2025/06/16 Mon ・拘束される春日井。 ・焦らしプレイを食らう春日井。 ・喘ぐ春日井。 ・クソガキムーブからのいつものメス堕ち。 ・あからさまな淫語、汚喘ぎ。 「来主、待って」 時刻は夕方5時過ぎ。すっかり日が落ちて暗くなった空の下、繁華街には煌々と明かりがついた店が立ち並んでいる。操は道行く人の波を縫い、背後から呼び止める声を無視して足早に歩いていた。 「誤解させたなら謝る。でも、来主が思ってるようなことはなにもないよ」 ずいぶん引き離したと思っていたが、甲洋は長い足と大きな歩幅で、思いの外ぴったりと後ろをついてきていた。このまま振り切るのは無理そうだ。操は仕方なく足をとめて振り向くと、つり上げた眉で相手を見上げる。 「誤解ってなに? 女の子に囲まれて、満更でもなかったくせに」 「そんなことない。ただ道を聞かれただけだ」 「嘘! そのままどっか連れて行かれそうになってたじゃん!」 「ちゃんと振り切っただろ……」 甲洋は深く息をもらし、頭痛をこらえるような表情でくしゃりと前髪を乱した。黒いステンカラーコートの下で、ワイシャツの襟とワインレッドのネクタイが少しよれている。そこから彼の疲労度が窺い知れるようだった。 操はベージュのダッフルの上からくるくると巻いた赤いマフラーに、口許が埋もれるくらい深くうつむいた。地面を睨みつけ、下唇を噛みしめる。 (ぼくだってやだよ。こんな気持ち……) 本当なら今ごろは、甲洋と二人で楽しい時間を共有しているはずだった。 会社勤めをしている彼は、ここ一ヶ月ほどはほぼ休みなく働き詰めだ。帰りも遅く、操がウトウトしはじめる頃になってようやく帰宅する。 大学生の操と社会人の甲洋とでは、生活のサイクルに違いがあるのは仕方ない。けれど一緒に暮らし始めて一年、最近はすれ違ってばかりの生活だ。 それでも操は我慢していた。休日を一緒に過ごせなくても、せっかく腕によりをかけた夕飯がすっかり冷めても、キスをしたり甘えたりすることができなくても、疲れている甲洋を困らせてはダメだと自分に言い聞かせていた。 だってもう我儘を言う歳じゃない。ぼくはもう大学生の、立派な大人なんだからと。 そんな折、甲洋から一件のメッセージが届いた。今日は早めに上がるから、どこかでゆっくり食事でもしないかと。しかも明日は久しぶりに休みが取れそうだ、というオマケ付き。バイト中だった操は、そのメッセージを見て嬉しさのあまり飛び上がりそうになった。 そこから先はずっとウキウキしっぱなしで、バイトが終わると速攻で駅まで走り、電車に飛び乗った。 待ち合わせ場所は改札を抜けてすぐの場所で、まだ時間に余裕があったにも関わらず、甲洋はすでに到着していた。しかし、一人じゃなかった。 彼は操とそう変わらない年頃の女性数人に囲まれていた。雑多な駅の構内にあっても、彼女らのはしゃぐ声が大きく響き渡っていた。その中の一人が甲洋の腕に両手を絡ませ、胸を密着させるような形でひっついた。 そのまま強引に引っ張っていきそうな勢いに、思わずカッとなりながら甲洋の名を呼んだ。 彼はあまりのしつこさに困り果てた様子でいたが、操の姿を捉えると「連れが来たから」と言って、どうにか彼女らを振り切った。 難を逃れたはいいものの、せっかくのデートに水をさされた気がして、操はすっかり不機嫌になってしまった。 あの女性たちにも腹が立つけれど、甲洋も甲洋だ。迷惑なら迷惑と、もっと強く言えばいいのに。それをしない彼の性分は理解しているつもりだが、操は思わず「甲洋のバカ!」と吐き捨てて駅から飛びだした。 (だって嫌だったんだもん……) あんな場面、見たくなかった。知らない女に、甲洋がベタベタと触れられているところなんか。こっちはくっつきたい気持ちを必死で抑えていたのに。 だってもし彼に触れたら、きっと離したくなくなってしまう。キスをして、抱きしめて、絶対にその先も求めてしまう。甲洋は優しいから、無理をしてでも操を満たそうとするはずだ。それが分かるから、だからずっと我慢していたのに。 「そろそろ機嫌なおして。来主が好きなもの、なんでも奢るから」 語りかけてくる声は、分かりやすく猫なで声だ。操はマフラーに顔半分を埋めたまま、じっとりと上目遣いで甲洋を睨む。 「ぼくのこと、食べ物で簡単に釣られる猫かなんかだと思ってる?」 「そうじゃない。もともと来主が行きたいところに行くつもりだった。ほら、前にネットで見て行きたがってた店があるだろ。カレー専門店」 「……そこ、こないだの休みに美羽たちと行ってきた」 「ああ、そう……」 甲洋は残念そうな息を漏らし、「困ったな」と小声で呟いている。 プイッと顔を背けながらも、操は横目でチラリと彼を見やった。ご機嫌取りに失敗して参っている様子は、まるで飼い主にほっとかれてしょぼくれる大型犬のようだった。 (ちょっと、意地悪しすぎちゃったかな) 甲洋がなにも悪くないことくらい、ちゃんと分かっているつもりだ。なのについカッとなって、ヘソを曲げてしまった。大人ぶって聞き分けがいいフリをしていただけで、操は自分がまだまだガキであることを痛感した。 このままでは、さすがに彼が可哀想だ。外食デートの誘いだって、ふだん操に寂しい思いをさせていることを、甲洋なりに何かで埋め合わせたかったのだろう。そんなこと考えなくたっていいのに。バカだなと、操は思う。そういうところも好きなんだけど。 「一緒にいられたらそれでいいのに」 「え?」 あえて雑踏に紛れさせた操の言葉が、甲洋の耳に届いたかは分からない。 けれど彼の気持ちは充分に伝わるし、純粋に嬉しいと感じる。だからいい加減すねるのはやめて、甲洋とのデートを楽しもう──と、思ったのだが。 (でもこれ、よく考えたらかなり美味しいシチュエーションかも?) ふと、イタズラ心がムクムクと頭をもたげてきた。 今この場において、操は主導権を握っている。まるで弱みにつけこむようでどうかと思うが、これを利用しない手はないのではないか。ただ食事を楽しむだけのデートもいいけれど、どうせならもう少し〝刺激〟がほしい。 「じゃあさ、ぼくの言うこと、なんでも聞いてくれる?」 まだ不貞腐れているていで問いかけた操に、甲洋はキッカケを掴んだとばかりに笑みを浮かべて頷いた。 「いいよ。なんでも言って」 「ほんとに!? じゃあこっち、一緒に来て!」 「わっ、ちょっと、来主?」 甲洋の手を引くと、操はそこから弾かれたように駆けだした。 * 「来主……これは、なんの冗談……?」 ベッドの上にはコートとスーツのジャケットを脱がされ、ワイシャツのボタンをすべて外された甲洋が、胸の上で手首をネクタイによって拘束された状態で転がされている。 天井を見つめる彼の瞳は、まるで死んだ魚のように生気がない。 「ふふーん。どう? 新しい試みでしょ?」 操は裸にクリーム色のバスローブ一枚で、濡れた髪をタオルで拭きながらベッドに近づいた。甲洋の顔を見下ろし、猫のように細めた瞳でにんまり笑う。 「新しすぎるよ……」 「そんなにキツくは縛ってないよ。痛くないでしょ?」 じっとりした目つきで軽く睨まれたが、操はそれを無視してベッドのふちに腰掛けた。 ここはとあるラブホテルの一室だ。操が甲洋の手を引いて向かったのは、繁華街から路地を一本抜けた先にあるホテル街だった。 