2025/09/17 Wed 何が起こっているのだろう。 花京院の思考はぴたりと停止したまま、動かない。 絶世の美男子がぐっと顔を近づけて来て、気が付いたら唇を塞がれていた。 見た目通り肉厚な感触が、酷く、熱い。 「~~~ッ!?」 そこで、花京院の思考はようやく動き出した。 これはキスだ。接吻だ。未だかつて、誰ともしたことがない、初めての。 「んぅッ、ちょ、っと、まっ……!」 頭の中が酷く混乱していた。 とにかく我武者羅に身を捩り、顔を背けようとする。だがその前に巨大な手が花京院の二の腕を掴み上げ、引き寄せる。その力強さに爪が食い込み、痛みが走った。 「痛ッ……!」 思わず上げた悲鳴に、相手が一瞬だけ動きを止めた。けれど、すぐに逞しい腕の中に閉じ込められてしまう。 食らいついてくる唇にべろりと下唇を舐められて、目の前が真っ赤に染まった。 承太郎の手が、花京院の伸びた襟足を押さえ込む。必死で厚い胸板を押し返そうとしても、相手はぴくりとも動かなかった。 そうしている間に、柔らかく濡れた感触が口腔に滑り込んでくる。唇だけでなく、彼は舌も大きくて分厚かった。それがぐるりと繊細な粘膜を舐め上げ、硬くなって縮こまる花京院の舌を掬い上げるようにして捕える。 瞬間、背筋に痺れが駆け抜けた。 ぞくぞくと鋭く這い上がるそれに、花京院は大きく肩を震わせる。 息つく間も与えられず貪られていると、思考にどんどん雲がかかった。舌が擦れ合う度に苦味が広がる。多分、煙草の味。 くたくたになるほど身体から力が抜け、気が付けば引き剥がそうとしていたはずの胸板にもたれかかっていた。訳も分からず、涙が滲む。 項を押さえ込んでいた手がするりと前へ移動して、花京院の頬に這わされた。そのまま、ひと房だけ垂れ下がる赤色の髪に長い指が通される。それだけで、心が引きずられそうになった。 (熱い……溶ける……溶けて、しまう……) 内側からどろりと蕩けてしまいそうだ。 もはやどちらのものともつかぬ唾液が、口の端から零れ落ちる。 頭の芯から爪先まで、酷く痺れていた。それがまた信じられないくらい甘くて、初めての感覚に花京院はひとつ、幼子が泣くようにしゃくりを上げた。 「は、ぁ……」 銀色の糸を引いて離れていく唇を、無意識に目で追いかけた。唾液に濡れたそこを、赤い舌でペロリと舐めとる様に心臓がどくんと高鳴る。 こんなのはおかしい。間違っている。今すぐここから逃げ出さなくては。 そう思うのに、身体はちっともいうことを聞かない。くったりとベッドに沈んだ身体に、承太郎の大きな身体が覆い被さる。 「んんッ!」 食われる、と思った瞬間、承太郎の熱い舌が花京院の首筋に這わされた。 皮膚が粟立つのを感じながら、逞しい肩に爪を立てて制服に皺を作った。嫌々と首を振っても、承太郎は動きを止めない。 知らぬ間にワイシャツの前がすっかり肌蹴て、陽に焼けていない白い胸が露わにされていた。節くれだった男らしい手の平が、汗ばむ肌の上に這わされる。 「ヒッ、ぁ! なん、で、こんな……ぼくは、ちがう……盗み聞き、なんて……ッ」 好きで、していたんじゃない。 あんたたちが勝手に始めたことじゃあないか。 それが中断されたからって、その矛先がどうしてこちらに向くことになるのだろう。 だいたい、男同士でこんなこと……。 「関係ねーよ」 花京院の疑問を、承太郎はたった一言で一蹴した。 ますます意味が分からなくなって、花京院は弱々しいながらも抵抗を再開する。 だが、自分よりも一回り以上は大きく鍛え上げられた肉体に、到底敵うはずがない。 悔しくて、また涙が滲む。唇を噛み締めて屈辱に耐える花京院に追い打ちをかけたのは、馬鹿にしたような承太郎の言葉だった。 「てめー、初めてか?」 「ッ……!」 それは、男同士ですることが、という意味じゃないことくらい、すぐに分かった。 この男は花京院にセックスの経験自体がないことを、わざわざ言葉にして確かめたのだ。カッと朱色に染まる頬を、べろりと舐められて顔を背ける。 「だ、から、なんだ……そんなの、関係ないだろ!」 「いいや、あるね」 「は? あ、ちょっとッ、どこを触って……ッ!?」 「おやおや、こっちは随分と素直じゃねーか」 承太郎の手が、おもむろに花京院の股間を鷲掴んだ。