2025/09/18 Thu お互い服を脱いで生まれたままの姿で向き合う。 狛枝の長い手足は若木のように細く、改めて見てもおうとつに乏しい骨の浮いた身体だった。 「ごめんね。貧相で、醜くて」 両足を投げ出すようにして座る日向を跨ぐ形で、膝立ちになっている狛枝が申し訳なさそうに笑った。日向はそんな彼の顔を見上げながら熱い息を吐き出し、首を左右に振る。 「興奮する。凄く」 当たり前のようにいつかは女性と結ばれるものと思っていた頃は、どちらかといえば健康的で豊満な身体を理想としていたような気がする。 それが今や不健康そうな薄い皮膚も、尖った肩も、うっすらと浮いたあばら骨さえも、日向にとっては肉欲の対象になっていた。 自信の欠片もない弱々しい笑みすら愛しくて、抱きしめたくて仕方がない。 「変だよ……日向クンは」 「お前にだけは言われたくないぞ」 悪戯に手の平を背筋に這わせると、彼はくすぐったそうに身を捩りながら「あは」と笑う。 「恥ずかしいから、あんまり見ないでね」 狛枝は目を細めながらそう言って、自分の指に舌を這わせた。 「狛枝、なにを……?」 「ん、何をって……準備、かな。ちゃんと柔らかくしないと、日向クンが辛いから」 戸惑う日向の目の前で、狛枝は濡れた指を自分の身体の奥まった場所へ伸ばす。 彼が小さく呻き、苦しげに眉を寄せるのを見た瞬間、ようやく理解した。 相手は男性なのだから、準備といえばひとつしかない。狛枝は、白い身体を赤く染め上げ、羞恥に唇を噛み締めながら自らの窄まりを解しにかかっているのだ。 「ッ……!!」 その瞬間、日向は頭が沸騰しそうになるほどの熱を感じて顔を真っ赤にした。 狛枝はもう片方の手を日向の肩に置き、身体を屈めながらどうにかバランスを保っている。一体その股座の奥でなにが起こっているのか。だが、肩に食い込む爪の感触から相当の無理をさせていることは伝わった。 「こ、狛枝」 「んっ、ぅ……まっ、て……待ってて……すぐ、使えるように……」 固く閉じた瞳で、涙に濡れた睫毛が震えていた。 あまりにも辛そうな表情を見上げながら、日向は自分も何かしなくてはと焦りを覚える。狛枝が必死に受け入れようと無理をしているのに、このまま見ているだけでいいわけがない。 おそらく、本当はもっと入念な準備をしてから行わなければならない行為だったのだと、今更になって気がつく。 「ごめん、ね。ボクも、凄く久しぶり、だから……ッ」 それは中学の頃の、例の事件のことを指しているのだろうと思った。 当時の狛枝も、こうして相手のために自分だけが負担を被るような痴態を曝したのだろうか。 ずっとその表情に釘づけになっていた視線を下向けると、萎えることなく天を仰ぐ自分のものとは逆に、狛枝の性器はすっかり萎れきっていた。 「狛枝、俺にやらせてくれ」 「ぇ、あッ、ちょっと……!」 言うが早いか、日向は狛枝の腰に腕を回し、その薄い身体を裏返すと布団に沈める。尻だけを高く突きだすような、四つん這いの姿勢を取らせた。 「ひ、日向クン!?」 「濡らして、解せばいいんだよな?」 「やっ、やめて! こんな格好恥ずかしいッ……!」 狛枝が身を捩り、悲鳴を上げながら抵抗を示す。けれど日向は薄い尻の肉を両手で掴み、容赦なく割り開くとその小さな窄まりに目を凝らした。 「やだぁ……ッ」 何もかもをさらけ出してしまった狛枝は、シーツに顔を擦りつけて全身を震わせた。泣かせてしまったかと少しばかり胸が痛んだが、日向は目の前でヒクヒクと収縮する小さな襞の窄まりから、目が離せなかった。 多少は覚悟していた嫌悪感が、全くと言っていいほど湧き起こらない。 