2025/09/11 Thu 07 薄く血がこびりついた唇は、ほのかに鉄の味がする。 甲洋から積極的にキスをするのは初めてだった。存外激しい口づけに、操は潤んだ瞳をまん丸に見開いて驚いていた。けれどその唇も表情も、幾度となく音を立てて吸っているうちに徐々にほどけて柔らかくなっていく。 「んにゅ、ぅ、ぁ……うれ、し……っ」 一瞬だけ唇がほつれた拍子に漏らされた声を、かぶりつくようにして吐息ごと丸飲みにする。くぐもった声と二人分の唾液が混ざり合う音が、頭の芯にジクジクと響き渡っていた。 発情する操の身体はとても顕著に反応を示した。舌と舌が強く擦れ合うたびに、腕の中で健気に身を震わせる。必死でしがみついてくる両手が、スーツのジャケット越しに甲洋の背中を引っ掻いていた。厚い布越しの感覚にもどかしさが止まらない。 唇を重ねたまま、片手でネクタイの結び目を緩めた。首元まできっちり留められていたボタンも幾つか外し、乱暴にジャケットを脱ぎ捨てる。 操は甲洋の傷ついた口端に赤い舌を這わせていた。ちゅうと吸い上げられると、痛みと一緒に気が遠くなるような心地よさを覚えて、背筋が震える。 「ふぁっ、ぅ、んッ」 平べったい舌を絡めとり、仕返しとばかりに緩く歯を立てながら、甲洋の手は自然と操の胸を探るように蠢いていた。膨らみなど存在しない。摘める程度の肉しか乗っていないそこを、それでも少し強引にシャツの上から揉みしだく。すると手の平にほんの小さなしこりのようなものを感じて、甲洋は咄嗟に動きを止める。 操の乳首はまともに触れてもいないうちから勃起していた。ツンと影ができるほどシャツを押し上げている二ヶ所の点に、茹だるような興奮が込み上げる。 完全に意識を他所にもっていかれたことで唇が開放されると、酸欠気味の操は息を乱しながら放心状態になっていた。 (落ち着け、落ち着け) 暴走しそうになる意識を繋ぎ止め、甲洋は操の下肢へと手を伸ばす。そっとシャツをたくし上げていくと、下着を穿いていない半身がいともたやすく露わになった。ついさっき達したばかりの赤い屹立は、放ったもので濡れている。薄い白濁が股の付け根にまで伝い落ち、粗相をしたようにぐちゃぐちゃになっていた。 「あっ……ぁ、ん……っ!」 ゆるく勃ちあがりかけている茎に軽く触れただけで、操は甘ったるい声をあげながらその身を大きく揺らした。立てた両膝でピンと爪先を突っ張らせ、床から腰を浮かせている。甲洋はその隙間を縫って、シャツを一気に胸の上までたくし上げてしまう。 しなやかな曲線が露わになり、白い肌は汗ばんで艶を放っていた。ぷっくりと膨らんだふたつの粒が、薄い胸の上にはしたなく乗っている。それは野いちごのように真っ赤に色づき、誘い込むために存在を主張しているようだった。 呼吸も忘れて思わず見入る。操のここは、これほど色が濃かっただろうか。 甲洋は幾度か彼の裸体を見たことがあった。そのどれもがほとんど事故のようなものだったが、そうと分かるほどにうっすら色が違っていた程度だったと記憶している。 (これも、発情期のせい……?) もしそうなのだとしたら、なんていやらしい身体なんだろう。甲洋は操の腰を抱き込むと、誘われるままにその粒へと唇を寄せていった。 「ふぁ、ん、にゃあぁ……っ」 操の腰がビクビクと踊った。しっかりと押さえつけながら、甲洋は堪らない気持ちでそこにむしゃぶりついた。尖らせた舌の先で執拗に転がし、じゅうと大きな音を立てて吸い上げる。操は初めてとは思えないほど淫らに身をくねらせて、甘ったるい嬌声を発していた。甲洋の髪を掴んでは掻き乱し、いやいやと首を振りたくる。 「くぅ、ぁ、だめ……それ、や、やぁ、ぁ……ッ」 唇はもう一方にも移動して、夢中で責め立てながら片手を改めて操の下肢へと伸ばしていく。そこはもはや完全に勃起して、蜜を零しながら脈打っていた。扱けばさらに溢れてくる。 胸と性器を同時に愛撫しながら、甲洋は口内で芯をもつ粒に堪らず歯を立てた。操は涙を浮かべた瞳を見開き、いっそう大きく身をしならせる。 その瞬間、手の中で幹が弾けた。潮を吹くように精を吐きだし、声なき悲鳴をあげながら達してしまう。抱き込んでいる腰がひどくのたうち、毛が逆立って一回り膨らんだしっぽの先まで、ブルブルと激しく痙攣していた。 「ッ、~~……! はぁ、ぅ、──ぁっ、ぁー、……!」 やがて甲洋の頭を掻き乱していた両手が、床に力なくパタリと落ちた。極致の余韻に絡めとられたまま、操はときどき引き攣ったように身を跳ねさせて、か細い喘ぎ混じりの呼吸を繰り返している。瞳孔が狭まった瞳は焦点が定まっていない。口の端からはだらしなく唾液が滴っていた。 