2025/09/17 Wed ※承太郎視点 「花京院くん、凄い顔色よ!」 女の大きな声がして、承太郎の意識は一気に浮上した。 (なんだ、うるせえな) 保健室に人の気配がないのをいいことに、勝手に入り込んで気持ちよく寝ていたというのに。 いつの間にかここの主が戻り、しかも客まで来たとみえる。 承太郎はベッドに寝そべったまま声のする方へ目を向けた。 しっかりと四方をカーテンで囲まれているようでいて、僅かに隙間が空いている。そこからちょうど、赤い髪をした男子生徒の背中が見えた。 「すみません、少し休ませてもらえますか。昼休みの間だけでいいので」 「もちろんよ。その前に、熱を測りましょう」 「いえ、いいです。いつものことですし、少し横になれば……」 「だぁめ! ほら見なさい! 熱っぽい!」 「うわちょっと、先生……ッ」 承太郎の方からは男子生徒の背中以外、二人の様子はほとんど見えない。 だが察するに、女医の手が彼の額に触れたらしい。その白いワイシャツに包まれた背中が僅かに後方に傾き、肩をびくつかせるのが見えた。 (ふん。なるほどな) その様子を見て、承太郎は微かに笑う。 男子生徒の顔までは分からないものの、その耳が赤く染まっているのがしっかりと見えた。大人しそうな印象を受ける彼の動きと一緒に、赤いピアスが揺れているのを少し意外に感じる。 まるでさくらんぼのような形のそれがキラキラと光り輝くのがやけに眩しくて、承太郎は猫のように目を細めた。もしかして、女物だろうか。 それにしても、なんとも甘酸っぱい光景である。 承太郎は微かに鼻を鳴らすと、もう一眠りするかと目を閉じた。 今が昼休みということは、迂闊に廊下に出れば煩い女共と遭遇する可能性があるということだ。 出ていくなら、授業が始まるギリギリの頃合いがいいだろう。 しばらくすると、室内が静寂で満たされた。 ポケットから時計を取り出し、時刻を確認すると、ちょうど午後の授業が始まる5分ほど前だった。 承太郎はのっしりと起き上がり、欠伸を噛み殺すと立ち上がる。午後くらいは真面目に授業に出るかとカーテンを開ければ、そこに女医の姿はなかった。 代わりに、隣のベッドに人が横たわっているのが、風に揺らめくカーテンの隙間から窺い知れた。耳を澄ませば、微かな寝息が聞こえてくる。 承太郎にとってそれはほんの些細な、気紛れだった。 一歩一歩、隣のベッドへ近づくと、ひらひらとはためくカーテンをそっと開ける。 女物のピアスを恥ずかしげもなくぶら下げる男のツラがどんなものかを、なんとなく見てやろうと思ったからだ。 そしてその寝顔を見た瞬間、息をのむ。 「ッ……!」 時間が止まったような気がした。 胸を掴まれるという感覚は、こういうことを言うのかもしれない。 幼さの残る寝顔は無防備そのもので、時おり微かに長い睫毛がぴくりと動く。うっすらと開かれた少し大きめの唇は、自宅の庭に毎年咲く桜の花弁と同じく、薄紅色をしていた。決して女顔というわけではないのに、両耳の赤いピアスが不思議とよく似合っている。そのどこか危ういバランスに、胸の奥がちりちりと疼くのを感じた。 規則正しく胸を上下させる寝姿に釘づけになりながら、承太郎は漠然と思う。 (こいつだ) と。 そこに理屈は存在しなかった。 ただどうしてか確信めいたいものがあった。 多分、この無防備な寝顔をさらす少年は、一生涯この自分の傍にいるだろうと。 決して目には見えないはずの糸が、そこに見えた気がして。 恋と呼ぶには漠然としていて、なのに最初から少しばかり重たい感情だった。だけどなぜかしっくりと胸に溶け込む。 こいつは、おれのものだと。 承太郎は足音を立てぬよう、静かにベッドサイドへと歩みを進めた。