むしろ桃色に色づく肉のあわいが健気にも見えて、触れたいと心から思った。 「尻の穴まで……可愛いのな……」 「またそれ!?」 「なんかもう、可愛いしか言えない」 「バッ……!」 今お前バカって言おうとしただろ……とは思ったが、自分でも確かにそう思う。それでも構うものかと、日向は狛枝がしたように自分の人差し指に舌を這わすと存分に濡らし、中心にそっと触れた。 「や……!」 狛枝が身を強張らせるのがわかる。彼はきつく握りしめている拳をシーツの上で震わせていた。 その動きに合わせて、触れている窄まりも硬く閉じようとしていた。日向は濡れた指先でその辺りをくすぐるようにくるりと撫でた。そして、指の腹をそっと押し付けるようにしながら先端を押し込んでみる。 「ヒッ、ぁ!」 ビクン、と狛枝の腰が跳ねた。 「痛いか?」 問えば、彼はシーツに額を押し付けながら頭を左右に振った。 今はまだそれが真意かどうかを確かめる術はなくて、日向はゆっくりと慎重に先端を出し入れしながら入口を探ってみる。潤いが足りなくなる度に指を濡らし、襞を伸ばすように優しくマッサージした。 こうなったら何時間でも手間をかけてやるつもりで、根気よく一本の指で慣らしていった。すると、第一関節までがやっとだった蕾が微かに綻びを見せ、第二関節までをどうにか飲み込んだ。 「ん、う、ぅ……っ」 「なぁ、わかるか? 俺の指入ってんの」 「はッ、はぁ、ぁ……ぅ、ん……わか、る……」 狛枝もすっかり観念したのか、素直な反応を見せた。 少し苦しそうだが、痛みはなさそうだった。日向はさらに深くまで探るようにしながら指を押し進めた。時間をかけて、ゆっくりと、慎重に。 しっとりとした熱い肉壁に締め付けられる度に、気が急いて仕方がなかった。これに食まれながら腰を振るのは、どれほど気持ちがいいのだろうか。 日向は今にも暴走しそうな欲求を、歯を食いしばって耐え続けた。傷つけないように何度でも潤し、根気よく内壁に馴染ませた。やがてそこから鈍い水音が響くようになる頃、狛枝は日向の指を二本、どうにかこうにか飲み込んだ。 「も、いい……お願い、日向クン……」 「……いいのか?」 経験のない日向にだって、まだ準備が不十分なことくらいは分かる。狛枝の性器もいまだに萎れたままだ。それでも布団に手をつき、どうにか身体を支えながら狛枝がかくん、と頷いた。他人に身体の中を探られるという感覚は日向には分からないが、これはこれで長引けば辛いだけなのかもしれない。 精神的にもなるべく負担をかけたくないという思いから、素直に指を引き抜く。狛枝は一度、大きく身震いをした。 「狛枝」 もはや疲れ切った様子で、狛枝は全身にうっすらと汗をかきながら横座りをして息を荒げていた。 いよいよ本気で切羽詰まった顔をした日向が名前を呼ぶと、彼は頬に色素の薄い髪を張り付けながらゆらりと手を伸ばしてくる。 その腕を取り、重なるようにして布団に雪崩れ込んだ。抱きしめた身体は最初から計算されていたかのように、日向の腕の中によく馴染んだ。激しい葛藤の末ではあったが、なるべくしてなったのだと、妙に納得している自分がいる。 欠けていたピースがぴったりとハマるような感覚に、もし名前をつけるとすれば、これが運命であり、必然だったのだと。 多分最初から。あの真夜中のコインランドリーで、気紛れにこの男を救ったときから。 「日向クン……」 白い両腕が首に回ったのを合図に、日向は狛枝の一番弱くて繊細な場所に脈打つ肉棒を押し付けた。 く、と反り返る喉に唇を強く押し付けて、息をつめながら腰を押し進める。