甲洋は面食らっていたが、なんでも言うことを聞くと約束している手前、黙りこくるしかないようだった。それをいいことにスーツを中途半端に脱がせ、彼がしていたネクタイで手首を拘束した。 そのままベッドに寝転んでいるように命じて、操はのんきにシャワーを浴びた。出てきたらこの通り、甲洋は言いつけをしっかり守っていた。 「えらいね甲洋。ぼくの言うこと、ちゃんと聞いて待っててくれたんだ」 「来主、これでするのはこの際しょうがないとして、せめて俺にもシャワーを浴びさせてほしいんだけど」 「だめ」 操はタオルを適当に放るとベッドに乗り上げた。四つん這いになって甲洋を真上から見下ろし、片手の人差し指で彼の腹部に軽く触れる。上から下へなぞっていくと、うっすらと割れた腹筋がピクリと動いた。 「く、来主……っ」 「だってぼくもう待てないもん。一ヶ月もエッチしてないんだよ?」 「ッ……!」 「甲洋だって、ほら」 指先が膨らみを帯びた中心にたどり着いた。くるくると円を描くようにさするだけで、膨張する熱がノータックの細身なスラックスを押し上げる。 「もうこんなだよ。ぼくがシャワー浴びてるとこ、ずっと見てたでしょ?」 ここからシャワールームは丸見えだ。すりガラスにはなっているが、奥でうごめく肌色に彼が興奮していたことは明白だった。 図星を突かれた羞恥からか、あるいは期待している自分への戒めか、顔をそらした甲洋がぐっと唇を引き締めた。焦げ茶の髪が張りつく頬が、うっすらと紅潮している。その反応にゾクゾクしながら、熱っぽい吐息を漏らした。 「苦しい? いま楽にしてあげるね」 甲洋の太ももあたりにぺったりと腰を下ろすと、ベルトを外してスラックスの前をくつろげていく。焦らすようにジワジワとファスナーを下ろし、下着を軽く下にズラすと、待ってましたといわんばかりに勃起した性器が飛びだしてきた。 「ダメだ、来主……っ」 「あはっ、すっごく元気! この子も寂しかったんだね」 それはすっかり怒張して、持ち主の鼓動に合わせて脈打っていた。こくん、と無意識に喉を鳴らして、操は震える肉茎をそっと両手で包み込む。 吸い寄せられるように身体を前に倒していくと、甲洋の匂いがふわりと鼻腔をくすぐった。生々しくて、少しだけ汗が混ざった雄の匂い。久しぶりの感覚に、頭がぼうっと煮えてくる。 「おいしそう……ぼくがいっぱい可愛がってあげるね」 「くっ、ぁ……!」 ちゅ、と音を立てて先端にキスをした。じわりと滲んでくる先走りに舌を丹念に這わせて舐めとると、まるでもっともっととねだるように鈴口から液が溢れてくる。 たまらずぱくんと咥えると、彼の匂いがまたグッと強くなった。 「ッ、ぅ……く……っ」 口いっぱいに頬張りながら、甲洋が必死で声を噛み殺すのを聞いているだけで、操の身体もどんどん熱をあげていく。好きな男の自由を奪い、もっとも弱い場所を攻め立てているという背徳感に、バスローブの下で自分自身もゆるゆると反応を示していくのが分かる。 「はぁ、ンッ、む……んっ……!」 「く、来主……っ、ダメだ、ほんとに……っ」 先走りと唾液に濡れた肉棒を、根元まで両手でしごきながら吸ったり舐めたりを繰り返す。亀頭を喉の奥まで押し込むと、甲洋が悩ましげに低く呻いた。 苦しくてむせそうになるのもお構いなしに、口をすぼめて頭を上下に振りたくる。ひどい水音。荒々しい甲洋の息遣い。甘ったるい毒に侵されたみたいに、脳が蕩けて目眩がした。 (甲洋のおちんちん、苦くておいしい……熱くておっきくてピクピクしてて、これ、はやくお尻に挿れたいな……) 尻の孔と腹の奥がジンジンしてきて、無意識に浮かせた腰が揺れてしまう。 口の中では限界まで膨らんだ肉棒が激しく脈打っていた。それに合わせて甲洋の腰がモゾモゾと動きだし、絶頂が近いことを知らせてくる。操はいったん口を外し、手でゆるくしごくだけの弱い刺激に変えた。 「ぁ、はぁ……っ、ん、甲洋、ねぇ? きもちい?」 甲洋は両腕を上げて顔を隠し、歯を食いしばっている。もっと感じてる顔が見たいのにと、操は濡れた唇を尖らせた。 「ねぇー、なにか言ってよぉ。おちんちんはこんなに素直だよ」 「ッ、くる、す……もう……」 「はいダメー。素直じゃない子はイカせてあげない!」 その瞬間、操は性器からパッと手を離してしまった。 「……ッ!」 イキそびれて放置された肉棒が、グンと反り返って切なそうに震えている。 訴えかけるような視線を向けてくる甲洋に、操は悪巧みを隠しもしない笑顔を浮かべた。 「すぐにイッちゃったらつまんないでしょ?」 膝立ちになった操は、見せつけるようにジワジワとバスローブを脱ぎ捨てた。身体の中心では熟したように色づく性器が、かすかに先走りの蜜を漏らしてプルンと揺れている。 ごくりと、甲洋が喉仏を震わせた。彼の肉棒はぴったりと腹につくほど反り返っている。操はそれを尻に敷くようにして、甲洋の下腹に腰を落ち着けた。 「ッ!」 「勝手にイッたらダメだからね。そんなことしたら、今度はおちんちんも縛っちゃうから」 腰を前後にゆるゆると動かし、尻の割れ目と自身の袋を擦りつけて裏筋を刺激する。その快感と、性器を絶妙に圧迫されて射精できないことへのもどかしさで、甲洋の表情が苦悶に歪んだ。 「ぁは……っ、君のそんな顔、初めて見た。すっごく可愛い……ねぇ、気持ちいい? おちんちんお尻でゴシゴシされるの、そんなにいい?」 「も、いい加減、っ、に」 「だぁめ。手は胸の上に置いといて。ぼくに触るのは禁止だよ」 拘束された手を伸ばしかけていた甲洋が、グッと下唇を噛みしめた。玉の汗を額に浮かせ、悔しそうに操を睨みつけながらも大人しく両手を胸に置く。 操はよりいっそう淫らに腰を動かした。恍惚とした笑みを浮かべて、自身もまたもどかしい刺激に身悶える。 「はぁっ、ぁ、ぁ、ぁん……っ、お尻の孔と、ぷるぷるの袋、んっ……おちんちんにゴリゴリされて、感じちゃう……っ」 「ぁっ、く……ッ、ぅ……!」 「イッちゃ、ダメだからね……アッ、ん……っ、ぼくのこと、ずっとほっといたバツなんだから……もっともっと、ぁは、ぁ……ッ、いっぱい、じらしてあげるんだからぁ……っ」 操は腰の動きを止めないまま、右手で自身の勃起した肉茎を握り込んだ。先走りでぐちゃぐちゃになったそこをしごきながら、左手では乳首を片方きゅうっと摘んで、潰したり引っ張ったりして自慰にふける。 「あんッ、ぁ、あぁッ……ぁ、ねぇ、見てぇ……はぁ、ぅ、ぼくね、こうやって、ぁ、ん、いつも一人で、してたのぉ……甲洋のこと考えて、んっ、一人でエッチ、してたのぉ……っ」 「~~……ッ!!」 甲洋は忙しいから、疲れているから、早く休ませてあげないと。そうやって寂しい気持ちに蓋をして、彼を待つ一人の夜は自分のことを慰めていた。本当は甲洋にしてほしいけど、我慢しなくちゃいけないから。 タガが外れた操は、そんな寂しい自分を甲洋の上にまたがりながら実践して見せた。 「……ッ! くる、す……来主……っ」 胸の上で、甲洋が拳を強く握りしめている。本当は今にも拘束を解き、操を思う存分抱きたいはずだ。けれど、操自身がまだそれを許可していない。忠犬のようにただ従うしかない彼は、それでも無意識に両膝をゆるく立て、まるで挿入しているかのように腰を何度か突き上げた。 