この手で施した愛撫で忘我の状態になっている操に、甲洋は愛しさを募らせる。 「操、動ける?」 「……っ、?」 「床、背中痛いだろ」 気遣う言葉とは裏腹な餓えた眼差しで、甲洋は投げ出されている操の手首を掴むと引っ張り起こした。ぐったりと胸にもたれかかってくる身体を軽々と担ぎ上げ、勢いをつけてベッドの上へと移動させる。シャツをすっぽりと脱がせてしまうと、骨が抜けたようになっている身体をひっくり返して、四つん這いの体勢をとらせた。 朦朧としたまま未だに戻って来られない様子の操は、ただなすがままだった。 「こ、こう、よ」 操は自分が求めているものを、分かっているようでいて分かっていない。身体はどこまでも素直に快感を受け入れるくせに、それでいてこれから起こることが分からず、不安に苛まれてもいる。真後ろに向けてぴったりと伏せている耳を戦慄かせ、長いしっぽを小刻みに振っているのがその証拠だった。 それでも今の甲洋は後先を考えていられない。桃色に色づく臀部と、その濡れた谷間を目の前に突きだされ、気づかってやれるだけの余裕など残されてはいなかった。 ごくりと喉を鳴らし、柔らかな曲線を描く小さな尻に手の平を這わせる。しっとりと吸いつくような感触に熱い息を漏らしていると、しっぽがムチを振るうような動きで上下にしなった。 甲洋はふとそれに手をやり、緩く握って付け根から先端にかけてをするりと扱きあげてみた。すると操の腰がピクンと跳ねて、尻がさらに高く持ち上がる。その反応に味をしめ、甲洋はしっぽの付け根の裏側を親指で軽く擦り上げてみた。 「んっ、んにゃっ、ぁ、ゃ」 「ここ、いい?」 シーツに片頬を擦りつけ、握りしめた拳を唇に宛てがいながら操がこくこくと頷いた。皮膚が粟立っているのがよく分かる。傷ひとつない白い背が、ぶるりと大きく戦慄いていた。 「じゃあ、ここは?」 もう片方の手で谷間の中心に触れてみる。伝い落ちた体液でしとどに濡れた孔の窄まりを、指先でくるくるとなぞってみた。 「あっ、ひゃぅ、ん!」 異物への警戒からか、孔がさらにきゅっと窄まった。それでも漏れ聞こえる声の甘ったるさから判断し、甲洋はゆっくりと、人差し指を奥へと進めてみる。まずは浅い場所からじわじわと探り、内壁に体液を馴染ませるようにしながら徐々に深くまで侵入していくと、操の口から漏れだす声がいっそう甘く艶めいてくる。 「ぁん、ぁ、や……おしり、なんで、っ、ぁ、ぁ……っ」 「つらい?」 「っく、なぃ……けど、ぁ、んっ、んっ」 背中へ向かって反り返るようにピンと張りつめたしっぽが、小刻みに震えている。白い指先が、カリカリと悩ましそうにシーツを掻き乱していた。 赤く濡れた粘膜が、しっとりと熟れたように甲洋の指に絡みつく。早く犯してしまいたいという欲求をギリギリのところで押し殺し、辛抱強くそこを解きほぐす動作に没頭した。身を屈めると唇を寄せ、しっぽの付け根の裏側にキスをすると、孔がぎゅうと窄まって指がさらに締めつけられる。 「にゃぅッ、ぁ、あ! しっぽやだ、へんになるぅ……っ」 言葉とは反対に、尻がさらに高く持ち上がって左右に揺れていた。初めて触れられるとは思えないほどの感度のよさに、甲洋の手はさらに大胆になっていく。指を二本に増やしながら、しっぽの付け根に緩く歯を立てて吸い上げた。 操が涙を散らしながら、「やあぁ!」と高い悲鳴を漏らした。再び勃ち上がって震えていた赤い幼茎から、プシュウと音を立てて薄い白濁が吐き出される。 「また、イッたんだね」 「ぁ……ぁー、ぁー、……っ」 ゆっくりと指を引き抜きながら問いかけても、操は答えられる状態ではなかった。腰がすっかり抜けて、ぐにゃりと身体がシーツに沈む。 少し休ませてやったほうがいいのかもしれない。だけどスラックスを押し上げる中心が、早く早くと痛いほど張りつめて先を急かしている。 苦しそうに上下する肩を見下ろし、甲洋もまた興奮から息を荒げていた。身体が熱い。全身に汗が滲んでいた。 膝立ちになりながら、緩めていただけのネクタイを解いてベッドの下に放り投げる。ワイシャツのボタンも全て外して前をはだけてしまうと、ベルトに手をかけ寛げていく。 「こう、よ……」 半ば意識を飛ばしかけていた操が、顔をこちらに向けていた。ぼうっとした表情で半身を起こし、甲洋のウエストに手を伸ばしてくる。 「っ、操?」 操が完全に身体をこちらに向けた。軽く腹を押されて、甲洋の腰があっけなく沈む。 下着に手がかかり、軽くずらされるだけで怒張した肉茎がぶるりと飛びだした。甲洋は息を呑み、カッと頬に熱を集める。 操は天を突くように張りつめたそれに目を細め、蕩けるような笑みを浮かべた。 「あは……甲洋の、嬉しくなってる」 操の手が怒張に触れる。