2025/09/19 Fri そのあとは、すっかり腰がダメになって立ち上がれないファイの代わりに、黒鋼が汚れてしまった床を綺麗にしてくれた。 ついでに机の中身や棚の整理も手伝ってもらったりして、申し訳ないなと思いつつも、その姿を見つめていたら寂しさが込み上げた。 ここでこうしていられるのは、今日が最後なんだなと。 * ほとんど黒鋼の手を借りて準備室がピカピカになる頃には、すっかり夜になっていた。 なんとか立ち上がれるくらいには感覚を取り戻したファイは、それでもまだ足どりが覚束ないことを理由に、黒鋼とそっと手を繋いで宿舎までの道を歩いていた。 普通に行けば10分とかからないような近い距離を、のんびりと、あえて時間をかけて歩く。自然と訪れる沈黙の中に、綺麗に揃った二つの足音だけが響き渡った。 懐かしいな、と思う。 昔は嫌がる黒鋼の手を引いて、毎日こんな風に一緒に学校へ行っていた。あの頃は歩幅を合わせるのは自分の役目だったし、小さな手を一方的に強く握りしめるのもファイの方だったのに。 隣同士で暮らしていた頃のことを思い出すと、不思議な気持ちになる。 ファイはもともと、身長や足の長さに比べて歩幅が狭い。いつしかそれに合わせるのは黒鋼の方になっていて、守ってあげたいと思っていたはずの手に、今は守られている。 「不思議だねー」 繋いでいた手をぶらぶらとブランコのように揺らしながら、肩を竦めて笑ってしまった。 「あんなに小さい手だったのに、もうすっかり男の人の手だー」 黒鋼は真っ直ぐ前を向いたまま、微かに笑うだけだった。もしかしたら、彼も昔のことを思い出していたのかもしれない。 ファイがすっかり大人びた黒鋼に戸惑ったのと同じように。彼もまた、あの頃よりも小さく見えるファイに戸惑うことはあったのだろうか。 「なんか、変な感じだよね」 そう言うと、黒鋼はしみじみと「そうだな」と返して寄こした。 横顔をチラリと見やりながら、本当に今夜で最後なんだという思いが改めて押し寄せる。 別にもう会えなくなるわけじゃないし、むしろ二人はやっと足並みを揃えて歩き出したばかりなのだから、感傷に浸ることはないのだけれど。あまりにも密度の濃い三週間を過ごしたがために、明日から戻って来るであろう日常への実感がわかない。 例えば一ヶ月前の自分に、今の自分に起こった出来事や変化を予想しろと言っても、絶対に無理な話だと思う。いっそ地球が滅亡すると言われた方が、すんなり信じてしまうかもしれない。 ファイは黒鋼のことがずっと大好きだったけれど、好きの形はこの三週間で大きく変わった。 生意気で無愛想で、子犬みたいにすぐ吠える、だけど優しい男の子。懐かしい思い出の中にしかいなかったはずの少年が、青年となって姿を現した時、まさかこんなにも身を焦がすような恋に落ちることになるなんて、思ってもみなかった。 「ねぇ黒たん」 大きな手を握り返す力を強めながら、ファイはずっと不思議に思っていたことを聞いてみることにした。 「黒たんってさ、いつから……」 「ん」 「……いつからなのかなーって。オレのことさ」 いつから、黒鋼はこんな自分を好いてくれていたのだろう。 ファイは黒鋼が嫌がることを率先してやっていた自覚があるし、あの引っ越し前夜の「おまえが俺の嫁になれ」発言だって、深く考えたことはなかった。 けれど再会した黒鋼は、その宣言をさも当然のように強要してきた。 今でこそ異存はないのだが、一体どこをどうひっくり返せば『意地悪な隣のお兄さん』に恋心を抱くのか、ファイにはさっぱり分らない。 