小さな襞をこじ開けるようにして先端が潜り込むと、それだけで達してしまいそうなほどの電流が駆け抜ける。 「――ッ、ぁ……!」 狛枝が声にならない悲鳴をあげると、唇に喉仏が引き攣る感触が伝わった。 「狛枝……ッ、悪い、俺ッ……!」 目が眩みそうなほどの快感に、日向の理性は薄皮一枚で繋がっているようなものだった。狛枝の中は熱くて、腰を進める度にみっちりと詰まった肉の壁が抵抗を見せる。それさえも堪らなく気持ちがよくて、正直もう余裕がなかった。 「んぅ、あ……! ひ、な……ぁッ、もっ、と……奥、きて……!」 辛そうに立てた膝頭を痙攣させているくせに、狛枝は日向の頭を抱き込んで奥深くへ誘おうとする。 もうダメだと観念した途端、日向は熱い媚肉に自身を根元まで埋めた。狛枝の見開かれた瞳から涙が溢れる。腕の中で薄い身体がバネのように大きくしなった。 日向は狛枝をきつく抱きしめながら、痛いほどの締め付けに歯を食いしばって耐える。二人とも汗だくになって震え、息を荒げていた。 「お前の中、凄い……気持ちいい」 呼吸の合間に耳元で吐き出した言葉に、狛枝がピクンと反応を示す。 「ほん、と……?」 「ああ……熱くて、ッ、たぶん、すぐイク」 「嬉しい……日向クン、大好き」 首に回る腕の力が強まった。狛枝は甘えたように日向の頬に額を擦りつける。その仕草があまりにも可愛くて、愛しくて、胸が掻き毟られるようだった。 「俺も、大好きだ」 短い言葉にありったけの感情を乗せながら、日向は微かに腰を揺らした。狛枝の口からは苦しげな呻きが上がったが、二人の身体に挟まれるようにして揺れる性器は勃起しかけていた。おそらくとてつもない負担をかけているし、辛いはずだ。それでもちゃんと興奮してくれているのだと思うと嬉しかった。 「ヒ、ッ……く、あ、ぁ……は……ッ!」 思うが儘に揺さぶりたい欲をどうにか堪え、ゆっくりと馴染ませるように腰を前後に揺らした。狛枝は懸命に日向にしがみつきながら、かくかくと小刻みに揺れる。容赦なく締め付ける肉壁が脈打ち、屹立を擦られる度に日向の口からは獣じみた呻きが漏れた。 「ひな、た、クン……ッ、日向クン……日向クン……ッ!」 名前を呼ばれる度に理性を手放していくような気がした。目が眩むような快楽に飲まれ、日向は次第に抽挿を激しいものにしていった。 華奢な身体を揺さぶる度に、腹に濡れそぼった狛枝の性器が当たる。日向はほとんど無意識に片手をそれに伸ばして握り込んだ。 「やッ!? だ、だめ、それ……ッ、あ、んうぅ……ッ!」 「狛枝ッ、狛枝……ッ」 抽挿と同じタイミングで、まだほんのりと柔らかい性器を扱いた。みるみるうちに手の中で育つそれは、狛枝の声が甘く上ずるのに比例して硬度を増し、先走りの蜜をまき散らす。 日向も狛枝も、もう限界だった。 「んっ、あぁッ、あ! イ、ク! ひな……――ッ!!」 「狛枝……!!」 目の前が大きな赤い光に包まれた瞬間、日向は狛枝の名前を呼びながら達した。それに続くようにして、狛枝の性器からも白濁が噴き出す。 声もなく、しばらくは余韻に震えながら抱き合った。ぴったりと合わさった胸から、狛枝の早鐘のように打つ心臓の鼓動を感じる。 忙しなかった呼吸がゆっくりと落ち着いてくると、放心していた日向はハッとして、まるで押し潰すようにして抱き込んでいた狛枝から僅かに身を浮かせた。 「こ、狛枝、無事か!?」 自分でも呆れるほど色気もへったくれもない第一声だったが、はかはかと薄い胸を上下させていた狛枝が目を開けて小さく頷くと、心底安堵した。 が、すぐにまたハッとして下肢へと視線を向けた。 