだものには緩く歯を立ててみた。
すると次の瞬間、花京院の背が羽毛枕から浮き上がるほど反り返り、ビクン、と大きく全身がしなった。
「ヒッ、ぃ……――ッ!!」
口のなかに、勢いよく母乳が注ぎ込まれるのを感じた。もう片方からも、まるで射精しているかのようにびゅうびゅうと液体が噴き出し、承太郎の肩を濡らす。
「!」
もしかしたらと、そう予感してはいたが、承太郎は咄嗟に顔をあげて花京院を見やる。彼は身を強張らせ、喉を反らせならが断続的に跳ね上がっていた。これは、明らかに達しているときの反応だ。
花京院は、未だに緩く母乳を噴き続ける胸を上下させながら荒く息をつき、やがてぐったりと羽毛枕に身を沈めると、自身も信じられない様子で放心状態に陥った。
承太郎はごくりと喉を鳴らしながら口の中のものを飲み込むと、濡れた唇を手の甲で拭う。それから身を乗り出して、熱をもった頬に手を這わせた。焦点を失った瞳が承太郎の視線を捉えると、その表情がくしゃりと歪んだ。
「いいイキっぷりだったぜ」
「うそだ……こんな、の……ッ」
承太郎はあまりのショックに涙が伝う頬に、優しくキスを落とした。
「おれは嬉しい」
「でも、でも……」
「可愛かったぜ」
「ばッ!」
か、と続くはずだった声は、音になることなく花京院の喉の奥に引っ込んだ。彼は何か行動を起こさなければ気が納まらないのか、バツが悪そうに目を泳がせ、羽毛枕から背を離すと承太郎のシャツに手をかける。
「すまない……服もシーツも、こんなに濡らしてしまって」
「気にすんな。そのまま脱がせてくれ」
「ん」
小さく頷いた花京院が、承太郎のウエストのベルトを緩めると、シャツの裾を引きずり出した。そのまま小さな子供を着替えさせるように引き上げる動作に合わせて、承太郎も身を屈めると両腕を伸ばす。ずるりと抜けたシャツは母乳を吸い込んで、僅かに重たくなっていた。
承太郎は花京院の手からシャツを受け取ると、それを適当に床に放り投げる。そうしてる間にも、花京院は居心地悪そうに腰から尻にかけてをもぞりと動かしていた。
「脱ぐか?」
短く問うと、彼はこくりと頷いた。だがすぐに物言いたげに承太郎を見上げる。
「待ってくれ。このままだとベッドが……」
ところどころ湿ってしまった上掛けに触れながら、花京院はしおしおと項垂れてしまった。
相当気にしている様子に小さく笑って、承太郎は花京院の腕を取るとベッドから下りる。フローリングの床に腰をおろし、その身体を引き寄せて自分がかいている胡坐の空間に座らせる。ちょうど横抱きするような体勢で、片膝を立てて背凭れにしてやった。
「これならいいか」
腕のなかで赤くなって俯く花京院は、肩をすくめて縮こまっているせいか、いつもより小さく見える。両胸は揉み過ぎたせいで手形がついて赤くなっているし、頂きにあるふたつの粒も、相変わらず雫を滲ませながら、熟れたチェリーのようにふっくらと腫れていた。
承太郎は花京院の肩を抱いたまま、もう片方の手を膨らんでいる股間に被せた。まだ幾らか硬さの残るその場所を掴んで、ゆるゆると揉み込む。花京院が息を飲み、身を震わせるのと一緒に、乳頭の先端から再び白い粒がじわりと浮き上がった。
「んッ、ぁ……きもち、わるい」
「すげえことになってそうだな、中身」
「……もう、脱ぎたい」
「アイアイサー」
股間に這わせていた手を移動させて、皮のベルトに触れる。器用に外してしまうと、ズボンの前も寛げて下着ごと引き下げる。花京院は承太郎の首に片腕をかけて、腰を浮かせながらそれを助けた。
長い両足からそれらを全て取り払うと、彼はついに生まれたままの姿になった。
その白くしなやかな肉体が腕の中に納まる光景に、承太郎はようやく報われたような気持ちになって、深く感慨の息を漏らす。
