2025/06/16 Mon *Oh My kitten!から二年後のお話です。まずはそちらからご覧ください。 操の様子がおかしくなったのは、彼が18歳の誕生日を迎える半月ほど前からだ。無邪気にくっついてくることがなくなり、二人きりでいるときの口数も極端に減った。 手を繋いだり、キスをしそうな空気を察すると、わざとらしく口笛をふいて顔を逸し、一定の距離を保とうとする。どうかしたのかと訊ねても、目を泳がせながら「別にぃ」と言って誤魔化すばかりだった。 そのあからさまな態度を、気にするなというほうが難しい。機嫌を損ねるようなことをした覚えもないし、操の明け透けな性格を考えれば、不満があるならとっくに漏らしているはずだ。 けれど避けられていることだけは明白で、原因はなんだろうかと考えたとき、思い当たるものが一つだけあった。それは二年前に交わした、あの約束だ。 まだ16歳だった操は、なんの進展もない自分たちの関係に焦りを覚えて、無理やり身体を繋げようとした。しかしろくな知識も準備もなしに上手くいくはずがなく、行きあたりばったりの行為は失敗に終わった。 そのとき甲洋は落ち込む操と約束を交わしたのだ。二年後、操が18歳になったときには、キスより先のこともしようと。そしていよいよその日が目前まで近づいている。 彼の急な態度の変化は、そのこととなにか関係しているのではないか。むしろ他に思い当たるものがなかった。 例えばの話──考えたくはないけれど、なんらかの理由で操の気持ちが甲洋から離れ、約束をなかったことにしたいと考えているのなら、あの避けるような態度にも納得がいく。他に好きな相手ができたとか、これといった理由もなく冷めてしまったとか。それらの可能性は、決してないとは言い切れない。 本人に確かめもしないうちから、甲洋はマイナスの思考に囚われていった。ただの思い過ごしであってほしいと、そう願う気持ちだけをささやかな希望にして。 そうやってズルズルと日数が経過して、操の誕生日当日がやってきた。 その日は午後から店を貸し切りにして、バースデーパーティーが開かれた。綺麗に飾りつけられた店内で、集まった人たちに囲まれながら豪華な料理とケーキを前にした操は、顔を赤くしながら嬉しそうにはしゃいでいた。 けれど甲洋の内心は気が気じゃない。本当ならもっと浮かれていてもいいはずなのに。 操の子供っぽさは相変わらずで、背は幾らか伸びたが、長身の甲洋との差は縮まらなかった。それでも甲洋はこのときを辛抱強く待っていたし、ほんの少し前までは操も待ち遠しそうに「まだかなぁ」なんて言いながら指折り数えていた。 だからもし甲洋の不安がただの杞憂であれば、今夜は自然とそういう流れになるのではないかと、そう思っていた。この際セックスするとかしないとかは後回しだ。ただ操の気持ちが知りたかった。 そして日が沈む頃にパーティーがお開きになり、みなが家に帰っていくのと一緒に、操まで帰宅してしまったことに甲洋は愕然とした。 彼は「食べすぎて眠い」などと言いながら、こちらには目もくれずそそくさと帰ってしまったのである。 決まりだ。そこまでされたら、嫌でも思い知る。 操の気持ちは、もうとっくに自分から離れてしまっているのだと。 * 閉店後の店内はやけに静かで、操が床にほうきを走らせる音だけが響いている。 レジ締めの作業を終えた甲洋は、無人のホールをせっせと掃き掃除しているその背を見つめ、鼻から小さな息を漏らした。 店のシェフである真壁一騎は、所用で一足先に上がってしまった。ふたりっきりの店内には一切の会話がなく、寒々しい空気だけが流れている。 操の誕生日から三日。彼は相変わらず甲洋と距離をとり続けていた。むしろ今まで以上に態度がよそよそしくなっている。一騎とは普段通り接するが、甲洋とは意地でも目を合わせようとしない。そのわざとらしさは、まるで悪戯がバレるのを恐れる子供のように甲洋の目に映った。 「……来主」 甲洋は少し迷ったが、操の背中に声をかけた。彼が自分から口を開くまで待つことも考えたが、そろそろこの状態も限界だ。 「な、なに?」 操は肩をギクリとさせて、どこかバツが悪そうにおずおずと振り返る。 「お前、なにか俺に言うことがあるんじゃないの?」 「……別にないよ?」 「理由もなく避けられる意味が分からない。なにかあるなら」 「だからなにもないってば!」 操は苛立った声をあげ、また甲洋に背を向けた。 「本当になんでもない……ぼくのことはほっといて」 「来主」 「今日から一人で帰るから。もう送ってくれなくていいよ」 そう言って、操はほうきを片付けにバックヤードへ消えていこうとした。それを「待って」と引き止めると、また肩をギクリとさせて歩みを止める。 「話そう、来主」 引き下がらない甲洋に、操は渋々といった様子でほうきを壁に立て掛けた。 甲洋がカウンターの一席に腰掛けると、隣にちょこんと腰を落ち着ける。彼はうつむき、やっぱりこちらを見ようとしない。その沈んだ横顔に、否が応でも終わりを突きつけられた気がする。 「顔も見たくないなら、そのままでいいから。来主の気持ちを、聞かせてほしい」 ズルズルとここまで引き伸ばしてしまったが、ケジメくらいはつけておくべきだと思う。お互いにとっても、その方がいいはずだ。 こうなったからといって、操を責めるつもりはない。自分にはこの子を繋ぎ止めておくだけのものが足りなかった。きっとそれだけの話なのだと、必死で諦めようとしている。けれどどこかではひどく責め立て、問いつめてしまいたい自分もいた。だからそうなる前に、最後くらいはちゃんとトドメを刺してほしい。 「冷めたなら、そう言って」 傷つく覚悟をした上で切り出したはずだった。けれど甲洋の言葉を受けて、操は「は?」の形にポカンと口を開きながらこちらを見た。 「冷めたって、なにが?」 「なにがって……来主は俺との関係を終わりにしたいんだろ?」 「終わり……? 終わりってなに?」 「?」 「え? 待って? もしかしてこれ別れ話!?」 「……うん?」 「嘘!? 甲洋、ぼくたち終わりなの!?」 「えぇ……?」 予想外の風向きだ。むしろこちらがそれを聞きたいところだったのだが……。 「やだやだやだぁ! 終わりなんてやだ! そんなのやだよぉ!!」 青褪めていた操はいよいよ泣きだし、握りしめた両手でグシグシと顔を拭っている。これは一体どういうことだろう。全く意味が分からない。 「ひどいよ! なんで急にそんなこと言うのぉ!?」 「急にって……いや、だって来主が先に冷めたんじゃないの?」 「そんなことないもぉん!!」 「はぁ? じゃあ、なんでずっと避けて……?」 「そ、それは……」 真っ赤になっている操の鼻からピュッと鼻水が垂れてきたので、甲洋は困惑しながらも尻ポケットからとっさに取りだしたハンカチでサッと拭き取ってやった。 「その……あの……」 操はよほど言いにくいことがあるのか、うつむいて唇をまごつかせている。けれど根気よく待ち続けていると、やがておずおずと顔を上げてこう言った。 「だってぼく、病気になっちゃったんだもん!!」 わっ、と声をあげ、操がカウンターに突っ伏して大泣きしはじめた。 * 「とりあえず落ち着こう。お互い」 甲洋は厨房でコーヒーとココアを淹れると、カウンター席に戻った。それぞれカップを手にして口をつけると、同時に「ふぅ」と息をつく。 「それで……病気っていうのは一体……?」 見たところ、操が身体に変調をきたしているようにはまったく見えない。甲洋と距離を置いている以外では、これといった変化も特には見られなかったはずだが。 けれどそれはあくまでも表向きの話だ。操は言いだせないほどのなにかを抱え込んでいる。それほどまでに重たい病に侵されているということなのだろうか。 「ずっと誰にも言えなかったんだけど……」 たった今コーヒーで潤したはずの喉がカラカラに乾くのを感じる。甲洋は顔を強張らせ、緊張しながら操の声に耳を傾けた。 「だって、自分がこんなことになるなんて思ってなかったから、すごく怖くて……」 なにかが込み上げてきたかのように、操はそこで言葉を切ると吐く息を震わせる。甲洋はとっさにテーブルの上にあった小さな手を握りしめた。悲しそうに伏せられた横顔に歯噛みする。この子がこんな顔をするなんて。ずっと一人で思い悩んでいたのだろう。自分を避けていたのは、心配をかけたくなかったからなのかもしれない。 そう思うと、甲洋の胸に引き裂かれたような痛みが走った。 「来主。たとえどんなことでも受け止めるよ。俺がずっとそばにいる」 「甲洋……」 「話してほしい。少しずつで構わないから」 甲洋の瞳を見つめ、操は泣きそうにくしゃりと表情を歪めた。唇をきゅっと噛み締めて、こくりと頷く。そしてゆっくりと口を開いた。 「ぼくね、おっぱいからお乳が出るようになっちゃったんだ」 「……ん?」 「甲洋と上手にエッチできるように、自分でお尻を拡張してたんだけど……そしたら急にお乳がぴゅーって」 「待って」 「え?」 「ごめん、ちょっと待って。お前はなんの話をしているの?」 「なにって、病気の経緯を」 「いやいやいやいや……」 待て待て待て。深刻な空気に飲まれかけていたが、彼はなにを言っているのだろうか。お乳とか拡張とか、とんでもワードが聞こえたような気がするのだが。 「ちょ、どっ、まっ……来主、落ち着いて。まずは落ちゅち……落ち着くんだ」 「落ち着いたほうがいいのは甲洋の方だと思うよ。噛んでるし」 冷静に突っ込まれてしまったが、さっきからずっと気持ちが追いつかない状態に陥っている。決死の覚悟で別れ話を切り出したと思えば、次の瞬間には妻のガン宣告を聞く夫のような気持ちになり、最終的な着地点が母乳とセルフ拡張だった。自分でも過去にこれほど取り乱したことがあっただろうかと、だいぶ戸惑っているところである。 しかし話はまだ途中だ。甲洋は今度こそ話の腰を折らないよう、とりあえず最後まで操の話を聞くことにした。 「前は失敗しちゃったでしょ? だから今度はちゃんと上手にできるように、自分でお尻の穴を触って特訓してたの。そしたらね、最近ちょっとずつ気持ちよくなってきて……それでね、その頃から、なぜかおっぱいからお乳が出てくるようになったの……」 「ッ……!?」 