「悪い……出しちまった……」 「うん……出されちゃった……」 「ご、ごめん……で、済むのか? こういうのって……」 青褪めながら身を起こし、ひとまず落ち着きを取り戻した性器を引き抜く。その瞬間、狛枝の口から「ぁんっ」という子犬のような甘ったるい悲鳴が上がった。 「ッ、お、お前、なんて声を……ッ」 しかも日向が大量に放った白濁が、ぽってりと赤く腫れた後孔から一気に逆流してくるのが見える。とろとろと溢れ出すそれがシーツに大きなシミを作る光景が、あまりにもいやらしくて眩暈がした。 狛枝の、まだどこかとろんとした表情も相まって、日向はたったいま満たしたはずの欲望に再び火がついてしまうのを感じた。 「日向クン、元気だね……」 「……面目ない」 「えっと……もう一回、する?」 流石にそこまで無理はさせられないと首を振ると、狛枝も正直なところ辛かったのか、のろのろと起き上がって日向の勃起した性器に手を伸ばしてきた。 「こ、狛枝ッ」 「じゃあ、手で……ね?」 申し訳なさそうに眉をハの字に下げ、上目使いで見上げる狛枝の表情が日向のツボに見事にヒットしてしまった。 申し訳ないのはこちらの方だと思いつつ、日向は「お願いします」と丁寧に頭を下げた。 * 狛枝の手はとても柔らかかった。 あれから彼の白い手によって優しく扱かれた日向は、再びその綺麗な顔に目掛けて発射してしまうという性のスパイラルにハマりつつ、どうにか落ち着くことができた。 今は二人、寄り添いながら同じ布団にくるまっている。 日向も狛枝も、そしてシーツも汚れきっていたが、身体が自堕落に休息を求めていた。 「ねぇ日向クン。ボクはもしかしたら、本当は凄くツイてるのかもしれないね」 日向の腕の中で身を横たえる狛枝が口を開いた。 「ツイてる? お前が?」 「うん。だって、洗濯機が壊れる度に日向クンに会えるんだもん。今日だって、あのコインランドリーに行かなかったら、きっとこんな風にはなれてなかったと思うんだ。これって物凄い確率の幸運だと思わない?」 「それはどうだろうな」 「え?」 日向はどこか自慢げに、小首を傾げる狛枝を見て笑った。 「俺がツイてるのかもしれないぞ?」 「日向クンが?」 狛枝は、やっぱり不運だと思う。 ヒステリックな女に下着泥棒には間違えられるし、車にひかれそうになって死にかけるし、殺人鬼には誘拐されるし。きっと聞いていないだけで、彼の九死に一生物語はまだまだあるような気がした。 いっそここまで生きて来られたのが奇跡と思えるくらいに。 「なるほど……そういう考え方も、あるかもしれないね」 「そ。俺がお前に会いたいって思ったから、お前は今日あそこに来たんだよ」 「嬉しいけど……なんか、ちょっと無理やりだね」 狛枝がくすくすと笑うと、その振動が日向の身体にも伝わった。つられて笑いながら「別にいいだろ」と返せば、彼は嬉しそうに頷いた。 こじつけでも無理やりでも、今となってはなんだって構わない。 狛枝と出会って、好きになって、こうして心も身体も繋がることができた幸運を、この先もずっとこうして腕の中に閉じ込めておきたいと思ったから。 「だからさ、狛枝」 「うん」 「お前の不運、俺が一つ残さず食ってやるから。ずっと側にいてくれよ」 ぽかん、と目と口を丸く開いた狛枝は、それから徐々に顔を真っ赤に染め上げて、日向の喉元に顔を埋めた。 照れるなよ、と笑いながらその柔らかな髪にキスをして「返事は?」と聞けば、彼はおずおずと視線を上げて小さく唸る。それから、 「……ふつつかなゴミですが……よろしくお願いします」 と言って、また顔を隠してしまった。 ←戻る ・ 次へ→