「やあぁっ、ダメッ、ぁ、きゃうぅ……ッ!?」 振動が腹の奥まで重く響いて、操はこらえる間もなくイッていた。性器から弾けるように白濁が吹きだし、甲洋の腹を汚していく。 「ぁ……ぁ……ん、イッちゃ、たぁ……」 余韻に身を震わせて、甲洋の腹に両手をつくと、糸が切れたようにうなだれる。そのままぼうっとしながら浅く呼吸を荒げていたが、ふと見れば両腕で目許を隠した甲洋が、ギリギリと歯を食いしばっていることに気がついた。 「ッ、ふ……っ、……ッ」 尻に圧迫された肉棒は、先走りと操が放ったものとでひどく濡れていたが、射精はできないままでいる。ビクビクと脈打つだけで、可哀想なくらい腫れていた。当人は全身を赤く染め、汗だくでこわばった身を震わせている。操よりもよっぽど息が荒くて苦しそうだ。 「ごめんね甲洋、ぼくばっかり気持ちよくなって……」 さすがにそろそろ可哀想になってきた。操は腰を浮かせて膝立ちになると、ビクビクと跳ねる肉茎の裏筋を労るように撫でさすった。 「あっ、ぁ……ッ、くる、す……ダメだ、もう……っ」 ほんの少しの刺激でも、甲洋は達してしまいそうになっている。操はクスリと小さく笑うと、顔を覆っている腕を外させ、両手の位置を胸の上に戻してやった。 そのまま身を屈めると、汗ばむ額や濡れた目尻についばむようなキスを降らせる。シワの寄った眉間に、ツンと尖った鼻先に、赤くなった頬に。順々に口づけていくと、甲洋の身体の強張りが少しずつ解けてきた。 「んっ……」 最後に唇を深く重ねて、舌を絡め合う。吸ったり舐めたり、時には甘く噛んだりして貪りながら、操は片手を下方へ伸ばすと甲洋の熱の塊に触れた。 「うッ、ぁ……」 甲洋が喘ぎ、離れた唇が糸を引く。操は舌なめずりをして、さっきよりは幾らか落ち着いたかに見える肉の切っ先を、自身の孔に導いた。 右手を甲洋の腹につき、左手は竿に添え、膝立ちで位置を調節する。互いの体液で濡れた孔は、先端があたるとぷちゅりと可愛い音を立てた。再び甲洋が息を上げたが、彼はどこか心配そうに操を見ている。 「平気だよ。さっきシャワー浴びたとき、自分で少し慣らしてきたから」 あまり時間はかけられなかったが、しっかりローションを入れてほぐしてある。久しぶりなため多少の不安はあるものの、そこはすでにトロトロに仕上がっていた。 操は甲洋がホッとする間もなく、先端をナカにズルリと収める。 「ふぁッ、アッ、ぁあん……っ!」 「ッ、く、ぁ……っ!」 雁首まで飲み込んだ孔に、ジンとした痺れがこみ上げた。けれど多少の痛みくらいなら、たやすく快感にすり替わってしまう。 肩で息をする甲洋が、ねだるような眼差しを向けてくる。操はふっと笑いかけると、そのまま腰を落とさずにあえていったん引き抜いた。ちゅぽん、と音がしたかと思うと、再び腰を落として雁首までを孔に沈める。 「うぁ……ッ、く、くる、す……っ!?」 目をむく甲洋をものともせずに、幾度となくそれを繰り返した。腰を小刻みに上下させ、浅い部分だけをしつこく出し入れさせる。ぬぽ、ぬぽ、と挿入時の突き破る瞬間だけを、互いに何度も味わい続けた。 「あっ、くぅっ、ん……っ、これ、ダメ、きもちぃ……ッ! おく、奥まで欲しいのにっ、癖になっちゃう……っ!」 「無理だっ、もう……来主、頼むから……っ」 この期に及んで焦らされ続ける甲洋の声が、悲痛なまでに上ずっていた。こんなに余裕がない彼は初めてだ。 「いいよ、甲洋。どうしたいの? このままぼくにどうしてほしい?」 微笑む操に甲洋はくしゃりと表情を歪め、一瞬だけ下唇を噛みしめた。それから、観念したようにゆっくりと唇を震わせる。 「……たい」 「なぁに? 聞こえないよ」 「挿れ、たい……来主のナカ、奥まで挿れて、イキたい……」 甲洋は言うだけ言って顔を背けた。羞恥に染まった頬を見て、ゾクゾクとしたものが背筋を駆け抜ける。いつもはセックスで舵を取っているのは彼の方だ。けれど今は真逆の構図になっている。その新鮮さと満たされた支配欲に、操は満面の笑みを浮かべた。 「よく言えました。いい子だね」 操は膝をついていた姿勢を変えて、カエルのようにM字でしゃがみこむ姿勢をとった。甲洋の腹に両手をついて、徐々に腰を落としていく。ぴったりと閉じた肉襞が、自重によってミチミチとこじ開けられた。 「あっ、あっ、はいって、くる……ッ! お腹の奥まで、ズンズンきちゃうぅ……っ!」 「ぅあ……っ、ぁ……あぁ……っ」 たまらず喉をそらし、甲洋が大きく喘いだ。その声をもっと聞いてみたくて、操はもうこれ以上は無理というところまで太い男根を収めきると、息をつく間もなくズボズボと尻を上下に振りたくった。 「あぅ、あっ、あぁっ! い、イイっ、イイよぉ……! アッ、ぁっ、きもちいの……ッ、これ、ずっと欲しくて、寂しかったのぉ……!」 太い性器が内壁を激しくこすり上げると、頭の中にバチバチと電気が走るようだった。無理やりねじ込んでは引き抜いて、好きなだけ快楽を追いかける。 けれどさんざん焦らされた甲洋は、ものの数分もしないうちに限界を迎えてしまう。操の下で腰を震わせ、指先が白くなるほど両手を握りしめていた。 「くる、す……っ、来主! あぁっ、ぅ……もう無理だ……、出る……っ!」 「はぁッ、あぁっ、んッ……いい、よ! 出して……っ、甲洋のせぇし、いっぱい出してぇ……っ!」 「ぁ、ッ……──っ!!」 ドクン、と腹の奥で甲洋が大きく脈打った。直後に弾けた熱い飛沫に、操は下品に開いた両足をブルブルと痙攣させる。 「あっ、あぁーッ、ぁ、あ、出て、る……っ、熱いの、びゅーびゅーいっぱい、ぁ、ぁ、出てる、ぅ……っ!」 うっすらと笑みすら浮かべ、ナカで射精される感覚に二度目の絶頂を迎えた。さっきより幾らか量の少ない白濁が、甲洋の腹に点々と飛び散っていく。 操は踏ん張りがきかなくなった足を崩し、背後にすっかり尻もちをついてしまった。その拍子に性器が孔からズルリと抜けて、そこから玉のようにドロリとした精液が溢れだす。 「はぁ、はぁ……ぁ、ん……甲洋の、すっごく濃い……溢れてきちゃう……」 痙攣する両足をM字に開いたまま、操はドロドロと溢れてはシーツを汚す精液を見下ろして、つい関心してしまった。操は一人で慰めていたが、彼はその暇もなかったのだろう。性器はいちど出したとは思えないくらい、ガチガチに勃起したままだ。もう何回かしなければ、とても治まりそうにない。 「ねぇ、このままもう一回するでしょ? 君は疲れてるだろうし、今日は最後までぼくが──」 言い終わらぬうちに、甲洋が腹筋の力だけでゆらりと起き上がった。 操はまたすぐに彼の上に乗ろうとしたが、腰を浮かせる前に拘束された両手で胸をトン、と押されてひっくり返る。 「わっ、な、なに?」 仰向けで見上げた甲洋の顔は、前髪に隠されてよく見えない。息を荒げるだけで一言も声を発さないことを訝しく思いながらも、操にはまだ余裕があった。なにせ今日の自分は王様だ。甲洋を好きにしていい権利を持っている。 だから彼はなにをするにも、操の許可を得る必要があるはずだ。 「しょうがないなぁ。いいよ、今度は甲洋の好きに動いて」 なんにせよ、彼は正常位を所望している。自由がきかない手では少し不便そうだが、初回はさんざん楽しませてもらったし、ちょっとくらい泳がせてやってもいいだろう。 