両手はポケットに突っこんだまま身を屈め、薄く開く唇にそっと口付ける。柔らかな感触は、仄かに熱をはらんでいた。 「てめーはおれがもらったぜ。花京院」 女医は、確かそう呼んでいた。 おそらく苗字だろうが、花のように色づく唇をもつ彼に、よく似合っている。 承太郎は歯止めがきかなくなる前にと、姿勢を正してベッドから離れた。眠る花京院を閉じ込めるようにカーテンをしっかりと引き、保健室を出て行こうとする。 だが、そこに主が戻って来た。 「あら寝ぼすけさん、やっとお目覚め?」 女医だ。 当たり前といえばそうだろうが、彼女は承太郎が勝手にベッドを使って寝ていたことに気がついていたようだ。 うふふと楽しそうに笑う表情は確かに大人の女のそれで、男子生徒の一人や二人、ふらりと恋に落ちてもおかしくはない。それが花京院でさえなければ、いっさい気にも留めないのだが。 (この女、邪魔だな) そう感じた瞬間には、承太郎は彼女に向かってうっすらと笑いかけていた。 女医の白衣に包まれた華奢な肩が、微かに揺れた。白い頬に一瞬にして紅色がのぼるのを確かめてから、承太郎は女医に向かって足を進める。 先刻までの笑顔はどこへやら、女医は惚けたように唇をぽかりと開けて、承太郎の表情に見入っている。 ああ、なんて簡単なことだろう。少し微笑みかけて見せるだけで、女はただの雌になる。 「どうも身体が火照って仕方ねえ」 腕を伸ばして、その肩を抱いた。顎に指先を添えて上向かせると、熱に浮かされたように潤む瞳を覗き込む。 「熱、はかってみちゃくれねえか。なぁ、先生?」 * 「ッ……!」 食いちぎられそうなほど強い締め付けから自身を引き抜いて、承太郎は短く息を詰める。 背後から貫かれていた花京院は、糸が切れたようにくったりと横倒しになった。 我ながら性急すぎたかと、そのまま動かなくなった身体を見て思う。けれど、後悔はなかった。 挿れただけで酷く泣きじゃくる花京院は、まさしく哀れとしか言いようがなかった。だが、彼を犯したことにこの上ない安堵と幸福感を覚えたことも事実で、自身の快楽を満たすことなど二の次に思えた。 ただ受け入れさせたまま前を扱いてやると、花京院は甘ったるい声をあげて達した。びくびくとのたうつ身体を腕の中に閉じ込める感覚は、承太郎にえもいわれぬ喜びを与えてくれた。 多分、身体の相性は悪くない。男を抱いたのは初めてだが、真面目そうな顔をして、花京院の身体は酷く快感に従順であることもわかった。 「堪らねえな」 挿入しただけで終わった自身は、いまだ激しく脈打ったままだ。 花京院の声やその反応を思い返すだけで、再び突き入れて今度は思うが儘に貪り尽したいという欲が生まれる。 承太郎は、花京院が放った白濁を勃起したままの自身に塗りたくる。そしてそれを、横倒しになってぴったりと閉じられている太腿にぬるりと差し込んだ。 汗ばむ内腿にはほどよく筋肉がついている。女のように包み込むような柔らかみはないが、傷一つない花京院の白い肉を犯しているのだと思うと、血管が破裂しそうなほどの興奮と快感が競り上がる。 承太郎が腰を打ち付けると、力なくベッドに伏せる花京院の身体もかくんかくんと上下に揺れ動いた。勿論、ピアスも踊る。 「ッ、かきょう、いん……ッ」 名前を呼ぶと、花京院の肩がぴくりと跳ねた。 そのまま幾度か内腿の隙間に擦りつけてから、達する瞬間に引き抜く。勢いよく噴き出す白濁で花京院の尻を汚し、さらに先端を擦りつけると大きく息を吐き出した。 その後、手早く花京院の身体を清めて、衣服やベッドの乱れをある程度整えてやった。花京院は死んだように深く眠り込んでいたが、赤く染まったままの頬や目元が愛しくて、汗を含んだ赤い髪を優しく撫でる。 指先から伝わる熱が甘ったるくて仕方がなかった。