そうとは知らず、花京院は下腹や足の付け根にまでぬるりと付着する精液に、むうっと顔を顰めていた。胸から零れだす母乳は彼の割れた腹筋を伝い、やがて髪の毛と同じ色をした薄い下生えに合流する。花京院は人差し指の腹で、母乳と精液で濡れたそこをゆるりと撫でていた。
「……てめー、それ煽ってんのか」
「なッ、ち、違う! べとべとして、気持ちが悪いなと思っていただけで……ッ!」
「このやろう」
肩を抱いていた手を顎にまわし、上向かせると少し乱暴に口づける。花京院は素直に目を閉じ、その熱烈なキスに応えた。差し出し合った舌の先でくるくると互いをくすぐり、角度を変えながら痺れるほどに貪り合う。
承太郎の舌が逃げれば、花京院は夢中になってそれを追ってきた。懸命な様子に愛おしさを膨らませながら、承太郎は濡れそぼって半起ちになっている性器に触れる。
「はぁ、んッ」
吐きだされた甘い吐息を堪能しながら、ゆるゆると扱いた。すると、達して間もないはずの性器が、健気にも力を取り戻していく。
胸からも、乳首からも、淫らに蜜を零しながら震える様に、眩暈がする。花京院は身悶えながらも承太郎の首にまわした腕から力を抜かず、口付けをやめなかった。どこか甘えたように下唇を緩く食まれ、ふと、鼻から笑みがこぼれる。
一体どこまで人を堪らない気持ちにさせれば、気が済むのだろう。
承太郎は性器を扱いていた指をするりと下の方へ滑らせた。精液と、伝い落ちた母乳とで濡れた袋を辿り、さらに奥へと忍ばせる。
ほどなくして辿り着いた窄まりもまた、しとどに濡れそぼっていた。
「んぁッ、あ……ッ!」
つぷ、と音を立てて人差し指を潜り込ませる。ひくつく穴は僅かな抵抗を見せるだけで、待ちわびたように承太郎の指を第二関節まで飲み込んだ。
花京院の肩が跳ね、その拍子に唇が糸を引きながら離れていく。
「なんにもしねえうちから、一本丸のみしちまったぜ」
「う、ぁッ、はずか、し」
「二本目もあっさり入るんじゃあねえか?」
ゆっくりと、傷つけないように慎重に。承太郎は一度引き抜いた人差し指に中指を添え、濡れた穴に押し込んでいった。花京院は喉を反らし、僅かに苦しげな呻きをあげたが、はかはかと上下する胸からは、止め処なく興奮の証が滲みだしている。
「入ったぜ」
「う、ん」
馴染ませるように幾度も抜き差しをして、時おり指を開きながら中を押し広げる。熱く蕩けたようになっている媚肉がその度に絡みつき、淫らな水音を奏でた。
花京院はか細く啼きながら承太郎にぐったりと身を預け、首筋に額を押し付ける。立てられた膝小僧と内腿が、カクカクと痙攣を繰り返していた。
承太郎は彼の肩に添えたままになっていた手を滑らせ、片方の胸に触れる。ぐっと掴んでやると、乳首からはぴゅう、と小さく母乳が噴き出した。感じ入った花京院が、甲高い悲鳴を上げながら背を反らす。
なんていやらしい。思わず喉を鳴らしながら、承太郎は身を屈めると、突き出している胸の片方に食らいつく。僅かな汗の塩気と共に、ほんのりと甘い味が口のなかに広がって、頭がクラクラした。
「はぁ、アッ、そ、こ……ッ、それ……感じる……きもちが、いい……っ」
さっきまで嫌々と首を振りながら戸惑うばかりだったくせに。今やすっかり、ぐずぐずに蕩けきった表情で素直に声をあげている。奥まった場所を解す指の動きはそのままに、夢中で乳首を吸う承太郎の頭を両手で抱きこむと、花京院が小さく笑った。
「じょうたろ、赤ちゃん、みたいだね」
うっとりと呟かれた言葉に、思わず笑ってしまった。そのクツクツという感触がくすぐったかったのか、花京院も笑って腹筋を小刻みに震わせる。
「色気のねえことを言うんじゃねえ」
「だって、ふふっ……可愛いよ、承太郎」
「そっくりそのままお返しするぜ」
「あっ、うわッ!?」
潜り込ませていた指を引き抜き、花京院の腰と腕を掴むと一気に態勢を変えた。冷えた床に寝転び、花京院を上に乗せて見上げる形になる。
「じょ、承太郎、この態勢は……」