「だからね、オレはずっと黒たんに意地悪ばっかしてたし、嫌われてるって思ってたから」 「別に意地悪ってほどでもなかったけどな」 「そうかなぁ? だって黒たんが嫌がって怒ったり泣いたりするの、大好きだったよ」 素直に当時の気持ちを言えば、黒鋼は小さく噴き出した。普通こんなことを言われれば怒って当然のように思うのだが、ファイの目に彼はどことなく嬉しそうに映る。 黒鋼は横目でちらりとこちらに視線を寄こすと、口の端を持ち上げながら「簡単なことだ」と言った。 「おまえにも身に覚えがあるんじゃねぇか?」 「?」 「嫌よ嫌よもってやつ」 一瞬だけ間を置いて、ファイは赤い顔で「あー」と納得の声を上げる。 いいように押さえつけられ、身体を弄ばれることに抵抗を示しながら、いつの間にか受け入れて求めるようにまで変わってしまった自分と、あの頃の黒鋼は似たようなものということか。 だんだん癖になってきて、気付けばそれがなければ物足りなくなってしまう感じ。今のファイには、とても分かりやすい表現だった。 「俺だって自覚すんのには結構な時間がかかったが」 「……うん」 「しょうがねぇよな。ハマっちまったもんは」 「……だね」 黒鋼はなんでもないことのように言うけれど。きっとファイが思うよりずっと大きな苦悩や、葛藤があったに違いない。 ただふざけていただけの当時の自分は、身も心も未熟でいたいけな少年を、手の平で転がして弄んでいただけだ。 結果的にいい方向に転がったにしろ、その罪悪感からファイは一途に思い続けてくれていた黒鋼の気持ちを歪めて捉えてしまったし、苦しませたことに変わりはないわけで。 そう考えはじめるとなんだか申し訳なくなって、俯いてしまったファイに黒鋼は「だが」という接続詞と共に足を止めた。 必然的に一緒に立ち止まったファイは瞬きを繰り返しながらその顔を見上げる。 「多分、最初からだ」 「……最初?」 「おまえが初めて声をかけてきた、あの朝から」 緩い風が一度だけ、目を見開くファイの頬を撫でた。 切れかけていた街灯は電球が交換されていて、真っ直ぐに見下ろしてくる黒鋼の瞳の赤がよく分かる。 ――ガッコ、一緒に行こう? そう言って手を差し出した瞬間を、今でもよく覚えている。 大きな瞳も、小さな手も、高く幼い怒鳴り声も。 何もかもが可愛くて、その反応全てがファイの胸を一瞬にして掴んだ。 (ああ、そうか。あの時から、きっとオレも) 「理屈じゃねぇよ。あんときから、俺にはおまえが特別だった」 呆けたような顔をしているファイの頬に、黒鋼の指先が触れる。その熱にハッとして、思い出したように息を飲んだ。こんなにも真っ直ぐに答えをくれるなんて、思ってもみなかったから。 ファイの記憶の中の黒鋼は怒りっぽくて、すぐに瞳に涙を溜める、とても照れ屋な少年だったのに。 「なんか……恥ずかしいよ、黒たん……」 未だにギャップに戸惑いながらも、どんな顔をすればいいのか分からないくらいの羞恥に駆られて、つい可愛げのないことを口走る。 それでも黒鋼はまるで気を悪くする様子はなく、口元だけ笑いながら目を細めて見せた。その視線があまりにも愛しげで温かいものだから、ファイの中の照れ臭ささはどんどん加速した。 「も、もう! わかったよ! 教えてくれてありがと!」 一応は質問への回答に礼を言いつつ、ファイはそっぽを向きながら繋いだままだった黒鋼の手を離すと、ふらつく足で先に歩き出した。 宿舎はもう目の前で、部屋に戻ったらシャワーを浴びて、ご飯を食べて、それから。今度はゆっくり、ベッドの上でするんだろうな、と思う。 きっと今の比じゃないくらい臭いことを平然と囁かれて、同じくらい恥ずかしいことをたくさん言わされるに違いない。 想像するだけで全身から火を噴いて燃え尽きてしまいそうなのに、早く早くと気が急いて仕方ない。