これが恋ってやつなのか、なんて、柄じゃないようなことを思うと少し照れ臭かったが、なかなか悪くない。 「明日も来いよ。とりあえず、ここで昼寝でもして待ってるぜ」 そう言うと、花京院がうっすらと目を開けた。 まだ半分以上は夢の中にいるようで、焦点の合わないとろんとした瞳を見て承太郎は微かに笑った。 「またな、花京院」 前髪を手の平でそっと押し上げながら、その額にキスをした。花京院は長い睫毛を震わせながら再び目を閉じ、小さく頷く。 色づく唇がうっすらと笑みの形を浮かべているのを見つめながら、承太郎は明日からの学校生活に胸を膨らませる。それからふと、自分の指先に視線を落とす。 (爪、切るか) 花京院の二の腕を傷つけた指先には、僅かに血がこびりついていた。階段で今にも崩れ落ちそうになっていた花京院を見つけたのは偶然だったが、咄嗟のこととはいえ力加減を誤ったことを後悔する。 そういえば抱き上げた花京院の身体は見た目に反していやに軽く、それなりに出来上がっているようでいて、実は未熟であることが即座に分かった。とりわけ、腰の細さには驚かされた。 承太郎は腕を組み、真剣な面持ちで深く頷く。 「飯だな、飯」 明日からは二人分の弁当を母に頼もう。毎日せっせと美味い飯を食わせてやったら、この花京院はどうなっていくだろう。あどけなさの残る頬が丸みを帯びてこようものなら、さぞかし可愛いに違いない。今でも申し分ないくらい、可愛いが。 こうして花京院のことばかり考えているだけでこんなにも胸が踊るというのに、これから毎日彼を側に置く生活はどれほど幸せなものになるのだろうか。 承太郎は身を屈め、花京院のひと房だけ長い前髪を掬い上げるとキスをする。 「愛してるぜ、花京院」 深く深く眠り込む花京院に承太郎の気持ちが伝わるのは、まだ当分、先のことになるのだけれど。 ←戻る ・ Wavebox👏
「花京院くん、凄い顔色よ!」
女の大きな声がして、承太郎の意識は一気に浮上した。
(なんだ、うるせえな)
保健室に人の気配がないのをいいことに、勝手に入り込んで気持ちよく寝ていたというのに。
いつの間にかここの主が戻り、しかも客まで来たとみえる。
承太郎はベッドに寝そべったまま声のする方へ目を向けた。
しっかりと四方をカーテンで囲まれているようでいて、僅かに隙間が空いている。そこからちょうど、赤い髪をした男子生徒の背中が見えた。
「すみません、少し休ませてもらえますか。昼休みの間だけでいいので」
「もちろんよ。その前に、熱を測りましょう」
「いえ、いいです。いつものことですし、少し横になれば……」
「だぁめ! ほら見なさい! 熱っぽい!」
「うわちょっと、先生……ッ」
承太郎の方からは男子生徒の背中以外、二人の様子はほとんど見えない。
だが察するに、女医の手が彼の額に触れたらしい。その白いワイシャツに包まれた背中が僅かに後方に傾き、肩をびくつかせるのが見えた。
(ふん。なるほどな)
その様子を見て、承太郎は微かに笑う。
男子生徒の顔までは分からないものの、その耳が赤く染まっているのがしっかりと見えた。大人しそうな印象を受ける彼の動きと一緒に、赤いピアスが揺れているのを少し意外に感じる。
まるでさくらんぼのような形のそれがキラキラと光り輝くのがやけに眩しくて、承太郎は猫のように目を細めた。もしかして、女物だろうか。
それにしても、なんとも甘酸っぱい光景である。
承太郎は微かに鼻を鳴らすと、もう一眠りするかと目を閉じた。
今が昼休みということは、迂闊に廊下に出れば煩い女共と遭遇する可能性があるということだ。
出ていくなら、授業が始まるギリギリの頃合いがいいだろう。
しばらくすると、室内が静寂で満たされた。
