2025/09/19 Fri 白猫、初めての入浴の巻 「ギャーーー!! 絶対に嫌ーーーー!!!」 ファイの絶叫が、おそらく近所中に響き渡った。 ついに恐れていたことが現実のものとなってしまった。 これまでは特に何も言われなかったのをいいことに、こちらからも切り出さなかったのだ。 顔や手洗いも、歯磨きも徹底されてきたし、もしかしたらいつかは風呂も……なんて危惧していた。 だから外へ出ても極力、余計なものには触らないようにしていた。時々公園の芝生の上にゴロゴロしたくなることもあったが、それもぐっと我慢していた。 基本的に猫は体臭が薄い生き物だ。不完全な変身しかできていないファイは、おそらく普通の人間と比べてあまり臭わないのだろう。 だがついに……ついにこのときが来てしまった……。 「やだやだ黒たんやめてよーーッ!!」 ファイは脱衣所に連れて来られ、そしてその場で裸にひん剥かれようとしていた。これからどんな試練が待ち受けているか分かっているファイは、全力で暴れる。 「うるっせぇ!! 大人しく脱げ!! 全部脱げ!!」 「いぎゃー!! やだー!! 絶対やだー!!」 黒鋼に借りているブカブカの黒ジャージを脱がされる。ちなみに下はノーパンである。 足やら手やら、とにかく使えるものは何でも使う勢いで押さえこまれて丸裸にされた。 そうしながらも黒鋼が微妙に明後日の方へ視線を向けているのが不思議だったが、とにかく力技で剥かれたファイはそのまま浴室に放り込まれた。 無情にもガラリと音を立てて閉められた曇りガラスのドアに、ぺったりと縋る。 「出してー!! いやー!!」 「張り付くなこのアホ猫!! 曇りガラスの威力舐めんな!! いいから黙ってまずシャワーを出せ!!」 「嫌だ嫌だ嫌だー!! 濡れるのやだぁぁアッあ!? 足! すでにちょっと濡れて!? 足の裏が冷たいよぉー!!」 浴室の狭い空間に、ファイの絶叫が反響する。 黒鋼は外から全力で扉を押さえているようだ。 「いいから早くしろ!! また苦情が来ちまうだろ!!」 「うわああぁあぁああーんっ!!!」 「うるせぇー!!」 有無を言わさぬ厳しさで怒鳴り返されて、おそらく確実に苦情は来るだろうと思う傍ら、ファイはしくしくと泣いた。 「うぅ……う……グス……やだよぉ……こわいよぉ……」 本来、猫は綺麗好きである。自分の舌で全身の毛をグルーミングして、清潔を保つ。 この姿になってもその癖は抜けず、たまに無意識に手の甲を舐めたりはしてしまうが、人間は猫のようにはいかない。手入れできない状態は確かにちょっと気になってはいたが、お湯だろうが水だろうが、直に濡れるのはやっぱり怖かった。 静かに泣いていると、黒鋼が大きく溜息をつくのが聞こえた。 「おまえ、このまま放っておいたらどんどん汚れて臭くなってくぞ」 「グスッ……いいよ……嫌だけど、我慢する……」 再び聞こえる溜息。その後沈黙。やがて黒鋼がぼそりと言った。 「……なら、もう触ってやんねぇ」 「!?」 「さっきみてぇに甘えさしてやんねぇぞ」 「!?!?!?」 「いいんだな?」 それは究極の選択である。 だが、ファイの中で答えはたった一つだった。 そうだ。臭くて困るのは自分だけではない。同じ空間に暮らす黒鋼にも、害が及ぶのだ。 ファイはグスンと大きく鼻をすすった。背後におわすシャワーのホースが、まるでぬらぬらと光る蛇のようにも見えて、身体が震える。 しかしこの強制イベントを回避することは不可能だ。ならばせめてと、ファイは鼻先を赤くしながら一つだけ懇願する。 「く、黒様あのね」 「んだよ」 「せめて、一緒に入って……」 「!?」 