そこは信じられないことに形を変えて、窮屈そうに張り詰めている。 ぐりぐりと揉み込むように触れられると、花京院の身体がバネのように大きく跳ねた。 「や、やめッ、触るな!」 慌てて伸ばした両手を、鬱陶しいといわんばかりに一纏めにされ、頭上に縫い付けるようにして押さえ込まれる。立てた両膝をバタつかせ、閉じようともがいても、承太郎の身体が邪魔をして、なにひとつ思う通りにはいかなかった。 キスも初めてだが、当然そこも他人に触れられたことのない場所だ。激しい羞恥と絶望がない交ぜになって、ついに目尻に留まっていた涙が頬を滑り落ちた。 承太郎は布越しに花京院の勃起した性器を擦る。乱暴なようでいて、それはどこかあやすような動きでもあった。 嫌だ、と思うのに、心が抗うほど身体は真逆の感覚だけを拾い上げようとする。 いつしか布越しの刺激を、もどかしいとすら感じ始めていた。 「腰が揺れているぜ」 「う、そ……ッ、ぁ、や、めて、くださ……」 「いいから素直に感じとけ」 承太郎の手が器用にベルトを外し、ファスナーを下ろして中身を取り出す頃には、花京院はただ小動物のように震えながら、か細く喘ぐことしかできなくなっていた。 先走りの滲む肉棒を、直にぬるぬると扱かれる。痛みにも似た疼きが、ねっとりと腰を食んでは花京院の心と身体を苛んだ。 明るい室内で性器を剥き出しにされていることへの羞恥すら、濡れた快楽に飲み込まれていく。両手の拘束を解かれても、花京院はただシーツを掻き毟るだけだった。 「あっ、ゃッ、嫌だ……離し、て……ッ!」 (ダメだ! もう、出る……!) 承太郎が親指の腹で性器の窪みを擦り上げた。瞬間、花京院は目を見開き、シーツから背が浮き上がるほど反り返ると、絶頂を迎える。 「――ッ……!!」 頭の中が白く染まった。 承太郎の手のなかに白濁を散らしながら、花京院は全身を強張らせ、戦慄く唇をぱくぱくと動かした。ぐったりとシーツに沈みこんでからも、絶頂の余韻が身体中の神経を悪戯に刺激して、ひく、ひく、と痙攣を繰り返す。 己の忙しない呼吸を咎めるように、薄い唇を噛み締めた。 (嘘だ……こんなこと、絶対に、あっちゃならないことだ) 男に無理やり身体を弄ばれ、無様に達してしまうなんて。 これはきっと夢に違いない。だとしたらなんて酷い悪夢だろう。早く目を覚まさなければ。 そう念じながら、きつく目を閉じる。けれど覚醒の瞬間が訪れることはなかった。 身を乗り出した承太郎の唇が、耳元に押し付けられる。 「花京院」 「ッ!」 情欲に掠れたバリトンが、耳朶を食む。 ぐっと喉を詰まらせながら目を見開けば、鼻先が触れ合うほどの距離で欲望に濡れたエメラルドが揺れていた。 なんて美しい、宝石のような瞳だろうか。今にも吸い込まれてしまいそうな気がして、花京院はほぼ無意識にほうっと熱い息を漏らしていた。 花京院がのぼせたように意識を霞ませる中、承太郎はもはや次へ行動を移していた。果物の皮を剥くみたいに、下着ごと深緑のスラックスを足首あたりまで下げられてしまう。 「!?」 これ以上どんな辱しめが待ち受けているというのか。咄嗟に逃げ出そうとして浮かせた腰を逆に抱き込まれた瞬間、思い切り身体をひっくり返された。あまりにも唐突で、危うく舌を噛みそうになる。 「な、に!? なんで、こんな格好……!?」 (う、嘘だろ? まさか、本当にするつもりか!?) 理解と感情の足並みが揃わない。 この男がなにをしようとしているのか、即座に察するだけの頭はあっても、受け入れる真似などできようはずがなかった。 尻だけを突き出すような態勢に加え、腰は承太郎の太い腕によってがっしりと掴まれている。間髪入れずに尻の割れ目をまさぐられ、血の気が引いた。 指先が濡れているのは、先ほど花京院が吐き出した精液だろうか。 「い、嫌だッ、やめ……!」 「暴れると傷がつく。痛いのが好きってんなら、別に構わねえが」 この男は、本気だ。 本気でこの身体を犯す気でいる。 花京院は歯の根をカチカチと鳴らしながら青褪めた。 承太郎の湿った指先が、奥まった場所に触れた。襞を抉じ開けるように先端が潜り込んだ瞬間、あまりのショックに身体が強張る。 