嫌なのに嫌じゃなくて、でもやっぱり嫌で、なのに死にそうなくらい嬉しくて、幸せで。 (ああもう! なんかグチャグチャ!) 一番恥ずかしいのは、きっと照れまくって無駄にジタバタしている、自分の方だった。 ファイの乱暴な足取りから少しテンポを外して、左腕のビーズと黒鋼の足音が重なる。そっと右手をビーズに押し当てると、強く手首を握りしめ、ぴたりと足を止めた。 同じく立ち止まった黒鋼の視線を背中に感じながら、ファイは火照った息を落ち着かせるように大きく一度、深呼吸した。 グチャグチャだけど、恥ずかしいけど。今じゃなきゃ、きっと言えない。そんな気がして。 「あのさ」 「おう」 「オレ、責任とるから」 少年だった君へ。 たくさん意地悪を言ってからかったし、怒らせたし、泣かせた。 苦しませて、悩ませて、傷つけてしまったけど。 でも、好きになってくれた君へ。 ファイは振り向くと、赤い瞳から視線を逸らすことなく言った。 「だから、オレのことお嫁さんにしてね」 一生ずっと、傍にいさせて。 黒鋼が目を見開いたのは一瞬だった。 彼はすぐにあのすっかり大人びた笑みを浮かべて、ただ両手を大きく広げて見せる。それを合図に、ファイはよれたスーツの腕の中に向かって、強く地面を蹴った。 両腕を勢いよく首に絡めて、胸と胸がぶつかり合うようにして飛び込めば、抱き合ったふたりは反動で幾度かクルクルと回ってしまった。 そのあまりにも臭い演出が可笑しくて、ファイは声を上げて笑った。街灯だけが照らす夜道で、光沢を失っていたはずの古いオモチャのビーズがキラキラと輝く。 それは嫌というほど回り道をしながら、ようやくここまでやって来たふたりの行く末に、さらなる道を示しているようだった。 End ←戻る ・ Wavebox👏
ついでに机の中身や棚の整理も手伝ってもらったりして、申し訳ないなと思いつつも、その姿を見つめていたら寂しさが込み上げた。
ここでこうしていられるのは、今日が最後なんだなと。
*
ほとんど黒鋼の手を借りて準備室がピカピカになる頃には、すっかり夜になっていた。
なんとか立ち上がれるくらいには感覚を取り戻したファイは、それでもまだ足どりが覚束ないことを理由に、黒鋼とそっと手を繋いで宿舎までの道を歩いていた。
普通に行けば10分とかからないような近い距離を、のんびりと、あえて時間をかけて歩く。自然と訪れる沈黙の中に、綺麗に揃った二つの足音だけが響き渡った。
懐かしいな、と思う。
昔は嫌がる黒鋼の手を引いて、毎日こんな風に一緒に学校へ行っていた。あの頃は歩幅を合わせるのは自分の役目だったし、小さな手を一方的に強く握りしめるのもファイの方だったのに。
隣同士で暮らしていた頃のことを思い出すと、不思議な気持ちになる。
ファイはもともと、身長や足の長さに比べて歩幅が狭い。いつしかそれに合わせるのは黒鋼の方になっていて、守ってあげたいと思っていたはずの手に、今は守られている。
「不思議だねー」
繋いでいた手をぶらぶらとブランコのように揺らしながら、肩を竦めて笑ってしまった。
「あんなに小さい手だったのに、もうすっかり男の人の手だー」
黒鋼は真っ直ぐ前を向いたまま、微かに笑うだけだった。もしかしたら、彼も昔のことを思い出していたのかもしれない。
ファイがすっかり大人びた黒鋼に戸惑ったのと同じように。彼もまた、あの頃よりも小さく見えるファイに戸惑うことはあったのだろうか。
「なんか、変な感じだよね」
そう言うと、黒鋼はしみじみと「そうだな」と返して寄こした。
横顔をチラリと見やりながら、本当に今夜で最後なんだという思いが改めて押し寄せる。