操は彼がやりやすいように両足を自ら大きく開いた。白濁の残滓で濡れた孔を、両手でキュッと開いて見せる。 「ほら、ここ。優しくしてね」 膝立ちの甲洋が、両手で竿を固定すると操の孔にあてがった。軸を安定させると、今度は両手をカニのような形に開いて操の下腹にぐっと押しつける。 そのままジワジワと腰を進めて、ナカに性器を押し込めてきた。 「あっ、ぁう……っ、や……ぁ、お腹、押しながらだと……くる、し……っ」 甲洋の体重が、すべて下腹にかかっている。薄っぺらい肉越しに自身が入っていく感触を、彼は手のひらで生々しく感じとっているはずだ。 ただでさえ狭い肉壺を、圧迫されながらこじ開けられていく感覚に、操はいやいやと首を振って拒絶した。 「くう、ぅ、ぅ……ッ! こよ、それ、ダメ……や、め……ッ!」 けれど甲洋は操の命令をまるで無視して、奥まで挿入を果たしてしまう。このまま出し挿れなんかされたら、たまったもんじゃない。身も世もなく喘がされて、王様でいるどころじゃなくなってしまう。 だけど多分、そのほうがよっぽどマシだったのかもしれない。このときの操は、まだ気づいていなかった。 「もうっ、バカバカ! なんでぼくの言うこと聞かない──」 の、と最後まで言い終わらないうちに、 ドスン!! という衝撃に身体の奥を貫かれ、頭の中が真っ白になる。 (──え?) なにが起きたのか分からない。分かりたくないような気もする。白く弾けた思考で、操は目を剥きながら全身が総毛立つような感覚を味わった。 「ぇ、ぁ……? ぇ……?」 操が最奥だと思っていた場所には、まだ先があった。おそらく入ってはいけないところまで、甲洋の切っ先が潜り込んでいる。 彼の下生えが、皮膚にぴったりと密着していた。そこにはいっさい隙間がない。ドッと汗が噴きだして、身体がガクガクと恐怖におののく。信じられない。信じたくない。だけど、腹の奥底が燃えている。 「う、そ……こょ……?」 乱れた髪の隙間には、彼の据わりきった瞳があった。フー、フー、と獣のような息遣いをして、そこには欠片の理性も見当たらない。同時に彼がこれまで、どれほどの理性を持って操を抱いていたかを理解させられた。 マズい。マズいマズいマズい。こんなの絶対、殺される。 「い、や……いや、いや、いや……っ! なんで? なんっ……──ッお゛っ……~~ッ!?」 半狂乱で暴れようとした瞬間、どちゅん、といったん引き抜いたものをまた奥まで打ち込まれた。知らない。こんな深い場所。甲洋のモノは身体に比例してとても大きいから、根元まで挿れるのは無理だろうと、ずっとそう思いこんでいたけれど。 彼は操の身体を気遣い、今まで手加減していたに過ぎなかったのだ。だけどそのタガが外れてしまった。そうさせたのは他でもない、操自身だ。 「ぃあ゛ッ……ぇ……っ? だ、め……やだ、やだぁッ! お願い、待っ……おねが……ッ、ア゛っ、ぉッ……──ッ!?」 下腹を圧迫されたまま、甲洋が再びドスンと腰を突き立ててくる。 混乱しながら掻きむしるようにして彼の両手を退けようとしたが、ビクともしない。どちゅん、どちゅん、とそのまま何度も叩きつけられ、白く染まった視界に時おり警告のような赤が混じった。涙が溢れて止まらない。 「うぅ゛、う゛ー……! ひぃ、ん、あ゛ぁ゛ッ! こわれ、ちゃ……ッ、はぎっ、ィ……! おながっ、ぐるじいぃ……ッ!」 内臓ごと引きずり出されて、それをまた奥まで突き破られるようなおぞましさ。だけど下半身はすっかり固定されて、逃げ場がない。もはやだらしなく両足を開いたまま、白目を剥いて喘ぐことしかできなかった。 こんな暴力じみた快感は初めてで、怖くてしかたがないのに、操の孔と粘膜はよだれを垂らして甲洋の肉に絡みついている。 「そ、こぉっ! んぐ、やめ゛、えぁ゛……ッぃ゛! イグ、いくいくいッ……ひぐッ、んア゛、あ、ぁ──……ッ!!」 さんざん奥まで穿たれて、訳も分からず絶頂させられた。真っ赤に腫れあがった性器から、プシュッと水が混じった精液が噴射する。潮を吹かされるのも初めてだった。 どうしてこんなことになったんだっけと、意識の遠くで首を傾げる。さっきまで優勢で、最高の気分だったのに。自分の下で震えることしかできない甲洋は、あんなに可愛かったのに。 「ぁ、ぁー……ッ、ぉ……ぉ゛……ッ……」 ビクン、ビクン、と吊られたカエルのように開きっぱなしの太ももを痙攣させた。直腸にドッと流れ込んでくる精液の熱さに、彼も達したことを知る。 荒っぽく息をつく声を聞きながら、今にもフェードアウトしそうになっている視界に甲洋の姿を捉えた。彼はネクタイの端に歯を立てると、ぐんと引っ張って拘束を解きながら薄く笑った。 「遊びは終わりだよ、来主」 「ぁ、ぇ……?」 「まだ、満足してない。来主だって同じだろ?」 「ッ、ヒ……!?」 自由になった両腕が、それぞれ操の膝の裏に引っかけられた。甲洋がグンと身体を乗りだすと、まるで彼自身とベッドにプレスされるような体勢になる。 ナカに挿ったままの肉棒が、奥にゴツンと押しつけられた。今さっき覚えさせられたばかりの快楽がゾワッと駆け抜け、操は泣きながら首を横に振った。 「やっ、いやぁ! これ以上されたら、ぼく死んじゃう! お腹つぶれて死んじゃうの! ねぇお願い甲洋、お願いだからぁっ!」 「だぁめ」 甘ったるい声を乗せた唇が、あやすように操の額にキスをする。 「ずっとほっといてごめん、来主。そのぶん、しっかり満足させるから」 まるで死刑宣告だ。 全身の血の気は引いているのに、孔はキュンキュンと切なく甲洋を締めつけている。操の性器からは期待の蜜が漏れだし、腹の奥がもっといじめてほしくて疼いていた。 そこから先はもう、なにがなんだか覚えていない。 * たっぷり可愛がられて、泥のようにどっぷり眠って、ホテルを出る頃には翌日の朝になっていた。 いつの間に延長したんだろうか。もともとは休憩コースで入ったはずが、知らぬ間に宿泊コースに切り替わっていた。 「来主、大丈夫?」 フラフラと足がおぼつかない操は、甲洋の腕に縋ってどうにか歩ける状態だ。おんぶしようかと聞かれたが、かっこ悪くて断った。 「だいじょばないよ……腰から下がなくなったみたいだし、なんかまだお尻に入ってるみたいな気がするし……」 ついでに喉もガラガラだ。 甲洋は「ごめん」と言ったが、その肌はツヤツヤで表情も晴れやかだ。かたや操はヨレヨレで、まったくもって面白くない。 (気持ちよかったから別にいいけど……) 何度か本気で死にかけた気はするけれど、満足しているのは操も同じだ。だから強くは責められない。先に仕掛けたのはこちらの方だし、甲洋の新しい一面を見られたのも、まぁ結果オーライだ。 「帰ろう、来主。家でゆっくり休んだほうがいい」 そう言って甲洋は気づかってくれたが、操としてはちょっと不満だ。セックスするだけなら家でもできたし、わざわざ待ち合わせまでした意味がない。 つい性欲の方に全振りしてしまったけれど、外食デートも楽しみにしていたのだから。 「それもいいけど、カレー屋さん行こうよ」 「でも、美羽ちゃんたちと行ったんだろ?」 「そうだけど、美味しかったから。甲洋と一緒にまた行きたい」 本当なら昨日の段階で言うつもりだったことを、ようやく言えた。