「ヒッ、ぁ、痛、い……ッ!」 異物感と共に、引き攣れるような痛みが走った。 太い指が、身体の中へじわじわと入り込んでくる。関節ごとに引っかかる、太い節の感触があまりにも生々しい。侵食される恐怖に声が震えて、花京院は指先が白くなるほどシーツを握りしめた。 承太郎はひたすら出しては入れるというシンプルな動きを繰り返していた。潤いが不足すると、指先を唾液で濡らしているようだった。 「やめ、て、やだ、痛い……痛い、から……ッ」 息苦しさや苦痛はさることながら、何より花京院を困惑させたのは、根気よく繰り返されるうち、痛むばかりだったそこに別の何かが混じり始めたことだ。節くれだった長い指がゆっくりと引き抜かれる瞬間、ぞぞぞと背筋に震えが走る。 指が二本に増やされる頃には、鼻から甘ったるい息が漏れていた。 「う、く……ッ、は、はぁ、ぁ」 (なんだこれ、なんか……熱くて、じんじん、してきた) 花京院の意志とは裏腹に、身体は苦痛を逃がすために順応の道を選んでいた。都合のいい感覚だけをしきりに拾っては、花京院の思考を掻き乱す。 震える内腿の中心で、一度達したはずの自身がゆるゆると力を取り戻しつつあった。 嘘だ嘘だと心の中で繰り返しながら、花京院は涙に濡れる頬をシーツに擦りつける。 ふと、中から圧迫感が消えたと同時に気配が遠のいた。息も絶え絶えに首だけを動かして視線を彷徨わせると、何かを手にして戻って来る承太郎の姿が見えた。 彼はすぐにまた花京院の薄い尻の肉を掴んで押し広げると、中心に何かを塗りたくった。 「つめたッ、ァ、なに……!?」 保健室にあるようなアイテムだから、何かしら傷にでも塗り込むような軟膏だろうか。承太郎はそれで潤い不足を補うつもりらしかった。 その試みは見事に成功したようで、先刻よりもずっと滑らかに二本の指が中に潜り込んできた。そのぶん、あの怖気立つような感覚も増してしまう。 さらには軟膏の助けを借りて、指が3本に増やされる。これは流石に、きつい。 「うあ、ぁ! やだ、それ、苦し……ッ!」 花京院がどんなに必死に訴えても、承太郎は慎重に穴を解す作業に没頭している。内壁をぐるりと擦り上げ、捻りをきかせながら引き抜かれると、腰が感電したように小刻みに震えた。 この身体は一体どうなっているのだろうか。嫌だと思うし、痛いとも感じているはずなのに、どこか甘やかな痺れが花京院の芯を灼いていた。 これが快楽なのだとしたら、やっぱり受け入れられそうもない。頭がおかしくなってしまう。心と身体がバラバラで、もう何も分からない。 シーツにしがみついてしゃくりを上げながら、とにかく早く終われとそればかり願っていた。 だけど、実際はまだ始まってすらいなかった。 「ヒッ、ぁ!」 3本の指が、ずるりと引き抜かれる。 身を震わせる花京院の背後で、微かな金属音がした。ファスナーを下ろす音がいやに大きく空気を震わせ、花京院はおそるおそる背後へ視線を巡らせる。 「ッ!?」 膝立ちになった承太郎が、寛げた前から己のイチモツを取り出して、幾度か扱き上げる様を視界に捉えた。 それは自分のものとも、子供の頃に風呂場で見た父親のものともまるで違っていた。 バケモノだ。ぐんと天を仰ぐ性器は、剛直と呼ぶに相応しい逞しさで、血管を浮き上がらせて脈打っていた。 あんなとんでもないブツを入れられたら、どうなるかなんて目に見えている。殺される。確実に。 花京院は力の入らない手を伸ばし、ベッドの背もたれを掴んだ。そのまま上へと逃れようとする腰を両手で掴まれて、容赦なく引き戻される。 「い、嫌だ、無理だ! そんなの、入るわけがない!!」 「やってみなくちゃ分からねえ」 「分かる! 試すまでもない!」 舌打ちと共に、うるせぇな、という唸るような声が聞こえたけれど、構ってなんていられない。無我夢中でシーツを掻き毟り、身を捩ろうとする花京院の身体に、背後から伸びてきた両腕が絡みついた。 背中をすっぽりと覆うように体重をかけられたかと思うと、耳の裏側にちゅうと音を立てて吸い付かれる。 「やだ、ぁ!」 「花京院」 承太郎の声があまりにも切羽詰まっていて、思わず息を呑んだ。 そのまま耳たぶに吸い付かれ、何度も何度も舌を這わされる。