別にもう会えなくなるわけじゃないし、むしろ二人はやっと足並みを揃えて歩き出したばかりなのだから、感傷に浸ることはないのだけれど。あまりにも密度の濃い三週間を過ごしたがために、明日から戻って来るであろう日常への実感がわかない。
例えば一ヶ月前の自分に、今の自分に起こった出来事や変化を予想しろと言っても、絶対に無理な話だと思う。いっそ地球が滅亡すると言われた方が、すんなり信じてしまうかもしれない。
ファイは黒鋼のことがずっと大好きだったけれど、好きの形はこの三週間で大きく変わった。
生意気で無愛想で、子犬みたいにすぐ吠える、だけど優しい男の子。懐かしい思い出の中にしかいなかったはずの少年が、青年となって姿を現した時、まさかこんなにも身を焦がすような恋に落ちることになるなんて、思ってもみなかった。
「ねぇ黒たん」
大きな手を握り返す力を強めながら、ファイはずっと不思議に思っていたことを聞いてみることにした。
「黒たんってさ、いつから……」
「ん」
「……いつからなのかなーって。オレのことさ」
いつから、黒鋼はこんな自分を好いてくれていたのだろう。
ファイは黒鋼が嫌がることを率先してやっていた自覚があるし、あの引っ越し前夜の「おまえが俺の嫁になれ」発言だって、深く考えたことはなかった。
けれど再会した黒鋼は、その宣言をさも当然のように強要してきた。
今でこそ異存はないのだが、一体どこをどうひっくり返せば『意地悪な隣のお兄さん』に恋心を抱くのか、ファイにはさっぱり分らない。
「だからね、オレはずっと黒たんに意地悪ばっかしてたし、嫌われてるって思ってたから」
「別に意地悪ってほどでもなかったけどな」
「そうかなぁ? だって黒たんが嫌がって怒ったり泣いたりするの、大好きだったよ」
素直に当時の気持ちを言えば、黒鋼は小さく噴き出した。普通こんなことを言われれば怒って当然のように思うのだが、ファイの目に彼はどことなく嬉しそうに映る。
黒鋼は横目でちらりとこちらに視線を寄こすと、口の端を持ち上げながら「簡単なことだ」と言った。
「おまえにも身に覚えがあるんじゃねぇか?」
「?」
「嫌よ嫌よもってやつ」
一瞬だけ間を置いて、ファイは赤い顔で「あー」と納得の声を上げる。
いいように押さえつけられ、身体を弄ばれることに抵抗を示しながら、いつの間にか受け入れて求めるようにまで変わってしまった自分と、あの頃の黒鋼は似たようなものということか。
だんだん癖になってきて、気付けばそれがなければ物足りなくなってしまう感じ。今のファイには、とても分かりやすい表現だった。
「俺だって自覚すんのには結構な時間がかかったが」
「……うん」
「しょうがねぇよな。ハマっちまったもんは」
「……だね」
黒鋼はなんでもないことのように言うけれど。きっとファイが思うよりずっと大きな苦悩や、葛藤があったに違いない。
ただふざけていただけの当時の自分は、身も心も未熟でいたいけな少年を、手の平で転がして弄んでいただけだ。
結果的にいい方向に転がったにしろ、その罪悪感からファイは一途に思い続けてくれていた黒鋼の気持ちを歪めて捉えてしまったし、苦しませたことに変わりはないわけで。
そう考えはじめるとなんだか申し訳なくなって、俯いてしまったファイに黒鋼は「だが」という接続詞と共に足を止めた。
必然的に一緒に立ち止まったファイは瞬きを繰り返しながらその顔を見上げる。
「多分、最初からだ」
「……最初?」
「おまえが初めて声をかけてきた、あの朝から」
緩い風が一度だけ、目を見開くファイの頬を撫でた。
切れかけていた街灯は電球が交換されていて、真っ直ぐに見下ろしてくる黒鋼の瞳の赤がよく分かる。
――ガッコ、一緒に行こう?
