2025/08/26 Tue 操は膝立ちになると甲洋の胸を軽く押した。たやすく身体を仰向けに転がされ、甲洋は身も心も完全に主導権を握られていることを痛感する。 しかしこちらはドのつく素人だ。下手に手を出して失敗するより、いっそプロの手に委ねてしまった方が──。 (……けっきょく乗り気なんじゃないか、俺) こんなはずじゃなかった。下心なんて微塵もなかったはずなのだ。けれど本当にそうなのだろうかと、だんだん疑わしくなってきた。 だって本当に下心がないのなら、甲洋はとっくに操を退けているはずだ。それをしないのは、どこかで期待していたからではないだろうか。 現に自分の上に跨り、膝立ちになって服を脱ぎはじめる操を見て、甲洋は胸を踊らせているのだ。あの『来栖ミサオ』とセックスができる。初めてを捧げることができる。まさに夢のようなシチュエーション。VRでAV観賞をしているような気分にすらなってくる。 (うわ……) ダウンとパーカーを脱ぎ捨てて、操の白い肌が惜しげもなく露わになった。発達しようがないぺたんこの胸に、淡桃の乳首が乗っている。少年らしい控えめな腰のくびれに、大きく喉を鳴らす。 操は自身のベルトに手をやって、素早く解くと前を寛げた。なんの躊躇いもなく下着ごとパンツをおろし、両膝と踵をそれぞれ引き抜いて裸になってしまう。 頭が沸騰した。普段はモザイクによって隠されている操の恥部が、今はなんの障害もなく目の前にさらされている。 そこには一切、毛が生えていなかった。 「……毛」 「ん? あ、うん。パイパンなんだ、おれ。ぜんぜん生えてこないの」 「ぱっ、ぱいぱ……て、天然の……?」 「そうだよ」 操のそこは、まるで生まれたての赤ん坊のようだった。いっそ粉ミルクの匂いがしてきてもおかしくないと思えるほど、幼く見える。 こんな子供みたいな身体で、この子は男たちの欲望を受け止めているのだ。そして自分は、それを性の捌け口にしている。甲洋だけじゃない。多くの男達が、この身体に欲情して自慰にふけっているのだ。 その裸体が、今は甲洋のためだけにさらされている。罪悪感と優越感が同時に込み上げ、いっそう興奮が増してしまった。 「挿れてもないうちからイッちゃわないでよ」 股の下で反り返って震えている肉棒を見下ろし、操が楽しそうに笑った。 彼は右手の人差し指と中指を自分の唇へと運び、甲洋に奉仕したときと同じように音を立ててしゃぶりはじめる。そのいやらしい光景を、甲洋は熱に浮かされた意識でぼうっと眺めた。 「んぁ……ぁ、んっ」 操は左手を甲洋の腹について体重を支えながら、濡らした指先を自身の奥まった場所へと伸ばした。なにをしているかは、考えなくても分かる。ちくちくと微かな音がするたびに、心臓が激しく脈を打つ。 操は少し苦しそうに顔をしかめ、むずがるような呻きを漏らした。 「やっぱりちょっと足りないな……ねぇ、ローションとかない?」 鈍った思考で一瞬考え、甲洋は首を左右に振った。この部屋にあるもので、なにか代わりになりそうなものなんてあっただろうか。 「あっ、そうだ!」 甲洋が答えを導き出す前に、操のほうが先になにか閃いたらしい。彼はいったん指を引き抜くと、手を伸ばして自分が脱ぎ捨てたロングダウンを引き寄せる。ポケットの中をゴソゴソと漁り、中から小さなスティック状のものを取り出した。 「あった! これなら使える!」 それは可愛らしいサクランボ柄のリップクリームだった。チェリーを相手にチェリーのリップを潤滑剤として使う気なのか。なかなか皮肉がきいている。 「そんなのでいいの……?」 「いいのいいの! ちょっと待ってて」 操はリップクリームの蓋を開け、クルクルとひねって中身を全て出し切ると、迷いなく根元から折ってしまった。それを両の手のひらで包み込み、体温でドロドロに溶かしてしまう。 