「いい眺めだ」
「あッ、ちょ……ひ、広げるな!」
両手を伸ばし、それぞれの尻たぶを掴んで割り開く。そのまま中心付近の筋肉をほぐすようにグニグニと揉んでやった。胸よりも肉付きに乏しい尻だが、そのぶん引き締まっているのがよくわかる。
花京院は態勢を崩しそうになりながらも承太郎の腹に両手をつき、薄い肉を解される感覚に打ち震えた。その瞳はどこかもの欲しそうに揺れながら、承太郎を見つめてくる。
熱に浮かされた視線は、徐々に下降していくと承太郎の膨らみ切った股間に固定されたまま、動かなくなった。
承太郎は花京院の尻から足の付け根のラインをなぞり、太腿に手を這わせる。それぞれをゆるりと撫で上げながら、彼がどうするのかを見守ることにした。
沈黙が合図とばかりに、花京院の両手が承太郎のウエストにかかる。もどかしい手つきで緩められていたベルトを全て外し、徐々に前を寛げていく。震える指先が下着にかかり、引っ掻けるようにしてほんの僅かにずらしただけで、それは勢いよく飛び出した。
「ッ!」
怒張しきった巨茎を見て、花京院が息をのむ。じわりと、胸の飾りから白濁が滴った。
「何度も見ているのに……いつも驚かされるよ。この大きさには」
「おれも驚かされるぜ。てめーのちっこいケツ穴に、こいつが挿っちまうんだからよ」
「そ、そういうこと、言わないで……」
恥じらいを見せながらも、彼はぼうっとした表情で、大きくエラの張った鬼頭に触れる。先走りの滲むそれを緩く掴んで、愛しげに息をつく光景は、普段の優等生然とした姿からは、とても想像できないものだった。
だからこそ、燃える。花京院の秘密を知っているのも、あの涼しげで優雅な立ち振る舞いから余裕を奪い、淫らに堕としてしまえるのも、この自分だけの特権なのだと。
「このままだと出ちまうぜ。おれも、とっくに余裕がねえんだ」
「あ……そうか、ごめん」
夢中になって承太郎の逸物を可愛がっていた手がとまる。
花京院は膝立ちになると、片手は承太郎の太腿につき、もう片方は肉筒を支えるようにして自らの濡れた秘肛にあてがった。承太郎はそんな彼の腰を掴んで支える。
ふたり同時に焦れながら、熱い息を震わせた。
「いいぜ、そのまま腰を落とせ」
「んっく、ぁッ、あ、ぅ……!」
花京院がじわじわと腰を落とすと、先端が熱い壁のなかに飲み込まれる。最も敏感な場所だけに、それだけで達してしまいそうになるのを、どうにかやり過ごした。
そのまま半分ほど腰を沈めたところで、花京院は両手を承太郎の腹について、背中を丸めながら動きを止めてしまう。全身に汗を浮かべ、ひたすら荒い息づかいを繰返すだけで、再び動き出す様子は見られなかった。ただ辛そうに、内腿を痙攣させながら歯を食いしばっているだけだ。
「花京院、まだだぜ」
「わ、かって、る……でも、ッ、ぅ……ッ」
「しょうがねえな」
承太郎は花京院の腰を掴む手に力を込めて、下から幾度か突き上げた。奥まで挿れることはせず、浅い部分だけを何度も何度も抉ってやる。
「アッ、じょう、たろ……ッ、あッ、くぅ、んッ」
潤んだ瞳で嬌声をあげる花京院が、緩く膝を立てる承太郎の腿に両手をついた。背筋が美しく反り返り、ぐんと突き出す形になった胸から、ぽたぽたと音を立てて母乳が零れ落ちてくる。
これ以上ないほどに、最高の眺めだ。今にも奥まで突き入れたい欲求に抗いながら、思わず舌舐めずりをする。
そうやって幾度となく浅い場所だけを苛めぬいているうちに、花京院の嬌声はすすり泣きに変わっていった。最後まで与えられないことに焦れはじめた彼は、前髪とピアスを揺らしながら駄々っ子のように首を振って、大粒の涙を散らす。
「も、いやだッ、これ、足りない……ッ」
「足りねえ? なにが?」
「もっと……奥まで……ッ、くださ、ぃッ……!」