あのときの操は些細なことでヘソを曲げて、彼に意地悪をしてしまった。だけど今では、甲洋に胸を押しつけていた女の顔すら思いだせない。 そんなことどうでもよくなるくらい、一晩中ずっと甲洋を独占できたことが嬉しかった。もちろん、このあともずっとだ。 「いいよ、じゃあそこに行こう」 やっとデートらしいデートになりそうだ。甲洋も嬉しそうだった。 「でも、まだ少し時間があるよ。お店開くの、確か10時くらいだったと思う」 「ならどこかで時間を潰そう。喫茶店に入ろうか?」 「うん! ぼく喉カラカラ! ジュース飲みたい!」 操は縋っていた甲洋の腕をさらにぎゅうっと抱きしめた。 朝のホテル街にはほとんど人通りがなく、眩しい太陽の下ではカラスがゴミを漁っている。上等な野菜クズを見つけると、すぐに飛び立っていった。 「ねぇ、甲洋」 ここから一本路地を抜ければ、人通りはもっと多いだろう。だから今のうちにと、操は抱いている腕をぐっと引っ張って背伸びした。 ちゅっと音を立てて頬にキスをすると、甲洋が目を丸くする。 「あの凄いやつ、またしてね」 知らない場所をこじ開けられるのは、さすがにちょっと怖かったけど。 知ってしまったからには、多分もう以前と同じじゃ物足りない。この責任は、しっかり取ってもらわなければ。 「……また今度ね」 縛られたことも込みで思いだしてしまったのか、甲洋の頬が耳まで赤く染まった。目をそらしながら指先で頬を掻いているのが可愛くて、操は「えへへ」と笑うと、上機嫌でコートの肩に頬ずりをした。 了 To a friend born in November. 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「来主、待って」
時刻は夕方5時過ぎ。すっかり日が落ちて暗くなった空の下、繁華街には煌々と明かりがついた店が立ち並んでいる。操は道行く人の波を縫い、背後から呼び止める声を無視して足早に歩いていた。
「誤解させたなら謝る。でも、来主が思ってるようなことはなにもないよ」
ずいぶん引き離したと思っていたが、甲洋は長い足と大きな歩幅で、思いの外ぴったりと後ろをついてきていた。このまま振り切るのは無理そうだ。操は仕方なく足をとめて振り向くと、つり上げた眉で相手を見上げる。
「誤解ってなに? 女の子に囲まれて、満更でもなかったくせに」
「そんなことない。ただ道を聞かれただけだ」
「嘘! そのままどっか連れて行かれそうになってたじゃん!」
「ちゃんと振り切っただろ……」
甲洋は深く息をもらし、頭痛をこらえるような表情でくしゃりと前髪を乱した。黒いステンカラーコートの下で、ワイシャツの襟とワインレッドのネクタイが少しよれている。そこから彼の疲労度が窺い知れるようだった。
操はベージュのダッフルの上からくるくると巻いた赤いマフラーに、口許が埋もれるくらい深くうつむいた。地面を睨みつけ、下唇を噛みしめる。
(ぼくだってやだよ。こんな気持ち……)
本当なら今ごろは、甲洋と二人で楽しい時間を共有しているはずだった。
会社勤めをしている彼は、ここ一ヶ月ほどはほぼ休みなく働き詰めだ。帰りも遅く、操がウトウトしはじめる頃になってようやく帰宅する。
大学生の操と社会人の甲洋とでは、生活のサイクルに違いがあるのは仕方ない。けれど一緒に暮らし始めて一年、最近はすれ違ってばかりの生活だ。
それでも操は我慢していた。休日を一緒に過ごせなくても、せっかく腕によりをかけた夕飯がすっかり冷めても、キスをしたり甘えたりすることができなくても、疲れている甲洋を困らせてはダメだと自分に言い聞かせていた。
だってもう我儘を言う歳じゃない。ぼくはもう大学生の、立派な大人なんだからと。
そんな折、甲洋から一件のメッセージが届いた。今日は早めに上がるから、どこかでゆっくり食事でもしないかと。しかも明日は久しぶりに休みが取れそうだ、というオマケ付き。バイト中だった操は、そのメッセージを見て嬉しさのあまり飛び上がりそうになった。
そこから先はずっとウキウキしっぱなしで、バイトが終わると速攻で駅まで走り、電車に飛び乗った。
待ち合わせ場所は改札を抜けてすぐの場所で、まだ時間に余裕があったにも関わらず、甲洋はすでに到着していた。しかし、一人じゃなかった。
彼は操とそう変わらない年頃の女性数人に囲まれていた。雑多な駅の構内にあっても、彼女らのはしゃぐ声が大きく響き渡っていた。その中の一人が甲洋の腕に両手を絡ませ、胸を密着させるような形でひっついた。
そのまま強引に引っ張っていきそうな勢いに、思わずカッとなりながら甲洋の名を呼んだ。
彼はあまりのしつこさに困り果てた様子でいたが、操の姿を捉えると「連れが来たから」と言って、どうにか彼女らを振り切った。
難を逃れたはいいものの、せっかくのデートに水をさされた気がして、操はすっかり不機嫌になってしまった。
あの女性たちにも腹が立つけれど、甲洋も甲洋だ。迷惑なら迷惑と、もっと強く言えばいいのに。それをしない彼の性分は理解しているつもりだが、操は思わず「甲洋のバカ!」と吐き捨てて駅から飛びだした。
(だって嫌だったんだもん……)
あんな場面、見たくなかった。知らない女に、甲洋がベタベタと触れられているところなんか。こっちはくっつきたい気持ちを必死で抑えていたのに。
だってもし彼に触れたら、きっと離したくなくなってしまう。キスをして、抱きしめて、絶対にその先も求めてしまう。甲洋は優しいから、無理をしてでも操を満たそうとするはずだ。それが分かるから、だからずっと我慢していたのに。
「そろそろ機嫌なおして。来主が好きなもの、なんでも奢るから」
語りかけてくる声は、分かりやすく猫なで声だ。操はマフラーに顔半分を埋めたまま、じっとりと上目遣いで甲洋を睨む。
「ぼくのこと、食べ物で簡単に釣られる猫かなんかだと思ってる?」
「そうじゃない。もともと来主が行きたいところに行くつもりだった。ほら、前にネットで見て行きたがってた店があるだろ。カレー専門店」
「……そこ、こないだの休みに美羽たちと行ってきた」
「ああ、そう……」
甲洋は残念そうな息を漏らし、「困ったな」と小声で呟いている。
プイッと顔を背けながらも、操は横目でチラリと彼を見やった。ご機嫌取りに失敗して参っている様子は、まるで飼い主にほっとかれてしょぼくれる大型犬のようだった。
(ちょっと、意地悪しすぎちゃったかな)
甲洋がなにも悪くないことくらい、ちゃんと分かっているつもりだ。なのについカッとなって、ヘソを曲げてしまった。大人ぶって聞き分けがいいフリをしていただけで、操は自分がまだまだガキであることを痛感した。
このままでは、さすがに彼が可哀想だ。外食デートの誘いだって、ふだん操に寂しい思いをさせていることを、甲洋なりに何かで埋め合わせたかったのだろう。そんなこと考えなくたっていいのに。バカだなと、操は思う。そういうところも好きなんだけど。
「一緒にいられたらそれでいいのに」
「え?」
あえて雑踏に紛れさせた操の言葉が、甲洋の耳に届いたかは分からない。
けれど彼の気持ちは充分に伝わるし、純粋に嬉しいと感じる。だからいい加減すねるのはやめて、甲洋とのデートを楽しもう──と、思ったのだが。
(でもこれ、よく考えたらかなり美味しいシチュエーションかも?)