ただでさえ甘ったるい蜂蜜の香りが充満する部屋に、サクランボの甘酸っぱさまで加わって、室内のむせるような熱気が増した。 「ほら、まだちょっと足りないけど、ぜんぜん行けるよ」 操は溶けたクリームを指に絡ませ、粘度を確かめると再びさっきと同じ体勢で後孔をほぐしはじめた。先程よりもスムーズに指先が滑り込んでいるらしく、時おり腰を跳ねさせながら小さく喘ぎを漏らしている。 徐々に息があがり、頬が赤らみ、なんの兆しもなかった紅色の屹立が緩く弾力を帯びはじめていた。 「ぁ、あ、ッ、ん……っ、ん、けっこう、いい感じ……ぁ……っ」 潤んだ瞳が蕩けたようになっている。いやらしく腰を揺らしながら身悶える姿に、甲洋はうっとりと見惚れながら喉を鳴らした。 (触りたい) 自然ともたげてくる欲求に、ただ寝転んでいるだけの状況がもどかしくなってくる。この手で直に触れて、彼がどんな反応をするのかをじっくり堪能してみたい。 遠慮がちに持ち上げた右手を伸ばし、指先で太ももに触れた。しっとりと汗ばんでいる淡桃の肌に、またひとつ喉を鳴らす。しかしそんな企みも、操に手の甲をペチンと叩かれ、払いのけられてしまった。 「ダメだよぉ。全部おれがするって言ったでしょ? いい子にしてて」 「ぅ……」 「んっ、ぁ……はぁ……これは、恩返し、なんだからぁ」 酔っぱらったように舌足らずになった操が楽しそうに笑う。甲洋は強気に出ることもできず、ただ黙り込むしかなかった。 これじゃ生殺しだ。いつまでも放っておかれている自身は、情けないくらいよだれを垂らして鈴口をひくつかせていた。 「ミサ、オ」 「ん、ふふっ……いいよ、おれも欲しくなってきたし」 操は孔から指を引き抜くと、股の下で張り詰める甲洋の男茎に触れた。腰の位置を調節し、ほどけた後孔にぴったりと亀頭を合わせる。 ついに訪れた瞬間に、爆発しそうなほど心臓が暴れていた。 「じゃあ貰うね、君の童貞」 「ッ、ぅ……っ」 声が出てしまいそうになるのを堪え、甲洋は素直に頷いた。操は笑みを浮かべたまま「いただきます」と言って、ゆっくりと腰を落としていく。 「あっ、ぁう……ん、あッ、ぁ……っ」 甲洋の腹に手をついた操が、喉を反らして甘く喘いだ。最も太い場所が飲み込まれてしまうと、あとはずぶずぶと収まっていく。 その突き破るような感覚に声も出せない。甲洋は汗を滲ませ、歯を食いしばりながら童貞喪失の瞬間を噛み締めた。鳥肌がたつほどの感動に、頭が芯から煮えている。 根元まですっかり飲み込まれると、甲洋は両手を投げ出して荒い呼吸を繰り返した。すると先に一呼吸ついた操が、さっそく腰を揺らしはじめる。 「ッ、ぅ……! ぁ、み、ミサオっ、待っ……!」 「だーめ、待たないよーだ」 「うあッ、ぁ!」 操は両手を後方にやって甲洋の腿にそれぞれ手をつくと、まるで波打つようないやらしい動きで腰を上下に動かしはじめる。うねる蜜壺の壁に食い締められて、一瞬で達してしまいそうになるのを死ぬ気で堪えた。 「く、ぅ……ッ!」 「アッ、ぁんっ、あ! すご、いッ、童貞ちんぽ、気持ちいい……っ!」 見たことがある光景だと、感慨を抱かずにはいられない。唇を笑みの形にして、恥ずかしげもなく淫語を漏らしながら腰を振る姿を、画面越しに何度も見てきた。 それがシナリオ通りに進行するフィクションであることは理解していたつもりだし、今のこれだってただ甲洋を煽るためのリップサービスでしかないのかもしれない。それでも淫らに喘ぐ操の痴態に、ファンとして純粋な感動を覚えていた。 だけどふとどうしても確かめてみたくなって、甲洋は操の胸へと両手を伸ばした。彼は甲洋を満足させることに気を取られている。その隙をつく形で、ツンと尖っているふたつの粒をそれぞれ指先で摘み上げてみた。 「ひゃんっ! あ、やぁ……ッ!?」 