ただ呆然とその光景を見ていた甲洋だったが、唇を寄せようとする操の頭に慌てて手を置いて遠ざけた。 「いいから! そんなことしなくても」 「なんでぇ?」 赤面しながら目を泳がせる甲洋に、操は悲しそうに眉を寄せ、可愛く唇を尖らせた。 「おれだって甲洋のこと嬉しくしたいのに」 「操……っ」 「ずっとこうしたかったんだ」 操は甲洋の制止も聞かず、迷わず顔を近づけて先端の窪みに舌を這わせた。滲んだ先走りを舐め取られ、一気に駆け抜けた背徳感に背筋が震える。 「ぅ、あ……ッ!」 上ずった声を漏らしながら、片手で顔半分を覆い隠した。ひどい罪悪感。本気で拒めば幾らでも払いのけることができたはずなのに、それをしなかった自分への苛立ちと失望に胸を焼かれる。だけど甲洋の雄は期待に震え、滾ったままだ。 「ほら、甲洋のここだって、してほしいって言ってるよ」 裏筋に真っ赤な舌を滑らせて、操は竿の根元に小さな両手を添えると先端を口の中に収めてしまう。たっぷり唾液をまとった舌と口腔を絡みつかせ、悩ましそうに睫毛を伏せながら頭を上下に振りはじめた。 いたたまれない。だけどその卑猥すぎる光景に、指の隙間から目が離せなかった。 操は慣れていた。他を知らないから比べようがない。だけど多分、とても上手いのだと思う。 「操、もう、いい!」 このまま身を委ねたい欲求を薙ぎ払い、前髪を掴んで引き剥がした。操は唾液と甲洋の先走りで口の端を光らせたまま、ぼうっとした眼差しで見上げてくる。 「ッ、? 甲洋……? よく、なかった……?」 みるみるうちに、その表情が悲しげに歪んでくる。甲洋は焦燥にも似た感情に唇を噛み締め、それでも首を左右に振った。 「じゃあ、どうして怒ってるの?」 それは簡潔に答えられるものではなかった。お前がエロすぎるから。慣れているから。この子にこんな真似を仕込んだ男に殺意すら覚えているのに、どうしてそれが自分じゃなかったのかという、詮無い苛立ちを抑えられない。 甲洋にとっては初めてのことで、あと一瞬でも遅ければイかされていた。他の男がよくなるために教え込まれた技で、自分が気持ちよくなってしまうのが悔しかった。だったらぜんぶ塗り替えてしまいたい。嫉妬と独占欲が渦巻いている。 甲洋は操に手を伸ばし、少し乱暴に引き寄せると力いっぱい抱きすくめた。 「こ、甲洋?」 「怒ってないし、すごく、よかった。だから……怒ってる」 「怒ってるんじゃん、やっぱり」 「……うん。怒ってる」 「そっか」 操が笑った。 「やっぱり君って迷路みたい。ぐちゃぐちゃしてて、難しい」 「……ごめん」 「いいよ。だってそれが甲洋だもん」 やわい両腕に頭を抱き込まれると、なぜだか少し泣きたくなった。小さな白い手が、焦げ茶の癖毛を許すように優しく撫でる。たまらなく熱いものが込み上げて、甲洋は震える息を吐きだした。 「……好きだ、操」 その胸に顔を埋めて、心の底から溢れた想いを言葉に乗せた。 「好きなんだ。お前のなかに挿れたい。俺で、お前のなかを汚したい。本当はずっと、お前のことが欲しかった」 「甲洋は、ずっとそれを我慢してたの?」 言葉もなく、ただ頷いた。その仕草が我ながら子供っぽいような気がして、格好がつかないことにまた少し苛立つ。けれど操は嬉しそうだった。甲洋の頭をぎゅうと抱きしめ、焦げ茶の髪に何度も頬を擦りつける。 「嬉しい。やっと君の欲しいものがわかった」 操の唇が甲洋の額に押しつけられる。彼はこのあと何をどうするのかを、なんとなくではあるが察していたようだった。 「お尻で、するんだね」 「うん、挿れたい」 「──ん、いいよ」 操が甲洋から離れ、さっきと同じようにシーツに胸を伏せながら高く掲げた尻を突き出してくる。 「来て、甲洋。君と一緒に嬉しくなりたい」 甘い誘いに、脳がふやけたようになる。その背を追って膝立ちになると、汗ばんだ双丘に手を這わせながら、掴み上げた自身の先端をそっと孔に押しつけた。 操は首をひねって甲洋を見ている。なにか言うべきなのかもしれない。だけど気の利いた言葉は浮かんでこなかった。心臓が痛い。怖いくらい高鳴っている。ただ、名前を呼んだ。 「操……」 「ぁ、ぅぐ……っ」 窄まりに押しつけた切っ先を、ゆっくりと潜り込ませた。苦しげにくぐもった声が聞こえる。それでも甲洋は止まらなかった。薄い肉の丘をそれぞれ掴み、前のめりになって圧をかける。指とは比べ物にならない存在感に、狭すぎる入り口がめくれあがった。 「あつ……ぃッ、ぁ、甲洋、はいって、くる……!」 「みさお、ぁ、みさお……!」 熱い肉癖が抵抗を示したのは最初だけだった。はじめに慣らしたぶんと、腸壁の滑りに助けられ、ずるずると飲み込まれていく。 