そう言って手を差し出した瞬間を、今でもよく覚えている。
大きな瞳も、小さな手も、高く幼い怒鳴り声も。
何もかもが可愛くて、その反応全てがファイの胸を一瞬にして掴んだ。
(ああ、そうか。あの時から、きっとオレも)
「理屈じゃねぇよ。あんときから、俺にはおまえが特別だった」
呆けたような顔をしているファイの頬に、黒鋼の指先が触れる。その熱にハッとして、思い出したように息を飲んだ。こんなにも真っ直ぐに答えをくれるなんて、思ってもみなかったから。
ファイの記憶の中の黒鋼は怒りっぽくて、すぐに瞳に涙を溜める、とても照れ屋な少年だったのに。
「なんか……恥ずかしいよ、黒たん……」
未だにギャップに戸惑いながらも、どんな顔をすればいいのか分からないくらいの羞恥に駆られて、つい可愛げのないことを口走る。
それでも黒鋼はまるで気を悪くする様子はなく、口元だけ笑いながら目を細めて見せた。その視線があまりにも愛しげで温かいものだから、ファイの中の照れ臭ささはどんどん加速した。
「も、もう! わかったよ! 教えてくれてありがと!」
一応は質問への回答に礼を言いつつ、ファイはそっぽを向きながら繋いだままだった黒鋼の手を離すと、ふらつく足で先に歩き出した。
宿舎はもう目の前で、部屋に戻ったらシャワーを浴びて、ご飯を食べて、それから。今度はゆっくり、ベッドの上でするんだろうな、と思う。
きっと今の比じゃないくらい臭いことを平然と囁かれて、同じくらい恥ずかしいことをたくさん言わされるに違いない。
想像するだけで全身から火を噴いて燃え尽きてしまいそうなのに、早く早くと気が急いて仕方ない。嫌なのに嫌じゃなくて、でもやっぱり嫌で、なのに死にそうなくらい嬉しくて、幸せで。
(ああもう! なんかグチャグチャ!)
一番恥ずかしいのは、きっと照れまくって無駄にジタバタしている、自分の方だった。
ファイの乱暴な足取りから少しテンポを外して、左腕のビーズと黒鋼の足音が重なる。そっと右手をビーズに押し当てると、強く手首を握りしめ、ぴたりと足を止めた。
同じく立ち止まった黒鋼の視線を背中に感じながら、ファイは火照った息を落ち着かせるように大きく一度、深呼吸した。
グチャグチャだけど、恥ずかしいけど。今じゃなきゃ、きっと言えない。そんな気がして。
「あのさ」
「おう」
「オレ、責任とるから」
少年だった君へ。
たくさん意地悪を言ってからかったし、怒らせたし、泣かせた。
苦しませて、悩ませて、傷つけてしまったけど。
でも、好きになってくれた君へ。
ファイは振り向くと、赤い瞳から視線を逸らすことなく言った。
「だから、オレのことお嫁さんにしてね」
一生ずっと、傍にいさせて。
黒鋼が目を見開いたのは一瞬だった。
彼はすぐにあのすっかり大人びた笑みを浮かべて、ただ両手を大きく広げて見せる。それを合図に、ファイはよれたスーツの腕の中に向かって、強く地面を蹴った。
両腕を勢いよく首に絡めて、胸と胸がぶつかり合うようにして飛び込めば、抱き合ったふたりは反動で幾度かクルクルと回ってしまった。
そのあまりにも臭い演出が可笑しくて、ファイは声を上げて笑った。街灯だけが照らす夜道で、光沢を失っていたはずの古いオモチャのビーズがキラキラと輝く。
それは嫌というほど回り道をしながら、ようやくここまでやって来たふたりの行く末に、さらなる道を示しているようだった。
End
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