その瞬間、ナカがさらにぎゅっと締まった。操は目を見開きながら声を上ずらせ、身体をビクンと震わせる。明らかに反応が変わったことに、甲洋は目を丸く瞬かせた。 「な、なにするのさ!?」 余裕があった表情から一変して、焦った様子の操は顔を真っ赤にすると眉を吊り上げた。腰の動きもいったん止まり、甲洋の手を少し乱暴に振り払ってしまう。 甲洋は咄嗟に「ごめん」と謝罪はしたものの、唇を噛み締めながら涙目で睨みつけてくる表情に胸をときめかせた。 「乳首、やっぱり弱いんだ」 「!」 ついしみじみと呟いてしまった言葉に、操が息を呑んだ。 「そこ、触られると反応が変わるから。そうなんじゃないかと思ってた」 それは彼の作品を見ながら、いつも思っていたことだった。操は乳首をいじられるといっそう声を高くして、泣きそうになりながら嫌々と身を捩って見せる。 そこが弱いからあまり触れられたくないのだろうなと、薄々気がついていたことを直に確かめることができて、甲洋は嬉しさからふと微笑んだ。 すると操は茹で上がったタコのように全身を赤く染め、両手で胸を隠してしまう。 「余計なことしなくていいよ! 次やったら本気で怒るから!」 「もう怒ってる」 「う、うるさいなぁ……なんだよ、急に余裕ぶっちゃって!」 どうやらプライドを傷つけてしまったらしい。本気で怒っている操の姿なんて、台本ありきの映像の中では決して見られないものだった。 (意外と気が強いんだな、この子) 来栖ミサオのイメージが、少しずつ剥がれていくのが分かる。 甲洋が見ていた虚像の彼は、人の部屋のベッドの下を勝手に暴いたりなんかしない。素人の童貞を弄ぶなんて真似もしないし、多少反撃を食らった程度で顔を赤くしながら怒るなんてことも、絶対にしないはずだった。 知りすぎてしまったと、甲洋は思う。彼に幻滅したくなかった。だけどどうしてか、それらに胸を浮き立たせている自分がいる。 いま甲洋がセックスをしているのは【来栖ミサオ】という画面越しの存在ではなく、【来主操】という生身の人間なのだ。そんな自覚と一緒に芽吹いてくるのは、素の彼をもっと知りたいという愚直なほどの欲求だった。 そんな甲洋の感情の動きなど知りもせず、身を乗り出した操は悪巧みをする子供のように挑戦的な笑みを浮かべる。 「生意気言う子にはお仕置きしちゃうよ」 どうなっても知らないからねと、挑むように言いながら操が腰の動きを再開させる。ムキになったように上下する激しい動きに、甲洋は目を剥きながらあっけなく追い詰められていく。 「ぁっ、う……ッ、待って、っ……もう、出る……!」 咄嗟に上半身を浮かせて、またがっている白い腿をそれぞれ掴んだ。操は細めた瞳を三日月のような形にして、ぺろりと舌なめずりをしながらいっそう甲洋を締め上げる。 「はっ、はぁッ、ぁ、いい、よ! ほら、イッちゃえ!」 射精するギリギリのタイミングで、操は腰の位置をズラして内部から甲洋を引き抜かせる。すかさず男茎を掴まれて、容赦なく扱かれながら甲洋は射精した。 「ッ──!!」 声もなく達して、操の手の中で白濁を飛び散らせる。 最後の一滴まで搾り取られてしまうと、浮かせていた半身をガックリと床に沈めて荒々しく息をついた。尾を引く余韻に、頭の中がぼうっとしてくる。 「さっきも出したのに、またいっぱい出たね」 操は得意げにそう言って、床にぺたりと尻を落ち着けた。テーブルの上にあったティッシュケースから勝手に数枚引き抜いて、精液まみれになった手を拭いている。息を乱したまま、なんだか少し情けない気持ちでその光景を見ていた甲洋だったが、彼の性器が勃起したままであることに気がついた。 「来主……」 「んー? なに?」 「そっち、まだ」 身を起こした甲洋がチラチラと見ては目を逸していることに気づいた操は、自分の股間を一瞥してから「おれはいいよ」と言って笑った。 