全身の毛穴が開くような感覚に、ふぬけたように力が抜けた。 尻の谷間に熱く脈打つものが擦りつけられる。承太郎はあの女医を狂わせた甘い声で、再び「花京院」と名前を呼んだ。 「てめーが欲しい。おれのもんになれ」 「ッ!」 その声はダイレクトに花京院の腰に直撃した。 今はただカーテン越しに聞いているだけじゃない。あの声が今、自分に向けられている。 (どうして、ぼくなんだ……) 答えは実に単純で、たまたまそこにいたからだ。 承太郎は一度は女医に向けていたはずの情欲を持て余していた。 ただそれだけの理由が、無関係のはずの花京院をここまで追い込み、そして壊そうとしている。 理不尽だ。こんな状態じゃなければ、いっそ死ぬ覚悟で殴りかかるくらいはしていたかもしれない。ふざけるな。人を女の代わりにするんじゃあないと、正当な怒りをぶつけることができていたはずだ。 だけどそれが出来ないのはなぜだ。 力や体格差で敵わないから? 教師ですら恐れて関わりを避けるほどの不良だから? もっともらしい理由を連ねてみても、何かがしっくりこなかった。これだと思って選んだピースが、どこにもはまらない。 花京院は考える。実際は酷く混乱したままで、まともに思考が巡らないことは承知の上で。 (ぼくは) 例えこの場限りだとしても。 あの美しい女医を虜にし、数多の女たちを狂わせる極上の雄がたったいま求めているのが、このちっぽけな身体であるということを。 (よろこんでいる……?) 信じられない。この空条承太郎という男は、女だけでなく、男をも一瞬で雌に変えてしまうというのか。 「ッ、ぃ、ぎ……ッ!」 バカみたいに熱い塊が、散々ぱら掻き回された穴を抉った。 身体を二つに引き裂かれるような痛みという表現が、決して大袈裟なものではないくらい、味わったことのない凄まじい激痛を覚える。 「ひっ、ぐ、ッ……あ、ああぁ……!!」 やがて最も太い部分が抉じ開けるようにして侵入を果たした。 ある程度慣らされ、潤わされているとしても、その質量は尋常ではない。 見開いたまま瞬きを忘れた瞳から涙を溢れさせる花京院を、承太郎の腕が強く抱き締める。 「い、ッ……た、ぃ……ヒッ、あぁ、ッ、あ、ぐ……!」 「花京院……力を、ッ、抜け」 「そ、な、できな……あっ、だ、れか、ひ、イッ……たすけ……ッ」 手を伸ばし、必死で何かに縋ろうともがいた。だが、それはただ虚しくシーツや枕をかきむしるに終わる。 その態度が気に入らなかったのか、耳元で舌打ちが聞こえた。 そして次の瞬間、花京院は目の前で赤い花火が散るような光景を見た。 「――ッ……!!」 ずん、という鈍い音が、身体の一番深い場所から響き渡った気がした。下から内臓を押し上げられたみたいに、呼吸が止まる。 一気に全てを打ち込まれたのだと、どこか遠くに僅かに残る理性が告げていた。 さらなる痛みを感じる間もなく、花京院の身体は本当に、承太郎の『雌』にされてしまったのだ。 (嘘だ、嘘、嘘……あんなものが、ぼくの、ナカに……!) 全て、収まりきってしまうなんて。 あまりにもショックが強すぎた。心も身体も許容量をとっくに超えていた花京院は、どうしたらいいか分からず小さな子供のようにしくしくと泣いた。遅れてやってきた炙られるような痛みに、身体の震えが止まらない。 「も、ぉ……ゆる、して……」 「…………」 その様は憐れみを買うには十分すぎたのか、それ以上承太郎が動き出す気配はなかった。代わりに、すっかり萎えきって垂れ下がるばかりの性器に触れられる。 「やだ、ぁ! そこは……ッ」 きゅっと握り込まれ、扱かれる。 ようやく痛みを逃がす場所と理由を見つけたとばかりに、花京院の性器は一瞬で硬く張り詰めた。蜜のように滴る先走りに助けられ、水音を響かせながら追い上げられる。 「は、はぁッ、ぁ、や、んぅ……ッ」 甘ったれたように上ずる声が抑えられない。こんなものが自分の口から飛び出すことが信じられなかった。 嫌々と髪を乱しながら首を振る花京院の頬に、熱い唇が押し付けられる。どこか慰めるような優しさを感じて、焼き切れる寸前だった心が締め付けられるのを感じた。 ここしか、拠り所がないような気さえして。ぴったりと重なる背中に、彼の熱と鼓動が伝わる。 