操は苦しそうに全身を震わせていたが、痛がっている様子はない。しかし実際に痛みがないわけではなく、ただ麻痺しているだけなのだということは察しがついた。発情する身体が、持ち主を守るためにすべての感覚を快感として拾い上げようとしている。それは甲洋にとっての免罪符にもなった。 「ぁぐ、ぅ! おな、か、苦し……ッ、ぁ、こう、よ」 「ごめん、操……あと、少し……」 薄っぺらい下腹部が、ぎゅうと緊張して今にも搾り取られてしまいそうだった。甲洋は歯を食いしばって堪えながら、根元まで全てを収めきってしまう。操がひゅっと息を呑んで背を反らし、やがて力なくシーツに胸を沈ませた。 結合部から痺れるように這い上がる快感の大きさに、身動きが取れない。一言も声を発せないまま、甲洋は獣じみた息を漏らした。大粒の汗が、白い背に吸い込まれるように落ちていく。 「ぁ、ぁ……ぅ……」 操は息絶える寸前のような呼吸と、か細い喘ぎを繰り返していた。その後孔は限界までシワが伸ばされ、甲洋の形になっている。 (俺の、形……操の、身体が) その瞬間、溺れそうなほどの充足感で満たされていくのを感じた。小さな孔も、狭い中も、誘うみたいに赤く染まった胸の先端も、蜜をこぼす屹立も。ぜんぶぜんぶ俺に愛されるためだけにあるのだと、傲慢な雄の支配欲が噴き出して止まらなくなる。 「操……っ」 本能に抗うことなく、甲洋は腰を揺り動かした。初めてだから優しくしようとか、無理をさせないようにゆっくりしようとか、頭の片隅にあるだけで理性がうまく働かない。ヒトから獣へと変わり果てたような、そんな気分だった。 「あっ、ヒッ、あぁっ!」 操は立てたしっぽを痙攣させて、甲高い嬌声を漏らした。その声がよりいっそう甲洋の欲を駆り立てる。狭い腸内に擦られて、噴き出すような快感が腹の底から湧き上がる。穿てば穿つほど、切羽詰まった操の声は甘く上ずり、甲洋の脳を犯していった。 「にゃぅ、あっ、だめ、き、きも、ちぃ……っ、おしり、きもちい、よぉ……!」 「俺もいい……なか、すごく……」 その背を抱いて、柔らかな産毛に覆われた耳に唇を押しつける。甲洋が漏らす声や吐息にも感じてしまうのか、操の下腹がブルリと震えた。中の締めつけがいっそう増す。きゅうきゅうと食んでは、まるで射精を促すように肉壁が蠢いていた。 「好きだ……操、好きだ……っ」 「おれ、おれも、ッ、こうよ、アッ、好き、赤ちゃん、ほし、っ……!」 激しく腰を打ちつけながら、いっそのこと本当に孕んでしまえばいいと思った。一滴も余すことなく、この子のナカに注ぎたい。どんなにしたって赤ん坊なんかできるはずがないのに、今はそんな摂理や常識すらどうでもよかった。 ぱたぱたと首を振って悶える操の耳の根元を、唇で捕らえる。ぱっくりと咥えて音を立てながら吸い上げると、腕の中の身体がガクガクと大きく跳ねた。 「にゃあぁっ、あ、あぁ──……っ!」 揺さぶられるたびにプルプルと震えていた操の赤い陰茎から、透明な液が噴き出した。その瞬間、甲洋の頭が真っ白になる。ドクン、と心臓が大きく音を立て、総毛立つような感覚が背筋を這った。 「ぁっ、く……ぅ……ッ!」 低く呻きながら腰を震わせ、奥に叩きつけるように一気に欲望をぶちまける。頭の中は白く発光したまま、幾度かの明滅を繰り返していた。 「──ッ、ぁ、ぁー……っ、ぁ……出て、る……熱いの、ビクビク、してる……」 放流を受け止めながら、操は下腹部と内腿を痙攣させた。甲洋の腰が跳ねるたび、同時に身を跳ねさせる。 やがて身体から力が抜けて、折り重なるようにぐったりと沈んだ。指の先まで痺れたようになっている。シーツの上で震えている小さな手の甲に手をかぶせ、指の隙間を縫うように強く握りしめると、一瞬だけ気をやっていた操の耳が小さく跳ねた。 「こう、よ」 「操……平気……?」 軽く首をひねった操と、至近距離で目が合った。彼は夢を見ているようにぽぅっとした瞳を瞬かせ、「へいき」と言いながら幼い仕草で頷いた。そして甲洋の指を握り返してくる。 「甲洋、好き」 「うん……俺も……」 「ねぇ、もっとしよ。もっといっぱい欲しい」 「……ん、俺も」 同じ返事を繰り返すしかできないことが、格好悪くて情けなかった。それでもこの子は気にしないし、ただ受け止めてくれるんだなと、そう思うとまた少し泣きたくなる。 甲洋は操の柔らかな裸体の上に体重をかけたままで、操はその重さを受け止めている。中には未だ、甲洋が入ったままだ。 (今度は……今度こそ……) 軽く唇を触れ合わせながら、優しくしようと、そう思う。 叩きつけるみたいな欲望の波が一度は去り、今は愛おしさだけが、ゆるゆると熱を取り戻してそこにあった。 ←戻る ・ 次へ→