「でも」 「気にしないで。おれもちゃんと満足したし。撮影でもだいたいこうだよ。イッたふりして、あとから別撮りしてるだけ」 「へぇ」 「ガッカリした?」 「いや、そうでもないよ。でも」 目を逸しながら言葉を切ると、操がことりと首を傾げる。その表情を横目で見やりながら、甲洋は赤裸々な胸の内を吐きだした。 「気にはなる、かな。自分だけ満足して終わるのは」 よほど意外だったのか、操は鳩が豆鉄砲を食ったように目を瞬かせると、肩をすくめて微笑んだ。 「優しいんだね」 「……別に。俺だけがよくなって終わるなら、それは一人でしてるのと変わらないだろ」 操がしたという『満足』は、あくまでも童貞を食ってイかせたという達成感でしかないのだ。 だけど甲洋にだって男としてのプライドはある。好きな相手とならなおのこと、自分だけが気持ちよく終わる初体験なんて納得がいくはずがない。 「しょうがないなぁ」 操はどこかくすぐったそうな顔をしながら、四つん這いになると甲洋に尻を向けた。 「あと一回だけだよ」 「な、ちょっ!?」 惜しげもなくさらされた後孔に、甲洋は赤くなった顔をそらしてしまう。 「ねぇー、おれのお尻なんかいつも見てるんじゃないの?」 それはそうだが、映像で見るのと実際に見るのとではまったく違う。 操は少し呆れた顔をしながら首をひねってこちらを見ている。おずおずと視線を向けた甲洋に、彼は満足そうな笑みを浮かべた。 さっきまで甲洋のものを受け入れていた孔は、熟れたように濡れてふっくらとほころんでいた。操はそこに指を這わせ、人差し指と中指でぐっと中を開いて見せる。赤い肉がひくひくと震え、怪しく甲洋を誘っているようだった。 そんなものを見せられて、冷静でいられるはずがない。甲洋の身体の中心は、すでに二度も出したとは思えないほど元気を取り戻していた。 ←戻る ・ 次へ→
しかしこちらはドのつく素人だ。下手に手を出して失敗するより、いっそプロの手に委ねてしまった方が──。
(……けっきょく乗り気なんじゃないか、俺)
こんなはずじゃなかった。下心なんて微塵もなかったはずなのだ。けれど本当にそうなのだろうかと、だんだん疑わしくなってきた。
だって本当に下心がないのなら、甲洋はとっくに操を退けているはずだ。それをしないのは、どこかで期待していたからではないだろうか。
現に自分の上に跨り、膝立ちになって服を脱ぎはじめる操を見て、甲洋は胸を踊らせているのだ。あの『来栖ミサオ』とセックスができる。初めてを捧げることができる。まさに夢のようなシチュエーション。VRでAV観賞をしているような気分にすらなってくる。
(うわ……)
ダウンとパーカーを脱ぎ捨てて、操の白い肌が惜しげもなく露わになった。発達しようがないぺたんこの胸に、淡桃の乳首が乗っている。少年らしい控えめな腰のくびれに、大きく喉を鳴らす。
操は自身のベルトに手をやって、素早く解くと前を寛げた。なんの躊躇いもなく下着ごとパンツをおろし、両膝と踵をそれぞれ引き抜いて裸になってしまう。
頭が沸騰した。普段はモザイクによって隠されている操の恥部が、今はなんの障害もなく目の前にさらされている。
そこには一切、毛が生えていなかった。
「……毛」
「ん? あ、うん。パイパンなんだ、おれ。ぜんぜん生えてこないの」
「ぱっ、ぱいぱ……て、天然の……?」
「そうだよ」
操のそこは、まるで生まれたての赤ん坊のようだった。いっそ粉ミルクの匂いがしてきてもおかしくないと思えるほど、幼く見える。
こんな子供みたいな身体で、この子は男たちの欲望を受け止めているのだ。そして自分は、それを性の捌け口にしている。甲洋だけじゃない。多くの男達が、この身体に欲情して自慰にふけっているのだ。