承太郎はその必死の訴えを聞いた瞬間、目の奥をじわりと欲望に光らせて、薄く笑みを浮かべる。正直、辛いのはこちらも同じだった。翻弄しているようでいて、実のところ『待て』をされていたのは、承太郎の方だったのかもしれない。
一定のリズムで浅く穿っていた屹立を、掴んでいた細腰を強く引き寄せるのと同時に、思い切り奥まで叩きつける。
「ッ――!!」
熱く蕩けた中の締め付けに、根元まで包み込まれると、腰から這い上がって来る電流が脳天まで駆け巡ったような気がした。一気に最奥まで突き上げられた花京院は、性器と乳首から白濁を噴きだしながら果てている。フローリングの床にも、承太郎の身体にも、それらが大量に降り注いだ。
ここまでどうにか耐えていた承太郎も、その大きな衝撃には抗えず、最奥で弾けてしまう。奥歯を食いしばりながら低く呻いて、ぶるりと腰を震わせた。
「ッ、ぐ……ぅ」
だけど、これで終われるはずがなかった。絶頂に痙攣する肉壺のなかで、達したばかりの承太郎は力を失わずにいる。だからまだ終わらない。未だ高波にさらわれたままでいる花京院の腰を離さず、そのままの勢いで容赦なく突き上げ、その身を揺さぶる。なかに出したものが、奥の奥までどろどろに溶けだして、乱暴ともいえる抽挿を助けた。
花京院は涙をいっぱいに浮かべた瞳を見開き、引き攣ったような悲鳴をあげる。
「ひぃっんッ! あ、ぁ――ッ、あッ、や、だっ、やめ……まだっ、イッて、るッ、ぁひ、ぃ……ッ!!」
「すげえ……突き上げるたんび、こっから白いのが噴きだしてるぜ」
「あぁッ、そんな、の、言わな、で……ッ!」
承太郎が奥を突く度に、花京院の赤く腫れた乳首からはピュ、ピュ、と白い粒が弾け飛んでいた。まるで押せば出るポンプのようだ。
嫌だ嫌だと言って泣いているくせに、花京院の腰は承太郎の動きに合わせて淫らに跳ねる。快楽を追うことに必死になっている姿は、まさに淫乱の一言に尽きた。瞳はどこか濁り、そこには一欠けらの理性も見当たらない。
こんなにも激しく乱れる男だったろうか。今まで繰り返して来た行為が、本当にただ下半身をぶつけ合うだけの、性欲処理だったのだと思い知らされた。
「もっ、だめ、止まらな、アッ! ぼくの、おっぱい、壊れ、る……ッ」
「とっくに壊れてると思うぜ。これだけの量が、今までよく絆創膏なんぞで抑えられたな」
「だっ、て! だって……ッ、今日は、すごく……感じる……ッ、興奮、してる、から、ぁッ、いつもより、いっぱ、い……っ」
抱え込んでいた秘密と一緒に、理性や本能といったものも解放された、といったところだろうか。こんなことならもっと早く、いっそ強引にでも暴いてしまえばよかった。これまで過ごしてきた時間を口惜しく感じる。
「おれも、感じるぜ……花京院。最高に、興奮する」
承太郎は半身を起すと、断続的に潮を噴くように白濁を放つ乳首にむしゃぶりついた。口の端から次々と零れだすのも構わず、ぐりぐりと角度を変えながら強く吸っては、歯を立てる。どこまで加減できているか分からず、いっそ噛み潰してしまいそうだ。けれどそうすればするほど、中の締め付けは増していく。花京院の淫らな腰つきも、甘やかな嬌声も増すばかりだった。
「あぁッ、や! 承太郎、でるッ! またでる、乳首、かまれ、て……、んんぁ、も、ッ、イッ、く……ッ――!!」
承太郎の頭を搔き抱きながら、花京院は三度目の絶頂を迎える。口のなかいっぱいに濃厚な蜜が溢れ、承太郎は一滴も零すまいとそれを強く吸い上げた。
花京院がビクン、ビクン、と大きく跳ね上がるたび、当然もう片方からも凄まじい勢いで母乳が噴きだしている。ふたりの身体の中心で、花京院の性器からも熱いものが迸っては、肌を滑り床を汚していく。承太郎もまた、二度目の熱い奔流を花京院の最奥に叩きつける。
「は、ッ、ぁ……でて、る……おなか、あつ、ぃ……ッ」
強張りがとけ、ガクンと力を失くした身体が背後に倒れていくのに合わせて、承太郎は抜かないままに彼の身体に覆いかぶさった。