打ち込まれた肉棒が身体の中でびくびくと脈打っていた。花京院が快楽に咽ぶ度、それはより大きく膨らんでいくような気がした。 けれど承太郎が腰を突き動かすことはなかった。ただ中でじっとしているだけだ。 滅茶苦茶に揺さぶられ、壊されてしまうのだとばかり思っていたのに。彼はそれをしなかった。 熱い。腹の中が、承太郎の鼓動が。ただ収まっているだけの楔が、切ない。 「イクか……?」 考える余裕すらないままに吐息だけで問われて、何度も首を縦に振る。 「んッ、ぁ、イ……く! いく、イッ、ぁ、もう!」 「いいぜ。このまま出しな」 中の肉棒をこれ以上ないほどに締め付けながら、花京院は甘ったるい声で鳴き、達した。 意識がぼんやりと遠のくのを感じる中で、承太郎が酷く辛そうに呻く声を、聞いたような気がした。 ←戻る ・ 次へ→
花京院の思考はぴたりと停止したまま、動かない。
絶世の美男子がぐっと顔を近づけて来て、気が付いたら唇を塞がれていた。
見た目通り肉厚な感触が、酷く、熱い。
「~~~ッ!?」
そこで、花京院の思考はようやく動き出した。
これはキスだ。接吻だ。未だかつて、誰ともしたことがない、初めての。
「んぅッ、ちょ、っと、まっ……!」
頭の中が酷く混乱していた。
とにかく我武者羅に身を捩り、顔を背けようとする。だがその前に巨大な手が花京院の二の腕を掴み上げ、引き寄せる。その力強さに爪が食い込み、痛みが走った。
「痛ッ……!」
思わず上げた悲鳴に、相手が一瞬だけ動きを止めた。けれど、すぐに逞しい腕の中に閉じ込められてしまう。
食らいついてくる唇にべろりと下唇を舐められて、目の前が真っ赤に染まった。
承太郎の手が、花京院の伸びた襟足を押さえ込む。必死で厚い胸板を押し返そうとしても、相手はぴくりとも動かなかった。
そうしている間に、柔らかく濡れた感触が口腔に滑り込んでくる。唇だけでなく、彼は舌も大きくて分厚かった。それがぐるりと繊細な粘膜を舐め上げ、硬くなって縮こまる花京院の舌を掬い上げるようにして捕える。
瞬間、背筋に痺れが駆け抜けた。
ぞくぞくと鋭く這い上がるそれに、花京院は大きく肩を震わせる。
息つく間も与えられず貪られていると、思考にどんどん雲がかかった。舌が擦れ合う度に苦味が広がる。多分、煙草の味。
くたくたになるほど身体から力が抜け、気が付けば引き剥がそうとしていたはずの胸板にもたれかかっていた。訳も分からず、涙が滲む。
項を押さえ込んでいた手がするりと前へ移動して、花京院の頬に這わされた。そのまま、ひと房だけ垂れ下がる赤色の髪に長い指が通される。それだけで、心が引きずられそうになった。
(熱い……溶ける……溶けて、しまう……)
内側からどろりと蕩けてしまいそうだ。
もはやどちらのものともつかぬ唾液が、口の端から零れ落ちる。
頭の芯から爪先まで、酷く痺れていた。それがまた信じられないくらい甘くて、初めての感覚に花京院はひとつ、幼子が泣くようにしゃくりを上げた。
「は、ぁ……」
銀色の糸を引いて離れていく唇を、無意識に目で追いかけた。唾液に濡れたそこを、赤い舌でペロリと舐めとる様に心臓がどくんと高鳴る。
こんなのはおかしい。間違っている。今すぐここから逃げ出さなくては。
そう思うのに、身体はちっともいうことを聞かない。くったりとベッドに沈んだ身体に、承太郎の大きな身体が覆い被さる。
「んんッ!」
食われる、と思った瞬間、承太郎の熱い舌が花京院の首筋に這わされた。
皮膚が粟立つのを感じながら、逞しい肩に爪を立てて制服に皺を作った。嫌々と首を振っても、承太郎は動きを止めない。
知らぬ間にワイシャツの前がすっかり肌蹴て、陽に焼けていない白い胸が露わにされていた。節くれだった男らしい手の平が、汗ばむ肌の上に這わされる。
「ヒッ、ぁ! なん、で、こんな……ぼくは、ちがう……盗み聞き、なんて……ッ」
好きで、していたんじゃない。
あんたたちが勝手に始めたことじゃあないか。
それが中断されたからって、その矛先がどうしてこちらに向くことになるのだろう。
だいたい、男同士でこんなこと……。
「関係ねーよ」
花京院の疑問を、承太郎はたった一言で一蹴した。
ますます意味が分からなくなって、花京院は弱々しいながらも抵抗を再開する。