その裸体が、今は甲洋のためだけにさらされている。罪悪感と優越感が同時に込み上げ、いっそう興奮が増してしまった。
「挿れてもないうちからイッちゃわないでよ」
股の下で反り返って震えている肉棒を見下ろし、操が楽しそうに笑った。
彼は右手の人差し指と中指を自分の唇へと運び、甲洋に奉仕したときと同じように音を立ててしゃぶりはじめる。そのいやらしい光景を、甲洋は熱に浮かされた意識でぼうっと眺めた。
「んぁ……ぁ、んっ」
操は左手を甲洋の腹について体重を支えながら、濡らした指先を自身の奥まった場所へと伸ばした。なにをしているかは、考えなくても分かる。ちくちくと微かな音がするたびに、心臓が激しく脈を打つ。
操は少し苦しそうに顔をしかめ、むずがるような呻きを漏らした。
「やっぱりちょっと足りないな……ねぇ、ローションとかない?」
鈍った思考で一瞬考え、甲洋は首を左右に振った。この部屋にあるもので、なにか代わりになりそうなものなんてあっただろうか。
「あっ、そうだ!」
甲洋が答えを導き出す前に、操のほうが先になにか閃いたらしい。彼はいったん指を引き抜くと、手を伸ばして自分が脱ぎ捨てたロングダウンを引き寄せる。ポケットの中をゴソゴソと漁り、中から小さなスティック状のものを取り出した。
「あった! これなら使える!」
それは可愛らしいサクランボ柄のリップクリームだった。チェリーを相手にチェリーのリップを潤滑剤として使う気なのか。なかなか皮肉がきいている。
「そんなのでいいの……?」
「いいのいいの! ちょっと待ってて」
操はリップクリームの蓋を開け、クルクルとひねって中身を全て出し切ると、迷いなく根元から折ってしまった。それを両の手のひらで包み込み、体温でドロドロに溶かしてしまう。
ただでさえ甘ったるい蜂蜜の香りが充満する部屋に、サクランボの甘酸っぱさまで加わって、室内のむせるような熱気が増した。
「ほら、まだちょっと足りないけど、ぜんぜん行けるよ」
操は溶けたクリームを指に絡ませ、粘度を確かめると再びさっきと同じ体勢で後孔をほぐしはじめた。先程よりもスムーズに指先が滑り込んでいるらしく、時おり腰を跳ねさせながら小さく喘ぎを漏らしている。
徐々に息があがり、頬が赤らみ、なんの兆しもなかった紅色の屹立が緩く弾力を帯びはじめていた。
「ぁ、あ、ッ、ん……っ、ん、けっこう、いい感じ……ぁ……っ」
潤んだ瞳が蕩けたようになっている。いやらしく腰を揺らしながら身悶える姿に、甲洋はうっとりと見惚れながら喉を鳴らした。
(触りたい)
自然ともたげてくる欲求に、ただ寝転んでいるだけの状況がもどかしくなってくる。この手で直に触れて、彼がどんな反応をするのかをじっくり堪能してみたい。
遠慮がちに持ち上げた右手を伸ばし、指先で太ももに触れた。しっとりと汗ばんでいる淡桃の肌に、またひとつ喉を鳴らす。しかしそんな企みも、操に手の甲をペチンと叩かれ、払いのけられてしまった。
「ダメだよぉ。全部おれがするって言ったでしょ? いい子にしてて」
「ぅ……」
「んっ、ぁ……はぁ……これは、恩返し、なんだからぁ」
酔っぱらったように舌足らずになった操が楽しそうに笑う。甲洋は強気に出ることもできず、ただ黙り込むしかなかった。
これじゃ生殺しだ。いつまでも放っておかれている自身は、情けないくらいよだれを垂らして鈴口をひくつかせていた。
「ミサ、オ」
「ん、ふふっ……いいよ、おれも欲しくなってきたし」
操は孔から指を引き抜くと、股の下で張り詰める甲洋の男茎に触れた。腰の位置を調節し、ほどけた後孔にぴったりと亀頭を合わせる。
ついに訪れた瞬間に、爆発しそうなほど心臓が暴れていた。
「じゃあ貰うね、君の童貞」
「ッ、ぅ……っ」