ふと、イタズラ心がムクムクと頭をもたげてきた。
今この場において、操は主導権を握っている。まるで弱みにつけこむようでどうかと思うが、これを利用しない手はないのではないか。ただ食事を楽しむだけのデートもいいけれど、どうせならもう少し〝刺激〟がほしい。
「じゃあさ、ぼくの言うこと、なんでも聞いてくれる?」
まだ不貞腐れているていで問いかけた操に、甲洋はキッカケを掴んだとばかりに笑みを浮かべて頷いた。
「いいよ。なんでも言って」
「ほんとに!? じゃあこっち、一緒に来て!」
「わっ、ちょっと、来主?」
甲洋の手を引くと、操はそこから弾かれたように駆けだした。
*
「来主……これは、なんの冗談……?」
ベッドの上にはコートとスーツのジャケットを脱がされ、ワイシャツのボタンをすべて外された甲洋が、胸の上で手首をネクタイによって拘束された状態で転がされている。
天井を見つめる彼の瞳は、まるで死んだ魚のように生気がない。
「ふふーん。どう? 新しい試みでしょ?」
操は裸にクリーム色のバスローブ一枚で、濡れた髪をタオルで拭きながらベッドに近づいた。甲洋の顔を見下ろし、猫のように細めた瞳でにんまり笑う。
「新しすぎるよ……」
「そんなにキツくは縛ってないよ。痛くないでしょ?」
じっとりした目つきで軽く睨まれたが、操はそれを無視してベッドのふちに腰掛けた。
ここはとあるラブホテルの一室だ。操が甲洋の手を引いて向かったのは、繁華街から路地を一本抜けた先にあるホテル街だった。
甲洋は面食らっていたが、なんでも言うことを聞くと約束している手前、黙りこくるしかないようだった。それをいいことにスーツを中途半端に脱がせ、彼がしていたネクタイで手首を拘束した。
そのままベッドに寝転んでいるように命じて、操はのんきにシャワーを浴びた。出てきたらこの通り、甲洋は言いつけをしっかり守っていた。
「えらいね甲洋。ぼくの言うこと、ちゃんと聞いて待っててくれたんだ」
「来主、これでするのはこの際しょうがないとして、せめて俺にもシャワーを浴びさせてほしいんだけど」
「だめ」
操はタオルを適当に放るとベッドに乗り上げた。四つん這いになって甲洋を真上から見下ろし、片手の人差し指で彼の腹部に軽く触れる。上から下へなぞっていくと、うっすらと割れた腹筋がピクリと動いた。
「く、来主……っ」
「だってぼくもう待てないもん。一ヶ月もエッチしてないんだよ?」
「ッ……!」
「甲洋だって、ほら」
指先が膨らみを帯びた中心にたどり着いた。くるくると円を描くようにさするだけで、膨張する熱がノータックの細身なスラックスを押し上げる。
「もうこんなだよ。ぼくがシャワー浴びてるとこ、ずっと見てたでしょ?」
ここからシャワールームは丸見えだ。すりガラスにはなっているが、奥でうごめく肌色に彼が興奮していたことは明白だった。
図星を突かれた羞恥からか、あるいは期待している自分への戒めか、顔をそらした甲洋がぐっと唇を引き締めた。焦げ茶の髪が張りつく頬が、うっすらと紅潮している。その反応にゾクゾクしながら、熱っぽい吐息を漏らした。
「苦しい? いま楽にしてあげるね」
甲洋の太ももあたりにぺったりと腰を下ろすと、ベルトを外してスラックスの前をくつろげていく。焦らすようにジワジワとファスナーを下ろし、下着を軽く下にズラすと、待ってましたといわんばかりに勃起した性器が飛びだしてきた。
「ダメだ、来主……っ」
「あはっ、すっごく元気! この子も寂しかったんだね」
それはすっかり怒張して、持ち主の鼓動に合わせて脈打っていた。こくん、と無意識に喉を鳴らして、操は震える肉茎をそっと両手で包み込む。
吸い寄せられるように身体を前に倒していくと、甲洋の匂いがふわりと鼻腔をくすぐった。生々しくて、少しだけ汗が混ざった雄の匂い。久しぶりの感覚に、頭がぼうっと煮えてくる。
「おいしそう……ぼくがいっぱい可愛がってあげるね」
「くっ、ぁ……!」
ちゅ、と音を立てて先端にキスをした。じわりと滲んでくる先走りに舌を丹念に這わせて舐めとると、まるでもっともっととねだるように鈴口から液が溢れてくる。
たまらずぱくんと咥えると、彼の匂いがまたグッと強くなった。
「ッ、ぅ……く……っ」
口いっぱいに頬張りながら、甲洋が必死で声を噛み殺すのを聞いているだけで、操の身体もどんどん熱をあげていく。好きな男の自由を奪い、もっとも弱い場所を攻め立てているという背徳感に、バスローブの下で自分自身もゆるゆると反応を示していくのが分かる。
「はぁ、ンッ、む……んっ……!」
「く、来主……っ、ダメだ、ほんとに……っ」
先走りと唾液に濡れた肉棒を、根元まで両手でしごきながら吸ったり舐めたりを繰り返す。亀頭を喉の奥まで押し込むと、甲洋が悩ましげに低く呻いた。
苦しくてむせそうになるのもお構いなしに、口をすぼめて頭を上下に振りたくる。ひどい水音。荒々しい甲洋の息遣い。甘ったるい毒に侵されたみたいに、脳が蕩けて目眩がした。
(甲洋のおちんちん、苦くておいしい……熱くておっきくてピクピクしてて、これ、はやくお尻に挿れたいな……)
尻の孔と腹の奥がジンジンしてきて、無意識に浮かせた腰が揺れてしまう。
口の中では限界まで膨らんだ肉棒が激しく脈打っていた。それに合わせて甲洋の腰がモゾモゾと動きだし、絶頂が近いことを知らせてくる。操はいったん口を外し、手でゆるくしごくだけの弱い刺激に変えた。
「ぁ、はぁ……っ、ん、甲洋、ねぇ? きもちい?」
甲洋は両腕を上げて顔を隠し、歯を食いしばっている。もっと感じてる顔が見たいのにと、操は濡れた唇を尖らせた。
「ねぇー、なにか言ってよぉ。おちんちんはこんなに素直だよ」
「ッ、くる、す……もう……」
「はいダメー。素直じゃない子はイカせてあげない!」
その瞬間、操は性器からパッと手を離してしまった。
「……ッ!」
イキそびれて放置された肉棒が、グンと反り返って切なそうに震えている。
訴えかけるような視線を向けてくる甲洋に、操は悪巧みを隠しもしない笑顔を浮かべた。
「すぐにイッちゃったらつまんないでしょ?」
膝立ちになった操は、見せつけるようにジワジワとバスローブを脱ぎ捨てた。身体の中心では熟したように色づく性器が、かすかに先走りの蜜を漏らしてプルンと揺れている。
ごくりと、甲洋が喉仏を震わせた。彼の肉棒はぴったりと腹につくほど反り返っている。操はそれを尻に敷くようにして、甲洋の下腹に腰を落ち着けた。
「ッ!」
「勝手にイッたらダメだからね。そんなことしたら、今度はおちんちんも縛っちゃうから」
腰を前後にゆるゆると動かし、尻の割れ目と自身の袋を擦りつけて裏筋を刺激する。その快感と、性器を絶妙に圧迫されて射精できないことへのもどかしさで、甲洋の表情が苦悶に歪んだ。
「ぁは……っ、君のそんな顔、初めて見た。すっごく可愛い……ねぇ、気持ちいい? おちんちんお尻でゴシゴシされるの、そんなにいい?」
「も、いい加減、っ、に」
「だぁめ。手は胸の上に置いといて。ぼくに触るのは禁止だよ」
拘束された手を伸ばしかけていた甲洋が、グッと下唇を噛みしめた。玉の汗を額に浮かせ、悔しそうに操を睨みつけながらも大人しく両手を胸に置く。
操はよりいっそう淫らに腰を動かした。恍惚とした笑みを浮かべて、自身もまたもどかしい刺激に身悶える。
「はぁっ、ぁ、ぁ、ぁん……っ、お尻の孔と、ぷるぷるの袋、んっ……おちんちんにゴリゴリされて、感じちゃう……っ」
「ぁっ、く……ッ、ぅ……!」
「イッちゃ、ダメだからね……アッ、ん……っ、ぼくのこと、ずっとほっといたバツなんだから……もっともっと、ぁは、ぁ……ッ、いっぱい、じらしてあげるんだからぁ……っ」
操は腰の動きを止めないまま、右手で自身の勃起した肉茎を握り込んだ。先走りでぐちゃぐちゃになったそこをしごきながら、左手では乳首を片方きゅうっと摘んで、潰したり引っ張ったりして自慰にふける。
「あんッ、ぁ、あぁッ……ぁ、ねぇ、見てぇ……はぁ、ぅ、ぼくね、こうやって、ぁ、ん、いつも一人で、してたのぉ……甲洋のこと考えて、んっ、一人でエッチ、してたのぉ……っ」
「~~……ッ!!」
甲洋は忙しいから、疲れているから、早く休ませてあげないと。そうやって寂しい気持ちに蓋をして、彼を待つ一人の夜は自分のことを慰めていた。本当は甲洋にしてほしいけど、我慢しなくちゃいけないから。
タガが外れた操は、そんな寂しい自分を甲洋の上にまたがりながら実践して見せた。
「……ッ! くる、す……来主……っ」
胸の上で、甲洋が拳を強く握りしめている。本当は今にも拘束を解き、操を思う存分抱きたいはずだ。けれど、操自身がまだそれを許可していない。忠犬のようにただ従うしかない彼は、それでも無意識に両膝をゆるく立て、まるで挿入しているかのように腰を何度か突き上げた。