狛枝の長い手足は若木のように細く、改めて見てもおうとつに乏しい骨の浮いた身体だった。
「ごめんね。貧相で、醜くて」
両足を投げ出すようにして座る日向を跨ぐ形で、膝立ちになっている狛枝が申し訳なさそうに笑った。日向はそんな彼の顔を見上げながら熱い息を吐き出し、首を左右に振る。
「興奮する。凄く」
当たり前のようにいつかは女性と結ばれるものと思っていた頃は、どちらかといえば健康的で豊満な身体を理想としていたような気がする。
それが今や不健康そうな薄い皮膚も、尖った肩も、うっすらと浮いたあばら骨さえも、日向にとっては肉欲の対象になっていた。
自信の欠片もない弱々しい笑みすら愛しくて、抱きしめたくて仕方がない。
「変だよ……日向クンは」
「お前にだけは言われたくないぞ」
悪戯に手の平を背筋に這わせると、彼はくすぐったそうに身を捩りながら「あは」と笑う。
「恥ずかしいから、あんまり見ないでね」
狛枝は目を細めながらそう言って、自分の指に舌を這わせた。
「狛枝、なにを……?」
「ん、何をって……準備、かな。ちゃんと柔らかくしないと、日向クンが辛いから」
戸惑う日向の目の前で、狛枝は濡れた指を自分の身体の奥まった場所へ伸ばす。
彼が小さく呻き、苦しげに眉を寄せるのを見た瞬間、ようやく理解した。
相手は男性なのだから、準備といえばひとつしかない。狛枝は、白い身体を赤く染め上げ、羞恥に唇を噛み締めながら自らの窄まりを解しにかかっているのだ。
「ッ……!!」
その瞬間、日向は頭が沸騰しそうになるほどの熱を感じて顔を真っ赤にした。
狛枝はもう片方の手を日向の肩に置き、身体を屈めながらどうにかバランスを保っている。一体その股座の奥でなにが起こっているのか。だが、肩に食い込む爪の感触から相当の無理をさせていることは伝わった。
「こ、狛枝」
「んっ、ぅ……まっ、て……待ってて……すぐ、使えるように……」
固く閉じた瞳で、涙に濡れた睫毛が震えていた。
あまりにも辛そうな表情を見上げながら、日向は自分も何かしなくてはと焦りを覚える。狛枝が必死に受け入れようと無理をしているのに、このまま見ているだけでいいわけがない。
おそらく、本当はもっと入念な準備をしてから行わなければならない行為だったのだと、今更になって気がつく。
「ごめん、ね。ボクも、凄く久しぶり、だから……ッ」
それは中学の頃の、例の事件のことを指しているのだろうと思った。
当時の狛枝も、こうして相手のために自分だけが負担を被るような痴態を曝したのだろうか。
ずっとその表情に釘づけになっていた視線を下向けると、萎えることなく天を仰ぐ自分のものとは逆に、狛枝の性器はすっかり萎れきっていた。
「狛枝、俺にやらせてくれ」
「ぇ、あッ、ちょっと……!」
言うが早いか、日向は狛枝の腰に腕を回し、その薄い身体を裏返すと布団に沈める。尻だけを高く突きだすような、四つん這いの姿勢を取らせた。
「ひ、日向クン!?」
「濡らして、解せばいいんだよな?」
「やっ、やめて! こんな格好恥ずかしいッ……!」
狛枝が身を捩り、悲鳴を上げながら抵抗を示す。けれど日向は薄い尻の肉を両手で掴み、容赦なく割り開くとその小さな窄まりに目を凝らした。
「やだぁ……ッ」
何もかもをさらけ出してしまった狛枝は、シーツに顔を擦りつけて全身を震わせた。泣かせてしまったかと少しばかり胸が痛んだが、日向は目の前でヒクヒクと収縮する小さな襞の窄まりから、目が離せなかった。
多少は覚悟していた嫌悪感が、全くと言っていいほど湧き起こらない。
むしろ桃色に色づく肉のあわいが健気にも見えて、触れたいと心から思った。