声が出てしまいそうになるのを堪え、甲洋は素直に頷いた。操は笑みを浮かべたまま「いただきます」と言って、ゆっくりと腰を落としていく。
「あっ、ぁう……ん、あッ、ぁ……っ」
甲洋の腹に手をついた操が、喉を反らして甘く喘いだ。最も太い場所が飲み込まれてしまうと、あとはずぶずぶと収まっていく。
その突き破るような感覚に声も出せない。甲洋は汗を滲ませ、歯を食いしばりながら童貞喪失の瞬間を噛み締めた。鳥肌がたつほどの感動に、頭が芯から煮えている。
根元まですっかり飲み込まれると、甲洋は両手を投げ出して荒い呼吸を繰り返した。すると先に一呼吸ついた操が、さっそく腰を揺らしはじめる。
「ッ、ぅ……! ぁ、み、ミサオっ、待っ……!」
「だーめ、待たないよーだ」
「うあッ、ぁ!」
操は両手を後方にやって甲洋の腿にそれぞれ手をつくと、まるで波打つようないやらしい動きで腰を上下に動かしはじめる。うねる蜜壺の壁に食い締められて、一瞬で達してしまいそうになるのを死ぬ気で堪えた。
「く、ぅ……ッ!」
「アッ、ぁんっ、あ! すご、いッ、童貞ちんぽ、気持ちいい……っ!」
見たことがある光景だと、感慨を抱かずにはいられない。唇を笑みの形にして、恥ずかしげもなく淫語を漏らしながら腰を振る姿を、画面越しに何度も見てきた。
それがシナリオ通りに進行するフィクションであることは理解していたつもりだし、今のこれだってただ甲洋を煽るためのリップサービスでしかないのかもしれない。それでも淫らに喘ぐ操の痴態に、ファンとして純粋な感動を覚えていた。
だけどふとどうしても確かめてみたくなって、甲洋は操の胸へと両手を伸ばした。彼は甲洋を満足させることに気を取られている。その隙をつく形で、ツンと尖っているふたつの粒をそれぞれ指先で摘み上げてみた。
「ひゃんっ! あ、やぁ……ッ!?」
その瞬間、ナカがさらにぎゅっと締まった。操は目を見開きながら声を上ずらせ、身体をビクンと震わせる。明らかに反応が変わったことに、甲洋は目を丸く瞬かせた。
「な、なにするのさ!?」
余裕があった表情から一変して、焦った様子の操は顔を真っ赤にすると眉を吊り上げた。腰の動きもいったん止まり、甲洋の手を少し乱暴に振り払ってしまう。
甲洋は咄嗟に「ごめん」と謝罪はしたものの、唇を噛み締めながら涙目で睨みつけてくる表情に胸をときめかせた。
「乳首、やっぱり弱いんだ」
「!」
ついしみじみと呟いてしまった言葉に、操が息を呑んだ。
「そこ、触られると反応が変わるから。そうなんじゃないかと思ってた」
それは彼の作品を見ながら、いつも思っていたことだった。操は乳首をいじられるといっそう声を高くして、泣きそうになりながら嫌々と身を捩って見せる。
そこが弱いからあまり触れられたくないのだろうなと、薄々気がついていたことを直に確かめることができて、甲洋は嬉しさからふと微笑んだ。
すると操は茹で上がったタコのように全身を赤く染め、両手で胸を隠してしまう。
「余計なことしなくていいよ! 次やったら本気で怒るから!」
「もう怒ってる」
「う、うるさいなぁ……なんだよ、急に余裕ぶっちゃって!」
どうやらプライドを傷つけてしまったらしい。本気で怒っている操の姿なんて、台本ありきの映像の中では決して見られないものだった。
(意外と気が強いんだな、この子)
来栖ミサオのイメージが、少しずつ剥がれていくのが分かる。
甲洋が見ていた虚像の彼は、人の部屋のベッドの下を勝手に暴いたりなんかしない。素人の童貞を弄ぶなんて真似もしないし、多少反撃を食らった程度で顔を赤くしながら怒るなんてことも、絶対にしないはずだった。
知りすぎてしまったと、甲洋は思う。彼に幻滅したくなかった。だけどどうしてか、それらに胸を浮き立たせている自分がいる。