ポケットから時計を取り出し、時刻を確認すると、ちょうど午後の授業が始まる5分ほど前だった。
承太郎はのっしりと起き上がり、欠伸を噛み殺すと立ち上がる。午後くらいは真面目に授業に出るかとカーテンを開ければ、そこに女医の姿はなかった。
代わりに、隣のベッドに人が横たわっているのが、風に揺らめくカーテンの隙間から窺い知れた。耳を澄ませば、微かな寝息が聞こえてくる。
承太郎にとってそれはほんの些細な、気紛れだった。
一歩一歩、隣のベッドへ近づくと、ひらひらとはためくカーテンをそっと開ける。
女物のピアスを恥ずかしげもなくぶら下げる男のツラがどんなものかを、なんとなく見てやろうと思ったからだ。
そしてその寝顔を見た瞬間、息をのむ。
「ッ……!」
時間が止まったような気がした。
胸を掴まれるという感覚は、こういうことを言うのかもしれない。
幼さの残る寝顔は無防備そのもので、時おり微かに長い睫毛がぴくりと動く。うっすらと開かれた少し大きめの唇は、自宅の庭に毎年咲く桜の花弁と同じく、薄紅色をしていた。決して女顔というわけではないのに、両耳の赤いピアスが不思議とよく似合っている。そのどこか危ういバランスに、胸の奥がちりちりと疼くのを感じた。
規則正しく胸を上下させる寝姿に釘づけになりながら、承太郎は漠然と思う。
(こいつだ)
と。
そこに理屈は存在しなかった。
ただどうしてか確信めいたいものがあった。
多分、この無防備な寝顔をさらす少年は、一生涯この自分の傍にいるだろうと。
決して目には見えないはずの糸が、そこに見えた気がして。
恋と呼ぶには漠然としていて、なのに最初から少しばかり重たい感情だった。だけどなぜかしっくりと胸に溶け込む。
こいつは、おれのものだと。
承太郎は足音を立てぬよう、静かにベッドサイドへと歩みを進めた。両手はポケットに突っこんだまま身を屈め、薄く開く唇にそっと口付ける。柔らかな感触は、仄かに熱をはらんでいた。
「てめーはおれがもらったぜ。花京院」
女医は、確かそう呼んでいた。
おそらく苗字だろうが、花のように色づく唇をもつ彼に、よく似合っている。
承太郎は歯止めがきかなくなる前にと、姿勢を正してベッドから離れた。眠る花京院を閉じ込めるようにカーテンをしっかりと引き、保健室を出て行こうとする。
だが、そこに主が戻って来た。
「あら寝ぼすけさん、やっとお目覚め?」
女医だ。
当たり前といえばそうだろうが、彼女は承太郎が勝手にベッドを使って寝ていたことに気がついていたようだ。
うふふと楽しそうに笑う表情は確かに大人の女のそれで、男子生徒の一人や二人、ふらりと恋に落ちてもおかしくはない。それが花京院でさえなければ、いっさい気にも留めないのだが。
(この女、邪魔だな)
そう感じた瞬間には、承太郎は彼女に向かってうっすらと笑いかけていた。
女医の白衣に包まれた華奢な肩が、微かに揺れた。白い頬に一瞬にして紅色がのぼるのを確かめてから、承太郎は女医に向かって足を進める。
先刻までの笑顔はどこへやら、女医は惚けたように唇をぽかりと開けて、承太郎の表情に見入っている。
ああ、なんて簡単なことだろう。少し微笑みかけて見せるだけで、女はただの雌になる。
「どうも身体が火照って仕方ねえ」
腕を伸ばして、その肩を抱いた。顎に指先を添えて上向かせると、熱に浮かされたように潤む瞳を覗き込む。
「熱、はかってみちゃくれねえか。なぁ、先生?」
*
「ッ……!」
食いちぎられそうなほど強い締め付けから自身を引き抜いて、承太郎は短く息を詰める。
背後から貫かれていた花京院は、糸が切れたようにくったりと横倒しになった。
我ながら性急すぎたかと、そのまま動かなくなった身体を見て思う。けれど、後悔はなかった。