花京院はしばらくの間、死にそうな息を忙しなく吐きだして、ひくひくと痙攣を繰り返していた。二人分の荒い呼吸が、少しずつ夜の青に満たされつつある薄明かりに、深く溶け込む。
やがて薄く開かれた唇から、ごめん、という音の息が漏らされた。
「こんな、に……汚、し……」
「構わねえよ。それより」
「ッ、ふ、ぁ……っ!?」
承太郎はなかに納めたままの肉棒で、花京院の奥深い場所をこつんと突いた。
「まだ、足りねえ」
大きな獣が甘えるように、汗ばんだ額に自分の額を擦りつけた。
承太郎の屹立は花京院のなかで、未だにもの欲しそうに脈打っている。我ながら貪欲で、堪え性のない息子だ。
だけど、足りないものは足りない。ようやく愛しい男の全てを、剥き出しにさせたばかりだ。奪っても奪っても、満ちることはなかった。
未だ母乳を垂れ流す乳首を、指できゅうっと摘み上げる。ぴゅ、と可愛らしい飛沫をあげるそこは、真っ赤に腫れながらも、貪欲に誘い込んでいるように見えた。
「ぁ、じょ、たろ、ぼくもう……ッ」
「好きだ。花京院……愛してる」
「ッ!」
また狡いだなんて言われてしまうだろうか。けれどその愛の告白に身を震わせた花京院は、じわりと瞳に熱を浮かべる。きゅう、と承太郎を受け入れたままの、蕩けた肉路が収縮した。
あまりにも素直すぎる反応を示す身体に笑みを漏らしつつ、承太郎はそんな彼がちょっぴり心配にもなってしまう。
「おまえ……おれ以外の相手にこんなふうになるんじゃねーぞ」
「なッ!? なるわけないだろ! ぼくは……君じゃなきゃ嫌だ」
心外だと眉を吊り上げて見せる花京院に、承太郎はこの上ない満足感を得る。元から他の誰にも渡すつもりはないし、一瞬でも余所見をさせるつもりもないけれど。
「好きなだけくれてやるから」
愛情も、告白も、快楽でさえ。この身の全てを。
「枯れるまで、おれにもくれよ」
そう、枯れるまで。甘い蜜を溢れさせる身体を、もっともっと、暴きたい。
夜はまだ、始まったばかりだから。
*
「まるで介護されている気分だ……」
翌日。
昼時を迎えた陽光が射すリビングで、白いTシャツと黒いジャージの下を着込んだ花京院が、沈んだ声をあげた。
額に冷却シートを張り付けた彼は、ソファにぐったりとした様子で横になっている。
クッションを枕にして、逆サイドの肘掛に乗せられた両足は、爪先しか出ていない。Tシャツでさえ肩の位置がズレ、身体が泳いでいるように見えているのは、それらが承太郎のものだからだ。
「今は同じようなもんだぜ」
言いながら、弁当や飲み物が入った袋を持ってきた承太郎に、花京院の申し訳なさそうな視線が向けられる。思わず鼻から息を洩らし、ひょいと肩を竦めた。
「気にすることはねえ。無茶させたのはおれなんだからよ」
あれから。
深夜遅くまで続いた行為が影響して、花京院は見事に足腰が立たない状態に陥った。ようやくまともに意識を取り戻したのはつい先刻のことで、しかも彼は軽く熱までだしてしまった。
「どうだ、調子は」
袋をテーブルに置くと、承太郎は花京院の顔がよく見えるよう、ソファの傍にどっかりと胡坐をかいた。
「微熱だし、大丈夫だよ。腰も力が入らないだけで、痛みはない」
花京院はごく自然に笑ったつもりなのかもしれないが、承太郎にはその笑みが随分と弱々しいものに見える。だいたい、普段から平熱が低い彼にとって、微熱といえる体温は十分に高いと言えるのだ。
声だって、饒舌に喋ってはいるが、ときどき痛々しく掠れている。
これは完全に承太郎の責任だ。なにせひとりでまともに歩けなくなるほどに、ほぼ一晩じゅう抱き潰してしまったのだから。
すまん、と言って項垂れると、花京院はすぐさま「よしてくれ」と言う。
「すっかり世話をかけてしまって、ぼくの方がよほど面目ない気分だよ」
そう言われても、承太郎にとっては全てが当然の行いだった。