薄く血がこびりついた唇は、ほのかに鉄の味がする。
甲洋から積極的にキスをするのは初めてだった。存外激しい口づけに、操は潤んだ瞳をまん丸に見開いて驚いていた。けれどその唇も表情も、幾度となく音を立てて吸っているうちに徐々にほどけて柔らかくなっていく。
「んにゅ、ぅ、ぁ……うれ、し……っ」
一瞬だけ唇がほつれた拍子に漏らされた声を、かぶりつくようにして吐息ごと丸飲みにする。くぐもった声と二人分の唾液が混ざり合う音が、頭の芯にジクジクと響き渡っていた。
発情する操の身体はとても顕著に反応を示した。舌と舌が強く擦れ合うたびに、腕の中で健気に身を震わせる。必死でしがみついてくる両手が、スーツのジャケット越しに甲洋の背中を引っ掻いていた。厚い布越しの感覚にもどかしさが止まらない。
唇を重ねたまま、片手でネクタイの結び目を緩めた。首元まできっちり留められていたボタンも幾つか外し、乱暴にジャケットを脱ぎ捨てる。
操は甲洋の傷ついた口端に赤い舌を這わせていた。ちゅうと吸い上げられると、痛みと一緒に気が遠くなるような心地よさを覚えて、背筋が震える。
「ふぁっ、ぅ、んッ」
平べったい舌を絡めとり、仕返しとばかりに緩く歯を立てながら、甲洋の手は自然と操の胸を探るように蠢いていた。膨らみなど存在しない。摘める程度の肉しか乗っていないそこを、それでも少し強引にシャツの上から揉みしだく。すると手の平にほんの小さなしこりのようなものを感じて、甲洋は咄嗟に動きを止める。
操の乳首はまともに触れてもいないうちから勃起していた。ツンと影ができるほどシャツを押し上げている二ヶ所の点に、茹だるような興奮が込み上げる。
完全に意識を他所にもっていかれたことで唇が開放されると、酸欠気味の操は息を乱しながら放心状態になっていた。
(落ち着け、落ち着け)
暴走しそうになる意識を繋ぎ止め、甲洋は操の下肢へと手を伸ばす。そっとシャツをたくし上げていくと、下着を穿いていない半身がいともたやすく露わになった。ついさっき達したばかりの赤い屹立は、放ったもので濡れている。薄い白濁が股の付け根にまで伝い落ち、粗相をしたようにぐちゃぐちゃになっていた。
「あっ……ぁ、ん……っ!」
ゆるく勃ちあがりかけている茎に軽く触れただけで、操は甘ったるい声をあげながらその身を大きく揺らした。立てた両膝でピンと爪先を突っ張らせ、床から腰を浮かせている。甲洋はその隙間を縫って、シャツを一気に胸の上までたくし上げてしまう。
しなやかな曲線が露わになり、白い肌は汗ばんで艶を放っていた。ぷっくりと膨らんだふたつの粒が、薄い胸の上にはしたなく乗っている。それは野いちごのように真っ赤に色づき、誘い込むために存在を主張しているようだった。
呼吸も忘れて思わず見入る。操のここは、これほど色が濃かっただろうか。
甲洋は幾度か彼の裸体を見たことがあった。そのどれもがほとんど事故のようなものだったが、そうと分かるほどにうっすら色が違っていた程度だったと記憶している。
(これも、発情期のせい……?)
もしそうなのだとしたら、なんていやらしい身体なんだろう。甲洋は操の腰を抱き込むと、誘われるままにその粒へと唇を寄せていった。
「ふぁ、ん、にゃあぁ……っ」
操の腰がビクビクと踊った。しっかりと押さえつけながら、甲洋は堪らない気持ちでそこにむしゃぶりついた。尖らせた舌の先で執拗に転がし、じゅうと大きな音を立てて吸い上げる。操は初めてとは思えないほど淫らに身をくねらせて、甘ったるい嬌声を発していた。甲洋の髪を掴んでは掻き乱し、いやいやと首を振りたくる。
「くぅ、ぁ、だめ……それ、や、やぁ、ぁ……ッ」
唇はもう一方にも移動して、夢中で責め立てながら片手を改めて操の下肢へと伸ばしていく。そこはもはや完全に勃起して、蜜を零しながら脈打っていた。扱けばさらに溢れてくる。
胸と性器を同時に愛撫しながら、甲洋は口内で芯をもつ粒に堪らず歯を立てた。操は涙を浮かべた瞳を見開き、いっそう大きく身をしならせる。
その瞬間、手の中で幹が弾けた。潮を吹くように精を吐きだし、声なき悲鳴をあげながら達してしまう。抱き込んでいる腰がひどくのたうち、毛が逆立って一回り膨らんだしっぽの先まで、ブルブルと激しく痙攣していた。
「ッ、~~……! はぁ、ぅ、──ぁっ、ぁー、……!」
やがて甲洋の頭を掻き乱していた両手が、床に力なくパタリと落ちた。極致の余韻に絡めとられたまま、操はときどき引き攣ったように身を跳ねさせて、か細い喘ぎ混じりの呼吸を繰り返している。瞳孔が狭まった瞳は焦点が定まっていない。口の端からはだらしなく唾液が滴っていた。
この手で施した愛撫で忘我の状態になっている操に、甲洋は愛しさを募らせる。
「操、動ける?」