挿れただけで酷く泣きじゃくる花京院は、まさしく哀れとしか言いようがなかった。だが、彼を犯したことにこの上ない安堵と幸福感を覚えたことも事実で、自身の快楽を満たすことなど二の次に思えた。
ただ受け入れさせたまま前を扱いてやると、花京院は甘ったるい声をあげて達した。びくびくとのたうつ身体を腕の中に閉じ込める感覚は、承太郎にえもいわれぬ喜びを与えてくれた。
多分、身体の相性は悪くない。男を抱いたのは初めてだが、真面目そうな顔をして、花京院の身体は酷く快感に従順であることもわかった。
「堪らねえな」
挿入しただけで終わった自身は、いまだ激しく脈打ったままだ。
花京院の声やその反応を思い返すだけで、再び突き入れて今度は思うが儘に貪り尽したいという欲が生まれる。
承太郎は、花京院が放った白濁を勃起したままの自身に塗りたくる。そしてそれを、横倒しになってぴったりと閉じられている太腿にぬるりと差し込んだ。
汗ばむ内腿にはほどよく筋肉がついている。女のように包み込むような柔らかみはないが、傷一つない花京院の白い肉を犯しているのだと思うと、血管が破裂しそうなほどの興奮と快感が競り上がる。
承太郎が腰を打ち付けると、力なくベッドに伏せる花京院の身体もかくんかくんと上下に揺れ動いた。勿論、ピアスも踊る。
「ッ、かきょう、いん……ッ」
名前を呼ぶと、花京院の肩がぴくりと跳ねた。
そのまま幾度か内腿の隙間に擦りつけてから、達する瞬間に引き抜く。勢いよく噴き出す白濁で花京院の尻を汚し、さらに先端を擦りつけると大きく息を吐き出した。
その後、手早く花京院の身体を清めて、衣服やベッドの乱れをある程度整えてやった。花京院は死んだように深く眠り込んでいたが、赤く染まったままの頬や目元が愛しくて、汗を含んだ赤い髪を優しく撫でる。
指先から伝わる熱が甘ったるくて仕方がなかった。これが恋ってやつなのか、なんて、柄じゃないようなことを思うと少し照れ臭かったが、なかなか悪くない。
「明日も来いよ。とりあえず、ここで昼寝でもして待ってるぜ」
そう言うと、花京院がうっすらと目を開けた。
まだ半分以上は夢の中にいるようで、焦点の合わないとろんとした瞳を見て承太郎は微かに笑った。
「またな、花京院」
前髪を手の平でそっと押し上げながら、その額にキスをした。花京院は長い睫毛を震わせながら再び目を閉じ、小さく頷く。
色づく唇がうっすらと笑みの形を浮かべているのを見つめながら、承太郎は明日からの学校生活に胸を膨らませる。それからふと、自分の指先に視線を落とす。
(爪、切るか)
花京院の二の腕を傷つけた指先には、僅かに血がこびりついていた。階段で今にも崩れ落ちそうになっていた花京院を見つけたのは偶然だったが、咄嗟のこととはいえ力加減を誤ったことを後悔する。
そういえば抱き上げた花京院の身体は見た目に反していやに軽く、それなりに出来上がっているようでいて、実は未熟であることが即座に分かった。とりわけ、腰の細さには驚かされた。
承太郎は腕を組み、真剣な面持ちで深く頷く。
「飯だな、飯」
明日からは二人分の弁当を母に頼もう。毎日せっせと美味い飯を食わせてやったら、この花京院はどうなっていくだろう。あどけなさの残る頬が丸みを帯びてこようものなら、さぞかし可愛いに違いない。今でも申し分ないくらい、可愛いが。
こうして花京院のことばかり考えているだけでこんなにも胸が踊るというのに、これから毎日彼を側に置く生活はどれほど幸せなものになるのだろうか。
承太郎は身を屈め、花京院のひと房だけ長い前髪を掬い上げるとキスをする。
「愛してるぜ、花京院」
深く深く眠り込む花京院に承太郎の気持ちが伝わるのは、まだ当分、先のことになるのだけれど。
←戻る ・ Wavebox👏