目を覚ましたとき、腕のなかの花京院は熱い身体をぐったりとさせ、呼吸を荒げていた。ほとんど意識がない状態で、呼びかけても反応がない。
珍しく慌てた承太郎は、スタープラチナまで駆使して彼の身体を清め、適当に自分の鞄から取り出したシャツとジャージを着せた。そして、完備してあった救急箱から取り出した体温計で熱を測ると……花京院は案の定、発熱していた。
それから承太郎は、庭の倉庫にしまわれていた自転車を引っ張り出すと、全速力で飛ばして山を下りた。駅近くのコンビニで、弁当とサラダ、スポーツドリンク、さらに冷却シートを買って、戻ってきた。
その頃には花京院はどうにか意識を取り戻していて、昨夜の名残が残るベッドからこのリビングに移動させ、今に至るというわけである。
正直、いま思いだしても最高の夜ではあったが、流石にこれほどまでに負担をかけてしまうとは、思っていなかった。
いっそ彼の口から『二度としない』なんて宣言されても、なんらおかしくはない状態だ。
けれど花京院は怒った様子もなく、しょげている承太郎に笑いかける。
「一晩中するなんて……初めてのことだったろう?」
「……だな」
「その……だから、ちょっぴり身体が驚いてしまっただけなのさ。ぼくは……いい夜だったと、思う」
もとはと言えば無理強いから始まった行為だっただけに、彼がそんなふうに言うとは思ってもみなかった。その意外さに目を瞬かせる承太郎に、花京院はもとから赤い頬をより色づかせながら、恥ずかしそうに目を泳がせる。
「ぼくだって本当は……ちゃんと裸で君と抱き合いたかったんだ。だけどどうしても……言いだせなくて」
「花京院……」
「だからよかったんだ。嬉しかった。このくだらないコンプレックスごと、ぼくを愛してくれて……ありがとう」
そう言って、花京院は困り眉で微笑んだ。胸の奥底から、じんとした熱が染み渡る。どうしようもない愛しさが、そのまま溢れて止まらなくなりそうだった。
「花京院」
承太郎はその名を呼ぶと、彼の腹に置かれていた左手をとった。睫毛を伏せて、その薬指に優しく口付けると、赤い顔を見やる。
「おれも。ありがとうよ、花京院」
全てを見せてくれて。こんな、どうしようもなく我儘な男に、委ねてくれて。
丸く見開かれていたアメジストを、すうっと細めて微笑んだ花京院が、うん、と小さく頷いた。
しばらくのあいだ、ふたりはそうやって見つめ合う。けれどそのうち気恥ずかしくなってきて、どちらからともなく噴き出してしまった。
「なんだか照れ臭いな、こういうの」
「まったくだ」
「食べよう、ご飯。お腹が空いた」
照れ隠しにそう言って、花京院は横たえていた身を起こそうとした。腰に負担をかけさせまいと、咄嗟に膝立ちになった承太郎がそれを支える。向き合って、目と目が合ったふたりは、また口を閉ざしてしまった。
だけど、すぐに引き寄せられるように顔を近づけ、唇を重ねる。
いつもとは逆で、下からキスを受け止める形は、少し不思議な感覚だった。
唇はすぐに離れた。至近距離で見つめ合ったまま、照れ臭いのに笑いだすこともできないでいると、承太郎は自然と花京院の名を呼んでいた。
「花京院……す」
好きだ、と言うつもりだったのに。
花京院の人差し指が、それを遮るように肉厚な唇に押し当てられたせいで、何も言えなくなってしまう。
「嬉しいけど……あまりぼくを、贅沢に慣れさせないでくれ」
承太郎の愛の言葉は、すぐに花京院の心と身体をどろどろに蕩かしてしまうから。
それほどまでに、承太郎は花京院を惚れさせている、ということだ。
「マジで、チョロすぎだぜ」
これには流石の承太郎も、顔を赤らめてしまう。
「なんとでも言ってくれ。ぼくはもう、諦めてしまったよ」
まるで憎まれ口を叩いているような言い方に、承太郎は笑いながらもう一度、その唇を塞いでやった。
陥没編も読んでみる→
←戻る ・ Wavebox👏