操は膝をモジモジとすり合わせ、顔を赤くしながら涙目になっている。話を聞いているだけで、甲洋は全身の血液が沸騰しそうだった。まさか操が、夜な夜なそんな真似をしていたなんて。ついつい前かがみになってしまいそうだった。 「もうすぐ誕生日だなって思ったら、考えるだけで出てくるようになっちゃって……甲洋とキスすると、もっと出ちゃうから……」 「だから避けていた……?」 こくん、と操がうなずいた。 「だって、こんなの絶対ヘンだもん……ぼく男なのに、赤ちゃんができたわけでもないのに、お乳が出るなんて……知られたら、嫌われると思って……」 だから操はどうにかしてこの病気が治るまでは、甲洋に近づかないようにしようと決めた。けれど理由も分からず、治し方も分からない。誰にも相談できないまま、ずっと一人で抱え込んでいたのだ。 確かに言いにくいことだろう。18歳になったとはいえ、操はまだまだ多感な年頃だ。ましてや母乳が出るなんて、深く思いつめてしまうのも無理はない。 「お母さんにも言えないし、病院も怖くて行けないし……ぼく、ずっとこのままなのかなぁ……」 ポロポロと涙を流す操を見て、申し訳ないが気が抜けた。内容は衝撃的だったが、考えていたような最悪な展開にはいたらなかった。ここ最近はずっと、これからどうやって生きていこうかと途方に暮れながら過ごしていたほどだ。それほどまでに甲洋は操のことが大切で、愛しくて、離れられない存在だった。 「嫌いになんかならないよ」 安堵の息を漏らしながら、甲洋は操の肩に手を置いた。 「……本当?」 「本当。来主、それは体質の問題だ。男にだって乳腺はある。お乳が出たからって、なにも変な話じゃないよ」 「そうなの? じゃあこれ、病気じゃないの?」 「不安なら一緒に病院に行こう。俺がついて行くから。それなら少しは安心だろ?」 「甲洋……!」 操の泣き顔が、花がほころぶような笑顔に変わった。抱きついてくるのを受け止めて、しっかりと腕に閉じ込める。すっぽりと収まってしまう体温に、安堵と喜び込み上げた。 もう半月以上もこうして触れることができなかったのだ。手を伸ばせば当たり前のようにあるぬくもりが、こんなにも大切なものであることを改めて思い知らされる。 「あのね、甲洋」 存分に抱きしめて堪能していると、操の身体がもぞりと動く。彼は顔をあげ、恥ずかしそうに上目遣いで甲洋を見た。 「ぼくのおっぱい、見ても本当に変だって思わない?」 「思わないよ」 「じゃあ……見て」 「!」 「病院に行くよりも、甲洋に見てほしいの……」 甲洋は衝撃に打たれたが、なにもおかしな話ではない。操はまだ少しだけ不安そうだ。自分の身体に起こった変化を、信頼できる相手と共有することで、より深く安心感を得たいのかもしれない。その気持ちを無下にするわけにはいかなかった。 「わかった。じゃあ、部屋に行こう」 頷いた操の手を引いて、甲洋は胸を高鳴らせながら二階へ続く階段へと足を向けた。 * 部屋に入ると、互いの方に軽く身体を向け合う形でベッドの縁に腰かけた。 甲洋の目の前で、操がシャツのボタンを上からひとつひとつ外していく。その手元をじっと見つめながら、腫れ物に触るようにソワソワとして落ち着かない。鼓動が忙しなく胸の内側を叩き続けて、今にも突き破ってきそうだった。 シャツのボタンを全て外し終えると、操がカーテンを開けるように両手で前をはだけさせた。そこで目を引くのは、乳首の上にそれぞれ貼りつけられた絆創膏だ。ふいに出てしまったときに服を汚さないための対策なのだろうが、これはこれで非常に煽情的な光景である。 よくよく見ると、絆創膏には中央の部分にうっすらと滲むようなシミが確認できた。 「さっきぎゅってされたとき、ちょっと出ちゃった」 クスンと鼻を鳴らしながら言った操に、甲洋はぐっと生唾を飲み下す。 「……直に見るよ。いい?」 「ん」 熱っぽく息を漏らして操が頷くのを合図に、震えそうになる指先で端っこの部分に軽く爪を引っ掛ける。すっかり湿っている絆創膏はほとんど粘着力を失っており、それだけでペロンと剥がれ落ちてしまった。もう片方も同じようにして剥がしてしまうと、淡桃の乳首がツンと頭を尖らせていた。 その先端から、ぷくんと小さな白い粒が滲みでる。それは限界まで膨らんでから、涙のように皮膚を伝い落ちていった。 「や、ん……ど、しよ……見られてるだけで、おちちでちゃうよぉ」 恥ずかしそうに、操が尻をモジモジとさせた。それらの光景は想像を絶する破壊力で、一気に天辺まで達した興奮に思考が白く染まりかける。が、ここで目を開けたまま気絶するわけにもいかず、どうにか気を取り直した甲洋は予想を確信に変えた。下で話を聞いていたときから、そうじゃないかとは思っていたが──。 「来主はいやらしい気持ちになると、ここからミルクが出るんじゃない?」 再び小さな雫を盛り上がらせている乳首の片方に指をやり、中心には触れずに乳輪だけをクルリとなぞってみた。白い涙がポロリとこぼれて、甲洋の指を伝っていく。 「あっ、んッ……! ぁ……う、ん……」 操は唇をきゅっと噛み締めながら、素直にこくんと頷いた。 「やらしいこと、考えないように我慢しなきゃって思ったの……でも、ダメって思うともっと考えちゃって、甲洋とするときのこと、いっぱい、考えちゃって……」 「……だから一人で触ってた? お尻の穴も、気持ちよくなってくるくらい?」 「あ、ぁ、や……出ちゃうからぁ……エッチなこと、言わないでぇ……!」 言葉で少し煽るだけで、操は乳首からさらに涙を滲ませた。悩ましげな表情を浮かべ、潤んだ瞳を甲洋に向けてくる。 グンと欲を突き上げられたような気がして、いよいよ我慢の限界を感じた。こんなものを見せつけられて、正気でいられる男がいるならその顔を拝んでみたい。 胸から目が離せずに凝視する甲洋を、操が潤んだ瞳で物欲しそうに見つめている。 その肌に刺さるような視線に囚われながら、甲洋はある種の感慨を覚えずにはいられなかった。直球でぶつかってくるしか脳がなかった、あの操がだ。悩みを打ち明け、共有したいというていで、さりげなさを装いながらここまで甲洋を誘導した。 まんまと乗ったのは、甲洋にもあわよくばという下心があったからだ。むしろこうなるのはごく自然な流れで、そのいじらしい変化に胸を掻きむしられるような思いがする。 「ふぁっ、ァッ! こ、こうよ……!」 すっかり固くなっている乳頭を、躊躇なくそれぞれ指の腹で押しつぶした。操の身体がビクンと跳ねるのも構わずに、爪の先で軽く弾いたり、きゅっとつまんで絞るように刺激する。そのたびに操は甲高い声をあげて身をくねらせ、乳首からはじわじわと液体を滲ませた。 またひとつ生唾を飲み込んで、甲洋は操の腰に腕を回すと、泣いてばかりいる乳首の片方にキスをした。 「ひゃぁっ、ん! あっ、ふあぁ……っ!」 ちゅっと吸い上げて、舌で丹念に粒を転がす。滲みでる母乳の味が、口の中に広がった。柔らかくて、胸をくすぐるような甘ったるさ。これが操の味だと思うだけで、狂おしいほどの愛しさが溢れてとまらなくなる。 何度も何度も吸い上げては舌で転がし、右も左も空いている方は指先でコリコリと扱いたり、潰したりしながら休みなくのめり込んでいく。 「あんっ、あ、ァッ、甲洋、きもちい……っ、おっぱい、きもちぃの……!」 執拗に舐めしゃぶられて、淡桃だった乳首が赤く腫れたように色味を濃くする。 蕩けきった表情で、操が甲洋の頭を掻き抱いた。しばらくはあられもなく悶えていたが、やがてくしゃくしゃと乱していた髪を優しく梳かすように撫ではじめる。 「はぁ、ぁ、んっ、ふふ……っ、赤ちゃんみたい……甲洋、かわいい」 思いもよらない言葉に面食らい、しかめた顔で見上げると、潤んだ瞳を細めながら操がコトンと首をかしげた。 「ぼくのおちち、おいしい?」 髪を梳きながら問いかけるその仕草が、なんだか母親めいている。母親に愛される感覚なんて、体験したことがないから分からない。だから想像でしかないのだけれど。 それにしたって10も歳下の少年を捕まえて、一体なにを考えているのだろう。まるで赤子のように心がふやけそうになっている自分に戸惑う一方で、この薄い胸にすべてを委ねてしまいたいような、縋りついて泣いてしまいたいような、そんな奇妙な感覚に襲われる。 「……ん。おいしい」 だからだろうか。つい素直な感想を漏らすと、操が嬉しそうにまた「かわいい」と言う。 この子もこの子だ。いい歳をした男を相手に、そんな感想を抱くなんて。まるで母性にでも目覚めたみたいに──。 (……これ以上は、考えないほうがよさそうだ) ここを深く突き詰めてしまうと、お互いに不味い方向に進みかねない気がする。それはちょっと怖いような、だけど興味深いような。おかしな気分になりながらも、甲洋は可愛いのはお前だよとばかりにその唇を奪ってやった。 「んんっ……」 やっとのことで初めての夜を迎えているのに、まだキスをしていなかった。 二年前と同じで、今の甲洋には余裕がない。だけどもはや制約もない。あの夜はただ拙いキスに振り回されて、座枠を握りしめるだけだった。危うい場面はありつつも、よくぞ耐えられたものだと自分で自分を褒めてやりたい。 操を腕に閉じ込めて、ちゅ、ちゅ、と音を立てて吸い上げる。小さくて柔らかな唇が、はぁ、と短く息を吐く隙間を縫って舌を潜り込ませた。あのときのように一方的な性急さもなく、お互いがゆっくりと丁寧に、とろとろになって唾液が溢れるまで舌を絡めあった。 頭の中がぼうっとのぼせていくような感覚。多幸感が胸の奥底から湧き上がる。背中にかけてがじんわりと熱くなり、溶けてしまいそうなほど気持ちがいい。 「ぁ、ふ……なんか、あまい……?」 糸を引きながら離れた唇から、操が熱のこもった息を漏らした。 「来主の味だよ」 「えぇー? ぼくは甲洋の味だと思う」 「どっちだっていいさ」 ふっと笑って、すっかり前がはだけているシャツを脱がせてしまう。それから自分も上を適当に脱ぎ捨てると、もう一度ちゅっと音を立てて唇を重ねた。そのまま肩を軽く押し、操の身体を押し倒す。シーツの上に柔らかな髪がふわりと広がり、波を描いた。 