「尻の穴まで……可愛いのな……」
「またそれ!?」
「なんかもう、可愛いしか言えない」
「バッ……!」
今お前バカって言おうとしただろ……とは思ったが、自分でも確かにそう思う。それでも構うものかと、日向は狛枝がしたように自分の人差し指に舌を這わすと存分に濡らし、中心にそっと触れた。
「や……!」
狛枝が身を強張らせるのがわかる。彼はきつく握りしめている拳をシーツの上で震わせていた。
その動きに合わせて、触れている窄まりも硬く閉じようとしていた。日向は濡れた指先でその辺りをくすぐるようにくるりと撫でた。そして、指の腹をそっと押し付けるようにしながら先端を押し込んでみる。
「ヒッ、ぁ!」
ビクン、と狛枝の腰が跳ねた。
「痛いか?」
問えば、彼はシーツに額を押し付けながら頭を左右に振った。
今はまだそれが真意かどうかを確かめる術はなくて、日向はゆっくりと慎重に先端を出し入れしながら入口を探ってみる。潤いが足りなくなる度に指を濡らし、襞を伸ばすように優しくマッサージした。
こうなったら何時間でも手間をかけてやるつもりで、根気よく一本の指で慣らしていった。すると、第一関節までがやっとだった蕾が微かに綻びを見せ、第二関節までをどうにか飲み込んだ。
「ん、う、ぅ……っ」
「なぁ、わかるか? 俺の指入ってんの」
「はッ、はぁ、ぁ……ぅ、ん……わか、る……」
狛枝もすっかり観念したのか、素直な反応を見せた。
少し苦しそうだが、痛みはなさそうだった。日向はさらに深くまで探るようにしながら指を押し進めた。時間をかけて、ゆっくりと、慎重に。
しっとりとした熱い肉壁に締め付けられる度に、気が急いて仕方がなかった。これに食まれながら腰を振るのは、どれほど気持ちがいいのだろうか。
日向は今にも暴走しそうな欲求を、歯を食いしばって耐え続けた。傷つけないように何度でも潤し、根気よく内壁に馴染ませた。やがてそこから鈍い水音が響くようになる頃、狛枝は日向の指を二本、どうにかこうにか飲み込んだ。
「も、いい……お願い、日向クン……」
「……いいのか?」
経験のない日向にだって、まだ準備が不十分なことくらいは分かる。狛枝の性器もいまだに萎れたままだ。それでも布団に手をつき、どうにか身体を支えながら狛枝がかくん、と頷いた。他人に身体の中を探られるという感覚は日向には分からないが、これはこれで長引けば辛いだけなのかもしれない。
精神的にもなるべく負担をかけたくないという思いから、素直に指を引き抜く。狛枝は一度、大きく身震いをした。
「狛枝」
もはや疲れ切った様子で、狛枝は全身にうっすらと汗をかきながら横座りをして息を荒げていた。
いよいよ本気で切羽詰まった顔をした日向が名前を呼ぶと、彼は頬に色素の薄い髪を張り付けながらゆらりと手を伸ばしてくる。
その腕を取り、重なるようにして布団に雪崩れ込んだ。抱きしめた身体は最初から計算されていたかのように、日向の腕の中によく馴染んだ。激しい葛藤の末ではあったが、なるべくしてなったのだと、妙に納得している自分がいる。
欠けていたピースがぴったりとハマるような感覚に、もし名前をつけるとすれば、これが運命であり、必然だったのだと。
多分最初から。あの真夜中のコインランドリーで、気紛れにこの男を救ったときから。
「日向クン……」
白い両腕が首に回ったのを合図に、日向は狛枝の一番弱くて繊細な場所に脈打つ肉棒を押し付けた。
く、と反り返る喉に唇を強く押し付けて、息をつめながら腰を押し進める。小さな襞をこじ開けるようにして先端が潜り込むと、それだけで達してしまいそうなほどの電流が駆け抜ける。