「最初っから一人は……ちょっと不安、かも……」 「………」 曇りガラスの向こうで、黒鋼が押し黙る。ファイの方からはただの黒い、ぼんやりとした物体にしか見えないが、もしかしたらこちらに背中を向けているのかもしれない。 「黒たん……ねぇってば……」 「……確かにそれが一番手っ取り早いってのは分かる」 「でしょー? 黒たんと一緒だったらオレ」 「だが断る」 「!?」 そんなぁ……と、ファイは再び涙ぐんだ。 確かに甘えたことを言っているかもしれない。けれど今の状況は、ファイにとって死地に一人きりで投げ込まれているも同然の恐怖だった。 顔を洗ったり歯を磨いたり、そういう場面ではしっかりサポートしてくれる黒鋼だから、せめて最初くらいは傍にいてくれたら、とても心強いのだが。 「……俺もな」 「……?」 「まだちっと、頭ん中がごたついてんだ」 「なんのお話?」 「いいからとっとと済ませちまえ」 「ふぇぇ……」 おかしな声を上げながら、それでもファイは再び白い蛇と向き合うと、恐る恐る歩み寄って、震える指先をコックに伸ばした。 赤い方を捻ればいいと、黒鋼が言った。ゴクリと息を飲む。シャワーは友達。怖くない。 …………いや、やっぱり怖い。 身体の震えは裸で浴室に放り出されたせいだけではなかった。 それでもここまで来たら、黒鋼の言う通りとっとと済ませてしまうに限る。 「……えい!」 掛け声と一緒に、思い切って捻ってみた。 一気に流れ出した湯が、ファイの頭から降り注ぐ。 「ひぃぃぃ……!?」 「よくやった! やればできるじゃねぇか!」 「うぅうぅ……お湯、あったかいぃ……」 濡れている。思いっきり頭からずぶ濡れになっている。全身に湯が伝う。飛び上がりたいほど嫌だ。けれど……温かい。ホカホカだった。ほんのちょっとだけ、気持ちいいような気がしないでもない。 「よし、じゃあ今から俺が言うとおりにしろ。いいな?」 「うぐっ、うんっ、うんっ」 その後、ファイはべそをかきつつも湯に打たれ、指示通りに全身を洗うことに成功した。 +++ 本当に、心底酷い目にあったと感じた。 風呂場を出ると脱衣所には新たなジャージとタオルが用意されていて、黒鋼の姿はなかった。 鼻をすすりながら身体を拭き、それを着て部屋に戻ると、今度はドライヤー攻撃が待っていた。 黒鋼が使用していたのは遠目から眺めていたが、実はあのゴーゴーという音は少し怖い。掃除機ほどではないが、それでも怖いものは怖かった。 それが自分に向けられる日が来ようとは。 黒鋼に押さえつけられ、髪が乾く頃には、ファイはすっかり意気消沈していた。 そしてぐったりと床に倒れ込むファイを置いて、黒鋼はさっさと出かけてしまった。 「黒たんの鬼……黒鬼……」 呟きは空しく室内の乾いた空気に四散した。 ファイはだるい身体を起こすと、台所に向かう。シンク横の天板の上には、すっかり冷めたトーストが二枚、皿に乗せて置いてある。 それを手に取り、その場でムシャムシャと食べる。冷蔵庫から水の入った2Lのペットボトルを取りだして、コップにつがずに行儀悪くラッパ飲みしてやった。 空腹が落ち着くと眠くなってきたが、まだ昼寝には早い時間だ。 だが今日は外を散歩する気力もなくて、ファイはまだトーストの残っている皿を手に部屋に戻ると、腰を下ろしてテレビをつけた。 『君たちやっぱりプ●ミスだ!』 CMというものが流れている。これが流れている間、テレビはあまり面白くない。 だが暫く待っていると、ここ最近なんとなく見ているドラマが始まった。再放送というものらしい。 暇つぶしに見ていたら、だんだん続きが気になってしまい、今では欠かさず見るようにしている。 