心臓が高鳴る音が騒がしい。操の胸に右手を押し当てると、彼の鼓動も大きく跳ねていることが分かる。 「好きだよ、来主」 「ん、ぼくも」 亜麻色の前髪を掻き分けて、額にそっとキスを落とした。そのまま顔中にキスの雨を降らせながら、押し当てていた手を胸の片方に滑らせる。しっとりと濡れた胸はぺたんこで、薄い肉が申し訳程度に乗っているだけだ。 甲洋はそれを手のひら全体を使ってゆるゆると揉みしだいた。ときおり親指で乳首を引っかくと、操が上ずった可愛い声をあげる。 「ぁ、はぅっ、ん……っ」 反らされた喉には、ささやかな喉仏がぷくんと盛り上がっていた。そうと分からないくらいの小さな膨らみにキスを落とすと、軽く吸いつく。 鎖骨の窪みにも口づけて、そのまま唇を這わせていった。じわじわと蜜をこぼす乳首を舐めて、またちゅっと吸い上げる。 「くぅっ、ん! ぁ、ふ……っ」 操の両手が、甲洋の髪をきゅうと引っ張る。固くしこる乳首の弾力と、バネのようにしなる身体の反応から、彼が得ている快感が伝わってくるようだった。 じっくりと愛撫をほどこしながら、甲洋は操のウエストにそっと片手を忍ばせる。前をくつろげ、下着ごと徐々に脱がせていくと、そこには勃ちあがった性器があって、先走りで濡れていた。小さく震えている様を見て、甲洋の口から熱いため息が漏れる。 あの夜は、あと少しというところで触れさせてもらえなかった。辛抱したぶん、ぐっと込み上げてくるものがある。感動すら覚えながら、まだ十分に拙さを残す屹立をすっぽりと手に包み込んだ。 「アッ、ぁん……っ!」 上ずった悲鳴を心地よく聞き流しながら、ゆるゆると優しく扱いていく。止めどなく透明な蜜を溢れさせ、操は泣きそうにも見える表情で身体をビクビクと踊らせた。 「んっ、ぁ、こう、よ……手、おっき、おっきい、んッ、ぼくの大事なとこ、さわって、る……っ」 「うん……ずっと触りたかった。来主のここ」 「ァッ、ん! うれ、し……ぼくも、ずっとさわってほしかったの……っ」 あまりにも素直な言葉と反応が可愛すぎて、脳が茹だって煙を上げてしまいそうな気がした。甲洋はとっさに声を詰まらせながらも、忙しくなく上下する胸の片方に飽きもせず唇を寄せた。頭を左右に揺らすようにして吸いつきながら、触れている操の陰茎をさらに扱いていく。舌の先に感じる粒の弾力に、たまらず軽く歯を立てると、操がいっそう高い悲鳴をあげてシーツから浮き上がるほど背を反らした。 「ヒァッ、や! だめ、あっ! で、出ちゃ、いっ、ぁくッ、んうぅ……──ッ!」 その瞬間、プシュッと音を立てて操の両胸と性器から飛沫があがった。ぶるりと腰が揺れ、弾けた白濁が甲洋の手を濡らす。抱え込むように腕を腰にしっかりと回して、それでもなお甲洋は乳首を吸い続けた。 こくんと喉を鳴らして飲み下すあいだも、操は絶頂の名残から嫌々と首を振って小刻みな痙攣を繰り返す。もう片方の乳首からも、線香花火の残り滓のようにささやかな飛沫が漏れていた。いやらしく潮を吹いては伝い落ち、母乳がシーツを濡らしていく。 「やぁぁッ、くっ、うぅ、んッ! ぁ、だめ、も……吸っちゃ、やぁ、ぁ──……ッ」 操が掻き抱いている甲洋の頭皮に爪を立てる。焦げ茶の癖毛を引っ張り、乱し、引き剥がそうとしたかと思えば強く引き寄せ、引き伸ばされる余韻と快感に身悶えていた。 白濁で濡れる手も胸に這わせて、甲洋はややしばらくのあいだずっとそこに執着し続けた。 「こ、よ……ァ、ぁー、あ……っ、おっぱい、おっぱいもうやだぁ……」 すっかり乳首に取り憑かれていた甲洋は、弱りきった悲鳴に気づいてようやく顔をあげた。没頭しすぎて周りが見えなくなっていたことに、自分で驚く。 操はのぼせたように顔を真っ赤にして、すっかりクタクタになっている。やっとのことで胸への刺激から開放され、ホッと大きく息をついた。 「こよ、おっぱい好きすぎだよぉ」 「……ごめん、つい」 「ほんとに赤ちゃんになっちゃったのかと思ったよ」 さすがに申し開きのしようがない。 甲洋の頬に両手を這わせながら、操が困り顔で小首を傾げている。まるで小さな子供に言い聞かせるような表情にも見えてしまい、なんとも言えない気持ちになった。赤子扱いにはやっぱり戸惑うが、どこかで悪い気がしていない自分がいることに、尻のあたりがむず痒くなってしまう。 「……赤ちゃんはこんなことしないだろ?」 「わっ!?」 操の腕を引いて起き上がらせると、その身体をうつ伏せにひっくり返した。四つん這いの体勢をとらせ、つるりとした丸い尻に手を這わせる。やわやわと軽く揉みしだくと、その手つきのいやらしさに操がケラケラと笑い声をあげた。 「あふっ、あははっ! それやだぁ! 甲洋のエッチ!」 「そうだよ。知らなかった?」 「ふふ、ん~? うん、知ってた」 「だろ?」 つられて笑いながら、ベッド脇のチェストに腕を伸ばすと引き出しからローションとゴムの箱を取り出した。このときのためにずっと以前から準備しておいたものだ。本当なら操の誕生日の夜に活躍する予定だったが、無駄にならずに済んでよかった。 シーツの上にポンと置かれたそれらを見て、操が「わぁ」と目を輝かせている。 「凄いや。準備万端だぁ」 「そりゃあね」 二年も待ったあげく、今さら同じ失敗を繰り返すなんて冗談じゃない。 甲洋はローションの蓋を開けると少しずつ中身を出して、体温と馴染ませながら念入りに指を潤わしていく。猫のようなポーズで首を捻っている操が、緊張したように喉を鳴らした。 「触るよ」 「う、うん。いいよ」 白桃のような尻の肉を割り開き、濡れた指をそっと這わせる。窄まった表面をマッサージするようにくるくると撫でて探ると、操が肩をすくめて「んぅ」と小さな呻きを漏らした。 もどかしさにヒクつく孔は、ほんの少し圧をかけただけでたやすく人差し指を飲み込んでいく。より深く求めるように、内壁が熱くうごめいていた。 「はぁ、ん! ぁ、ァ……っ、ゆび、はいった……ぁっ」 「すごいよ来主。こんなにあっさり……」 自身で拡張していたとは聞いたが、ここまですんなりいくとは思わなかった。すると操が背後を振り向きながら、腰を左右にモジモジとよじって見せる。 「だってぇ、練習したもん。いっぱい」 「ッ、!」 「ねぇこうよぉ、ぼくの身体、んッ……ちゃんと大人に、なったでしょ? これなら、ァっ、ちゃんとエッチ、できるでしょお?」 指を咥えこんだまま尻を振り、胸からはポタポタと白い蜜を滴らせ、切実に向けられる瞳はその揺らめきと光の反射で、いっそハートマークが浮かんでいるかのようにも見えてしまう。ガツンと頭部を引っ叩かれたような衝撃に、甲洋はカァっと顔を赤くした。 「……そういうの、一体どこで覚えてくるんですか」 「なんで敬語になってんのぉ?」 どこまでやらしけりゃ気が済むんだと半ば呆然としている甲洋に、操は訳がわからないといった表情で首を傾げている。 そのあいだも、熱い肉壁は甲洋の指をキュンキュンと食いしめて離さない。思わず喉の奥で唸りそうになりながら、ナカを指の腹で軽く擦り上げてみる。 「アッ、くぅっ……! は、あぅん……っ」 甘ったるい声と一緒に、きゅっとまたナカが締まった。その卑猥さに獣じみた欲を募らせながら、慎重に抜き差しを繰り返す指を二本に増やした。ローションもさらに継ぎ足して、よりいっそうナカを蕩かしていく。 「んぁっ、ァッ、や……! ふと、いッ、甲洋の指、ぼくのより太くて、長くてぇ……!」 「平気? 痛くない?」 「んんッ、ぅ……っ、うん……ッ、たく、ない……あぁッ、ん……きもち、ぃ……っ」 操は上半身をすっかりシーツに沈ませて、尻だけを高く掲げた姿勢になっていた。濡れた孔から泡立ちながら伝い落ちた雫が、内腿を伝って落ちていく。ぐぷ、ぐぷ、と水音を立てながら、実に美味そうに甲洋の指をしゃぶっていた。 すっかり仕上がっている状態を見て、できることならここまで育てるのは自分でありたかったという口惜しさが込み上げる。けれど同時に押し寄せるのは、この熟した身体は自分に食べられるためだけにあるのだという、喜びと実感だった。 「俺のために、こんなになるまで……」 「だって、だってぇ……っ! こよと、上手にしたかったんだもん……ちゃんと一緒に、きもちく、なりたかったんだもん……っ」 「……どんなふうにしてた? 指だけ? 他にもなにか使ったの?」 シーツに額を擦りつけ、操が首を左右に振った。 「ゆ、ゆびッ、指だけ……! お尻、いっぱい……指で、くちゅくちゅって……おちんちん、触りながら、して、たッ」 その言葉にホッとした。操のここは、まだ何ものにも犯されてはいないということだ。たとえそれが無機物であったとしても嫉妬の対象にしてしまう自分に呆れながらも、余計なものに先を越されていなかったことに安堵する。 「ならよかった」 「アッ、あっ、ひぅぅ……っ!」 頃合いを見て、三本に増やした指をナカに沈ませる。孔は完全にシワを無くすまで広がりきって、濃桃の花びらのように色づいていた。 「あぅ、あうぅッ、ぁ゛……ッ、指、いっぱいで……くる、し……っ」 ガクガクと身を震わせて、操がシーツを掻きむしる。その声は少しつらそうだったが、中心で震える性器がツンと勃ちあがっていた。抜き差しするたびに先端からダラダラとよだれをこぼし、開放を求めて張りつめている。 尻たぶを割り開いていた方の手を前へと滑らせ、軽く握り込んでやると、桃色に発情する身体がギクリと強ばるのが分かった。 「あぁイッ、く! イキそ、やあぁダメ……ッ、指、もう抜いてぇ……っ!」 「いいよ、イッても」 「やだぁッ! 甲洋の、甲洋のでイクのっ! 甲洋のおちんちん、早く挿れたいよぉ……!」 悲鳴じみた懇願に、首の後ろが燃えるように熱くなる。甲洋は迷う間もなく指をナカから引き抜くと、軋むベッドに両膝を立て、手早く前をくつろげた。下着ごとズリ下げた途端に勢いよく飛び出した肉棒は、限界までそそり勃って脈打っている。 首を捻ってそれを見ていた操が、赤らんだ頬をより赤く染めて深い息を漏らした。 「こ、よ」 「少し、待って」 甲洋は手早くゴムの箱を開け、取り出した中身の封を切って性器にかぶせた。