いま甲洋がセックスをしているのは【来栖ミサオ】という画面越しの存在ではなく、【来主操】という生身の人間なのだ。そんな自覚と一緒に芽吹いてくるのは、素の彼をもっと知りたいという愚直なほどの欲求だった。
そんな甲洋の感情の動きなど知りもせず、身を乗り出した操は悪巧みをする子供のように挑戦的な笑みを浮かべる。
「生意気言う子にはお仕置きしちゃうよ」
どうなっても知らないからねと、挑むように言いながら操が腰の動きを再開させる。ムキになったように上下する激しい動きに、甲洋は目を剥きながらあっけなく追い詰められていく。
「ぁっ、う……ッ、待って、っ……もう、出る……!」
咄嗟に上半身を浮かせて、またがっている白い腿をそれぞれ掴んだ。操は細めた瞳を三日月のような形にして、ぺろりと舌なめずりをしながらいっそう甲洋を締め上げる。
「はっ、はぁッ、ぁ、いい、よ! ほら、イッちゃえ!」
射精するギリギリのタイミングで、操は腰の位置をズラして内部から甲洋を引き抜かせる。すかさず男茎を掴まれて、容赦なく扱かれながら甲洋は射精した。
「ッ──!!」
声もなく達して、操の手の中で白濁を飛び散らせる。
最後の一滴まで搾り取られてしまうと、浮かせていた半身をガックリと床に沈めて荒々しく息をついた。尾を引く余韻に、頭の中がぼうっとしてくる。
「さっきも出したのに、またいっぱい出たね」
操は得意げにそう言って、床にぺたりと尻を落ち着けた。テーブルの上にあったティッシュケースから勝手に数枚引き抜いて、精液まみれになった手を拭いている。息を乱したまま、なんだか少し情けない気持ちでその光景を見ていた甲洋だったが、彼の性器が勃起したままであることに気がついた。
「来主……」
「んー? なに?」
「そっち、まだ」
身を起こした甲洋がチラチラと見ては目を逸していることに気づいた操は、自分の股間を一瞥してから「おれはいいよ」と言って笑った。
「でも」
「気にしないで。おれもちゃんと満足したし。撮影でもだいたいこうだよ。イッたふりして、あとから別撮りしてるだけ」
「へぇ」
「ガッカリした?」
「いや、そうでもないよ。でも」
目を逸しながら言葉を切ると、操がことりと首を傾げる。その表情を横目で見やりながら、甲洋は赤裸々な胸の内を吐きだした。
「気にはなる、かな。自分だけ満足して終わるのは」
よほど意外だったのか、操は鳩が豆鉄砲を食ったように目を瞬かせると、肩をすくめて微笑んだ。
「優しいんだね」
「……別に。俺だけがよくなって終わるなら、それは一人でしてるのと変わらないだろ」
操がしたという『満足』は、あくまでも童貞を食ってイかせたという達成感でしかないのだ。
だけど甲洋にだって男としてのプライドはある。好きな相手とならなおのこと、自分だけが気持ちよく終わる初体験なんて納得がいくはずがない。
「しょうがないなぁ」
操はどこかくすぐったそうな顔をしながら、四つん這いになると甲洋に尻を向けた。
「あと一回だけだよ」
「な、ちょっ!?」
惜しげもなくさらされた後孔に、甲洋は赤くなった顔をそらしてしまう。
「ねぇー、おれのお尻なんかいつも見てるんじゃないの?」
それはそうだが、映像で見るのと実際に見るのとではまったく違う。
操は少し呆れた顔をしながら首をひねってこちらを見ている。おずおずと視線を向けた甲洋に、彼は満足そうな笑みを浮かべた。
さっきまで甲洋のものを受け入れていた孔は、熟れたように濡れてふっくらとほころんでいた。操はそこに指を這わせ、人差し指と中指でぐっと中を開いて見せる。赤い肉がひくひくと震え、怪しく甲洋を誘っているようだった。
そんなものを見せられて、冷静でいられるはずがない。甲洋の身体の中心は、すでに二度も出したとは思えないほど元気を取り戻していた。
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