だが、自分よりも一回り以上は大きく鍛え上げられた肉体に、到底敵うはずがない。
悔しくて、また涙が滲む。唇を噛み締めて屈辱に耐える花京院に追い打ちをかけたのは、馬鹿にしたような承太郎の言葉だった。
「てめー、初めてか?」
「ッ……!」
それは、男同士ですることが、という意味じゃないことくらい、すぐに分かった。
この男は花京院にセックスの経験自体がないことを、わざわざ言葉にして確かめたのだ。カッと朱色に染まる頬を、べろりと舐められて顔を背ける。
「だ、から、なんだ……そんなの、関係ないだろ!」
「いいや、あるね」
「は? あ、ちょっとッ、どこを触って……ッ!?」
「おやおや、こっちは随分と素直じゃねーか」
承太郎の手が、おもむろに花京院の股間を鷲掴んだ。そこは信じられないことに形を変えて、窮屈そうに張り詰めている。
ぐりぐりと揉み込むように触れられると、花京院の身体がバネのように大きく跳ねた。
「や、やめッ、触るな!」
慌てて伸ばした両手を、鬱陶しいといわんばかりに一纏めにされ、頭上に縫い付けるようにして押さえ込まれる。立てた両膝をバタつかせ、閉じようともがいても、承太郎の身体が邪魔をして、なにひとつ思う通りにはいかなかった。
キスも初めてだが、当然そこも他人に触れられたことのない場所だ。激しい羞恥と絶望がない交ぜになって、ついに目尻に留まっていた涙が頬を滑り落ちた。
承太郎は布越しに花京院の勃起した性器を擦る。乱暴なようでいて、それはどこかあやすような動きでもあった。
嫌だ、と思うのに、心が抗うほど身体は真逆の感覚だけを拾い上げようとする。
いつしか布越しの刺激を、もどかしいとすら感じ始めていた。
「腰が揺れているぜ」
「う、そ……ッ、ぁ、や、めて、くださ……」
「いいから素直に感じとけ」
承太郎の手が器用にベルトを外し、ファスナーを下ろして中身を取り出す頃には、花京院はただ小動物のように震えながら、か細く喘ぐことしかできなくなっていた。
先走りの滲む肉棒を、直にぬるぬると扱かれる。痛みにも似た疼きが、ねっとりと腰を食んでは花京院の心と身体を苛んだ。
明るい室内で性器を剥き出しにされていることへの羞恥すら、濡れた快楽に飲み込まれていく。両手の拘束を解かれても、花京院はただシーツを掻き毟るだけだった。
「あっ、ゃッ、嫌だ……離し、て……ッ!」
(ダメだ! もう、出る……!)
承太郎が親指の腹で性器の窪みを擦り上げた。瞬間、花京院は目を見開き、シーツから背が浮き上がるほど反り返ると、絶頂を迎える。
「――ッ……!!」
頭の中が白く染まった。
承太郎の手のなかに白濁を散らしながら、花京院は全身を強張らせ、戦慄く唇をぱくぱくと動かした。ぐったりとシーツに沈みこんでからも、絶頂の余韻が身体中の神経を悪戯に刺激して、ひく、ひく、と痙攣を繰り返す。
己の忙しない呼吸を咎めるように、薄い唇を噛み締めた。
(嘘だ……こんなこと、絶対に、あっちゃならないことだ)
男に無理やり身体を弄ばれ、無様に達してしまうなんて。
これはきっと夢に違いない。だとしたらなんて酷い悪夢だろう。早く目を覚まさなければ。
そう念じながら、きつく目を閉じる。けれど覚醒の瞬間が訪れることはなかった。
身を乗り出した承太郎の唇が、耳元に押し付けられる。
「花京院」
「ッ!」
情欲に掠れたバリトンが、耳朶を食む。
ぐっと喉を詰まらせながら目を見開けば、鼻先が触れ合うほどの距離で欲望に濡れたエメラルドが揺れていた。
なんて美しい、宝石のような瞳だろうか。今にも吸い込まれてしまいそうな気がして、花京院はほぼ無意識にほうっと熱い息を漏らしていた。
花京院がのぼせたように意識を霞ませる中、承太郎はもはや次へ行動を移していた。果物の皮を剥くみたいに、下着ごと深緑のスラックスを足首あたりまで下げられてしまう。
「!?」
これ以上どんな辱しめが待ち受けているというのか。咄嗟に逃げ出そうとして浮かせた腰を逆に抱き込まれた瞬間、思い切り身体をひっくり返された。あまりにも唐突で、危うく舌を噛みそうになる。
「な、に!? なんで、こんな格好……!?」
(う、嘘だろ? まさか、本当にするつもりか!?)