いざというとき手間取らないよう、事前に練習していたことはここだけの秘密だ。その甲斐あって、ものの数秒とかからなかった。 「そんなの別にしなくていいのにぃ!」 急いている操はそれを見て不満そうだ。甲洋はローションの中身を手の平に出し、なじませるように軽く自身を扱きながら苦笑した。急いているのは同じだし、そりゃあ本音を言えばナマでしたいのは山々なのだが。 「エチケットだから」 「えー、でも漫画ではさぁ~」 「漫画を教科書にするのはやめなって……」 というか、まだ読んでいたのか。BL図書を。この分だとセルフ拡張も、そこから影響を受けた可能性が極めて高い。あながち役に立たないとも言い切れない気がして、ほんの少しだけ感心してしまう。 操はまだ納得がいかない様子で口をごにょごにょとさせていたが、甲洋の両手が尻に触れると「ぁっ」と焦ったような声を漏らした。 「待って、このままするの?」 「そのつもりだけど?」 「それじゃ甲洋の顔が見えないからやだ」 操は四つん這いの姿勢から起き上がり、すっかりこちらに身体を向けると甲洋の肩を押して座らせた。そしてそのまま膝立ちでまたがってくる。 ちょうど二年前にもこれと似た光景を見たっけなと、満足そうな顔を見上げて懐かしさが込み上げた。甲洋の肩に手をついたまま、元気よくそそり勃つ男根に視線を落とし、操は嬉しそうにニンマリ笑う。 「甲洋の大人ちんちん、久しぶりに見た」 「そりゃあ、二年ぶりだからね」 「えへへー。今日こそぼくが食べちゃうぞ!」 待ちきれないといった様子で、細い両腕が首に巻きついた。ちゅうっと音を立てて吸いついてくる唇を受け止めて、操の腰に片手を添えると、反対の手を自身に添える。狙いを定め、張り詰めた先端を窄まりにあてがえば、「あっ」と短く喘ぎを漏らす操の乳首から、母乳がジワリと浮き出した。 「来主、そのままゆっくり……できる?」 「ん、できる」 操がこくんと頷いた。けれどその意気込みとは裏腹に、あのときの痛みを覚えている身体が無意識にすくんでしまうようだった。もちろん緊張もあるのだろう。 安心させるように背中を幾度かさすってやると、彼は甲洋にしがみついて「平気だもん」と強がった。それから軽く深呼吸をして、少しずつ腰を落としていく。 「んぅ、ぁ、は……っ」 「ッ、ぅ……ッ」 「ぁ、いけ、そ……ぁっ、はいっちゃ、う、甲洋の……っ、ぁ、あッ……!」 次の瞬間ぬかるんだ孔をこじ開けて、ズン、と太いカリ部分が潜り込んだ。下から破られた衝撃に、操が喉を反らして悲鳴をあげる。 「ぃッ──! ヒッ、あぅぅ……っ!」 「ッ、く……ッ」 熱い媚肛が、ヒクつきながら限界まで広がっているのが分かる。先端に感じる締めつけに腰をわななかせながら、達しそうになるのを歯を食いしばってどうに耐えた。 「う……ッ、く、ぁっ……おっき、ぃ……っ、ぁ、くぅぅ……っ」 指とはまったく異なる質量に、操は苦しそうに切れ切れな喘ぎを漏らす。それでもなお腰を落としにかかり、自重によってジワリジワリと肉根が体内へと飲み込まれていった。 けれどあと少しで根本に達するというところで、操の動きがピタリと止まる。見上げると、彼は甲洋よりもよほど汗だくになっていた。怒らせた肩を硬直させ、カタカタと内腿を震わせている。 「平気、か?」 「ぁ、う……へい、き……まだ、いける……」 明らかに無理をしているのが伝わってきて、甲洋は汗が伝う背をあやすようにポンポンと叩いてやった。 「本当は?」 「ぅ……」 操が数秒のあいだ押し黙る。けれどやがて観念したように、おずおずと口を開いた。 「……奥、ちょっと、怖い」 蚊の鳴くような声。すっかり涙目になって悔しそうに下唇を噛みしめる表情に、吐息だけでふっと笑って目を細めた。以前の操だったら、このまま無茶をして強行していたかもしれないなと、甲洋は思う。 今の操は無理をすればいいというわけではないことを、ちゃんと理解していた。二年たっても体格差はほとんど縮まらなかったけれど、それだけでも待った意味があったのだと、しみじみ感じる。 「十分だよ来主。今日はここまででいいから」 「それって、今日はもう終わりってこと……?」 「まさか」 ベッドのスプリングの力を借りて、ナカを少しだけ擦り上げてみる。操が「ひゃぅっ」と高く鳴きながら、ブルリと身を震わせた。 「こ、よぉ……っ」 「奥は、これからゆっくり。ね?」 むしろ一緒に育てていける部分が、まだ残されていることが嬉しかった。多分きっと、操にはそういう場所がまだまだ隠されているはずだ。怖い場所も痛い場所も、気持ちがいいと感じる場所も。これから少しずつ見つけて、攻略していけることに期待が膨らむ。 甲洋は操の腰骨を両手でしっかり掴んで固定すると、下から幾度か揺さぶった。彼が怖がるラインは決して超えないように、けれど確実に律動を進めていく。 「やっ、あぅ、ぁっ、待っ……、あ、あ、はぁん……っ!」 結合部から漏れる泡立つ音と、操の嬌声が混じり合う。突くたびに乳首からぷくぷくと大粒の母乳が溢れだし、振動に揺れる屹立からも先走りの液が漏れている。 「くぅっ、あ……っ、きも、ち……ぁっ、おしり、そんなにズンズン、されたらぁ……っ!」 「ッ、は……さっきより、いっぱい出てるよ」 「はっ、はぁん……っ、ぁっ! だってッ、だってきもちくて、ぁ、とまんない……ッ、おちち出ちゃうの、とまんないよぉ……っ」 恍惚とした表情で、操がグンと背を反らした。突き出された胸の片方にむしゃぶりつくと、少し強く吸い上げる。「いやぁッ!」と泣き叫ぶくせに、甲洋の頭を抱きしめる腕はもっとしてとねだっているようにしか思えない。 口の中いっぱいに広がる母乳の味が、煮詰めた砂糖のように脳を蕩かしていく。 「こうよ、甲洋……ッ、アッ、ぁ、ぼく、セックス、してる……っ!」 「ん……できてるよ、ちゃんと」 「うれ、し……ッ、ぁ、アッ、嬉しい……甲洋、好き、大好き……っ!」 「ッ、俺も……俺も好きだよ、来主……っ」 突けば突くほど濡れた媚肉が絡みつき、熱くうねっては射精を促す。待った分だけもっと味わっていたいのに、終わりは確実に近づいていた。ナカでまた一回り大きくなった男根に、操が声にならない悲鳴をあげながらまた母乳を散らす。 弓なりにカーブした背が後方へ崩れ落ちていくのに合わせて、今度は甲洋が両膝をシーツに立てた。押し倒す形になると、両足を抱えあげて最後の追い込みをかけていく。 「あうぅ……っ、やぁ、きちゃう……っ! きちゃっ、あっ、あっあぁ──……ッ!!」 プシュウ、と大きな飛沫をあげて、操の母乳が吹き出した。同時に、ほったらかしだった屹立からも熱い白濁を飛び散らせる。チロチロと出続ける母乳を舐め取りながら、甲洋も身を震わせた。頭が白く染まるような快感に低く唸って、ゴム越しに操の体内で射精する。 脆弱な呼吸に喉を震わせる操は、半ば意識が飛んでいた。彼の身体が断続的にピクンッと跳ねると、母乳の残滓が思いだしたように小さく吹き出す。その光景にまた男茎が反応しそうになるのを感じながらも、ナカからズルリと引き抜いた。 「ふぁ……こ、よ……」 朦朧としながら焦点をさまよわせていた操が、弱々しく両腕を伸ばしてくるのに誘われて、折り重なるようにその身を預けた。身体もシーツもぐちゃぐちゃだ。けれど今は痺れるような余韻から指一本動かせい。 言葉もなくふたり一緒に放心しながら、胸を満たすのは余りあるほどの幸福な充足感だった。 * 操はそのまま眠ってしまった。 それぞれの身体を軽く清めて、起こさないように少しずつ移動させながらシーツを取り替えるのには苦労したが、操はよほど深く眠り込んでいるらしく、まったく起きる気配がなかった。 あらかた終えるとベッド脇に腰掛けて、操の寝顔を見下ろした。どこか子供っぽさを感じさせる寝息にふっと微笑み、軽く前髪を撫でてやる。 「ありがとう、来主」 ごく自然に出てきた感謝の言葉に、操が「ん」と小さな呻きをあげた。目を覚ましたのかと思ったが、彼はまだ眠ったままだ。 可愛い寝顔にまたひとつ微笑むと、甲洋はふとベッド脇のチェストに目を向ける。小さな間接照明が置かれたその横には、赤いベルベットのリングケースが置かれていた。 最初からずっとここに置いてあったのだが、操はまったく気がつかなかったようだ。 ケースに手を伸ばし、蓋を開ける。そこにはなんの飾り気もないシルバーリングが収まっていた。本当なら操の誕生日に渡すつもりでいたものだ。操の態度が急変したあとは、本気でもうダメなのかもしれないと打ちひしがれていたけれど。 ゴムやローション以上に、甲洋にとってなによりも無用にならずに済んだのは、この指輪の存在だった。この子が18歳になったとき、プロポーズをしようと思っていたから。 結婚してください、なんて。そんなことを言ったら、少し重たいかもしれないけれど。 「んー……」 そのとき、シーツの中で操が呻いた。モゾモゾと身じろぎながら、仰向けの姿勢からこちらに向けて寝返りを打つ。今度こそ起きたかと思ったけれど、やっぱりまだ夢の中にいるらしい。 「なにこれおいしぃ~……甲洋も食べてみてぇ……」 「なに食ってんのさ」 ムニャムニャと口を動かして、寝言を言いながら操が笑う。思わず声を出して笑いそうになるのをどうにか堪え、甲洋は再びケースの中身に視線を落とした。照明を弾いて輝くリングに目を細め、彼が目を覚ましたときのことを想像する。 果たして喜んでくれるだろうか。なにをするにも邪魔にならないよう、首から下げられるように別途でチェーンも用意してある。いつだって身につけていられるように。 「愛してるよ、操」 そっとケースの蓋を閉じ、操の寝顔に目を向ける。告白と一緒に、普段は照れくさくて呼べない下の名前を呼びながら。この後に続くのは、「だから俺と結婚してください」だ。 この子が目を覚ましたら、思い切り真面目な顔をして言ってやろう。きっと笑いだすに違いない。「また敬語になってる!」なんて、どうでもいいところにツッコミを入れながら。 ひとしきりケラケラと笑ったあと、赤い顔ではにかんで、「いいよ」と言ってくれたらいい。 そう切に願いながら、身を屈めるとふにふにの頬にキスをした。やっぱり甘い。操はどこもかしこも、砂糖みたいに──。 ←戻る ・ Wavebox👏