「……っ、?」
「床、背中痛いだろ」
気遣う言葉とは裏腹な餓えた眼差しで、甲洋は投げ出されている操の手首を掴むと引っ張り起こした。ぐったりと胸にもたれかかってくる身体を軽々と担ぎ上げ、勢いをつけてベッドの上へと移動させる。シャツをすっぽりと脱がせてしまうと、骨が抜けたようになっている身体をひっくり返して、四つん這いの体勢をとらせた。
朦朧としたまま未だに戻って来られない様子の操は、ただなすがままだった。
「こ、こう、よ」
操は自分が求めているものを、分かっているようでいて分かっていない。身体はどこまでも素直に快感を受け入れるくせに、それでいてこれから起こることが分からず、不安に苛まれてもいる。真後ろに向けてぴったりと伏せている耳を戦慄かせ、長いしっぽを小刻みに振っているのがその証拠だった。
それでも今の甲洋は後先を考えていられない。桃色に色づく臀部と、その濡れた谷間を目の前に突きだされ、気づかってやれるだけの余裕など残されてはいなかった。
ごくりと喉を鳴らし、柔らかな曲線を描く小さな尻に手の平を這わせる。しっとりと吸いつくような感触に熱い息を漏らしていると、しっぽがムチを振るうような動きで上下にしなった。
甲洋はふとそれに手をやり、緩く握って付け根から先端にかけてをするりと扱きあげてみた。すると操の腰がピクンと跳ねて、尻がさらに高く持ち上がる。その反応に味をしめ、甲洋はしっぽの付け根の裏側を親指で軽く擦り上げてみた。
「んっ、んにゃっ、ぁ、ゃ」
「ここ、いい?」
シーツに片頬を擦りつけ、握りしめた拳を唇に宛てがいながら操がこくこくと頷いた。皮膚が粟立っているのがよく分かる。傷ひとつない白い背が、ぶるりと大きく戦慄いていた。
「じゃあ、ここは?」
もう片方の手で谷間の中心に触れてみる。伝い落ちた体液でしとどに濡れた孔の窄まりを、指先でくるくるとなぞってみた。
「あっ、ひゃぅ、ん!」
異物への警戒からか、孔がさらにきゅっと窄まった。それでも漏れ聞こえる声の甘ったるさから判断し、甲洋はゆっくりと、人差し指を奥へと進めてみる。まずは浅い場所からじわじわと探り、内壁に体液を馴染ませるようにしながら徐々に深くまで侵入していくと、操の口から漏れだす声がいっそう甘く艶めいてくる。
「ぁん、ぁ、や……おしり、なんで、っ、ぁ、ぁ……っ」
「つらい?」
「っく、なぃ……けど、ぁ、んっ、んっ」
背中へ向かって反り返るようにピンと張りつめたしっぽが、小刻みに震えている。白い指先が、カリカリと悩ましそうにシーツを掻き乱していた。
赤く濡れた粘膜が、しっとりと熟れたように甲洋の指に絡みつく。早く犯してしまいたいという欲求をギリギリのところで押し殺し、辛抱強くそこを解きほぐす動作に没頭した。身を屈めると唇を寄せ、しっぽの付け根の裏側にキスをすると、孔がぎゅうと窄まって指がさらに締めつけられる。
「にゃぅッ、ぁ、あ! しっぽやだ、へんになるぅ……っ」
言葉とは反対に、尻がさらに高く持ち上がって左右に揺れていた。初めて触れられるとは思えないほどの感度のよさに、甲洋の手はさらに大胆になっていく。指を二本に増やしながら、しっぽの付け根に緩く歯を立てて吸い上げた。
操が涙を散らしながら、「やあぁ!」と高い悲鳴を漏らした。再び勃ち上がって震えていた赤い幼茎から、プシュウと音を立てて薄い白濁が吐き出される。
「また、イッたんだね」
「ぁ……ぁー、ぁー、……っ」
ゆっくりと指を引き抜きながら問いかけても、操は答えられる状態ではなかった。腰がすっかり抜けて、ぐにゃりと身体がシーツに沈む。
少し休ませてやったほうがいいのかもしれない。だけどスラックスを押し上げる中心が、早く早くと痛いほど張りつめて先を急かしている。
苦しそうに上下する肩を見下ろし、甲洋もまた興奮から息を荒げていた。身体が熱い。全身に汗が滲んでいた。
膝立ちになりながら、緩めていただけのネクタイを解いてベッドの下に放り投げる。ワイシャツのボタンも全て外して前をはだけてしまうと、ベルトに手をかけ寛げていく。
「こう、よ……」
半ば意識を飛ばしかけていた操が、顔をこちらに向けていた。ぼうっとした表情で半身を起こし、甲洋のウエストに手を伸ばしてくる。
「っ、操?」
操が完全に身体をこちらに向けた。軽く腹を押されて、甲洋の腰があっけなく沈む。
下着に手がかかり、軽くずらされるだけで怒張した肉茎がぶるりと飛びだした。甲洋は息を呑み、カッと頬に熱を集める。
操は天を突くように張りつめたそれに目を細め、蕩けるような笑みを浮かべた。
「あは……甲洋の、嬉しくなってる」
操の手が怒張に触れる。ただ呆然とその光景を見ていた甲洋だったが、唇を寄せようとする操の頭に慌てて手を置いて遠ざけた。