「――ッ、ぁ……!」
狛枝が声にならない悲鳴をあげると、唇に喉仏が引き攣る感触が伝わった。
「狛枝……ッ、悪い、俺ッ……!」
目が眩みそうなほどの快感に、日向の理性は薄皮一枚で繋がっているようなものだった。狛枝の中は熱くて、腰を進める度にみっちりと詰まった肉の壁が抵抗を見せる。それさえも堪らなく気持ちがよくて、正直もう余裕がなかった。
「んぅ、あ……! ひ、な……ぁッ、もっ、と……奥、きて……!」
辛そうに立てた膝頭を痙攣させているくせに、狛枝は日向の頭を抱き込んで奥深くへ誘おうとする。
もうダメだと観念した途端、日向は熱い媚肉に自身を根元まで埋めた。狛枝の見開かれた瞳から涙が溢れる。腕の中で薄い身体がバネのように大きくしなった。
日向は狛枝をきつく抱きしめながら、痛いほどの締め付けに歯を食いしばって耐える。二人とも汗だくになって震え、息を荒げていた。
「お前の中、凄い……気持ちいい」
呼吸の合間に耳元で吐き出した言葉に、狛枝がピクンと反応を示す。
「ほん、と……?」
「ああ……熱くて、ッ、たぶん、すぐイク」
「嬉しい……日向クン、大好き」
首に回る腕の力が強まった。狛枝は甘えたように日向の頬に額を擦りつける。その仕草があまりにも可愛くて、愛しくて、胸が掻き毟られるようだった。
「俺も、大好きだ」
短い言葉にありったけの感情を乗せながら、日向は微かに腰を揺らした。狛枝の口からは苦しげな呻きが上がったが、二人の身体に挟まれるようにして揺れる性器は勃起しかけていた。おそらくとてつもない負担をかけているし、辛いはずだ。それでもちゃんと興奮してくれているのだと思うと嬉しかった。
「ヒ、ッ……く、あ、ぁ……は……ッ!」
思うが儘に揺さぶりたい欲をどうにか堪え、ゆっくりと馴染ませるように腰を前後に揺らした。狛枝は懸命に日向にしがみつきながら、かくかくと小刻みに揺れる。容赦なく締め付ける肉壁が脈打ち、屹立を擦られる度に日向の口からは獣じみた呻きが漏れた。
「ひな、た、クン……ッ、日向クン……日向クン……ッ!」
名前を呼ばれる度に理性を手放していくような気がした。目が眩むような快楽に飲まれ、日向は次第に抽挿を激しいものにしていった。
華奢な身体を揺さぶる度に、腹に濡れそぼった狛枝の性器が当たる。日向はほとんど無意識に片手をそれに伸ばして握り込んだ。
「やッ!? だ、だめ、それ……ッ、あ、んうぅ……ッ!」
「狛枝ッ、狛枝……ッ」
抽挿と同じタイミングで、まだほんのりと柔らかい性器を扱いた。みるみるうちに手の中で育つそれは、狛枝の声が甘く上ずるのに比例して硬度を増し、先走りの蜜をまき散らす。
日向も狛枝も、もう限界だった。
「んっ、あぁッ、あ! イ、ク! ひな……――ッ!!」
「狛枝……!!」
目の前が大きな赤い光に包まれた瞬間、日向は狛枝の名前を呼びながら達した。それに続くようにして、狛枝の性器からも白濁が噴き出す。
声もなく、しばらくは余韻に震えながら抱き合った。ぴったりと合わさった胸から、狛枝の早鐘のように打つ心臓の鼓動を感じる。
忙しなかった呼吸がゆっくりと落ち着いてくると、放心していた日向はハッとして、まるで押し潰すようにして抱き込んでいた狛枝から僅かに身を浮かせた。
「こ、狛枝、無事か!?」
自分でも呆れるほど色気もへったくれもない第一声だったが、はかはかと薄い胸を上下させていた狛枝が目を開けて小さく頷くと、心底安堵した。
が、すぐにまたハッとして下肢へと視線を向けた。
「悪い……出しちまった……」
「うん……出されちゃった……」
「ご、ごめん……で、済むのか? こういうのって……」