操の様子がおかしくなったのは、彼が18歳の誕生日を迎える半月ほど前からだ。無邪気にくっついてくることがなくなり、二人きりでいるときの口数も極端に減った。
手を繋いだり、キスをしそうな空気を察すると、わざとらしく口笛をふいて顔を逸し、一定の距離を保とうとする。どうかしたのかと訊ねても、目を泳がせながら「別にぃ」と言って誤魔化すばかりだった。
そのあからさまな態度を、気にするなというほうが難しい。機嫌を損ねるようなことをした覚えもないし、操の明け透けな性格を考えれば、不満があるならとっくに漏らしているはずだ。
けれど避けられていることだけは明白で、原因はなんだろうかと考えたとき、思い当たるものが一つだけあった。それは二年前に交わした、あの約束だ。
まだ16歳だった操は、なんの進展もない自分たちの関係に焦りを覚えて、無理やり身体を繋げようとした。しかしろくな知識も準備もなしに上手くいくはずがなく、行きあたりばったりの行為は失敗に終わった。
そのとき甲洋は落ち込む操と約束を交わしたのだ。二年後、操が18歳になったときには、キスより先のこともしようと。そしていよいよその日が目前まで近づいている。
彼の急な態度の変化は、そのこととなにか関係しているのではないか。むしろ他に思い当たるものがなかった。
例えばの話──考えたくはないけれど、なんらかの理由で操の気持ちが甲洋から離れ、約束をなかったことにしたいと考えているのなら、あの避けるような態度にも納得がいく。他に好きな相手ができたとか、これといった理由もなく冷めてしまったとか。それらの可能性は、決してないとは言い切れない。
本人に確かめもしないうちから、甲洋はマイナスの思考に囚われていった。ただの思い過ごしであってほしいと、そう願う気持ちだけをささやかな希望にして。
そうやってズルズルと日数が経過して、操の誕生日当日がやってきた。
その日は午後から店を貸し切りにして、バースデーパーティーが開かれた。綺麗に飾りつけられた店内で、集まった人たちに囲まれながら豪華な料理とケーキを前にした操は、顔を赤くしながら嬉しそうにはしゃいでいた。
けれど甲洋の内心は気が気じゃない。本当ならもっと浮かれていてもいいはずなのに。
操の子供っぽさは相変わらずで、背は幾らか伸びたが、長身の甲洋との差は縮まらなかった。それでも甲洋はこのときを辛抱強く待っていたし、ほんの少し前までは操も待ち遠しそうに「まだかなぁ」なんて言いながら指折り数えていた。
だからもし甲洋の不安がただの杞憂であれば、今夜は自然とそういう流れになるのではないかと、そう思っていた。この際セックスするとかしないとかは後回しだ。ただ操の気持ちが知りたかった。
そして日が沈む頃にパーティーがお開きになり、みなが家に帰っていくのと一緒に、操まで帰宅してしまったことに甲洋は愕然とした。
彼は「食べすぎて眠い」などと言いながら、こちらには目もくれずそそくさと帰ってしまったのである。
決まりだ。そこまでされたら、嫌でも思い知る。
操の気持ちは、もうとっくに自分から離れてしまっているのだと。
*
閉店後の店内はやけに静かで、操が床にほうきを走らせる音だけが響いている。
レジ締めの作業を終えた甲洋は、無人のホールをせっせと掃き掃除しているその背を見つめ、鼻から小さな息を漏らした。
店のシェフである真壁一騎は、所用で一足先に上がってしまった。ふたりっきりの店内には一切の会話がなく、寒々しい空気だけが流れている。
操の誕生日から三日。彼は相変わらず甲洋と距離をとり続けていた。むしろ今まで以上に態度がよそよそしくなっている。一騎とは普段通り接するが、甲洋とは意地でも目を合わせようとしない。そのわざとらしさは、まるで悪戯がバレるのを恐れる子供のように甲洋の目に映った。
「……来主」
甲洋は少し迷ったが、操の背中に声をかけた。彼が自分から口を開くまで待つことも考えたが、そろそろこの状態も限界だ。
「な、なに?」
操は肩をギクリとさせて、どこかバツが悪そうにおずおずと振り返る。
「お前、なにか俺に言うことがあるんじゃないの?」
「……別にないよ?」
「理由もなく避けられる意味が分からない。なにかあるなら」
「だからなにもないってば!」
操は苛立った声をあげ、また甲洋に背を向けた。
「本当になんでもない……ぼくのことはほっといて」
「来主」
「今日から一人で帰るから。もう送ってくれなくていいよ」
そう言って、操はほうきを片付けにバックヤードへ消えていこうとした。それを「待って」と引き止めると、また肩をギクリとさせて歩みを止める。
「話そう、来主」
引き下がらない甲洋に、操は渋々といった様子でほうきを壁に立て掛けた。
甲洋がカウンターの一席に腰掛けると、隣にちょこんと腰を落ち着ける。彼はうつむき、やっぱりこちらを見ようとしない。その沈んだ横顔に、否が応でも終わりを突きつけられた気がする。
「顔も見たくないなら、そのままでいいから。来主の気持ちを、聞かせてほしい」
ズルズルとここまで引き伸ばしてしまったが、ケジメくらいはつけておくべきだと思う。お互いにとっても、その方がいいはずだ。
こうなったからといって、操を責めるつもりはない。自分にはこの子を繋ぎ止めておくだけのものが足りなかった。きっとそれだけの話なのだと、必死で諦めようとしている。けれどどこかではひどく責め立て、問いつめてしまいたい自分もいた。だからそうなる前に、最後くらいはちゃんとトドメを刺してほしい。
「冷めたなら、そう言って」
傷つく覚悟をした上で切り出したはずだった。けれど甲洋の言葉を受けて、操は「は?」の形にポカンと口を開きながらこちらを見た。
「冷めたって、なにが?」
「なにがって……来主は俺との関係を終わりにしたいんだろ?」
「終わり……? 終わりってなに?」
「?」
「え? 待って? もしかしてこれ別れ話!?」
「……うん?」
「嘘!? 甲洋、ぼくたち終わりなの!?」
「えぇ……?」
予想外の風向きだ。むしろこちらがそれを聞きたいところだったのだが……。
「やだやだやだぁ! 終わりなんてやだ! そんなのやだよぉ!!」
青褪めていた操はいよいよ泣きだし、握りしめた両手でグシグシと顔を拭っている。これは一体どういうことだろう。全く意味が分からない。
「ひどいよ! なんで急にそんなこと言うのぉ!?」
「急にって……いや、だって来主が先に冷めたんじゃないの?」
「そんなことないもぉん!!」
「はぁ? じゃあ、なんでずっと避けて……?」
「そ、それは……」
真っ赤になっている操の鼻からピュッと鼻水が垂れてきたので、甲洋は困惑しながらも尻ポケットからとっさに取りだしたハンカチでサッと拭き取ってやった。
「その……あの……」
操はよほど言いにくいことがあるのか、うつむいて唇をまごつかせている。けれど根気よく待ち続けていると、やがておずおずと顔を上げてこう言った。
「だってぼく、病気になっちゃったんだもん!!」
わっ、と声をあげ、操がカウンターに突っ伏して大泣きしはじめた。
*
「とりあえず落ち着こう。お互い」
甲洋は厨房でコーヒーとココアを淹れると、カウンター席に戻った。それぞれカップを手にして口をつけると、同時に「ふぅ」と息をつく。
「それで……病気っていうのは一体……?」
見たところ、操が身体に変調をきたしているようにはまったく見えない。甲洋と距離を置いている以外では、これといった変化も特には見られなかったはずだが。
けれどそれはあくまでも表向きの話だ。操は言いだせないほどのなにかを抱え込んでいる。それほどまでに重たい病に侵されているということなのだろうか。
「ずっと誰にも言えなかったんだけど……」
たった今コーヒーで潤したはずの喉がカラカラに乾くのを感じる。甲洋は顔を強張らせ、緊張しながら操の声に耳を傾けた。
「だって、自分がこんなことになるなんて思ってなかったから、すごく怖くて……」
なにかが込み上げてきたかのように、操はそこで言葉を切ると吐く息を震わせる。甲洋はとっさにテーブルの上にあった小さな手を握りしめた。悲しそうに伏せられた横顔に歯噛みする。この子がこんな顔をするなんて。ずっと一人で思い悩んでいたのだろう。自分を避けていたのは、心配をかけたくなかったからなのかもしれない。
そう思うと、甲洋の胸に引き裂かれたような痛みが走った。
「来主。たとえどんなことでも受け止めるよ。俺がずっとそばにいる」
「甲洋……」
「話してほしい。少しずつで構わないから」
甲洋の瞳を見つめ、操は泣きそうにくしゃりと表情を歪めた。唇をきゅっと噛み締めて、こくりと頷く。そしてゆっくりと口を開いた。
「ぼくね、おっぱいからお乳が出るようになっちゃったんだ」
「……ん?」
「甲洋と上手にエッチできるように、自分でお尻を拡張してたんだけど……そしたら急にお乳がぴゅーって」
「待って」
「え?」
「ごめん、ちょっと待って。お前はなんの話をしているの?」
「なにって、病気の経緯を」
「いやいやいやいや……」
待て待て待て。深刻な空気に飲まれかけていたが、彼はなにを言っているのだろうか。お乳とか拡張とか、とんでもワードが聞こえたような気がするのだが。
「ちょ、どっ、まっ……来主、落ち着いて。まずは落ちゅち……落ち着くんだ」
「落ち着いたほうがいいのは甲洋の方だと思うよ。噛んでるし」
冷静に突っ込まれてしまったが、さっきからずっと気持ちが追いつかない状態に陥っている。決死の覚悟で別れ話を切り出したと思えば、次の瞬間には妻のガン宣告を聞く夫のような気持ちになり、最終的な着地点が母乳とセルフ拡張だった。自分でも過去にこれほど取り乱したことがあっただろうかと、だいぶ戸惑っているところである。
しかし話はまだ途中だ。甲洋は今度こそ話の腰を折らないよう、とりあえず最後まで操の話を聞くことにした。
「前は失敗しちゃったでしょ? だから今度はちゃんと上手にできるように、自分でお尻の穴を触って特訓してたの。そしたらね、最近ちょっとずつ気持ちよくなってきて……それでね、その頃から、なぜかおっぱいからお乳が出てくるようになったの……」
「ッ……!?」