「やあぁっ、ダメッ、ぁ、きゃうぅ……ッ!?」
振動が腹の奥まで重く響いて、操はこらえる間もなくイッていた。性器から弾けるように白濁が吹きだし、甲洋の腹を汚していく。
「ぁ……ぁ……ん、イッちゃ、たぁ……」
余韻に身を震わせて、甲洋の腹に両手をつくと、糸が切れたようにうなだれる。そのままぼうっとしながら浅く呼吸を荒げていたが、ふと見れば両腕で目許を隠した甲洋が、ギリギリと歯を食いしばっていることに気がついた。
「ッ、ふ……っ、……ッ」
尻に圧迫された肉棒は、先走りと操が放ったものとでひどく濡れていたが、射精はできないままでいる。ビクビクと脈打つだけで、可哀想なくらい腫れていた。当人は全身を赤く染め、汗だくでこわばった身を震わせている。操よりもよっぽど息が荒くて苦しそうだ。
「ごめんね甲洋、ぼくばっかり気持ちよくなって……」
さすがにそろそろ可哀想になってきた。操は腰を浮かせて膝立ちになると、ビクビクと跳ねる肉茎の裏筋を労るように撫でさすった。
「あっ、ぁ……ッ、くる、す……ダメだ、もう……っ」
ほんの少しの刺激でも、甲洋は達してしまいそうになっている。操はクスリと小さく笑うと、顔を覆っている腕を外させ、両手の位置を胸の上に戻してやった。
そのまま身を屈めると、汗ばむ額や濡れた目尻についばむようなキスを降らせる。シワの寄った眉間に、ツンと尖った鼻先に、赤くなった頬に。順々に口づけていくと、甲洋の身体の強張りが少しずつ解けてきた。
「んっ……」
最後に唇を深く重ねて、舌を絡め合う。吸ったり舐めたり、時には甘く噛んだりして貪りながら、操は片手を下方へ伸ばすと甲洋の熱の塊に触れた。
「うッ、ぁ……」
甲洋が喘ぎ、離れた唇が糸を引く。操は舌なめずりをして、さっきよりは幾らか落ち着いたかに見える肉の切っ先を、自身の孔に導いた。
右手を甲洋の腹につき、左手は竿に添え、膝立ちで位置を調節する。互いの体液で濡れた孔は、先端があたるとぷちゅりと可愛い音を立てた。再び甲洋が息を上げたが、彼はどこか心配そうに操を見ている。
「平気だよ。さっきシャワー浴びたとき、自分で少し慣らしてきたから」
あまり時間はかけられなかったが、しっかりローションを入れてほぐしてある。久しぶりなため多少の不安はあるものの、そこはすでにトロトロに仕上がっていた。
操は甲洋がホッとする間もなく、先端をナカにズルリと収める。
「ふぁッ、アッ、ぁあん……っ!」
「ッ、く、ぁ……っ!」
雁首まで飲み込んだ孔に、ジンとした痺れがこみ上げた。けれど多少の痛みくらいなら、たやすく快感にすり替わってしまう。
肩で息をする甲洋が、ねだるような眼差しを向けてくる。操はふっと笑いかけると、そのまま腰を落とさずにあえていったん引き抜いた。ちゅぽん、と音がしたかと思うと、再び腰を落として雁首までを孔に沈める。
「うぁ……ッ、く、くる、す……っ!?」
目をむく甲洋をものともせずに、幾度となくそれを繰り返した。腰を小刻みに上下させ、浅い部分だけをしつこく出し入れさせる。ぬぽ、ぬぽ、と挿入時の突き破る瞬間だけを、互いに何度も味わい続けた。
「あっ、くぅっ、ん……っ、これ、ダメ、きもちぃ……ッ! おく、奥まで欲しいのにっ、癖になっちゃう……っ!」
「無理だっ、もう……来主、頼むから……っ」
この期に及んで焦らされ続ける甲洋の声が、悲痛なまでに上ずっていた。こんなに余裕がない彼は初めてだ。
「いいよ、甲洋。どうしたいの? このままぼくにどうしてほしい?」
微笑む操に甲洋はくしゃりと表情を歪め、一瞬だけ下唇を噛みしめた。それから、観念したようにゆっくりと唇を震わせる。
「……たい」
「なぁに? 聞こえないよ」
「挿れ、たい……来主のナカ、奥まで挿れて、イキたい……」
甲洋は言うだけ言って顔を背けた。羞恥に染まった頬を見て、ゾクゾクとしたものが背筋を駆け抜ける。いつもはセックスで舵を取っているのは彼の方だ。けれど今は真逆の構図になっている。その新鮮さと満たされた支配欲に、操は満面の笑みを浮かべた。
「よく言えました。いい子だね」
操は膝をついていた姿勢を変えて、カエルのようにM字でしゃがみこむ姿勢をとった。甲洋の腹に両手をついて、徐々に腰を落としていく。ぴったりと閉じた肉襞が、自重によってミチミチとこじ開けられた。
「あっ、あっ、はいって、くる……ッ! お腹の奥まで、ズンズンきちゃうぅ……っ!」
「ぅあ……っ、ぁ……あぁ……っ」
たまらず喉をそらし、甲洋が大きく喘いだ。その声をもっと聞いてみたくて、操はもうこれ以上は無理というところまで太い男根を収めきると、息をつく間もなくズボズボと尻を上下に振りたくった。
「あぅ、あっ、あぁっ! い、イイっ、イイよぉ……! アッ、ぁっ、きもちいの……ッ、これ、ずっと欲しくて、寂しかったのぉ……!」
太い性器が内壁を激しくこすり上げると、頭の中にバチバチと電気が走るようだった。無理やりねじ込んでは引き抜いて、好きなだけ快楽を追いかける。
けれどさんざん焦らされた甲洋は、ものの数分もしないうちに限界を迎えてしまう。操の下で腰を震わせ、指先が白くなるほど両手を握りしめていた。
「くる、す……っ、来主! あぁっ、ぅ……もう無理だ……、出る……っ!」
「はぁッ、あぁっ、んッ……いい、よ! 出して……っ、甲洋のせぇし、いっぱい出してぇ……っ!」
「ぁ、ッ……──っ!!」
ドクン、と腹の奥で甲洋が大きく脈打った。直後に弾けた熱い飛沫に、操は下品に開いた両足をブルブルと痙攣させる。
「あっ、あぁーッ、ぁ、あ、出て、る……っ、熱いの、びゅーびゅーいっぱい、ぁ、ぁ、出てる、ぅ……っ!」
うっすらと笑みすら浮かべ、ナカで射精される感覚に二度目の絶頂を迎えた。さっきより幾らか量の少ない白濁が、甲洋の腹に点々と飛び散っていく。
操は踏ん張りがきかなくなった足を崩し、背後にすっかり尻もちをついてしまった。その拍子に性器が孔からズルリと抜けて、そこから玉のようにドロリとした精液が溢れだす。
「はぁ、はぁ……ぁ、ん……甲洋の、すっごく濃い……溢れてきちゃう……」
痙攣する両足をM字に開いたまま、操はドロドロと溢れてはシーツを汚す精液を見下ろして、つい関心してしまった。操は一人で慰めていたが、彼はその暇もなかったのだろう。性器はいちど出したとは思えないくらい、ガチガチに勃起したままだ。もう何回かしなければ、とても治まりそうにない。
「ねぇ、このままもう一回するでしょ? 君は疲れてるだろうし、今日は最後までぼくが──」
言い終わらぬうちに、甲洋が腹筋の力だけでゆらりと起き上がった。
操はまたすぐに彼の上に乗ろうとしたが、腰を浮かせる前に拘束された両手で胸をトン、と押されてひっくり返る。
「わっ、な、なに?」
仰向けで見上げた甲洋の顔は、前髪に隠されてよく見えない。息を荒げるだけで一言も声を発さないことを訝しく思いながらも、操にはまだ余裕があった。なにせ今日の自分は王様だ。甲洋を好きにしていい権利を持っている。
だから彼はなにをするにも、操の許可を得る必要があるはずだ。
「しょうがないなぁ。いいよ、今度は甲洋の好きに動いて」
なんにせよ、彼は正常位を所望している。自由がきかない手では少し不便そうだが、初回はさんざん楽しませてもらったし、ちょっとくらい泳がせてやってもいいだろう。
操は彼がやりやすいように両足を自ら大きく開いた。白濁の残滓で濡れた孔を、両手でキュッと開いて見せる。
「ほら、ここ。優しくしてね」
膝立ちの甲洋が、両手で竿を固定すると操の孔にあてがった。軸を安定させると、今度は両手をカニのような形に開いて操の下腹にぐっと押しつける。
そのままジワジワと腰を進めて、ナカに性器を押し込めてきた。
「あっ、ぁう……っ、や……ぁ、お腹、押しながらだと……くる、し……っ」
甲洋の体重が、すべて下腹にかかっている。薄っぺらい肉越しに自身が入っていく感触を、彼は手のひらで生々しく感じとっているはずだ。
ただでさえ狭い肉壺を、圧迫されながらこじ開けられていく感覚に、操はいやいやと首を振って拒絶した。
「くう、ぅ、ぅ……ッ! こよ、それ、ダメ……や、め……ッ!」
けれど甲洋は操の命令をまるで無視して、奥まで挿入を果たしてしまう。このまま出し挿れなんかされたら、たまったもんじゃない。身も世もなく喘がされて、王様でいるどころじゃなくなってしまう。
だけど多分、そのほうがよっぽどマシだったのかもしれない。このときの操は、まだ気づいていなかった。
「もうっ、バカバカ! なんでぼくの言うこと聞かない──」
の、と最後まで言い終わらないうちに、
ドスン!!