青褪めながら身を起こし、ひとまず落ち着きを取り戻した性器を引き抜く。その瞬間、狛枝の口から「ぁんっ」という子犬のような甘ったるい悲鳴が上がった。
「ッ、お、お前、なんて声を……ッ」
しかも日向が大量に放った白濁が、ぽってりと赤く腫れた後孔から一気に逆流してくるのが見える。とろとろと溢れ出すそれがシーツに大きなシミを作る光景が、あまりにもいやらしくて眩暈がした。
狛枝の、まだどこかとろんとした表情も相まって、日向はたったいま満たしたはずの欲望に再び火がついてしまうのを感じた。
「日向クン、元気だね……」
「……面目ない」
「えっと……もう一回、する?」
流石にそこまで無理はさせられないと首を振ると、狛枝も正直なところ辛かったのか、のろのろと起き上がって日向の勃起した性器に手を伸ばしてきた。
「こ、狛枝ッ」
「じゃあ、手で……ね?」
申し訳なさそうに眉をハの字に下げ、上目使いで見上げる狛枝の表情が日向のツボに見事にヒットしてしまった。
申し訳ないのはこちらの方だと思いつつ、日向は「お願いします」と丁寧に頭を下げた。
*
狛枝の手はとても柔らかかった。
あれから彼の白い手によって優しく扱かれた日向は、再びその綺麗な顔に目掛けて発射してしまうという性のスパイラルにハマりつつ、どうにか落ち着くことができた。
今は二人、寄り添いながら同じ布団にくるまっている。
日向も狛枝も、そしてシーツも汚れきっていたが、身体が自堕落に休息を求めていた。
「ねぇ日向クン。ボクはもしかしたら、本当は凄くツイてるのかもしれないね」
日向の腕の中で身を横たえる狛枝が口を開いた。
「ツイてる? お前が?」
「うん。だって、洗濯機が壊れる度に日向クンに会えるんだもん。今日だって、あのコインランドリーに行かなかったら、きっとこんな風にはなれてなかったと思うんだ。これって物凄い確率の幸運だと思わない?」
「それはどうだろうな」
「え?」
日向はどこか自慢げに、小首を傾げる狛枝を見て笑った。
「俺がツイてるのかもしれないぞ?」
「日向クンが?」
狛枝は、やっぱり不運だと思う。
ヒステリックな女に下着泥棒には間違えられるし、車にひかれそうになって死にかけるし、殺人鬼には誘拐されるし。きっと聞いていないだけで、彼の九死に一生物語はまだまだあるような気がした。
いっそここまで生きて来られたのが奇跡と思えるくらいに。
「なるほど……そういう考え方も、あるかもしれないね」
「そ。俺がお前に会いたいって思ったから、お前は今日あそこに来たんだよ」
「嬉しいけど……なんか、ちょっと無理やりだね」
狛枝がくすくすと笑うと、その振動が日向の身体にも伝わった。つられて笑いながら「別にいいだろ」と返せば、彼は嬉しそうに頷いた。
こじつけでも無理やりでも、今となってはなんだって構わない。
狛枝と出会って、好きになって、こうして心も身体も繋がることができた幸運を、この先もずっとこうして腕の中に閉じ込めておきたいと思ったから。
「だからさ、狛枝」
「うん」
「お前の不運、俺が一つ残さず食ってやるから。ずっと側にいてくれよ」
ぽかん、と目と口を丸く開いた狛枝は、それから徐々に顔を真っ赤に染め上げて、日向の喉元に顔を埋めた。
照れるなよ、と笑いながらその柔らかな髪にキスをして「返事は?」と聞けば、彼はおずおずと視線を上げて小さく唸る。それから、
「……ふつつかなゴミですが……よろしくお願いします」
と言って、また顔を隠してしまった。
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