操は膝をモジモジとすり合わせ、顔を赤くしながら涙目になっている。話を聞いているだけで、甲洋は全身の血液が沸騰しそうだった。まさか操が、夜な夜なそんな真似をしていたなんて。ついつい前かがみになってしまいそうだった。
「もうすぐ誕生日だなって思ったら、考えるだけで出てくるようになっちゃって……甲洋とキスすると、もっと出ちゃうから……」
「だから避けていた……?」
こくん、と操がうなずいた。
「だって、こんなの絶対ヘンだもん……ぼく男なのに、赤ちゃんができたわけでもないのに、お乳が出るなんて……知られたら、嫌われると思って……」
だから操はどうにかしてこの病気が治るまでは、甲洋に近づかないようにしようと決めた。けれど理由も分からず、治し方も分からない。誰にも相談できないまま、ずっと一人で抱え込んでいたのだ。
確かに言いにくいことだろう。18歳になったとはいえ、操はまだまだ多感な年頃だ。ましてや母乳が出るなんて、深く思いつめてしまうのも無理はない。
「お母さんにも言えないし、病院も怖くて行けないし……ぼく、ずっとこのままなのかなぁ……」
ポロポロと涙を流す操を見て、申し訳ないが気が抜けた。内容は衝撃的だったが、考えていたような最悪な展開にはいたらなかった。ここ最近はずっと、これからどうやって生きていこうかと途方に暮れながら過ごしていたほどだ。それほどまでに甲洋は操のことが大切で、愛しくて、離れられない存在だった。
「嫌いになんかならないよ」
安堵の息を漏らしながら、甲洋は操の肩に手を置いた。
「……本当?」
「本当。来主、それは体質の問題だ。男にだって乳腺はある。お乳が出たからって、なにも変な話じゃないよ」
「そうなの? じゃあこれ、病気じゃないの?」
「不安なら一緒に病院に行こう。俺がついて行くから。それなら少しは安心だろ?」
「甲洋……!」
操の泣き顔が、花がほころぶような笑顔に変わった。抱きついてくるのを受け止めて、しっかりと腕に閉じ込める。すっぽりと収まってしまう体温に、安堵と喜び込み上げた。
もう半月以上もこうして触れることができなかったのだ。手を伸ばせば当たり前のようにあるぬくもりが、こんなにも大切なものであることを改めて思い知らされる。
「あのね、甲洋」
存分に抱きしめて堪能していると、操の身体がもぞりと動く。彼は顔をあげ、恥ずかしそうに上目遣いで甲洋を見た。
「ぼくのおっぱい、見ても本当に変だって思わない?」
「思わないよ」
「じゃあ……見て」
「!」
「病院に行くよりも、甲洋に見てほしいの……」
甲洋は衝撃に打たれたが、なにもおかしな話ではない。操はまだ少しだけ不安そうだ。自分の身体に起こった変化を、信頼できる相手と共有することで、より深く安心感を得たいのかもしれない。その気持ちを無下にするわけにはいかなかった。
「わかった。じゃあ、部屋に行こう」
頷いた操の手を引いて、甲洋は胸を高鳴らせながら二階へ続く階段へと足を向けた。
*
部屋に入ると、互いの方に軽く身体を向け合う形でベッドの縁に腰かけた。
甲洋の目の前で、操がシャツのボタンを上からひとつひとつ外していく。その手元をじっと見つめながら、腫れ物に触るようにソワソワとして落ち着かない。鼓動が忙しなく胸の内側を叩き続けて、今にも突き破ってきそうだった。
シャツのボタンを全て外し終えると、操がカーテンを開けるように両手で前をはだけさせた。そこで目を引くのは、乳首の上にそれぞれ貼りつけられた絆創膏だ。ふいに出てしまったときに服を汚さないための対策なのだろうが、これはこれで非常に煽情的な光景である。
よくよく見ると、絆創膏には中央の部分にうっすらと滲むようなシミが確認できた。
「さっきぎゅってされたとき、ちょっと出ちゃった」
クスンと鼻を鳴らしながら言った操に、甲洋はぐっと生唾を飲み下す。
「……直に見るよ。いい?」
「ん」
熱っぽく息を漏らして操が頷くのを合図に、震えそうになる指先で端っこの部分に軽く爪を引っ掛ける。すっかり湿っている絆創膏はほとんど粘着力を失っており、それだけでペロンと剥がれ落ちてしまった。もう片方も同じようにして剥がしてしまうと、淡桃の乳首がツンと頭を尖らせていた。
その先端から、ぷくんと小さな白い粒が滲みでる。それは限界まで膨らんでから、涙のように皮膚を伝い落ちていった。
「や、ん……ど、しよ……見られてるだけで、おちちでちゃうよぉ」
恥ずかしそうに、操が尻をモジモジとさせた。それらの光景は想像を絶する破壊力で、一気に天辺まで達した興奮に思考が白く染まりかける。が、ここで目を開けたまま気絶するわけにもいかず、どうにか気を取り直した甲洋は予想を確信に変えた。下で話を聞いていたときから、そうじゃないかとは思っていたが──。
「来主はいやらしい気持ちになると、ここからミルクが出るんじゃない?」
再び小さな雫を盛り上がらせている乳首の片方に指をやり、中心には触れずに乳輪だけをクルリとなぞってみた。白い涙がポロリとこぼれて、甲洋の指を伝っていく。
「あっ、んッ……! ぁ……う、ん……」
操は唇をきゅっと噛み締めながら、素直にこくんと頷いた。
「やらしいこと、考えないように我慢しなきゃって思ったの……でも、ダメって思うともっと考えちゃって、甲洋とするときのこと、いっぱい、考えちゃって……」
「……だから一人で触ってた? お尻の穴も、気持ちよくなってくるくらい?」
「あ、ぁ、や……出ちゃうからぁ……エッチなこと、言わないでぇ……!」
言葉で少し煽るだけで、操は乳首からさらに涙を滲ませた。悩ましげな表情を浮かべ、潤んだ瞳を甲洋に向けてくる。
グンと欲を突き上げられたような気がして、いよいよ我慢の限界を感じた。こんなものを見せつけられて、正気でいられる男がいるならその顔を拝んでみたい。
胸から目が離せずに凝視する甲洋を、操が潤んだ瞳で物欲しそうに見つめている。
その肌に刺さるような視線に囚われながら、甲洋はある種の感慨を覚えずにはいられなかった。直球でぶつかってくるしか脳がなかった、あの操がだ。悩みを打ち明け、共有したいというていで、さりげなさを装いながらここまで甲洋を誘導した。
まんまと乗ったのは、甲洋にもあわよくばという下心があったからだ。むしろこうなるのはごく自然な流れで、そのいじらしい変化に胸を掻きむしられるような思いがする。
「ふぁっ、ァッ! こ、こうよ……!」
すっかり固くなっている乳頭を、躊躇なくそれぞれ指の腹で押しつぶした。操の身体がビクンと跳ねるのも構わずに、爪の先で軽く弾いたり、きゅっとつまんで絞るように刺激する。そのたびに操は甲高い声をあげて身をくねらせ、乳首からはじわじわと液体を滲ませた。
またひとつ生唾を飲み込んで、甲洋は操の腰に腕を回すと、泣いてばかりいる乳首の片方にキスをした。
「ひゃぁっ、ん! あっ、ふあぁ……っ!」
ちゅっと吸い上げて、舌で丹念に粒を転がす。滲みでる母乳の味が、口の中に広がった。柔らかくて、胸をくすぐるような甘ったるさ。これが操の味だと思うだけで、狂おしいほどの愛しさが溢れてとまらなくなる。
何度も何度も吸い上げては舌で転がし、右も左も空いている方は指先でコリコリと扱いたり、潰したりしながら休みなくのめり込んでいく。
「あんっ、あ、ァッ、甲洋、きもちい……っ、おっぱい、きもちぃの……!」
執拗に舐めしゃぶられて、淡桃だった乳首が赤く腫れたように色味を濃くする。
蕩けきった表情で、操が甲洋の頭を掻き抱いた。しばらくはあられもなく悶えていたが、やがてくしゃくしゃと乱していた髪を優しく梳かすように撫ではじめる。
「はぁ、ぁ、んっ、ふふ……っ、赤ちゃんみたい……甲洋、かわいい」
思いもよらない言葉に面食らい、しかめた顔で見上げると、潤んだ瞳を細めながら操がコトンと首をかしげた。
「ぼくのおちち、おいしい?」
髪を梳きながら問いかけるその仕草が、なんだか母親めいている。母親に愛される感覚なんて、体験したことがないから分からない。だから想像でしかないのだけれど。
それにしたって10も歳下の少年を捕まえて、一体なにを考えているのだろう。まるで赤子のように心がふやけそうになっている自分に戸惑う一方で、この薄い胸にすべてを委ねてしまいたいような、縋りついて泣いてしまいたいような、そんな奇妙な感覚に襲われる。
「……ん。おいしい」
だからだろうか。つい素直な感想を漏らすと、操が嬉しそうにまた「かわいい」と言う。
この子もこの子だ。いい歳をした男を相手に、そんな感想を抱くなんて。まるで母性にでも目覚めたみたいに──。
(……これ以上は、考えないほうがよさそうだ)
ここを深く突き詰めてしまうと、お互いに不味い方向に進みかねない気がする。それはちょっと怖いような、だけど興味深いような。おかしな気分になりながらも、甲洋は可愛いのはお前だよとばかりにその唇を奪ってやった。
「んんっ……」
やっとのことで初めての夜を迎えているのに、まだキスをしていなかった。
二年前と同じで、今の甲洋には余裕がない。だけどもはや制約もない。あの夜はただ拙いキスに振り回されて、座枠を握りしめるだけだった。危うい場面はありつつも、よくぞ耐えられたものだと自分で自分を褒めてやりたい。
操を腕に閉じ込めて、ちゅ、ちゅ、と音を立てて吸い上げる。小さくて柔らかな唇が、はぁ、と短く息を吐く隙間を縫って舌を潜り込ませた。あのときのように一方的な性急さもなく、お互いがゆっくりと丁寧に、とろとろになって唾液が溢れるまで舌を絡めあった。
頭の中がぼうっとのぼせていくような感覚。多幸感が胸の奥底から湧き上がる。背中にかけてがじんわりと熱くなり、溶けてしまいそうなほど気持ちがいい。
「ぁ、ふ……なんか、あまい……?」
糸を引きながら離れた唇から、操が熱のこもった息を漏らした。
「来主の味だよ」
「えぇー? ぼくは甲洋の味だと思う」
「どっちだっていいさ」
ふっと笑って、すっかり前がはだけているシャツを脱がせてしまう。それから自分も上を適当に脱ぎ捨てると、もう一度ちゅっと音を立てて唇を重ねた。そのまま肩を軽く押し、操の身体を押し倒す。シーツの上に柔らかな髪がふわりと広がり、波を描いた。
心臓が高鳴る音が騒がしい。操の胸に右手を押し当てると、彼の鼓動も大きく跳ねていることが分かる。