理解と感情の足並みが揃わない。
この男がなにをしようとしているのか、即座に察するだけの頭はあっても、受け入れる真似などできようはずがなかった。
尻だけを突き出すような態勢に加え、腰は承太郎の太い腕によってがっしりと掴まれている。間髪入れずに尻の割れ目をまさぐられ、血の気が引いた。
指先が濡れているのは、先ほど花京院が吐き出した精液だろうか。
「い、嫌だッ、やめ……!」
「暴れると傷がつく。痛いのが好きってんなら、別に構わねえが」
この男は、本気だ。
本気でこの身体を犯す気でいる。
花京院は歯の根をカチカチと鳴らしながら青褪めた。
承太郎の湿った指先が、奥まった場所に触れた。襞を抉じ開けるように先端が潜り込んだ瞬間、あまりのショックに身体が強張る。
「ヒッ、ぁ、痛、い……ッ!」
異物感と共に、引き攣れるような痛みが走った。
太い指が、身体の中へじわじわと入り込んでくる。関節ごとに引っかかる、太い節の感触があまりにも生々しい。侵食される恐怖に声が震えて、花京院は指先が白くなるほどシーツを握りしめた。
承太郎はひたすら出しては入れるというシンプルな動きを繰り返していた。潤いが不足すると、指先を唾液で濡らしているようだった。
「やめ、て、やだ、痛い……痛い、から……ッ」
息苦しさや苦痛はさることながら、何より花京院を困惑させたのは、根気よく繰り返されるうち、痛むばかりだったそこに別の何かが混じり始めたことだ。節くれだった長い指がゆっくりと引き抜かれる瞬間、ぞぞぞと背筋に震えが走る。
指が二本に増やされる頃には、鼻から甘ったるい息が漏れていた。
「う、く……ッ、は、はぁ、ぁ」
(なんだこれ、なんか……熱くて、じんじん、してきた)
花京院の意志とは裏腹に、身体は苦痛を逃がすために順応の道を選んでいた。都合のいい感覚だけをしきりに拾っては、花京院の思考を掻き乱す。
震える内腿の中心で、一度達したはずの自身がゆるゆると力を取り戻しつつあった。
嘘だ嘘だと心の中で繰り返しながら、花京院は涙に濡れる頬をシーツに擦りつける。
ふと、中から圧迫感が消えたと同時に気配が遠のいた。息も絶え絶えに首だけを動かして視線を彷徨わせると、何かを手にして戻って来る承太郎の姿が見えた。
彼はすぐにまた花京院の薄い尻の肉を掴んで押し広げると、中心に何かを塗りたくった。
「つめたッ、ァ、なに……!?」
保健室にあるようなアイテムだから、何かしら傷にでも塗り込むような軟膏だろうか。承太郎はそれで潤い不足を補うつもりらしかった。
その試みは見事に成功したようで、先刻よりもずっと滑らかに二本の指が中に潜り込んできた。そのぶん、あの怖気立つような感覚も増してしまう。
さらには軟膏の助けを借りて、指が3本に増やされる。これは流石に、きつい。
「うあ、ぁ! やだ、それ、苦し……ッ!」
花京院がどんなに必死に訴えても、承太郎は慎重に穴を解す作業に没頭している。内壁をぐるりと擦り上げ、捻りをきかせながら引き抜かれると、腰が感電したように小刻みに震えた。
この身体は一体どうなっているのだろうか。嫌だと思うし、痛いとも感じているはずなのに、どこか甘やかな痺れが花京院の芯を灼いていた。
これが快楽なのだとしたら、やっぱり受け入れられそうもない。頭がおかしくなってしまう。心と身体がバラバラで、もう何も分からない。
シーツにしがみついてしゃくりを上げながら、とにかく早く終われとそればかり願っていた。
だけど、実際はまだ始まってすらいなかった。
「ヒッ、ぁ!」
3本の指が、ずるりと引き抜かれる。
身を震わせる花京院の背後で、微かな金属音がした。ファスナーを下ろす音がいやに大きく空気を震わせ、花京院はおそるおそる背後へ視線を巡らせる。
「ッ!?」
膝立ちになった承太郎が、寛げた前から己のイチモツを取り出して、幾度か扱き上げる様を視界に捉えた。
それは自分のものとも、子供の頃に風呂場で見た父親のものともまるで違っていた。
バケモノだ。ぐんと天を仰ぐ性器は、剛直と呼ぶに相応しい逞しさで、血管を浮き上がらせて脈打っていた。
あんなとんでもないブツを入れられたら、どうなるかなんて目に見えている。殺される。確実に。
花京院は力の入らない手を伸ばし、ベッドの背もたれを掴んだ。そのまま上へと逃れようとする腰を両手で掴まれて、容赦なく引き戻される。
「い、嫌だ、無理だ! そんなの、入るわけがない!!」
「やってみなくちゃ分からねえ」
「分かる! 試すまでもない!」
舌打ちと共に、うるせぇな、という唸るような声が聞こえたけれど、構ってなんていられない。無我夢中でシーツを掻き毟り、身を捩ろうとする花京院の身体に、背後から伸びてきた両腕が絡みついた。
背中をすっぽりと覆うように体重をかけられたかと思うと、耳の裏側にちゅうと音を立てて吸い付かれる。
「やだ、ぁ!」
「花京院」
承太郎の声があまりにも切羽詰まっていて、思わず息を呑んだ。
そのまま耳たぶに吸い付かれ、何度も何度も舌を這わされる。全身の毛穴が開くような感覚に、ふぬけたように力が抜けた。
尻の谷間に熱く脈打つものが擦りつけられる。承太郎はあの女医を狂わせた甘い声で、再び「花京院」と名前を呼んだ。
「てめーが欲しい。おれのもんになれ」
「ッ!」
その声はダイレクトに花京院の腰に直撃した。
今はただカーテン越しに聞いているだけじゃない。あの声が今、自分に向けられている。
(どうして、ぼくなんだ……)
答えは実に単純で、たまたまそこにいたからだ。
承太郎は一度は女医に向けていたはずの情欲を持て余していた。
ただそれだけの理由が、無関係のはずの花京院をここまで追い込み、そして壊そうとしている。
理不尽だ。こんな状態じゃなければ、いっそ死ぬ覚悟で殴りかかるくらいはしていたかもしれない。ふざけるな。人を女の代わりにするんじゃあないと、正当な怒りをぶつけることができていたはずだ。
だけどそれが出来ないのはなぜだ。
力や体格差で敵わないから?