「いいから! そんなことしなくても」
「なんでぇ?」
赤面しながら目を泳がせる甲洋に、操は悲しそうに眉を寄せ、可愛く唇を尖らせた。
「おれだって甲洋のこと嬉しくしたいのに」
「操……っ」
「ずっとこうしたかったんだ」
操は甲洋の制止も聞かず、迷わず顔を近づけて先端の窪みに舌を這わせた。滲んだ先走りを舐め取られ、一気に駆け抜けた背徳感に背筋が震える。
「ぅ、あ……ッ!」
上ずった声を漏らしながら、片手で顔半分を覆い隠した。ひどい罪悪感。本気で拒めば幾らでも払いのけることができたはずなのに、それをしなかった自分への苛立ちと失望に胸を焼かれる。だけど甲洋の雄は期待に震え、滾ったままだ。
「ほら、甲洋のここだって、してほしいって言ってるよ」
裏筋に真っ赤な舌を滑らせて、操は竿の根元に小さな両手を添えると先端を口の中に収めてしまう。たっぷり唾液をまとった舌と口腔を絡みつかせ、悩ましそうに睫毛を伏せながら頭を上下に振りはじめた。
いたたまれない。だけどその卑猥すぎる光景に、指の隙間から目が離せなかった。
操は慣れていた。他を知らないから比べようがない。だけど多分、とても上手いのだと思う。
「操、もう、いい!」
このまま身を委ねたい欲求を薙ぎ払い、前髪を掴んで引き剥がした。操は唾液と甲洋の先走りで口の端を光らせたまま、ぼうっとした眼差しで見上げてくる。
「ッ、? 甲洋……? よく、なかった……?」
みるみるうちに、その表情が悲しげに歪んでくる。甲洋は焦燥にも似た感情に唇を噛み締め、それでも首を左右に振った。
「じゃあ、どうして怒ってるの?」
それは簡潔に答えられるものではなかった。お前がエロすぎるから。慣れているから。この子にこんな真似を仕込んだ男に殺意すら覚えているのに、どうしてそれが自分じゃなかったのかという、詮無い苛立ちを抑えられない。
甲洋にとっては初めてのことで、あと一瞬でも遅ければイかされていた。他の男がよくなるために教え込まれた技で、自分が気持ちよくなってしまうのが悔しかった。だったらぜんぶ塗り替えてしまいたい。嫉妬と独占欲が渦巻いている。
甲洋は操に手を伸ばし、少し乱暴に引き寄せると力いっぱい抱きすくめた。
「こ、甲洋?」
「怒ってないし、すごく、よかった。だから……怒ってる」
「怒ってるんじゃん、やっぱり」
「……うん。怒ってる」
「そっか」
操が笑った。
「やっぱり君って迷路みたい。ぐちゃぐちゃしてて、難しい」
「……ごめん」
「いいよ。だってそれが甲洋だもん」
やわい両腕に頭を抱き込まれると、なぜだか少し泣きたくなった。小さな白い手が、焦げ茶の癖毛を許すように優しく撫でる。たまらなく熱いものが込み上げて、甲洋は震える息を吐きだした。
「……好きだ、操」
その胸に顔を埋めて、心の底から溢れた想いを言葉に乗せた。
「好きなんだ。お前のなかに挿れたい。俺で、お前のなかを汚したい。本当はずっと、お前のことが欲しかった」
「甲洋は、ずっとそれを我慢してたの?」
言葉もなく、ただ頷いた。その仕草が我ながら子供っぽいような気がして、格好がつかないことにまた少し苛立つ。けれど操は嬉しそうだった。甲洋の頭をぎゅうと抱きしめ、焦げ茶の髪に何度も頬を擦りつける。
「嬉しい。やっと君の欲しいものがわかった」
操の唇が甲洋の額に押しつけられる。彼はこのあと何をどうするのかを、なんとなくではあるが察していたようだった。
「お尻で、するんだね」
「うん、挿れたい」
「──ん、いいよ」
操が甲洋から離れ、さっきと同じようにシーツに胸を伏せながら高く掲げた尻を突き出してくる。
「来て、甲洋。君と一緒に嬉しくなりたい」
甘い誘いに、脳がふやけたようになる。その背を追って膝立ちになると、汗ばんだ双丘に手を這わせながら、掴み上げた自身の先端をそっと孔に押しつけた。
操は首をひねって甲洋を見ている。なにか言うべきなのかもしれない。だけど気の利いた言葉は浮かんでこなかった。心臓が痛い。怖いくらい高鳴っている。ただ、名前を呼んだ。
「操……」
「ぁ、ぅぐ……っ」
窄まりに押しつけた切っ先を、ゆっくりと潜り込ませた。苦しげにくぐもった声が聞こえる。それでも甲洋は止まらなかった。薄い肉の丘をそれぞれ掴み、前のめりになって圧をかける。指とは比べ物にならない存在感に、狭すぎる入り口がめくれあがった。
「あつ……ぃッ、ぁ、甲洋、はいって、くる……!」
「みさお、ぁ、みさお……!」
熱い肉癖が抵抗を示したのは最初だけだった。はじめに慣らしたぶんと、腸壁の滑りに助けられ、ずるずると飲み込まれていく。