「好きだよ、来主」
「ん、ぼくも」
亜麻色の前髪を掻き分けて、額にそっとキスを落とした。そのまま顔中にキスの雨を降らせながら、押し当てていた手を胸の片方に滑らせる。しっとりと濡れた胸はぺたんこで、薄い肉が申し訳程度に乗っているだけだ。
甲洋はそれを手のひら全体を使ってゆるゆると揉みしだいた。ときおり親指で乳首を引っかくと、操が上ずった可愛い声をあげる。
「ぁ、はぅっ、ん……っ」
反らされた喉には、ささやかな喉仏がぷくんと盛り上がっていた。そうと分からないくらいの小さな膨らみにキスを落とすと、軽く吸いつく。
鎖骨の窪みにも口づけて、そのまま唇を這わせていった。じわじわと蜜をこぼす乳首を舐めて、またちゅっと吸い上げる。
「くぅっ、ん! ぁ、ふ……っ」
操の両手が、甲洋の髪をきゅうと引っ張る。固くしこる乳首の弾力と、バネのようにしなる身体の反応から、彼が得ている快感が伝わってくるようだった。
じっくりと愛撫をほどこしながら、甲洋は操のウエストにそっと片手を忍ばせる。前をくつろげ、下着ごと徐々に脱がせていくと、そこには勃ちあがった性器があって、先走りで濡れていた。小さく震えている様を見て、甲洋の口から熱いため息が漏れる。
あの夜は、あと少しというところで触れさせてもらえなかった。辛抱したぶん、ぐっと込み上げてくるものがある。感動すら覚えながら、まだ十分に拙さを残す屹立をすっぽりと手に包み込んだ。
「アッ、ぁん……っ!」
上ずった悲鳴を心地よく聞き流しながら、ゆるゆると優しく扱いていく。止めどなく透明な蜜を溢れさせ、操は泣きそうにも見える表情で身体をビクビクと踊らせた。
「んっ、ぁ、こう、よ……手、おっき、おっきい、んッ、ぼくの大事なとこ、さわって、る……っ」
「うん……ずっと触りたかった。来主のここ」
「ァッ、ん! うれ、し……ぼくも、ずっとさわってほしかったの……っ」
あまりにも素直な言葉と反応が可愛すぎて、脳が茹だって煙を上げてしまいそうな気がした。甲洋はとっさに声を詰まらせながらも、忙しくなく上下する胸の片方に飽きもせず唇を寄せた。頭を左右に揺らすようにして吸いつきながら、触れている操の陰茎をさらに扱いていく。舌の先に感じる粒の弾力に、たまらず軽く歯を立てると、操がいっそう高い悲鳴をあげてシーツから浮き上がるほど背を反らした。
「ヒァッ、や! だめ、あっ! で、出ちゃ、いっ、ぁくッ、んうぅ……──ッ!」
その瞬間、プシュッと音を立てて操の両胸と性器から飛沫があがった。ぶるりと腰が揺れ、弾けた白濁が甲洋の手を濡らす。抱え込むように腕を腰にしっかりと回して、それでもなお甲洋は乳首を吸い続けた。
こくんと喉を鳴らして飲み下すあいだも、操は絶頂の名残から嫌々と首を振って小刻みな痙攣を繰り返す。もう片方の乳首からも、線香花火の残り滓のようにささやかな飛沫が漏れていた。いやらしく潮を吹いては伝い落ち、母乳がシーツを濡らしていく。
「やぁぁッ、くっ、うぅ、んッ! ぁ、だめ、も……吸っちゃ、やぁ、ぁ──……ッ」
操が掻き抱いている甲洋の頭皮に爪を立てる。焦げ茶の癖毛を引っ張り、乱し、引き剥がそうとしたかと思えば強く引き寄せ、引き伸ばされる余韻と快感に身悶えていた。
白濁で濡れる手も胸に這わせて、甲洋はややしばらくのあいだずっとそこに執着し続けた。
「こ、よ……ァ、ぁー、あ……っ、おっぱい、おっぱいもうやだぁ……」
すっかり乳首に取り憑かれていた甲洋は、弱りきった悲鳴に気づいてようやく顔をあげた。没頭しすぎて周りが見えなくなっていたことに、自分で驚く。
操はのぼせたように顔を真っ赤にして、すっかりクタクタになっている。やっとのことで胸への刺激から開放され、ホッと大きく息をついた。
「こよ、おっぱい好きすぎだよぉ」
「……ごめん、つい」
「ほんとに赤ちゃんになっちゃったのかと思ったよ」
さすがに申し開きのしようがない。
甲洋の頬に両手を這わせながら、操が困り顔で小首を傾げている。まるで小さな子供に言い聞かせるような表情にも見えてしまい、なんとも言えない気持ちになった。赤子扱いにはやっぱり戸惑うが、どこかで悪い気がしていない自分がいることに、尻のあたりがむず痒くなってしまう。
「……赤ちゃんはこんなことしないだろ?」
「わっ!?」
操の腕を引いて起き上がらせると、その身体をうつ伏せにひっくり返した。四つん這いの体勢をとらせ、つるりとした丸い尻に手を這わせる。やわやわと軽く揉みしだくと、その手つきのいやらしさに操がケラケラと笑い声をあげた。
「あふっ、あははっ! それやだぁ! 甲洋のエッチ!」
「そうだよ。知らなかった?」
「ふふ、ん~? うん、知ってた」
「だろ?」
つられて笑いながら、ベッド脇のチェストに腕を伸ばすと引き出しからローションとゴムの箱を取り出した。このときのためにずっと以前から準備しておいたものだ。本当なら操の誕生日の夜に活躍する予定だったが、無駄にならずに済んでよかった。
シーツの上にポンと置かれたそれらを見て、操が「わぁ」と目を輝かせている。
「凄いや。準備万端だぁ」
「そりゃあね」
二年も待ったあげく、今さら同じ失敗を繰り返すなんて冗談じゃない。
甲洋はローションの蓋を開けると少しずつ中身を出して、体温と馴染ませながら念入りに指を潤わしていく。猫のようなポーズで首を捻っている操が、緊張したように喉を鳴らした。
「触るよ」
「う、うん。いいよ」
白桃のような尻の肉を割り開き、濡れた指をそっと這わせる。窄まった表面をマッサージするようにくるくると撫でて探ると、操が肩をすくめて「んぅ」と小さな呻きを漏らした。
もどかしさにヒクつく孔は、ほんの少し圧をかけただけでたやすく人差し指を飲み込んでいく。より深く求めるように、内壁が熱くうごめいていた。
「はぁ、ん! ぁ、ァ……っ、ゆび、はいった……ぁっ」
「すごいよ来主。こんなにあっさり……」
自身で拡張していたとは聞いたが、ここまですんなりいくとは思わなかった。すると操が背後を振り向きながら、腰を左右にモジモジとよじって見せる。
「だってぇ、練習したもん。いっぱい」
「ッ、!」
「ねぇこうよぉ、ぼくの身体、んッ……ちゃんと大人に、なったでしょ? これなら、ァっ、ちゃんとエッチ、できるでしょお?」
指を咥えこんだまま尻を振り、胸からはポタポタと白い蜜を滴らせ、切実に向けられる瞳はその揺らめきと光の反射で、いっそハートマークが浮かんでいるかのようにも見えてしまう。ガツンと頭部を引っ叩かれたような衝撃に、甲洋はカァっと顔を赤くした。
「……そういうの、一体どこで覚えてくるんですか」
「なんで敬語になってんのぉ?」
どこまでやらしけりゃ気が済むんだと半ば呆然としている甲洋に、操は訳がわからないといった表情で首を傾げている。
そのあいだも、熱い肉壁は甲洋の指をキュンキュンと食いしめて離さない。思わず喉の奥で唸りそうになりながら、ナカを指の腹で軽く擦り上げてみる。
「アッ、くぅっ……! は、あぅん……っ」
甘ったるい声と一緒に、きゅっとまたナカが締まった。その卑猥さに獣じみた欲を募らせながら、慎重に抜き差しを繰り返す指を二本に増やした。ローションもさらに継ぎ足して、よりいっそうナカを蕩かしていく。
「んぁっ、ァッ、や……! ふと、いッ、甲洋の指、ぼくのより太くて、長くてぇ……!」
「平気? 痛くない?」
「んんッ、ぅ……っ、うん……ッ、たく、ない……あぁッ、ん……きもち、ぃ……っ」
操は上半身をすっかりシーツに沈ませて、尻だけを高く掲げた姿勢になっていた。濡れた孔から泡立ちながら伝い落ちた雫が、内腿を伝って落ちていく。ぐぷ、ぐぷ、と水音を立てながら、実に美味そうに甲洋の指をしゃぶっていた。
すっかり仕上がっている状態を見て、できることならここまで育てるのは自分でありたかったという口惜しさが込み上げる。けれど同時に押し寄せるのは、この熟した身体は自分に食べられるためだけにあるのだという、喜びと実感だった。
「俺のために、こんなになるまで……」
「だって、だってぇ……っ! こよと、上手にしたかったんだもん……ちゃんと一緒に、きもちく、なりたかったんだもん……っ」
「……どんなふうにしてた? 指だけ? 他にもなにか使ったの?」
シーツに額を擦りつけ、操が首を左右に振った。
「ゆ、ゆびッ、指だけ……! お尻、いっぱい……指で、くちゅくちゅって……おちんちん、触りながら、して、たッ」
その言葉にホッとした。操のここは、まだ何ものにも犯されてはいないということだ。たとえそれが無機物であったとしても嫉妬の対象にしてしまう自分に呆れながらも、余計なものに先を越されていなかったことに安堵する。
「ならよかった」
「アッ、あっ、ひぅぅ……っ!」
頃合いを見て、三本に増やした指をナカに沈ませる。孔は完全にシワを無くすまで広がりきって、濃桃の花びらのように色づいていた。
「あぅ、あうぅッ、ぁ゛……ッ、指、いっぱいで……くる、し……っ」
ガクガクと身を震わせて、操がシーツを掻きむしる。その声は少しつらそうだったが、中心で震える性器がツンと勃ちあがっていた。抜き差しするたびに先端からダラダラとよだれをこぼし、開放を求めて張りつめている。
尻たぶを割り開いていた方の手を前へと滑らせ、軽く握り込んでやると、桃色に発情する身体がギクリと強ばるのが分かった。
「あぁイッ、く! イキそ、やあぁダメ……ッ、指、もう抜いてぇ……っ!」
「いいよ、イッても」
「やだぁッ! 甲洋の、甲洋のでイクのっ! 甲洋のおちんちん、早く挿れたいよぉ……!」
悲鳴じみた懇願に、首の後ろが燃えるように熱くなる。甲洋は迷う間もなく指をナカから引き抜くと、軋むベッドに両膝を立て、手早く前をくつろげた。下着ごとズリ下げた途端に勢いよく飛び出した肉棒は、限界までそそり勃って脈打っている。
首を捻ってそれを見ていた操が、赤らんだ頬をより赤く染めて深い息を漏らした。
「こ、よ」
「少し、待って」
甲洋は手早くゴムの箱を開け、取り出した中身の封を切って性器にかぶせた。いざというとき手間取らないよう、事前に練習していたことはここだけの秘密だ。その甲斐あって、ものの数秒とかからなかった。