人間の世界にはなんとも不思議で楽しい娯楽があるものだと、ファイは硬くなっているトーストの残りを齧りながら思った。 ドラマの中では、男女が何やら揉めている。仲がいいのか悪いのか、ついさっきまで言い合いをしていたかと思ったら、今度は身を寄せ合っている。 男が、女の両肩を抱く。女が目を閉じる。男が彼女に顔を寄せる。 そして、唇と唇を合わせた。 「!」 それを見た瞬間、ファイはピンっと尻尾を真っすぐに立たせた。 「これ、さっき黒たんとしたやつと一緒だ……」 なぜだろう。よく分からないけれど、顔が熱くなった。 女が男に「好き」と言った。それから「抱いて」と。 そうだ、好きだから抱いてほしい。ぎゅっとしてほしい。ファイにはテレビの中の女の気持ちが分かるような気がした。 男は何と答えるのだろう。黒鋼のように、思い切り嫌そうな顔をするのだろうか。知らず知らずのうちに身を乗り出していた。 男は優しく笑った。なぜか心臓がドキリと跳ねる。ちっとも似ていないのに、画面に映し出されている男の表情が、黒鋼と重なったような気がした。 ますます目が離せなくなってしまう。 二人の男女は再び唇を重ね合った。そして、倒れこむ。次の瞬間には裸になって、シーツの中で抱き合っていた。 画面がぼやけたりして細部は見えない。綺麗な音楽が流れていて、二人が何をしているのかを誤魔化しているようだった。 やがて場面は朝になる。目を覚ました二人はどこか照れ臭そうに、裸のまま、また唇同士を合わせた。 ドラマはそこで終わった。 エンディングテーマが流れる中、次回予告が流れていてもファイの頭の中には入ってこなかった。 ただ目を輝かせ、頬を染めてぽっかりと口を開けていた。 ……これだ。 「これだーーー!!!」 ファイはハイテンションでそう叫ぶと、青い携帯電話を手に取り『222』をプッシュした。 ←戻る ・ 次へ→
「ギャーーー!! 絶対に嫌ーーーー!!!」
ファイの絶叫が、おそらく近所中に響き渡った。
ついに恐れていたことが現実のものとなってしまった。
これまでは特に何も言われなかったのをいいことに、こちらからも切り出さなかったのだ。
顔や手洗いも、歯磨きも徹底されてきたし、もしかしたらいつかは風呂も……なんて危惧していた。
だから外へ出ても極力、余計なものには触らないようにしていた。時々公園の芝生の上にゴロゴロしたくなることもあったが、それもぐっと我慢していた。
基本的に猫は体臭が薄い生き物だ。不完全な変身しかできていないファイは、おそらく普通の人間と比べてあまり臭わないのだろう。
だがついに……ついにこのときが来てしまった……。
「やだやだ黒たんやめてよーーッ!!」
ファイは脱衣所に連れて来られ、そしてその場で裸にひん剥かれようとしていた。これからどんな試練が待ち受けているか分かっているファイは、全力で暴れる。
「うるっせぇ!! 大人しく脱げ!! 全部脱げ!!」
「いぎゃー!! やだー!! 絶対やだー!!」
黒鋼に借りているブカブカの黒ジャージを脱がされる。ちなみに下はノーパンである。
足やら手やら、とにかく使えるものは何でも使う勢いで押さえこまれて丸裸にされた。
そうしながらも黒鋼が微妙に明後日の方へ視線を向けているのが不思議だったが、とにかく力技で剥かれたファイはそのまま浴室に放り込まれた。
無情にもガラリと音を立てて閉められた曇りガラスのドアに、ぺったりと縋る。
「出してー!! いやー!!」
「張り付くなこのアホ猫!! 曇りガラスの威力舐めんな!! いいから黙ってまずシャワーを出せ!!」
「嫌だ嫌だ嫌だー!! 濡れるのやだぁぁアッあ!? 足! すでにちょっと濡れて!? 足の裏が冷たいよぉー!!」
浴室の狭い空間に、ファイの絶叫が反響する。