教師ですら恐れて関わりを避けるほどの不良だから?
もっともらしい理由を連ねてみても、何かがしっくりこなかった。これだと思って選んだピースが、どこにもはまらない。
花京院は考える。実際は酷く混乱したままで、まともに思考が巡らないことは承知の上で。
(ぼくは)
例えこの場限りだとしても。
あの美しい女医を虜にし、数多の女たちを狂わせる極上の雄がたったいま求めているのが、このちっぽけな身体であるということを。
(よろこんでいる……?)
信じられない。この空条承太郎という男は、女だけでなく、男をも一瞬で雌に変えてしまうというのか。
「ッ、ぃ、ぎ……ッ!」
バカみたいに熱い塊が、散々ぱら掻き回された穴を抉った。
身体を二つに引き裂かれるような痛みという表現が、決して大袈裟なものではないくらい、味わったことのない凄まじい激痛を覚える。
「ひっ、ぐ、ッ……あ、ああぁ……!!」
やがて最も太い部分が抉じ開けるようにして侵入を果たした。
ある程度慣らされ、潤わされているとしても、その質量は尋常ではない。
見開いたまま瞬きを忘れた瞳から涙を溢れさせる花京院を、承太郎の腕が強く抱き締める。
「い、ッ……た、ぃ……ヒッ、あぁ、ッ、あ、ぐ……!」
「花京院……力を、ッ、抜け」
「そ、な、できな……あっ、だ、れか、ひ、イッ……たすけ……ッ」
手を伸ばし、必死で何かに縋ろうともがいた。だが、それはただ虚しくシーツや枕をかきむしるに終わる。
その態度が気に入らなかったのか、耳元で舌打ちが聞こえた。
そして次の瞬間、花京院は目の前で赤い花火が散るような光景を見た。
「――ッ……!!」
ずん、という鈍い音が、身体の一番深い場所から響き渡った気がした。下から内臓を押し上げられたみたいに、呼吸が止まる。
一気に全てを打ち込まれたのだと、どこか遠くに僅かに残る理性が告げていた。
さらなる痛みを感じる間もなく、花京院の身体は本当に、承太郎の『雌』にされてしまったのだ。
(嘘だ、嘘、嘘……あんなものが、ぼくの、ナカに……!)
全て、収まりきってしまうなんて。
あまりにもショックが強すぎた。心も身体も許容量をとっくに超えていた花京院は、どうしたらいいか分からず小さな子供のようにしくしくと泣いた。遅れてやってきた炙られるような痛みに、身体の震えが止まらない。
「も、ぉ……ゆる、して……」
「…………」
その様は憐れみを買うには十分すぎたのか、それ以上承太郎が動き出す気配はなかった。代わりに、すっかり萎えきって垂れ下がるばかりの性器に触れられる。
「やだ、ぁ! そこは……ッ」
きゅっと握り込まれ、扱かれる。
ようやく痛みを逃がす場所と理由を見つけたとばかりに、花京院の性器は一瞬で硬く張り詰めた。蜜のように滴る先走りに助けられ、水音を響かせながら追い上げられる。
「は、はぁッ、ぁ、や、んぅ……ッ」
甘ったれたように上ずる声が抑えられない。こんなものが自分の口から飛び出すことが信じられなかった。
嫌々と髪を乱しながら首を振る花京院の頬に、熱い唇が押し付けられる。どこか慰めるような優しさを感じて、焼き切れる寸前だった心が締め付けられるのを感じた。
ここしか、拠り所がないような気さえして。ぴったりと重なる背中に、彼の熱と鼓動が伝わる。
打ち込まれた肉棒が身体の中でびくびくと脈打っていた。花京院が快楽に咽ぶ度、それはより大きく膨らんでいくような気がした。
けれど承太郎が腰を突き動かすことはなかった。ただ中でじっとしているだけだ。
滅茶苦茶に揺さぶられ、壊されてしまうのだとばかり思っていたのに。彼はそれをしなかった。
熱い。腹の中が、承太郎の鼓動が。ただ収まっているだけの楔が、切ない。
「イクか……?」
考える余裕すらないままに吐息だけで問われて、何度も首を縦に振る。
「んッ、ぁ、イ……く! いく、イッ、ぁ、もう!」
「いいぜ。このまま出しな」
中の肉棒をこれ以上ないほどに締め付けながら、花京院は甘ったるい声で鳴き、達した。
意識がぼんやりと遠のくのを感じる中で、承太郎が酷く辛そうに呻く声を、聞いたような気がした。
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