「そんなの別にしなくていいのにぃ!」
急いている操はそれを見て不満そうだ。甲洋はローションの中身を手の平に出し、なじませるように軽く自身を扱きながら苦笑した。急いているのは同じだし、そりゃあ本音を言えばナマでしたいのは山々なのだが。
「エチケットだから」
「えー、でも漫画ではさぁ~」
「漫画を教科書にするのはやめなって……」
というか、まだ読んでいたのか。BL図書を。この分だとセルフ拡張も、そこから影響を受けた可能性が極めて高い。あながち役に立たないとも言い切れない気がして、ほんの少しだけ感心してしまう。
操はまだ納得がいかない様子で口をごにょごにょとさせていたが、甲洋の両手が尻に触れると「ぁっ」と焦ったような声を漏らした。
「待って、このままするの?」
「そのつもりだけど?」
「それじゃ甲洋の顔が見えないからやだ」
操は四つん這いの姿勢から起き上がり、すっかりこちらに身体を向けると甲洋の肩を押して座らせた。そしてそのまま膝立ちでまたがってくる。
ちょうど二年前にもこれと似た光景を見たっけなと、満足そうな顔を見上げて懐かしさが込み上げた。甲洋の肩に手をついたまま、元気よくそそり勃つ男根に視線を落とし、操は嬉しそうにニンマリ笑う。
「甲洋の大人ちんちん、久しぶりに見た」
「そりゃあ、二年ぶりだからね」
「えへへー。今日こそぼくが食べちゃうぞ!」
待ちきれないといった様子で、細い両腕が首に巻きついた。ちゅうっと音を立てて吸いついてくる唇を受け止めて、操の腰に片手を添えると、反対の手を自身に添える。狙いを定め、張り詰めた先端を窄まりにあてがえば、「あっ」と短く喘ぎを漏らす操の乳首から、母乳がジワリと浮き出した。
「来主、そのままゆっくり……できる?」
「ん、できる」
操がこくんと頷いた。けれどその意気込みとは裏腹に、あのときの痛みを覚えている身体が無意識にすくんでしまうようだった。もちろん緊張もあるのだろう。
安心させるように背中を幾度かさすってやると、彼は甲洋にしがみついて「平気だもん」と強がった。それから軽く深呼吸をして、少しずつ腰を落としていく。
「んぅ、ぁ、は……っ」
「ッ、ぅ……ッ」
「ぁ、いけ、そ……ぁっ、はいっちゃ、う、甲洋の……っ、ぁ、あッ……!」
次の瞬間ぬかるんだ孔をこじ開けて、ズン、と太いカリ部分が潜り込んだ。下から破られた衝撃に、操が喉を反らして悲鳴をあげる。
「ぃッ──! ヒッ、あぅぅ……っ!」
「ッ、く……ッ」
熱い媚肛が、ヒクつきながら限界まで広がっているのが分かる。先端に感じる締めつけに腰をわななかせながら、達しそうになるのを歯を食いしばってどうに耐えた。
「う……ッ、く、ぁっ……おっき、ぃ……っ、ぁ、くぅぅ……っ」
指とはまったく異なる質量に、操は苦しそうに切れ切れな喘ぎを漏らす。それでもなお腰を落としにかかり、自重によってジワリジワリと肉根が体内へと飲み込まれていった。
けれどあと少しで根本に達するというところで、操の動きがピタリと止まる。見上げると、彼は甲洋よりもよほど汗だくになっていた。怒らせた肩を硬直させ、カタカタと内腿を震わせている。
「平気、か?」
「ぁ、う……へい、き……まだ、いける……」
明らかに無理をしているのが伝わってきて、甲洋は汗が伝う背をあやすようにポンポンと叩いてやった。
「本当は?」
「ぅ……」
操が数秒のあいだ押し黙る。けれどやがて観念したように、おずおずと口を開いた。
「……奥、ちょっと、怖い」
蚊の鳴くような声。すっかり涙目になって悔しそうに下唇を噛みしめる表情に、吐息だけでふっと笑って目を細めた。以前の操だったら、このまま無茶をして強行していたかもしれないなと、甲洋は思う。
今の操は無理をすればいいというわけではないことを、ちゃんと理解していた。二年たっても体格差はほとんど縮まらなかったけれど、それだけでも待った意味があったのだと、しみじみ感じる。
「十分だよ来主。今日はここまででいいから」
「それって、今日はもう終わりってこと……?」
「まさか」
ベッドのスプリングの力を借りて、ナカを少しだけ擦り上げてみる。操が「ひゃぅっ」と高く鳴きながら、ブルリと身を震わせた。
「こ、よぉ……っ」
「奥は、これからゆっくり。ね?」
むしろ一緒に育てていける部分が、まだ残されていることが嬉しかった。多分きっと、操にはそういう場所がまだまだ隠されているはずだ。怖い場所も痛い場所も、気持ちがいいと感じる場所も。これから少しずつ見つけて、攻略していけることに期待が膨らむ。
甲洋は操の腰骨を両手でしっかり掴んで固定すると、下から幾度か揺さぶった。彼が怖がるラインは決して超えないように、けれど確実に律動を進めていく。
「やっ、あぅ、ぁっ、待っ……、あ、あ、はぁん……っ!」
結合部から漏れる泡立つ音と、操の嬌声が混じり合う。突くたびに乳首からぷくぷくと大粒の母乳が溢れだし、振動に揺れる屹立からも先走りの液が漏れている。
「くぅっ、あ……っ、きも、ち……ぁっ、おしり、そんなにズンズン、されたらぁ……っ!」
「ッ、は……さっきより、いっぱい出てるよ」
「はっ、はぁん……っ、ぁっ! だってッ、だってきもちくて、ぁ、とまんない……ッ、おちち出ちゃうの、とまんないよぉ……っ」
恍惚とした表情で、操がグンと背を反らした。突き出された胸の片方にむしゃぶりつくと、少し強く吸い上げる。「いやぁッ!」と泣き叫ぶくせに、甲洋の頭を抱きしめる腕はもっとしてとねだっているようにしか思えない。
口の中いっぱいに広がる母乳の味が、煮詰めた砂糖のように脳を蕩かしていく。
「こうよ、甲洋……ッ、アッ、ぁ、ぼく、セックス、してる……っ!」
「ん……できてるよ、ちゃんと」
「うれ、し……ッ、ぁ、アッ、嬉しい……甲洋、好き、大好き……っ!」
「ッ、俺も……俺も好きだよ、来主……っ」
突けば突くほど濡れた媚肉が絡みつき、熱くうねっては射精を促す。待った分だけもっと味わっていたいのに、終わりは確実に近づいていた。ナカでまた一回り大きくなった男根に、操が声にならない悲鳴をあげながらまた母乳を散らす。
弓なりにカーブした背が後方へ崩れ落ちていくのに合わせて、今度は甲洋が両膝をシーツに立てた。押し倒す形になると、両足を抱えあげて最後の追い込みをかけていく。
「あうぅ……っ、やぁ、きちゃう……っ! きちゃっ、あっ、あっあぁ──……ッ!!」
プシュウ、と大きな飛沫をあげて、操の母乳が吹き出した。同時に、ほったらかしだった屹立からも熱い白濁を飛び散らせる。チロチロと出続ける母乳を舐め取りながら、甲洋も身を震わせた。頭が白く染まるような快感に低く唸って、ゴム越しに操の体内で射精する。
脆弱な呼吸に喉を震わせる操は、半ば意識が飛んでいた。彼の身体が断続的にピクンッと跳ねると、母乳の残滓が思いだしたように小さく吹き出す。その光景にまた男茎が反応しそうになるのを感じながらも、ナカからズルリと引き抜いた。
「ふぁ……こ、よ……」
朦朧としながら焦点をさまよわせていた操が、弱々しく両腕を伸ばしてくるのに誘われて、折り重なるようにその身を預けた。身体もシーツもぐちゃぐちゃだ。けれど今は痺れるような余韻から指一本動かせい。
言葉もなくふたり一緒に放心しながら、胸を満たすのは余りあるほどの幸福な充足感だった。
*
操はそのまま眠ってしまった。
それぞれの身体を軽く清めて、起こさないように少しずつ移動させながらシーツを取り替えるのには苦労したが、操はよほど深く眠り込んでいるらしく、まったく起きる気配がなかった。
あらかた終えるとベッド脇に腰掛けて、操の寝顔を見下ろした。どこか子供っぽさを感じさせる寝息にふっと微笑み、軽く前髪を撫でてやる。
「ありがとう、来主」
ごく自然に出てきた感謝の言葉に、操が「ん」と小さな呻きをあげた。目を覚ましたのかと思ったが、彼はまだ眠ったままだ。
可愛い寝顔にまたひとつ微笑むと、甲洋はふとベッド脇のチェストに目を向ける。小さな間接照明が置かれたその横には、赤いベルベットのリングケースが置かれていた。
最初からずっとここに置いてあったのだが、操はまったく気がつかなかったようだ。
ケースに手を伸ばし、蓋を開ける。そこにはなんの飾り気もないシルバーリングが収まっていた。本当なら操の誕生日に渡すつもりでいたものだ。操の態度が急変したあとは、本気でもうダメなのかもしれないと打ちひしがれていたけれど。
ゴムやローション以上に、甲洋にとってなによりも無用にならずに済んだのは、この指輪の存在だった。この子が18歳になったとき、プロポーズをしようと思っていたから。
結婚してください、なんて。そんなことを言ったら、少し重たいかもしれないけれど。
「んー……」
そのとき、シーツの中で操が呻いた。モゾモゾと身じろぎながら、仰向けの姿勢からこちらに向けて寝返りを打つ。今度こそ起きたかと思ったけれど、やっぱりまだ夢の中にいるらしい。
「なにこれおいしぃ~……甲洋も食べてみてぇ……」
「なに食ってんのさ」
ムニャムニャと口を動かして、寝言を言いながら操が笑う。思わず声を出して笑いそうになるのをどうにか堪え、甲洋は再びケースの中身に視線を落とした。照明を弾いて輝くリングに目を細め、彼が目を覚ましたときのことを想像する。
果たして喜んでくれるだろうか。なにをするにも邪魔にならないよう、首から下げられるように別途でチェーンも用意してある。いつだって身につけていられるように。
「愛してるよ、操」
そっとケースの蓋を閉じ、操の寝顔に目を向ける。告白と一緒に、普段は照れくさくて呼べない下の名前を呼びながら。この後に続くのは、「だから俺と結婚してください」だ。
この子が目を覚ましたら、思い切り真面目な顔をして言ってやろう。きっと笑いだすに違いない。「また敬語になってる!」なんて、どうでもいいところにツッコミを入れながら。
ひとしきりケラケラと笑ったあと、赤い顔ではにかんで、「いいよ」と言ってくれたらいい。
そう切に願いながら、身を屈めるとふにふにの頬にキスをした。やっぱり甘い。操はどこもかしこも、砂糖みたいに──。
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