操は苦しそうに全身を震わせていたが、痛がっている様子はない。しかし実際に痛みがないわけではなく、ただ麻痺しているだけなのだということは察しがついた。発情する身体が、持ち主を守るためにすべての感覚を快感として拾い上げようとしている。それは甲洋にとっての免罪符にもなった。
「ぁぐ、ぅ! おな、か、苦し……ッ、ぁ、こう、よ」
「ごめん、操……あと、少し……」
薄っぺらい下腹部が、ぎゅうと緊張して今にも搾り取られてしまいそうだった。甲洋は歯を食いしばって堪えながら、根元まで全てを収めきってしまう。操がひゅっと息を呑んで背を反らし、やがて力なくシーツに胸を沈ませた。
結合部から痺れるように這い上がる快感の大きさに、身動きが取れない。一言も声を発せないまま、甲洋は獣じみた息を漏らした。大粒の汗が、白い背に吸い込まれるように落ちていく。
「ぁ、ぁ……ぅ……」
操は息絶える寸前のような呼吸と、か細い喘ぎを繰り返していた。その後孔は限界までシワが伸ばされ、甲洋の形になっている。
(俺の、形……操の、身体が)
その瞬間、溺れそうなほどの充足感で満たされていくのを感じた。小さな孔も、狭い中も、誘うみたいに赤く染まった胸の先端も、蜜をこぼす屹立も。ぜんぶぜんぶ俺に愛されるためだけにあるのだと、傲慢な雄の支配欲が噴き出して止まらなくなる。
「操……っ」
本能に抗うことなく、甲洋は腰を揺り動かした。初めてだから優しくしようとか、無理をさせないようにゆっくりしようとか、頭の片隅にあるだけで理性がうまく働かない。ヒトから獣へと変わり果てたような、そんな気分だった。
「あっ、ヒッ、あぁっ!」
操は立てたしっぽを痙攣させて、甲高い嬌声を漏らした。その声がよりいっそう甲洋の欲を駆り立てる。狭い腸内に擦られて、噴き出すような快感が腹の底から湧き上がる。穿てば穿つほど、切羽詰まった操の声は甘く上ずり、甲洋の脳を犯していった。
「にゃぅ、あっ、だめ、き、きも、ちぃ……っ、おしり、きもちい、よぉ……!」
「俺もいい……なか、すごく……」
その背を抱いて、柔らかな産毛に覆われた耳に唇を押しつける。甲洋が漏らす声や吐息にも感じてしまうのか、操の下腹がブルリと震えた。中の締めつけがいっそう増す。きゅうきゅうと食んでは、まるで射精を促すように肉壁が蠢いていた。
「好きだ……操、好きだ……っ」
「おれ、おれも、ッ、こうよ、アッ、好き、赤ちゃん、ほし、っ……!」
激しく腰を打ちつけながら、いっそのこと本当に孕んでしまえばいいと思った。一滴も余すことなく、この子のナカに注ぎたい。どんなにしたって赤ん坊なんかできるはずがないのに、今はそんな摂理や常識すらどうでもよかった。
ぱたぱたと首を振って悶える操の耳の根元を、唇で捕らえる。ぱっくりと咥えて音を立てながら吸い上げると、腕の中の身体がガクガクと大きく跳ねた。
「にゃあぁっ、あ、あぁ──……っ!」
揺さぶられるたびにプルプルと震えていた操の赤い陰茎から、透明な液が噴き出した。その瞬間、甲洋の頭が真っ白になる。ドクン、と心臓が大きく音を立て、総毛立つような感覚が背筋を這った。
「ぁっ、く……ぅ……ッ!」
低く呻きながら腰を震わせ、奥に叩きつけるように一気に欲望をぶちまける。頭の中は白く発光したまま、幾度かの明滅を繰り返していた。
「──ッ、ぁ、ぁー……っ、ぁ……出て、る……熱いの、ビクビク、してる……」
放流を受け止めながら、操は下腹部と内腿を痙攣させた。甲洋の腰が跳ねるたび、同時に身を跳ねさせる。
やがて身体から力が抜けて、折り重なるようにぐったりと沈んだ。指の先まで痺れたようになっている。シーツの上で震えている小さな手の甲に手をかぶせ、指の隙間を縫うように強く握りしめると、一瞬だけ気をやっていた操の耳が小さく跳ねた。
「こう、よ」
「操……平気……?」
軽く首をひねった操と、至近距離で目が合った。彼は夢を見ているようにぽぅっとした瞳を瞬かせ、「へいき」と言いながら幼い仕草で頷いた。そして甲洋の指を握り返してくる。
「甲洋、好き」
「うん……俺も……」
「ねぇ、もっとしよ。もっといっぱい欲しい」
「……ん、俺も」
同じ返事を繰り返すしかできないことが、格好悪くて情けなかった。それでもこの子は気にしないし、ただ受け止めてくれるんだなと、そう思うとまた少し泣きたくなる。
甲洋は操の柔らかな裸体の上に体重をかけたままで、操はその重さを受け止めている。中には未だ、甲洋が入ったままだ。
(今度は……今度こそ……)
軽く唇を触れ合わせながら、優しくしようと、そう思う。
叩きつけるみたいな欲望の波が一度は去り、今は愛おしさだけが、ゆるゆると熱を取り戻してそこにあった。
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