黒鋼は外から全力で扉を押さえているようだ。
「いいから早くしろ!! また苦情が来ちまうだろ!!」
「うわああぁあぁああーんっ!!!」
「うるせぇー!!」
有無を言わさぬ厳しさで怒鳴り返されて、おそらく確実に苦情は来るだろうと思う傍ら、ファイはしくしくと泣いた。
「うぅ……う……グス……やだよぉ……こわいよぉ……」
本来、猫は綺麗好きである。自分の舌で全身の毛をグルーミングして、清潔を保つ。
この姿になってもその癖は抜けず、たまに無意識に手の甲を舐めたりはしてしまうが、人間は猫のようにはいかない。手入れできない状態は確かにちょっと気になってはいたが、お湯だろうが水だろうが、直に濡れるのはやっぱり怖かった。
静かに泣いていると、黒鋼が大きく溜息をつくのが聞こえた。
「おまえ、このまま放っておいたらどんどん汚れて臭くなってくぞ」
「グスッ……いいよ……嫌だけど、我慢する……」
再び聞こえる溜息。その後沈黙。やがて黒鋼がぼそりと言った。
「……なら、もう触ってやんねぇ」
「!?」
「さっきみてぇに甘えさしてやんねぇぞ」
「!?!?!?」
「いいんだな?」
それは究極の選択である。
だが、ファイの中で答えはたった一つだった。
そうだ。臭くて困るのは自分だけではない。同じ空間に暮らす黒鋼にも、害が及ぶのだ。
ファイはグスンと大きく鼻をすすった。背後におわすシャワーのホースが、まるでぬらぬらと光る蛇のようにも見えて、身体が震える。
しかしこの強制イベントを回避することは不可能だ。ならばせめてと、ファイは鼻先を赤くしながら一つだけ懇願する。
「く、黒様あのね」
「んだよ」
「せめて、一緒に入って……」
「!?」
「最初っから一人は……ちょっと不安、かも……」
「………」
曇りガラスの向こうで、黒鋼が押し黙る。ファイの方からはただの黒い、ぼんやりとした物体にしか見えないが、もしかしたらこちらに背中を向けているのかもしれない。
「黒たん……ねぇってば……」
「……確かにそれが一番手っ取り早いってのは分かる」
「でしょー? 黒たんと一緒だったらオレ」
「だが断る」
「!?」
そんなぁ……と、ファイは再び涙ぐんだ。
確かに甘えたことを言っているかもしれない。けれど今の状況は、ファイにとって死地に一人きりで投げ込まれているも同然の恐怖だった。
顔を洗ったり歯を磨いたり、そういう場面ではしっかりサポートしてくれる黒鋼だから、せめて最初くらいは傍にいてくれたら、とても心強いのだが。
「……俺もな」
「……?」
「まだちっと、頭ん中がごたついてんだ」
「なんのお話?」
「いいからとっとと済ませちまえ」
「ふぇぇ……」
おかしな声を上げながら、それでもファイは再び白い蛇と向き合うと、恐る恐る歩み寄って、震える指先をコックに伸ばした。
赤い方を捻ればいいと、黒鋼が言った。ゴクリと息を飲む。シャワーは友達。怖くない。
…………いや、やっぱり怖い。
身体の震えは裸で浴室に放り出されたせいだけではなかった。
それでもここまで来たら、黒鋼の言う通りとっとと済ませてしまうに限る。
「……えい!」
掛け声と一緒に、思い切って捻ってみた。
一気に流れ出した湯が、ファイの頭から降り注ぐ。
「ひぃぃぃ……!?」
「よくやった! やればできるじゃねぇか!」
「うぅうぅ……お湯、あったかいぃ……」
濡れている。思いっきり頭からずぶ濡れになっている。全身に湯が伝う。飛び上がりたいほど嫌だ。けれど……温かい。ホカホカだった。ほんのちょっとだけ、気持ちいいような気がしないでもない。
「よし、じゃあ今から俺が言うとおりにしろ。いいな?」
「うぐっ、うんっ、うんっ」