という衝撃に身体の奥を貫かれ、頭の中が真っ白になる。
(──え?)
なにが起きたのか分からない。分かりたくないような気もする。白く弾けた思考で、操は目を剥きながら全身が総毛立つような感覚を味わった。
「ぇ、ぁ……? ぇ……?」
操が最奥だと思っていた場所には、まだ先があった。おそらく入ってはいけないところまで、甲洋の切っ先が潜り込んでいる。
彼の下生えが、皮膚にぴったりと密着していた。そこにはいっさい隙間がない。ドッと汗が噴きだして、身体がガクガクと恐怖におののく。信じられない。信じたくない。だけど、腹の奥底が燃えている。
「う、そ……こょ……?」
乱れた髪の隙間には、彼の据わりきった瞳があった。フー、フー、と獣のような息遣いをして、そこには欠片の理性も見当たらない。同時に彼がこれまで、どれほどの理性を持って操を抱いていたかを理解させられた。
マズい。マズいマズいマズい。こんなの絶対、殺される。
「い、や……いや、いや、いや……っ! なんで? なんっ……──ッお゛っ……~~ッ!?」
半狂乱で暴れようとした瞬間、どちゅん、といったん引き抜いたものをまた奥まで打ち込まれた。知らない。こんな深い場所。甲洋のモノは身体に比例してとても大きいから、根元まで挿れるのは無理だろうと、ずっとそう思いこんでいたけれど。
彼は操の身体を気遣い、今まで手加減していたに過ぎなかったのだ。だけどそのタガが外れてしまった。そうさせたのは他でもない、操自身だ。
「ぃあ゛ッ……ぇ……っ? だ、め……やだ、やだぁッ! お願い、待っ……おねが……ッ、ア゛っ、ぉッ……──ッ!?」
下腹を圧迫されたまま、甲洋が再びドスンと腰を突き立ててくる。
混乱しながら掻きむしるようにして彼の両手を退けようとしたが、ビクともしない。どちゅん、どちゅん、とそのまま何度も叩きつけられ、白く染まった視界に時おり警告のような赤が混じった。涙が溢れて止まらない。
「うぅ゛、う゛ー……! ひぃ、ん、あ゛ぁ゛ッ! こわれ、ちゃ……ッ、はぎっ、ィ……! おながっ、ぐるじいぃ……ッ!」
内臓ごと引きずり出されて、それをまた奥まで突き破られるようなおぞましさ。だけど下半身はすっかり固定されて、逃げ場がない。もはやだらしなく両足を開いたまま、白目を剥いて喘ぐことしかできなかった。
こんな暴力じみた快感は初めてで、怖くてしかたがないのに、操の孔と粘膜はよだれを垂らして甲洋の肉に絡みついている。
「そ、こぉっ! んぐ、やめ゛、えぁ゛……ッぃ゛! イグ、いくいくいッ……ひぐッ、んア゛、あ、ぁ──……ッ!!」
さんざん奥まで穿たれて、訳も分からず絶頂させられた。真っ赤に腫れあがった性器から、プシュッと水が混じった精液が噴射する。潮を吹かされるのも初めてだった。
どうしてこんなことになったんだっけと、意識の遠くで首を傾げる。さっきまで優勢で、最高の気分だったのに。自分の下で震えることしかできない甲洋は、あんなに可愛かったのに。
「ぁ、ぁー……ッ、ぉ……ぉ゛……ッ……」
ビクン、ビクン、と吊られたカエルのように開きっぱなしの太ももを痙攣させた。直腸にドッと流れ込んでくる精液の熱さに、彼も達したことを知る。
荒っぽく息をつく声を聞きながら、今にもフェードアウトしそうになっている視界に甲洋の姿を捉えた。彼はネクタイの端に歯を立てると、ぐんと引っ張って拘束を解きながら薄く笑った。
「遊びは終わりだよ、来主」
「ぁ、ぇ……?」
「まだ、満足してない。来主だって同じだろ?」
「ッ、ヒ……!?」
自由になった両腕が、それぞれ操の膝の裏に引っかけられた。甲洋がグンと身体を乗りだすと、まるで彼自身とベッドにプレスされるような体勢になる。
ナカに挿ったままの肉棒が、奥にゴツンと押しつけられた。今さっき覚えさせられたばかりの快楽がゾワッと駆け抜け、操は泣きながら首を横に振った。
「やっ、いやぁ! これ以上されたら、ぼく死んじゃう! お腹つぶれて死んじゃうの! ねぇお願い甲洋、お願いだからぁっ!」
「だぁめ」
甘ったるい声を乗せた唇が、あやすように操の額にキスをする。
「ずっとほっといてごめん、来主。そのぶん、しっかり満足させるから」
まるで死刑宣告だ。
全身の血の気は引いているのに、孔はキュンキュンと切なく甲洋を締めつけている。操の性器からは期待の蜜が漏れだし、腹の奥がもっといじめてほしくて疼いていた。
そこから先はもう、なにがなんだか覚えていない。
*
たっぷり可愛がられて、泥のようにどっぷり眠って、ホテルを出る頃には翌日の朝になっていた。
いつの間に延長したんだろうか。もともとは休憩コースで入ったはずが、知らぬ間に宿泊コースに切り替わっていた。
「来主、大丈夫?」
フラフラと足がおぼつかない操は、甲洋の腕に縋ってどうにか歩ける状態だ。おんぶしようかと聞かれたが、かっこ悪くて断った。
「だいじょばないよ……腰から下がなくなったみたいだし、なんかまだお尻に入ってるみたいな気がするし……」
ついでに喉もガラガラだ。
甲洋は「ごめん」と言ったが、その肌はツヤツヤで表情も晴れやかだ。かたや操はヨレヨレで、まったくもって面白くない。
(気持ちよかったから別にいいけど……)
何度か本気で死にかけた気はするけれど、満足しているのは操も同じだ。だから強くは責められない。先に仕掛けたのはこちらの方だし、甲洋の新しい一面を見られたのも、まぁ結果オーライだ。
「帰ろう、来主。家でゆっくり休んだほうがいい」
そう言って甲洋は気づかってくれたが、操としてはちょっと不満だ。セックスするだけなら家でもできたし、わざわざ待ち合わせまでした意味がない。
つい性欲の方に全振りしてしまったけれど、外食デートも楽しみにしていたのだから。
「それもいいけど、カレー屋さん行こうよ」
「でも、美羽ちゃんたちと行ったんだろ?」
「そうだけど、美味しかったから。甲洋と一緒にまた行きたい」
本当なら昨日の段階で言うつもりだったことを、ようやく言えた。あのときの操は些細なことでヘソを曲げて、彼に意地悪をしてしまった。だけど今では、甲洋に胸を押しつけていた女の顔すら思いだせない。
そんなことどうでもよくなるくらい、一晩中ずっと甲洋を独占できたことが嬉しかった。もちろん、このあともずっとだ。
「いいよ、じゃあそこに行こう」
やっとデートらしいデートになりそうだ。甲洋も嬉しそうだった。
「でも、まだ少し時間があるよ。お店開くの、確か10時くらいだったと思う」
「ならどこかで時間を潰そう。喫茶店に入ろうか?」
「うん! ぼく喉カラカラ! ジュース飲みたい!」
操は縋っていた甲洋の腕をさらにぎゅうっと抱きしめた。
朝のホテル街にはほとんど人通りがなく、眩しい太陽の下ではカラスがゴミを漁っている。上等な野菜クズを見つけると、すぐに飛び立っていった。
「ねぇ、甲洋」
ここから一本路地を抜ければ、人通りはもっと多いだろう。だから今のうちにと、操は抱いている腕をぐっと引っ張って背伸びした。
ちゅっと音を立てて頬にキスをすると、甲洋が目を丸くする。
「あの凄いやつ、またしてね」
知らない場所をこじ開けられるのは、さすがにちょっと怖かったけど。
知ってしまったからには、多分もう以前と同じじゃ物足りない。この責任は、しっかり取ってもらわなければ。
「……また今度ね」
縛られたことも込みで思いだしてしまったのか、甲洋の頬が耳まで赤く染まった。目をそらしながら指先で頬を掻いているのが可愛くて、操は「えへへ」と笑うと、上機嫌でコートの肩に頬ずりをした。
了
To a friend born in November. Happy Birthday!
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