その後、ファイはべそをかきつつも湯に打たれ、指示通りに全身を洗うことに成功した。
+++
本当に、心底酷い目にあったと感じた。
風呂場を出ると脱衣所には新たなジャージとタオルが用意されていて、黒鋼の姿はなかった。
鼻をすすりながら身体を拭き、それを着て部屋に戻ると、今度はドライヤー攻撃が待っていた。
黒鋼が使用していたのは遠目から眺めていたが、実はあのゴーゴーという音は少し怖い。掃除機ほどではないが、それでも怖いものは怖かった。
それが自分に向けられる日が来ようとは。
黒鋼に押さえつけられ、髪が乾く頃には、ファイはすっかり意気消沈していた。
そしてぐったりと床に倒れ込むファイを置いて、黒鋼はさっさと出かけてしまった。
「黒たんの鬼……黒鬼……」
呟きは空しく室内の乾いた空気に四散した。
ファイはだるい身体を起こすと、台所に向かう。シンク横の天板の上には、すっかり冷めたトーストが二枚、皿に乗せて置いてある。
それを手に取り、その場でムシャムシャと食べる。冷蔵庫から水の入った2Lのペットボトルを取りだして、コップにつがずに行儀悪くラッパ飲みしてやった。
空腹が落ち着くと眠くなってきたが、まだ昼寝には早い時間だ。
だが今日は外を散歩する気力もなくて、ファイはまだトーストの残っている皿を手に部屋に戻ると、腰を下ろしてテレビをつけた。
『君たちやっぱりプ●ミスだ!』
CMというものが流れている。これが流れている間、テレビはあまり面白くない。
だが暫く待っていると、ここ最近なんとなく見ているドラマが始まった。再放送というものらしい。
暇つぶしに見ていたら、だんだん続きが気になってしまい、今では欠かさず見るようにしている。
人間の世界にはなんとも不思議で楽しい娯楽があるものだと、ファイは硬くなっているトーストの残りを齧りながら思った。
ドラマの中では、男女が何やら揉めている。仲がいいのか悪いのか、ついさっきまで言い合いをしていたかと思ったら、今度は身を寄せ合っている。
男が、女の両肩を抱く。女が目を閉じる。男が彼女に顔を寄せる。
そして、唇と唇を合わせた。
「!」
それを見た瞬間、ファイはピンっと尻尾を真っすぐに立たせた。
「これ、さっき黒たんとしたやつと一緒だ……」
なぜだろう。よく分からないけれど、顔が熱くなった。
女が男に「好き」と言った。それから「抱いて」と。
そうだ、好きだから抱いてほしい。ぎゅっとしてほしい。ファイにはテレビの中の女の気持ちが分かるような気がした。
男は何と答えるのだろう。黒鋼のように、思い切り嫌そうな顔をするのだろうか。知らず知らずのうちに身を乗り出していた。
男は優しく笑った。なぜか心臓がドキリと跳ねる。ちっとも似ていないのに、画面に映し出されている男の表情が、黒鋼と重なったような気がした。
ますます目が離せなくなってしまう。
二人の男女は再び唇を重ね合った。そして、倒れこむ。次の瞬間には裸になって、シーツの中で抱き合っていた。
画面がぼやけたりして細部は見えない。綺麗な音楽が流れていて、二人が何をしているのかを誤魔化しているようだった。
やがて場面は朝になる。目を覚ました二人はどこか照れ臭そうに、裸のまま、また唇同士を合わせた。
ドラマはそこで終わった。
エンディングテーマが流れる中、次回予告が流れていてもファイの頭の中には入ってこなかった。
ただ目を輝かせ、頬を染めてぽっかりと口を開けていた。
……これだ。
「これだーーー!!!」
ファイはハイテンションでそう叫ぶと、青い携帯電話を手に取り『222』をプッシュした。
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